NATROMのブログ

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福島の土のレメディが売られるわけ

ホメオパシージャパン株式会社から、「福島で採取した土を希釈振とうして出来たレメディー」が販売された。



■ホメオパシージャパン株式会社*1




このたび「RA Fukushima 1-S-2」(福島で採取した土を希釈振とうして出来たレメディー)を

7月23日(土)に新発売いたします

まあ、ベルリンの壁のレメディがあるぐらいだから、福島の土のレメディがあってもおかしくはなかろう。おそらくは「放射能」に効果があると主張されるのであろうが、ホメオパシージャパン株式会社のページには、効果効能は書かれていない。それもそのはず、ホメオパシージャパン株式会社は、「食品」を売っているのであるから、医薬品的な効果効能を謳うと薬事法違反となる。何か薬物の含まれたものを食品と称して売れば問題だが、「福島で採取した土を希釈振とうして出来たレメディー」は、どんなに成分を詳しく調べてもほぼ100%が糖である。

効果効能を謳うのは、別の部隊である。おそらく、日本ホメオパシー医学協会の由井寅子氏あたりが宣伝する。公的には効果をほのめかすぐらいかもしれないが、講演会では「ホメオパシーは放射能による健康被害の対処も可能です。RA Fukushimaがとてもよく効きます」ぐらいは言うこともあるだろう。医学的には荒唐無稽で根拠のない話であるが、講演会に聞きにくるような人たちは信じてしまう。そして、ホメオパシージャパン株式会社から販売されている「食品」を購入するのだ。

薬事法逃れのため、販売部隊と広告部隊を分離するのは、いわゆる「バイブル商法」として知られている。由井寅子氏の関係するホメオパシー団体は、「ホメジャ系(ホメオパシージャパン系)」と呼ばれることからわかるように、お互いに関係が深い。ホメオパシージャパン株式会社の創業者は由井寅子氏その人であるし*2、かつて、日本ホメオパシー医学協会(由井寅子氏が会長)のトップページはホメオパシージャパン株式会社のサイトの下部にあった。ただし、現在は、公式には別団体ということになっている。


ホメオパシージャパン株式会社は、「効果効能は謳っていませんよ。食品を売って何が悪いのですか?」と言うだろう。


日本ホメオパシー医学協会は、「当会の見解を表明しただけです。法的に何か問題はありますか?」と言うだろう。


自分では販売してない食品の効果効能を謳うのがダメだとすると、みのもんたが、「○○は体にいいってですよ、奥さん」などとテレビで言うのもダメだということになる。言論の自由という話にもなってくる。権力が介入して止めさせるようなことではない。少なくとも、ホメオパシージャパン株式会社と日本ホメオパシー医学協会が、金銭的なやりとりも含めて現在でも深いつながりがあるという裏付けでもない限り、「食品」を売っている会社を摘発することはできない。当局にはなんとか頑張っていただきたいところではあるものの、ホメオパシージャパン株式会社側も法的な対策はしているわけで、レメディを売る側の刑事的責任を問うのはかなり困難ではなかろうか*3。「ホメオパシーの会社そのものを摘発するべきです。そうすればレメディー販売もなくなり、根本的な解決になります」という見方*4もあるが、上記したような理由でそんな単純な話ではないことを、賢明な読者であれば容易に理解できるだろう。

ホメオパシージャパン株式会社は、福島の土のレメディ以外にも、いろいろ「オリジナル」なレメディを販売している。祝詞やら、般若心経やら。ちなみに、日本ホメオパシー医学協会認定ホメオパスによれば、般若心経のレメディは、「おもに、成仏していない霊の憑依にいいですが、生き霊にもよく使います*5」とのことである。本来のホメオパシーの原理から考えれば、霊を希釈振とうして出来たレメディを使うべきであるような気がするが。驚くべきことではあるが、福島の土のレメディのほうが、まだ理解できる範囲内なのだ。

「オリジナル」なレメディの有名どころは、「土地の浄化のためのレメディー」。EM菌と同じような感じで、善意の人が買って使用することを期待しているのだろう。


■ホメオパシージャパン株式会社*6




Hyper..Φを基本ベースに心経、祝詞など土地の浄化のためのレメディーをミックスした

HJオリジナルサポートチンクチャーです。

もはや医学とは関係がなく、呪術の類である。こうしたわけのわからないレメディが売られる理由は容易に推測できる。「食品」を売る部隊と、効果効能を謳う部隊が別であれば、効果効能を謳っても、狙い通りの商品が売れるとは限らない。効果効能を謳う部隊が、オーソドックスなレメディを勧めたとしよう。顧客が狙い通りに仲間の部隊の商品を買うとは限らない。というのも、オーソドックスなレメディは、同業他社も売っているからだ。通販で容易に入手可能である(なにしろ「食品」だ)。他者との価格競争に巻き込まれることになり、利益も減る。これが「オリジナル」なレメディだとどうだろう。他社は売っていない。「食品」を売る部隊は、他社と競争することなく、自由に価格をつけることができる。かくして、「食品」を売る部隊はオリジナルなレメディを開発し、効果効能を謳う部隊がそれを宣伝するという構図ができあがる。


*1:URL:http://www.homoeopathy.co.jp/20110723_info.html

*2:■御挨拶 - ホメオパシージャパン株式会社 URL:http://www.homoeopathy.co.jp/company/president_greeting.html

*3:いやもう本音をぶっちゃけちゃうと、ホメオパシージャパン株式会社と日本ホメオパシー医学協会がつながっていることなんて明らかなんだから、何とか摘発できないのか、とは思っている

*4:URL:http://openblog.meblog.biz/article/5108902.html

*5:URL:http://pub.ne.jp/homoeopathy/?entry_id=2509941

*6:URL:http://www.homoeopathy.co.jp/product/hj_new010_tochi.html