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中国の飲料・王老吉はどのようにして6年間で売上げを60倍にしたのか?

中国には王老吉という飲料があります。いまでこそ、中国全土で120億元(2008年の時点)を売り上げる大ヒット商品となっていますが、2002年の時点では、その売上げはわずか1.8億元でした。

では、なぜ王老吉はたった六年で、売上げを60倍以上にすることができたのでしょうか。
そのヒミツをご紹介します。

wanlao.jpg

<背景>
2002年まで、王老吉は広東地区と浙南地区を中心に販売を行っていました。この二つのエリアでは知名度が高く、売上げも安定していました。
もともとこのエリアには、“涼茶”というものが古くから存在しました。“涼茶”とは、身体の熱を冷まし炎症を抑える薬用茶のことです。
王老吉は170年の歴史をもつ“涼茶”の老舗として、広東、浙南地区において確固たる地位を築いていました。
売上げは安定しており、2002年まで数年連続で1億元を超える売上げを維持していましたが、更に売上げを伸ばすため、経営陣は全国展開を決断します。

しかし、全国展開にあたり、王老吉は次の問題に直面します。

<直面した問題>
1.「薬」とも「飲料」とも言えない不明確な商品コンセプト
  王老吉を伝統的な薬として売り出すと、日常的に飲まれない分、売上げが限定されます。
そのため、王老吉は甘みを増して、比較的飲みやすい飲料として売り出しましたが、苦味がない分、薬としての効果を疑われてしまいます。
結果、商品コンセプトが不明確となり、消費者の「なぜ王老吉を買わなければいけないのか」という問いに答えることができなくなりました。

2.ニーズが存在しないこと
  広東と浙南以外の地区には涼茶を飲む習慣が存在しませんでした。そのため、薬として涼茶を全国で売り出すことは困難でした。
  
3.強力なライバルの存在
  飲料として全国展開する場合、コカコーラやペプシの炭酸飲料や清涼飲料、康師傅や統一の茶系飲料を相手にしなければなりません。
さらに、飲料として売り出した場合、漢方薬の味が障害になって消費者に受け入れられないことも懸念されました。


<問題解決の糸口>
  上記の問題を解決するため、王老吉はブランド・リポジショニングに重点を置いた戦略を展開することとなります。

 ブランドの再ポジショニングにあたり、王老吉は下記の点に注意を払いました。

1.ブランド構築はすでに存在する消費者ニーズの上に築くこと。
2.既存の消費者が王老吉に対してすでに持っているイメージをひっくり返すようなことはしないこと
3.独自の強みの上にブランドを築くこと
4.競合と衝突しない市場をみつけること


上記の条件を満たす市場を見つけ出すため、王老吉は市場調査を開始します。そして調査の結果、下記の点に気づきます。

1.広東の消費者は焼肉や登山の際に“のぼせや口内炎などの予防”として王老吉を飲む。
2.浙南では子供からお年寄りまで、のぼせや炎症防止のために飲む。

以上の調査結果から、広東、浙南の消費者が王老吉を飲む動機は“のぼせや炎症の治療”にあるのではなく“予防”にあると分析。そこで、王老吉は自身のポジショニングを“のぼせや炎症を予防できる機能性飲料”とします。

“のぼせや炎症を予防できる機能性飲料”という市場は、コカコーラやペプシ、統一といった競合が攻めていない市場であったため、王老吉は戦わずしてナンバーワンの地位を獲得することが出来るわけです。

さらに市場調査をすすめた結果、広東と浙南以外の地域には“涼茶を飲む”という習慣がない(つまりニーズがない)ものの、“上火(中国語で“のぼせや炎症”の意味)という概念があることが分かりました。
そこで、全国エリアには存在しない“涼茶”というキーワードを普及させようとするのではなく、すでに全国エリアで浸透している“上火”というキーワードを軸に、全国展開を図ることにしました。

その後、王老吉は“上火が恐ければ、王老吉を飲もう”というキャッチコピーを軸に、大々的な広告展開を行い、短期間での中国全土での普及に成功しています。


この事例のポイントはやはり、「ポジショニング」に尽きると思います。より多くの人に受け入れてもらえ、なおかつライバルが攻め込んでいない市場を見つけ出せたことが、勝因であるように思います。

「王老吉」日本語ウェブサイト
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上海もも

Author:上海もも
上海9年目です。
中国の市場開拓に関する仕事をしています。
妻は上海人。いろいろな意味で最強(!?)です。

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