はてな:日本のIT・WEB制作業の人材確保裏事情

http://q.hatena.ne.jp/1184913023
こっちは「こちら側」の話.

  • 私はIT・WEB制作業に関する会社で人事をしております。
  • A:私も数年人事をしておりますから、面接時の受け答えや実績・履歴内容で判断しております。

まず人事の人間が技術者の面接をする.これがダメなIT企業の特徴です.*1

特に「面接時の受け答え」なんてのは,どーでもいい話です.履歴書もほとんど参考になりません.*2そんなものでしか判断できない人間を外して,現場の技術者に面接させましょう.

なぜ、IT業界だけモラル低下がひどいのかよく理由がわかりません。

あんたみたいな『無能な』人事担当者がいるからでしょう.

一般的な制作料金(外注依頼費・給与)を計上しているつもりですし、(中略)
他の同業他社に聞くと、どこも同じような人材トラブルに見舞われているようです。

技術者が質・量共に,圧倒的に不足した結果です.*3

「業界の平均的な給与」が,はたして技術者に対する十分な報酬であるのか,胸に手を当てて考えてみましょう.人材採用の仕方も知らず人材確保に失敗している人事担当者,人材確保のやり方を人に尋ねる「教えて君」より,よほど優秀な人材に対しても,より低い給与しか与えてないのではないでしょうか?

納期も緩く、出来る限りの資料も提出しています。

もし「出来る限りの資料 => 役に立たない仕様書」であれば,納期が2〜3割緩くても全く無意味です.逆に担当者の技術力が低ければ納期が2〜3倍でも全く無意味です.

簡単な対策は「3倍の能力を持つ者に倍の報酬を払う」です.でも人事部の人間には能力の評価が出来ないのでコレは無理でしょう.

応募してきた人材を、何度も面接し、繰り返し業務確認してようやく採用したとしても、長くは持ちません。

人事部による面接を繰り返すよりも,技術者による面接を一回する方が100倍マシな人材が採用できるでしょう.*4

どうしてIT・WEB業界に応募してくる人はこのような社会人的意識が欠如している方ばかりなのでしょうか?

会社を辞めることを,「社会人意識の欠如」と短絡的に捉えることが間違いです.*5 バブルも終身雇用もとっくの昔に崩壊しました.また意識ではなく問題が技術力である可能性も捨てきれません.そしてもし技術力であるならば,それは採用過程の欠陥が招いた当然の結果です.

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

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いずれにせよ,あなたの会社に対して「NO」と言われていることに気付きましょう.もちろん「社会人意識の欠如」が原因の可能性もあります.しかし逆に言えば,まともな人間から相手にされてないような業界だからこそ,そういう人間しか来てくれないのでは?

  • 業界的に需要が多い現状なのに、満足に供給できる人材が確保できず、非常に困っています。
  • が、自社の人材も育てる必要はあり、深刻な問題と実感しています。

そう思うんだったら待遇を改善し,給料を上げろよな....orz

需要があって仕事がこなせないのは会社側の事情です.需要がどれだけ増えたところで,技術者の報酬へは反映されない.さて,『人材不足』の原因は何でしょうね?

そういった歪みは短期的には存在しても長期的には、プログラマのなり手が継続的に減少し続け、賃金水準が上がる、などして修正されないのでしょうか?

その通りです.
だからこそ,今まさに減少し続け、崩壊しているところなのですよ.*4
http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20070216/p1

  • 日雇いのアルバイト感覚だからそういうトラブルも多いです。
  • 別に完全正社員とか専用スタッフでなくとも、アルバイトや個人事業主の外注依頼でも良いと思っています。

これはそういう感覚で仕事を出す発注者側の問題では?

そして何よりも,この業界は『責任感があり,実力のある人間には生きていくのが辛い世界』です.無責任にならないと生き残れません.

また、この業界は即戦力が求められます。普通に「個人でホームページ作りました」レベルでは難しいです。だから、社会人経験は必須なのです。

『即戦力』ねえ.

専門家は欲しい.自分たちでは育てるつもりはない.でも報酬は値切りたい.そういうことでは.*6

百歩譲って,もし違うというなら,まずその証拠を見せることですね.話はそれからでしょ.

個人的には、才能があれば独立しやすい、才能があれば儲かる、といったようなイメージがあります。"才能があれば"という部分で、一発当ててやるか的な山っ気が強い人が集まりそうな気がします。一発当てた人はいいのですが、当ててない人/当てられない人も生まれるので、その人達とどう折り合うかが大変な気がします。

それは偏見です.*7 *8
内部の人は「才能があれば独立しやすい/儲かる」ではなく,「才能のない人は論外」「才能がある人でも使い捨て」という認識だと思われます.

制作側の人間としては、特に小規模な会社に対して、かなり疑いの目をもっている人も少なくないと思います。

まったくその通りです.

Webに限らず、クリエイターとして仕事をしている人たちは、自分のセンスに自信を持っている人達です。そして常にそのセンスやスキルを磨きたいと思っています。
実際は、制作スキルよりも、コミュニケーション能力や企画、提案、のスキルが大事であることを、見失っている人ばかりです。

これも偏見ですね.

「スキルを磨きたい」というのは多くの場合は事実でしょう*9.誰が好き好んで年収200万で貧困生活をエンジョイしたいと思いますか?

「コミュニケーション能力」というのも非常に曖昧な単語です.ことこの業界に関しては,専門知識のない人の「コミュニケーション」など何の役にも立ちません.*10最悪なのは「実現不可能,或いは困難な企画・提案」を出して,しかもそれが通ってしまった場合ですね.

参考:


さてと,これだけではなんなので,今日今すぐにでもできる簡単な環境改善を上げておきましょう.

  • 開発者のマシンのCPUパワーは十分なものを与える.
  • メモリも豊富に:メモリサイズも生産性に影響する*11.今だとメモリなんて安い物だし,最低でも1GB以上かな.2GB以上積んでいても,多すぎるとは思わない.
  • デュアルディスプレイ:今じゃ液晶なんて安い物だ.デュアルディスプレイにするコストと,それによる生産性向上とを天秤に掛ければ答は明らかだろう.*12
  • キーボードとマウスもケチらない:個人の要望も受け入れること.人によってはトラックボールや特殊なキーボードを好む場合もあるのだ.そういう拘りもプロフェッショナルには必要だ.
  • 良い椅子を用意する:開発者は長い時間椅子に座って過ごすため,椅子の座り心地が悪いとそれだけ生産性も落ちる.一台十数万のアーロンチェアとまでは言わないけど,1万円程度の事務用品よりは1ランク以上は上の「ちょっと上等な椅子」を入れること.なお重要なのは価格や見た目ではなく長時間座っているときの座り心地と作業のし易さ.キーボードとの距離がほんの数cmズレただけでも悪影響があり,体格には個人差があるので自ずと調整できる部分は多い物が良い.*13

http://local.joelonsoftware.com/mediawiki/images/8/80/Ggth08.jpg

もちろん「一人当たりのスペースを倍にする」や「全開発者に個室を用意しろ」などというのが実現できればもっと良いのだけれど今すぐには難しい.お金もかかるしね.それに比べれば,ここで上げた対策などは随分と安いもののはずです.
またこんな所でケチるような会社は,技術者を軽く見ていることは明らかです.そんな人の元で長期間働きたいと思う技術者などいないでしょう.

*1:それと同時に,日本企業に共通の特徴でもある.

*2:「高校中退,その後も別の業界で経験0」という人にはあまり期待できないとは思うが,学歴や経験年数が長いことが優秀であるという証拠にはならないのがこの業界だ.

*3:次々と仕事が殺到するのも同じ理由.あなたの会社が特別高い評価を得ているからではない.

*4:というか,これって常識なのでは...

*5:そもそも「社会人意識」自体が曖昧な単語だよな.

*6:「辞めたければいつでも辞めていいんだよ.お前ら技術者の代わりなんていくらでもいるんだからね」.そして誰もいなくなった.

*7:少なくとも日本では.

*8:http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=000988

*9:http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20051110/p1

*10:http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001088

*11:管理職なんかと一緒にしないでもらいたい.

*12:Emacsや仮想ウインドウを使って開発できる人には必須というほどでもないが「あれば嬉しい」レベル.そうでない人なら,「一度使い始めると,二度と元の環境には戻れない」レベルだそうだ.

*13:椅子に比べれば机はあまり拘らない.そこそこの広さがあって丈夫であれば中古の事務机でも可.ただ,普通は足下にパソコンを置いたりするので,足下が広くて引き出しなどのないOA用の机にしておく方が無難かな.