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私たちプロは、学生に何を説くべきか。

2012年07月10日 01:16

ちょいとえらそうなタイトルですがそんな大層な事を言うつもりはありません。
でも、久々にまじめな日記を書いてみたいと思います。

先日取材を受け、CGWORLD Entryという学生向けのフリー雑誌でインタビューを掲載してもらいました。
cgwfp

http://cgworld.jp/information/cgw-entry.html
(最近たくさんCGWORLDさんに載せてもらってありがとうございます)

学生さん向けの雑誌で、これから業界に入るためのイロハを説いたものです。


私は学生時代から、CG業界のここだけは好きになれないという部分があります。
それは、プロが学生に対して厳しさばかりを説くところです。
専門学校で受けた数多くの講演会。プロの方のブログやSNS。私たちが学生のころから
「プロの現場をなめるな」
「厳しい業界なのに君たちに耐えられるの?」
「そんなレベルで通用すると思うな」

など、学生に対して不安をあおる事を説くプロが多かった記憶があります。
(もちろん例外もありますが)

私はCGをはじめて9年。プロの現場に身をおいて7年になります。
キャンキャン吠えているだけの若人だった時代もありますが、今はそれなりの人数の部下を預かり、リードやディレクターという肩書きを背負いながら仕事をする立場にいます。

そんな中、チームをより上手くまわせるリーダーとそうでないリーダーがいるという当たり前の事に気がつきました。
私は22歳の頃から映画のリードモデラーとして人の上に立っていましたが、ホッタラケをやっていた当時は他にやる人がいなかったからという理由意外、とてもリーダーとは呼べない仕事ぶりだったと思います。
最初にいた組織に対するプライドが前に出すぎて、他の人が上げてきた物をあたまごなしに否定する事しかしていなかったからです。
その後いくつかのプロジェクトでリードモデラーやディレクターという立場で仕事をしていくうちに、「上手く行くときのパターン」というものに気がつきました。
それはすごく単純なもので
・希望を説くリーダーには人がついてくる
・否定ばかりするリーダーには人がついてこない

というものです。

当然のように聞こえるかもしれませんが、現場でリアルにこれを体感するまでに私は5年近くかかりました。
私にとって最近の代表作となる「スマイルプリキュア」のエンディング映像ですが、この作品は本当に上手く回せたと思います。
まず、私もスタッフも作品自体が大好きだった事。そして、私自身が参加してくれたスタッフを信頼していたことなどが理由なんじゃないかと思います。
そのため、表現面に関する切磋琢磨はありましたが特に大きな衝突もなく、作品を作り終えることができました。
振り返ってみると、とにかく製作中楽しくて夢中になっていてスタッフと「こんなことやりたいんだ!」と前向きに取り組んでいたのを思い出します。

そういう経験もあり、現在進行中の大規模プロジェクトでは、自分のチームで働いてくれているスタッフの希望はできるだけ聞いてあげたいし、可能な限りモチベーション重視で仕事をしてほしいと思い動いています。
自分の下についてくれている人間に紳士に向き合えば必ず答えてくれますし、実際それなりにチームは上手くいっていると感じています。
社会人なので折れ合い譲り合いは必要ですが、どうせやるなら楽しくやってほしいんです。



・・・というようなあれこれを踏まえ、これから業界に入ろうとしている人間に対しても、私はできるだけ希望を説きたいのです。
CGをはじめた当初の学生時代、誰かに評価されるなんて事は気にも止めず夢中になって取り組んでいました。
自分の作りたいものがヴィジュアライゼーションされるという快感が、何より楽しかったからです。
社会人として好きなものばかりは作っていられませんが、みんなその中でやりきれない思いとたまらない楽しさを共存させて働いているはずです。というか、そう思いたいです。
上手くいかない時はやりきれない思いばかりが前に出て楽しさが見えにくくなっていますが、必ず希望の光はあるんです。

だから、いまから業界に入ってくる・目指す学生さんたちは「つらい面」よりも「楽しい面」に目を向ける習慣をつけてほしいんです。
そのためにも、業界の先輩である私たちプロがネガティブな事ばかりを学生たちに吹きこむのはあまり好きになれません。

ゲーム・アニメ・映画。子供の頃こんな言葉を聞くだけでワクワクしていたはず。
今それを仕事にしてるんですよ?
そう考えるだけで私は幸せだと思います。




CGWORLD Entryのインタビューでは、社会人としての心構え的な部分では厳しい事を書きましたが制作に対する心構えでは希望を説いたつもりです。
他の記事も読みましたが、自分の学生時代にこういうのがあったら!と思うほど良い本でした。
こういうのがもっと続いてくれるといいですね。


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