「要は、勇気がないんでしょ?」でジャクリーンの膝で涙にくれるJFK

d-ff2008-04-15



 ※書き手はピュリッツァー賞受賞者。友人は天才コンサルタント。

ちょっと昔の話。今よりも僕はずっとずっと自由が好きで、聴衆に契約やその対価を説明するのが好きだったんです。
でまぁ、当時も今と変わらず敵陣営とは話になりませんで、
男友達のノイマン教授と飲みながら「カストロが酷い、だから世界が安定しないんだ」と文句言ってたのです。
ニューメキシコで。
したらまた、この友達が「じゃあ、やっちまうか」と言うのです。「今からニューフロンティアで行こう」と。
青二才のオレは焦りました。「いや、ちょっと待って」とあわてます。
でも友達は、少し遠くで飲んでいる将軍とケンブリッジ派の二人を指さし、「あそこ行って一緒に詰めようぜ」と言い、テーブルの上を空けるよう彼らに身振りで伝えます。
オレは「いや、司法長官も迷惑だし」とか「さすがに義のないいくさはやれないっしょ」とか言って止めます。
友達は「首尾よくいかなかったら戻ってくればいいんだよ」と言ってましたが、オレが動こうとしないので行くのをやめました。
「じゃあ、アメリカが事を起こすんじゃなくて、キューバの不平分子を焚きつけて蜂起させるか?」と友達は言います。
「そんな素人集団すぐに鎮圧されちまう、逆にそっちの方が難易度高いだろ」とオレは顔をしかめます。
「でも取っ掛りがないんだろ? だったら武器やら人員やら横流ししてでも作るしかないだろ」と友達は口調を強めます。
「そうだけど、もっと普通に引導を渡したいっていうか」とオレ。
「なに、普通って?」
「国連決議とか、海上封鎖とか、そういう…」とハッキリ言えない自分。
「じゃあ、やつらが上陸したら直ちに建国を宣言させたらいいか? 新生民主自由キューバ国だ、これを承認してやればカストロが差し向ける鎮圧部隊は友国への侵略となり、それで正規軍を投入する名分も立つよな」という友達。
「それは…、だけど、ほら、お前もこの前言ってたじゃん。亡命者って軽い子が多いとか」
「は?」
「その…」
「…軽い子じゃねぇよ。ノリが良い子だよ」
「あ、そうだったね。…でもオレ、ノリの良い子、少し信用できないし。我が国の威信を賭してまでカストロ排除したいってわけでもないし…」
友達はオレの顔をじっと見つめながら、一言、
「だせー」
と言いました。
ごちゃごちゃ言ってるけど、勇気がないだけじゃん
彼は言います。
言い訳をして、しかも「話し合うために武装しているんだ、だからしょうがないんだ」って言うけれど、
勇気がない自分を必死になって正当化してるだけじゃん、と。
テーブルを引っくりかえす勇気もないやつが、世界の安寧とか言うんじゃない。
ベトナムへの増兵を提言すれば「現場は聞こえの良い報告しか上げてこないから…」って言うし、
戦術核に踏み込めば「ああいう場の光景は苦手だし、激昂するロシア人と仲良くやれそうにない」とか言うだろうし、
若造なかなかやりおるわいとフルシチョフは見直してくれるさって言えば「いや、不確定な要素が多すぎる、他国を転覆させる謀略に政府がかかわるなんて、歴史に汚点は残せないし」って何かにつけて言い訳するんだろ?
だったら「自分には陰謀一つ抱え込む勇気もないんです」って素直に認めて文句言うんじゃねぇよ。
そっちの方が、よっぽど何かってときに力になりたいってと思うし、
つーか、できない理由並べて、プレーボーイ、剽窃者の過去を否定して、偉大な大統領として後世に記憶されようとするその魂胆がだせー、と。
あれは恥ずかしかったなー。すげぇ。恥ずかしかった。
その場は言い訳もできずスマイルでごまかしたけど、ジャクソンの馬鹿げた肖像画が飾られた家に帰ったらハンガリー人の顔とセリフが思い浮かんで、
ジャクリーンのむき出しの膝をさすりつつ「でもさ、でもさ」と必死に言い訳考えてた。
オレじゃなく、ジョー兄さんが生き延びればよかったんだ、しょうがねぇじゃんかよって。頭の上で忍び笑いが漏れる。妻は笑っていたんだ、嗄れた「ハッピー・バースディ」を口ずさみながら(泣)



 史実にも時系列にも沿っていませんがご容赦(ノイマンは1957年に鬼籍に入っています)
 参照元は「要は、勇気がないんでしょ?」で始まる太平洋戦争並び「要は、勇気がないんでしょ?」で権威が失墜する作戦部長です 吹き込まれたのはロバート・オレンバトラー著『奇妙な新聞記事』収録の「JFK、ジャッキー・オークションにあらわる」並びにジェイムズ・エルロイ著『アメリカン・デス・トリップ』でした
 イラストのモデルはベッキー(ファンでもなんでもなくたまたまテレビに映った)
 パロディが順次劣化してゆくのは世の常でござる、重ねてご容赦を
 (4月16日に加筆、誤字を含め修正しました)