ローレンツ曲線とジニ係数でみるエロゲの売上格差
エロゲの売上を「格差」という観点で計量化および、視覚化する実験になります。そして「格差」すなわち「不平等度」を測る尺度としてよく用いられるのが「ローレンツ曲線」と「ジニ係数」です。今回はこれを使って調べてみました。
ローレンツ曲線とジニ係数
この章は「ローレンツ曲線」と「ジニ係数」の説明なので、結論だけ読みたい方はとばしても構いません。
- ローレンツ曲線
ローレンツ曲線とは、イギリスの官庁統計家ローレンツが、所得や賃金、資産、市場シェアなどがどの程度不平等に分配されているかを示すのに用いたグラフです。もし仮に、すべてのエロゲがまったく同じ売上だったとすると、このグラフは傾き「1」の直線になります(均等分配線)。逆に、たった1つのエロゲの売上が全体の100%を占めていたとすると、このグラフは垂直に立ちます(格差最大の分配線)。しかし、この様なことはまずあり得ないので、これら両極端な線の間にエロゲの売上分布のグラフは収まるはずです。従って、均等分配線と実際の曲線がどのくらい離れているかによって、エロゲの売上の不平等度を視覚化することができます(均等分配線から離れて下にはらむほど、格差が大きいと解釈します)。
ジニ係数とは、イタリアの数理統計学者ジニが考案した指数です。主に社会における所得分配の不平等度を測る指標として使われます。これは「0」から「1」までの値で示され、「1」に近いほど格差が大きいことを表しています。例えば、すべてのエロゲの売上が同じだと「0」になり、逆にごく一部のエロゲが極端に大きな売上を占めていると「1」に近付きます。具体的にはローレンツ曲線で説明した「均等分配線」と「ローレンツ曲線」で囲まれる弓形の面積を2倍にした値*1がジニ係数になります。
エロゲの売上格差(2008〜2009年)
今回エロゲの売上に関する値として、2008〜2009年の「toto PUSH!! 売り上げランキング」の売上ポイントを使用しました。また、経年変化を見るために2年分のローレンツ曲線とジニ係数を求めています。
【ローレンツ曲線】
【ジニ係数】
年 | ジニ係数 |
---|---|
2008 | 0.51 |
2009 | 0.45 |
考察
2009年のローレンツ曲線は2008年に比べて均等分配線に近いので、格差が小さくなっています。また、ジニ係数で見ても2009年は「0.45」と、2008年の「0.51」に比べて小さく、格差はやはり縮まっていると言えます。では、縮まった原因は何でしょうか?それについてはエロゲの売上分布を見た方が分かりやすいと思います。
【2008〜2009年エロゲ売上ヒストグラム】
端的に言ってしまえば「大きな売上を占めている層(高売上層)が減ったから」です(2009年は10,000ポイント以上売り上げたエロゲが、2008年に比べて15本少ない)。これは、売上に占める割合が少ない層(低売上層)が底上げされたのではなく、高売上層が減少したから格差が縮小したという事です。では次に、この「0.45」とか「0.51」というジニ係数はどのくらいの格差を示しているのでしょうか?その目安は以下の様になっています。
ジニ係数 | 格差の説明 |
---|---|
〜0.1 | 平準化が仕組まれる、人為的な背景がある |
0.1〜0.2 | 相当平等だが、向上への努力を阻害する懸念がある |
0.2〜0.3 | 社会で一般にある通常の配分型 |
0.3〜0.4 | 少し格差があるが、競争の中での向上には好ましい面もある |
0.4〜0.5 | 格差がきつい |
0.5〜 | 特段の事情がない限り是正を要する |
よって、この目安からすると、エロゲの売上格差はかなりきつい部類に属していると言えます。つまり、売れるエロゲと売れないエロゲの差が大きいという事を示しています。
余談
ジニ係数は、階層が二分されていると仮定した場合、その層が全体のどのくらいの割合を占めているのかを算出できます。ジニ係数と上層階級のシェアの関係については下記表を参照して下さい。また、2009年のジニ係数である「0.45」は、この表から「上位27.5%のエロゲが、売上全体の72.5%を得ている」と解釈する事ができます。
ジニ係数 | 上層階級のシェア |
---|---|
0.2 | 40% |
0.3 | 35% |
0.4 | 30% |
0.5 | 25% |
0.6 | 20% |
0.7 | 15% |
0.8 | 10% |
0.9 | 5% |
*1:2倍にすると値の範囲が「0」から「1」までになって、直感的にとらえやすくなるから