NECと日本HP、大学や研究・開発機関向けのHPC分野で協業

TSUBAME2.0導入ノウハウを生かしたGPUソリューションを提供


日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 インダストリスタンダードサーバー事業本部 事業本部長の林良介氏

 日本電気株式会社(以下、NEC)と日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は10月6日、ハイパフォーマンス・コンピューティング(以下、HPC)分野において、GPU(Graphics Processing Unit)を活用した高い演算能力を実現する計算インフラ分野で協業すると発表した。これに併せて日本HPでは、「GPUコンピューティング」の利用に最適化したスケールアウト型サーバーの新モデル「HP ProLiant SL390s Generation 7(以下、SL390s G7)」を10月7日より販売開始する。

 NECと日本HPは、すでに「GPUコンピューティング」により世界最高レベルの理論最高性能2.4ペタフロップスを有する東京工業大学の次世代スーパーコンピュータシステム「TSUBAME2.0」の構築で連携しており、今回の協業も同システム構築における協調に基づくものとなる。

 日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 インダストリスタンダードサーバー事業本部 事業本部長の林良介氏は、「GPUコンピューティングは、x86サーバーでスパコンに匹敵する性能を安価に実現できるメリットがある一方で、GPUシステムの導入ノウハウや対応サーバーが欠如しているという大きな課題を抱えている。TSUBAME2.0の構築は、こうした課題を克服し、世界最大のGPUコンピューティング環境実現に向けたチャレンジだった」と、TSUBAME2.0構築の背景を説明。

NEC HPC事業部長の久光文彦氏TSUBAME2.0における世界最大のGPUコンピューティング環境へのチャレンジ

 NEC HPC事業部長の久光文彦氏もまた、「NECでは、前バージョンのTSUBAMEからシステムインテグレーションを担当しているが、東京工業大学からのシステム要件は非常にレベルの高いものだった。TSUBAME2.0についても、GPUによる超高速演算性能に加え、コモディティHPC環境との連続性の確保、さらにはグリーンスパコンとしての省エネ設計など技術要件が求められた」としている。

 TSUBAME2.0の構築に当たって、NECでは、ベクトル型スーパーコンピュータ事業で培ったアプリケーションチューニングのノウハウをGPUコンピューティングに応用し、全体のシステム構築を担当。日本HPでは、3GPU搭載で豊富な通信帯域を確保したスケールアウトコンピューティング専用サーバーを開発するとともに、熱効率、電力効率の実現に取り組んだという。

東京工業大学 学術国際情報センター 副センター長の青木尊之教授

 東京工業大学 学術国際情報センター 副センター長の青木尊之教授は、「TSUBAME2.0は、大学の限られた電源、スペース、コストの中で、世界トップレベルのスパコンを目指すという高い目標を掲げたプロジェクトだったが、NECのシステムインテグレーションと日本HPのハードウェアが一体化したことで、スムーズに実現することができた。10月に導入が終わり、11月から本格稼働を開始するが、このシステム導入の成功を機に、日本のGPUコンピューティングをさらに活性化させたい」と語っている。

 今回の協業では、こうした「TSUBAME2.0」のシステム構築で得られたノウハウをもとに、NECが持つHPC分野での多くの実績に基づくシステムインテグレーション、およびアプリケーションの性能チューニングと、日本HPのスケールアウト型サーバー新モデル「SL390s G7」を組み合わせ、HPC向けGPUソリューションとして提供する。

NECと日本HPの協業内容NECと日本HPとの協業フレームワーク

 NECの久光氏は、「当社がシステムインテグレータとなり、日本HPからサーバー製品の供給を受けてソリューション展開していく。現在、販社との連携強化を進めており、今後は直販だけでなく、販社にも当社のノウハウを含めたトータルソリューションの提供を支援してもらう」との考えを示した。また、日本HPの林氏は、「TSUBAME2.0導入の経験と知識をもとに、両社の強みを生かすことで、最先端のGPUコンピューティングを、大学や研究・開発分野に向けて、より広く浸透させていきたい」と、今回の協業への意気込みを述べた。

NECのGPUコンピューティングソリューション

 具体的に、NECが提供するGPUコンピューティングソリューションメニューは、(1)CUDA化コンサルティング、(2)CUDA化支援、(3)CUDAコード高速化、(4)導入時トレーニング、(5)導入後問い合わせ――の5つ。

 「CUDA化コンサルティング」は、顧客のプログラムをGPU上に搭載した際の、性能向上の可能性を評価するプログラム分析サービス。価格は、コンサルティングが1時間3万5000円から、コード分析が1週間10万円から。

 「CUDA化支援」は、GPU導入の顧客がもっているプログラムをGPU上で稼動させるための移植作業の支援サービス。価格は、コンサルティングの結果により個別見積り。

 「CUDAコード高速化」は、GPU上で稼動するプログラムが顧客が期待されている性能向上が得られない場合の、コードのチューニングや、GPU上でのプログラム適用方法の変更などのサービス。価格は、コンサルティングの結果により個別見積もり。

 「導入時トレーニング」では、GPUコンピューティングを導入した顧客への、講習会の開催やCUDA利用トレーニングを行う。価格は、半日コースが30万円から、1日コースが50万円から。

 「導入後問い合わせ」では、GPUコンピューティングを導入した顧客向けの、常時問い合わせ、窓口による問い合わせなどへの対応サービスを提供する。

「HP ProLiant s6500シャーシ」と「HP ProLiant SL390s G7」2Uサイズモデル「HP ProLiant SL390s G7」1Uサイズモデル

 また、日本HPでは、今回の協業に併せてスケールアウト型サーバーの新モデル「SL390s G7」を販売開始する。「SL390s G7」は、標準19インチラックに搭載可能で、物理的に独立した最大8台のノードを実装できる新筺体「HP ProLiant s6500シャーシ(以下、s6500)」に対応したサーバートレイ。1Uサイズと2Uサイズの2モデルをラインアップする。特に2Uサイズモデルは、2Uハーフワイドトレイに最大3GPUを搭載し、それぞれに広帯域PCIバスを提供する高バンド幅サーバーとなっている。価格は、1Uサイズが28万3500円、2Uサイズが28万5600円。

 筺体となる「s6500」は、8つのホットプラグ冗長ファン、最大4つのホットプラグ高効率電源モジュールを搭載し、最大8ノードで電源、ファンを共有することで、電力供給効率および冷却効率の最大化を実現。また、前面ケーブリングを採用しており、メンテナンス作業の負荷軽減を図ることができる。価格は21万4200円。

「HP Tesla M2050 GPUモジュール」

 このほか、「HP Tesla GPUモジュール」の新製品も同時発売する。モジュール自体にファンを搭載せず、サーバー側のファンで冷却するのが特徴。価格は、「HP Tesla M1060」(4GB)が27万5100円、「HP Tesla M2050」(3GB)が30万9750円、「HP Tesla M2070」(6GB)が49万8750円。

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