(株)Jコミックテラスの中の人

マンガ図書館Zに関する実験や報告をするブログです。

凡天太郎先生の 『混血児リカ』(全8巻分に相当)を公開しました

日本マンガ史におけるキーパーソンでありながら、一般には殆ど知られていない、紙芝居時代〜劇画時代の巨匠をご紹介いたします。「凡天太郎(ぼんてん・たろう)」先生という方で、残念ながら2008年6月に、80歳で亡くなられました。
凡天太郎先生は、あの水木しげる先生の紙芝居時代の兄弟子にあたり、凡天先生が線画を描き、水木先生が色を塗るような立場だったそうです。また、かの白土三平先生が凡天先生のアシスタントをしており、凡天先生が食事やデビューの世話をしてあげたという記録が、雑誌のインタビュー記事として残っております。

【 梵天太郎/凡天太郎 プロフィール 】
昭和4年1月5日生まれ(公称)。
15歳で特攻隊に志願し、予科練を経て少年航空兵として鹿児島海軍航空隊に入隊。
終戦後、京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に入学。学生時より加太こうじに師事、紙芝居を描いて自立する。
卒業後、少女漫画が評判となったが、突然引退。刺青修行の旅に出る。
5年余り後に漫画界に復帰。「混血児リカ」や「猪の鹿お蝶」などをヒットさせる。



さて、凡天太郎先生の代表作と言われる『混血児リカ』(全8巻分に相当)ですが、集英社の「週刊明星」にて1967年から連載された作品です。
東宝で3作も映画化(1972〜)されましたが、表現上の過激さから日本国内では一度もソフト化されておりません(米国版DVDは存在します)。
また当時は、一度印刷まで行った原稿は、結構簡単に捨てられたり、他人にあげたりされていることもあって、単行本も出ておりません。今回使用した「雑誌の切り抜き保存版」が現存するのみです。


今回Jコミでは、凡天太郎事務所の保管する貴重な「切り抜き」を使用し、日本漫画史に残る歴史的遺産として完全保存版(600dpi)の作成に着手しました。それをPC向けに100dpiまで落として画質補正したものが、この電子書籍版・『混血児リカ』(全8巻分に相当)です。
 http://www.j-comi.jp/book/comic/42441


Jコミは「作家の望む形で公開したい」のと、「なるべく当時のままで公開したい」という方針がありまして、差別用語であっても修正せずにそのまま掲載しています。
『混血児リカ』は、タイトルの「混血児」がもう差別用語であり、本文も相当過激な内容ですので、日本の出版社での単行本化は事実上不可能だと思われます。