イケハヤ流究極の自由は「他人に殺される自由」を導くか

もはやギャグかなんかじゃないとこういうの書けないよなーと思うとかえって感心してしまったりしなくもありません。
イケダハヤト流 - 引用と表現の自由の関係 - Togetter
「自由がよそから与えられるものだと思い込むことは、さまざまな悪影響をもらたします。ぼくらは元来自由な存在で、それこそ、「法を犯す自由」すらも持っているのです。実際に、犯罪者と呼ばれる人々は、そうした自由を行使した人と考えられるでしょう。」
これ、典型的な勘違いではないかと思うんですが、「法を犯す=社会に属している=ここでいう自由は(自ら社会に属することによってその社会の権利として)与えられた自由」という概念の中にあるんじゃないですかね。「元来」という自由には「法を犯す」という概念すら存在しないのではないか。
この辺りで社会論、法律論になってくると僕は不勉強なのでなんともですが(尽くされた議論の蒸し返しになりそう)。

いずれにせよ、この一文を読む限り、「犯罪者は自由を行使しただけ!みんな元来は自由!」と言っているとしか受け止められません。こういう留保のない自由の肯定は、「イケハヤを殺す自由」「イケハヤが殺されないように相手を殺す自由」などまで無条件に肯定することになり、社会に無秩序をもたらします。ぼくらが元来自由だと思い込むのはこのように様々な悪影響をもたらすわけです。ただし、「俺は自由な人間だ。みんなは社会に縛られて生きてね!」と、自分だけが自由を行使できると思い込んでいる場合は、この問題に気づくことは難しいのではないかと思います。要は自らが提唱している自由を他人が行使すると、結果として自分の自由が現実的に制約を受けるという罠に気づいていないわけですね。仮にそこで社会に助けを求めるのであれば、社会が個人に要求している縛り(それは法的義務だったり、倫理的規範だったりする)を受け入れるという意思表明ではあります。

むろん、「元来の自由」というのは概念的には存在するし、現代の国家はその自由を最大限損なわないような社会制度設計を試みているわけです。単にリソースも含めた現実の問題によってそれが制限されているだけです。自由であるがために社会に対して行使しようとしている権利は打ち出の小槌ではないということね。

んで。

「無断転載だ!」「引用ではない!」とぼくを批判する人は、ぜひ「なぜ(イケダハヤトがやっている形での)無断転載が悪いのか」を明文化して伝えてください。
なお、「無断転載は無断転載だから悪いんだ!」という子どものような理屈では、お話しになりません。
さらに「法律違反だから悪いんだ!」というのも、思考停止です。「なぜ法律は、それを違反だと規定しているのか」まで言及してください。

「無断転載」の何が悪いの? : まだ東京で消耗してるの?

まあこういう幼い考え方はそろそろ出来なくなるのが大人というものなんですが、自由に固執すると人間は子供のままでいられるようですね。典型的なピーターパン・シンドロームですかね。
この前の部分も含めて読むと、いわゆる「批判に答えず質問で返す」という誤魔化しテクです。相手が面倒になるタイプw

法律違反だから悪い、というのがイケハヤ氏の中では憎むべき悪い考えと規定されているようであるのは、先に上げた自由についての考え方からわかりますし、それが勘違いにもとづいているであろうこともわかりましたね。
「俺はこの法律はおかしいと思うから破る」という考え方はよく大麻を擁護したりスピード違反を擁護したりするときに使われがちなロジックですが、実際に破った人はその代償を払わされることがよくあります。
無断転載程度、と軽く考えているのかもしれませんが以下の様な事例がありますよ?

発表によると、男は昨年7月23日ごろから今年1月13日ごろまで163回にわたり、「gooヘルスケア」に掲載された文章をブログに無断転載していた疑い。

ネット記事をブログに無断転載 男を逮捕 - ITmedia NEWS

千葉県八千代市の無職男(25)が、千葉県流山市のホームページのコンテンツ「先輩職員からのメッセージ」の内容を自身のブログ『流山日日新聞』に掲載し、著作権を侵害したとして逮捕されました。

http://www.excite.co.jp/News/society_g/20120421/Postseven_103768.html

無断転載された側の訴えが有り、悪質だと見做されると逮捕まで至ることがあります。みんなはそれを含め、無断転載にはリスクが有ることであるから引用の要件を満たすことに慎重になっているわけです。
別に「法律違反だから悪いんだ!」が思考停止でもいいですよ。でも逮捕されてから後悔するのでは遅いのです。

とはいえ、思考停止じゃない解も提示しておきましょうか。例えば、無断転載が全く問題ないのであれば、イケハヤヲチャーの何名かで完全コピーブログを作成し、PVを奪ったり、Googleに悪質と見做されてGoogle八分にされたりなどの被害を与えることができることでしょう。業務妨害?だって無断転載をしているだけですよ?
僕は現行の著作権法は権利者に有利なところがありすぎかな、と思っているところはあります。でも、少なくと無断転載が認められない法であることは、主に引用から記事がスタートする僕のような著作者であってもその著作を守ってもらえるという意味では大変ありがたい法とも言えます。その原則を守らない、ということは、その御蔭で自分の利益が損なわれたとしてもそれを甘んじて受け入れる、ということです。はじめの話と繋ぐと、「自らが提唱している自由を他人が行使すると、結果として自分の自由が現実的に制約を受けるという罠」にハマるということですね。

イケハヤ氏の稚拙な考え方の根本にはこの「俺は自由を行使するがお前らは行使しない」というなんともお花畑で想像力の欠片もない前提があり、それによって様々なトンデモ提唱が生み出されているのではないかと思いました。