コアな人気を誇るインストバンド、SAKEROCKのリーダーでありギタリスト、また大人計画に所属する俳優でもある星野源による2011年発表の2ndアルバム「エピソード」。
デビューアルバム「ばかのうた」は、一気にシーンに星野源をシンガーソングライターとしての才能を認知させた名盤でした。そしてそれに続くシングル「くだらないの中に」で純粋なラブソングを描きファン層を拡大しました。次は方向性を変えてくるのか、どんな音源が出るのか楽しみにしていたのですが、デビューアルバムの方向性のままで更にスケールアップすることなくw、彼の日常を淡々と切り取る視点はそのままで良い意味で前に進んでいます。また、デビューアルバム以上に彼の歌が中心に置かれています。彼を支えるバンドもほぼ同じメンバーでドラムの伊藤大地を筆頭に良い演奏してます。
営業マンの視点にたった軽快なシンセのリフが面白いポップス♯7「営業」、大切な人の墓参りの風景を描いた♯8「ステップ」、老夫婦の喧嘩をコミカルに描いた♯10「喧嘩」、日常の大切さを改めて歌い直した彼のテーマソングのような♯12「日常」と相変わらずバラエティに富んでいます。また、歌詞の世界観もただの男女のラブソングに収まっている曲は少ないのはデビューアルバムから同じです。いつも日常の裏に死の匂いを感じるのは、彼が根暗だからだと思います(笑)それが説得力を裏付けているのですが。今の日本の音楽シーンではここまでマイナーなことをメジャーシーンでやってしまうのは、そして小手先のテクニックに逃れるのではなく、ここまでストレートに「歌」を届けられるのは星野源ぐらいでしょう。俳優、インストバンドとその他にもフィールドがあることが、より彼を自由にさせているように思います。また、それにより音楽ファンから色眼鏡で見られることは避けられないのですが、その距離感が絶妙なように思います。
「予想もできない日々が 僕をただ 運んでいく」(♯13「予想」)
押し付けがましいラブソングになるのではなく、物語をそのまま綴ることにより、伝えたい感情を聴き手にじわじわと浸透させる。また、震災以降の景色をここまで軽やかに描いたミュージシャンは今のところいないんじゃないかと思います。大上段から構える人、愛や命の大切さを説く人、同情する人、絶望する人、様々な曲があの震災以降生まれたのに、明らかにその傷跡を感じさせる過剰な表現が多かったです。あそこで失われたのは「日常」、だからその「日常」の大切さ、また「日常」に戻すための物語を淡々と紡ぐ。本作「エピソード」は、13話の物語が連なるジワジワとくるスルメ盤です。
「さよならは 誰にでも 今日も生まれる未来」(♯9「未来」)
ベストトラック:♯12「日常」
オススメ度:★★★★☆
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