緩慢な自殺をし始めた音楽業界

別に業界がなくなったって音楽は不滅だぜ…

今更、コピーフリーを宣言する、というのは音楽業界の壮大な罠だ。違法ダウンロードと違法コピーの区別はつかない。カジュアルにコピーすることを可能にさせて著作権侵害のハードルを下げておいてダウンロードで捕まえる。主に犠牲になるのは中高生だろう。

ダウンロードの刑事罰化を実現した今となってはもっとも重要なことは、冤罪を起こさない、冤罪でなくてもよくわからなくてやってしまったことについて短絡的に罪を問わない、という事だと思う。そのために必要なのは、きちんとしたコンテンツ管理だ。だから、音楽業界(にかぎらずコンテンツ業界)が今回の刑事罰化への対応として一番やらなければならないのは、「捕まえやすくなったからDRMフリーね」じゃなくて、消費者保護のためのコンテンツ管理システムの強化なんだよ。いいか、お前ら自分たちでその道を選んだはずなんだぞ?DRMフリーにしたらコストが下がるから安く提供できますとか言っちゃうのかもしれないけど、忘れてないからな?海外版輸入を制限したら安くなりますって嘘。そのために消費者に逮捕のリスクを負わせようとしているんだぜ?

DRM廃止の理由についてエイベックスは、音楽ファンの利便性向上が狙いだったと語る。「モバイルで購入した楽曲をスマートフォンに移行できないという声があり、このままでは音楽ファンが離れる懸念があった」。その上で、「違法ダウンロード罰則化との兼ね合いはない」と話す。

 2012年に入ってからDRMフリー化を進めていたというビクター・エンターテインメントも、DRM廃止の理由はエイベックスと同様だ。「最近ではスマートフォンや携帯音楽プレーヤーなど音楽の楽しみ方は多岐に渡ることから、ユーザーの利便性を考えることに尽きる。DRM廃止は昨年以前から準備を進めており、法改正がきっかけということはない」。

きっかけは違法ダウンロード罰則化? レコード会社がDRM廃止のなぜ -INTERNET Watch Watch

いいか?ユーザーの利便性を考慮するのであればとっくの昔にそれは行われていなければならない。違法化とセットになってしまうと、管理しないことによって消費者がその合法性(あるいは違法性)を認識できずダウンロードしてしまうような事態が容易に生じる。
そもそも、ウェブがストレージと化している昨今において、アップロードというのは公衆送信のためのものでは無いケースがこれからどんどん増えていく。プロバイダーに著作物を判別するためのプログラム入れろと無理筋な要求をしているのもそうだけど、はっきり言ってユーザーの利便性を上げるという話は実際には法律に抵触する機会を増やすということにしかなっていない。ふざけるな。

どう考えても法改正がきっかけじゃねーか。

繰り返す。ダウンロードを違法化し、刑事罰化するのであれば、コンテンツを管理するのはコンテンツ提供者側の責務だ。それは、ユーザーが著作物の合法違法を誤認しないように最大限の努力を図るということ。ユーザーの利便性なんていうのはこの法律を導入した時点で優先順位はかなり低いものだ。
DRMだって標準作らないで自分たちのところで囲い込みをしようとしているから不便なものになってるんだよ。無料ID(もちろん個人に紐付かない、ライセンス提供だけの所有権管理的ID)一個作っておけば全世界のコンテンツがとりあえずそれで認証されるような仕組みにしときゃ利便性なんて問題起きないんだよ。ダビング10とかあったけど、利便性といった時の問題はDRMがあることではなくて、コピーがちゃんと出来ないことでしかない。

いいか?ユーザーの利便性という建前でお前ら音楽業界がコンテンツ管理の手を抜いて、違法ダウンロードあったらユーザー捕まえればいいや、って思っているということはもうみんなわかっているんだぞ?そんなことのためにあんな酷い法律を成立させてんじゃねーよ。ユーザーにリスクを負わせているんだから、業界もそれ相応のコストをかけるのが当たり前じゃないか。お前らの利益率を上げるために法律ができたんだとしたら、音楽業界、だけじゃないか、著作物を商売にしているみんなの建前、「文化を守る」なんてのは妄言もいいところ。まあ、Culture Fisrtのころからわかっていたことだから今更だけど。
Culture Fisrtってどうなったか知ってるか?今年に入ってから海外の都合のいいニュースが1個掲載されただけだぞ?なんのための文化なんだ?

ダウンロード違法化というコンテンツ業界の手抜きをする法律を作るべきではなかった。アップロードを検挙するのがめんどくさかっただけだ。しかし、法律ができてしまった以上、コンテンツ管理をきちんとすることがユーザーの保護になるはずだった。利便性という建前でコストの削減を行うのはユーザーにリスクを負わせる行為だ。大事なのは文化ではなく、商売だ。そのことは否定しない。けれども、もはや業界と消費者の関係はフェアなものではなくなった。
幸い、いわゆる業界に属さない、属したくないものが新しい世界を作ろうとしている。そこへの危機感がなしたことなのかもしれない。けれども、それに対抗する手段としての、ダウンロード違法化+DRMフリーというものは最悪の選択だ。音楽業界がすべきだったのは、ユーザーの行為を縛ることではなく、そこからどのような収益を上げるかを考えること。既存の商売を守るための法律をがんばって制定した、のだろう。しかし、そこにはもうマーケットは無くなる。残念ながら、今回の努力はそのマーケットの終焉を自らの手で早めることにしかならないだろう。予め冥福を祈る。