僕はなぜお金を払いたいのか

「評価を換金」のエントリで、「楽曲作者はお金を欲しがっていない」というコメントがあった。もちろん、最初から金が欲しくてやってるわけではないだろうことは理解している。
だが、「もらいたい側」の論理ではなくて、「払いたい=報いたい側」の論理というのもある。
以前書いた「楽曲対価を支払うたったひとつ(ではないかもしれない)の冴えたやり方」(http://d.hatena.ne.jp/azuki-glg/20071220/1198121928 )のエントリにも同様のコメントをいただいたことがあったが、音楽を聴いて、素直に凄いと思って、感動して、泣いて、嬉しくなって、元気づけられて、それだけされたらどうにかお礼をしたい、と思いたくなる曲というのが、稀にある。
単純に「音楽を聴きたいから金を払って買ってくる」というのとは違う。
作者へのリスペクトであり、作者へのお礼である。
作者が自分の作品についてどう思うか、というのを越えて、「リスナーとしては非常に感動したんだ」という思いというのは確かにある。
現状では、再生数・コメント数・マイリスト数という形でしかそれは表現されていない。もちろん、それで十分だという人も多かろうと思うけれど、それではこちらが満足できないw


これも以前、似たようなエントリーに書いたことがあるのだが、[初音]と付けるよりずっと前だったし、たぶん初音さん系の方はほとんど見てないんじゃないかなと思うので、再掲……というか、かいつまんで書いておきたい。

僕は自分ではもう音楽をやらなくなって久しいんだけど、今でも時間が合えばライブに行ったりする。ただ、年々その「時間」を捻出するのが難しくなってきて、好きなバンドがあっても、なかなか見に行けなくなった。
特にライブハウスでやってるようなバンド、インディーズが好きなのは、メジャーに行ったらもうできなくなるような、アグレッシブなもの、ピュアなものをやってる、未完成な人達が多いからだろうな、と思う。*1
そういう音楽は凄く儚くて、気に入ったと思って次のライブに行くともうメンバーが替わってたり。ヘタすると解散してたり。「あの一回こっきりだったんだよ」と言われたり、「あれが解散ライブだったんだよ」と言われたり。さらに酷いのになると「死んだよ」と言われたり。そりゃあんまりだ。
つまり、そのくらい音楽っていうのは揮発性が高い、あっという間に蒸発してなくなってしまう儚いものだと身体にとことん刻み込まれている。
解散というのは音楽性の不一致だの、進学、就職だの、現実に目覚めるだの、ともかくいろいろな意味でモチベーションが下がってしまうことによって起きる。音楽もバンドも、あっという間に消え去ってしまう。
そういう儚さ、モチベーションの維持の難しさは、かつてバンドを経験した人はよく知っているはずだ。いろいろな理由で忙しくなってバンドを続けることができなくなり、今も楽器の練習はしているけど仕事が忙しくてメンバーが揃わず、スタジオ練習ができず、そしてバンドでいることも音楽を奏でることも曲を作ることも、全てを諦めてしまった。そういう人はかなりいる。
初音ミクによってDTMに「戻って」きた人、DTMは初めてだけど一人ででも音楽はできるということに救われた人。かなりいるんじゃないか?
音楽はやっぱり面白いし楽しい。今、たぶん彼らはそれを少し思い出してる。

ライブハウスに通っていて思うのは、どうやったらこの人達が次もこれからもバンドを続けてくれるのか、新曲をやってくれるのか、ということ。
時間に余力があればどんどんライブに行きたい。
ライブハウスでCDなりテープなり*2を出していれば、極力買うようにしてる。
お金を払って君らの音楽を聴きに来たよ。君らの音楽はお金を払って買う価値があるよ。凄く良かったから、またお金を払って聞きに来たよ。

社会人になればなるほど、時間とお金が貴重だということは身に染みる。そこにいくための時間をどうやって捻り出すか、CDを買うためのお金を自分はどうやって稼いでいるか。
そういうことがしっかり伝わってるバンドは、息が長い。
そこまでの評価が伝わらず、モチベーションを維持できないバンドは寿命が短い。
一概に言い切ることはできないけど、だいたいそれに当てはまる。
価値あるものにお金を払う、そうやってお金を受け取るということを、気まずいことだとか、後ろめたいことだと思わないでほしい。お金を欲しがらない清貧であることを誇りとする考え方にも反対しない。
でも、お金の価値、それを稼ぐ苦労を知ってる人々が、それを捻出してでも評価したいと思ってる、そういう気持ちがあることもわかってほしい。

1リスナーとしては、どうやったら楽曲作者のモチベーションを維持できるか、そればかりを考えてしまうし、考えてきた。
DTMは、多くの場合「一人でもできる」「一人でできる」「一人でやらなければならない」そういうものであるが故に、モチベーションを少しでも上げる手助けができたらいい。「聞いたよ、聞いてるよ、iPod大回転だよ*3」と言うだけならいくらでも言う。
でも、それ以外にも何かできることはないか?
そう思うからこそ、「どうにか楽曲作者を応援し、お礼をする方法はないものか?」と、考えてしまう。

このテーマは、バンドを諦めた経験がある人、それでも音楽辞められない人に、たぶん共通するかもしれないなと思った。
わかってもらえたら嬉しいかも。




PS.
ちょっと白状すると、「弱音ハクの卒業」を初めて聞いたときにちょっと泣いた。
ボカロ系DTM楽曲作者にどうにかして報いたいなあ、という気持ちが強くなったのは、たぶんこの曲が引き金だったかもしれない。*4

●弱音ハクの卒業
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1675946

*1:未完成というのとは違うけど(だからって完成型でもないけどw)、少々踏み込みすぎで批判を浴びるような楽曲も、プロトタイプとしては「アリ!」なのがそうしたライブミュージックであって、だからこそデPのアレだって僕的にはセウト。というか十分許容できるものだ。アレがプロだったら、発表前に確認してたと思うし、そこで確認せずに完成品までいっちゃうところがステキだと思うw

*2:テープの頃から買ってました。

*3:touchは回りませんが

*4:同じ作者のアレンジによる「NO MUSIC, NO LIFE?」(http://www.nicovideo.jp/watch/sm1697411 )でも泣いた。別作者による原曲「伝えたい気持ち」(http://www.nicovideo.jp/watch/sm1162860 )も非常にヨイ。涙腺弱すぎだ自分orz それにしても、この「伝えたい気持ち」→「NO MUSIC, NO LIFE」は、関わってる人間多すぎだ(^^;)