イノベーションを阻害する品質管理脳の恐怖!

などというあおり気味なタイトルを付けてみたのですが、皆様は新年度をどのようにお過ごしでしょうか。

つい先程「ヤバい経営学」なる本を読み終わったのですが、ちょうど良いタイミングで中央大学竹内健先生のブログでこんな話を読んでしまったわけです。実は似たような話が同書にも書かれていて、これは根拠ない話じゃないなぁ、と。

歴史のある企業では、過去の失敗事例をもとに、様々なルールがある。

でも、ルールをすべて守ると、半導体のチップの面積が大きくなって、コストが増える。

あるいは、設計ミスが無いか、念には念を入れて検証ばかりしていると、設計期間が延びてしまって、市場への製品投入が遅れる。
一方、新興企業だった三星には、そんなルールがない。

結局、ルールにがんじがらめになった、日本の多くの半導体メーカーは敗退しました。

http://d.hatena.ne.jp/Takeuchi-Lab/20130420/1366411326

では、「ヤバい経営学」ではどのような話が書かれていたかというと

経営手法は、組織の機能を改善させるためにある。しかし、実際はただ効果がないだけではなく、予想もしなかったマイナスの結果を生むこともある。……ペンシルバニア大学のマリー・ベンナー教授とハーバード・ビジネススクールのマイク・トシュマン教授は、ISO9000導入企業のイノベーションに何が起きているか調査した。……企業がISO9000を導入すると、既存分野の発明が急激に増えていた。その反面、新しい革新的なイノベーションが犠牲になっていた。ISO9000のせいで「同じような」特許ばかり増えると、全く新しい技術や製品の発明は出てこなくなるのだ。

なぜこういうことが起きるのだろう。それは、ISO9000は、会社が「物事を進める最適な方法」からの逸脱を最小限にするからだ。優れたイノベーションは偶然に発見されることが多い。

と、こんな感じ。実は、以前紹介したHARD FACTSでもこの話題は短いながらも取り上げられていたので、経営学では有名な研究のようです。

昨年、サットンが、イノベーションで有名な会社で講演した。その会社では、その前年に顧客満足度と効率性を上げるためにシックスシグマが導入されていた。サットンは講演の中で、シックスシグマやTQMなどのプロセス改善手法によって、効率は上がるがイノベーションが減ることを指摘した。それに対して、自称「品質管理の鬼」「品質の伝道師」たちがやって来て、シックスシグマはイノベーションも含めた品質の改善に役立っていると反論した。このグルたちは、10年もの経験があり、しかもシックスシグマやTQMがイノベーションに貢献した事例を一つもあげられないのにもかかわらず、そう言い張ったのである。

我らがシステム開発業界も、ISO9000の取得は広く行われているわけですから他人ごとではありません。

ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

事実に基づいた経営―なぜ「当たり前」ができないのか?

事実に基づいた経営―なぜ「当たり前」ができないのか?