語い学習について(1)
ELEC 夏の講義 岡田順子先生の 語い指導
○Nationによれば,First 2000 frequency Wordsはできるだけ早く覚えるべきである。このレベルの語いがないと,あらゆる活動に支障をきたす。
○多読では,1000語読んで,覚えるのは15語程度とも言われており3000語覚おえるのには20万語読む必要があると言われています。一方,意識的な単語学習の場合,「7回」異なる文脈で出会わないと覚えないとも言われている。意識した単語学習と,多読などで繰り返し異なる文脈で出会う経験を重ねる,単語学習の組み合わせが必要です。
○Aitchsonという方は,Semantic Mapping (意味のマッピング)を提唱していま
す。たとえば,hugeという語を学ばせたい時,紙の中央に,hugeと書き,そこか
ら四方八方へ,線を延ばし, hugeと関連がある言葉を書いていきます。
huge----- (elephant)連想語・コロケーション
----- (big) 同位語
----- (small) 反意語
................ 例文
「意味の連結」をさせながら覚えるとよいということです。この場合,huge以外の単語は,すべて定着していることが前提。脳は語いをばらばらに格納しているのではなく,結びつきの強い語句同士を結びつけて覚えている。他の単語の助けをかりることで「忘れにくくなる」。
○Craik and Tuluing は「深い処理」論を提唱。脳が深い処理をする単語は定着しやすいという理論。たとえば,「Vessel」が海をすすんでいるイメージを頭に思い浮かべながら10回書いてみると,日本語の意味を考えながら書くより「時間がかかった」そうです。つまりイメージ化することで脳が「深い処理」をしたというのです。発音しながら書くと脳が深い処理をしない。日本語でなく,イメージを思い浮かべならが書く方が脳が深い処理をし,よく覚える。抽象語は具象語より難しいが,なんらかのイメージを頭に浮かべることで,定着しやすいとのこと。(たとえば,strictなら厳格な父親を思い浮かべるとよいかも。)
○また英語教師はよく単語本を生徒に覚えさせようとします。しかし,Laufer and Hulstijnは,そんなやり方に警鐘を鳴らすかもしれません。彼らは Involvement Load Hypothesisを提唱。これは「深い処理」に関するさらに詳細な研究で,
Need / Search / Evaluation
の3つが「より深い処理」を促すと考える理論です。
Need ・・「覚えなさい」と言われた単語より,自ら「知りたい」と思った単語は覚えやすい。
Search・・知りたいと思った単語を自分で調べること。
Evaluation・・文脈から最適な訳を選択すること。
この理論からすると,「ターゲット」等の単語帳を覚えることは,「先生に覚えろと言われた」のでNo Need,(成績にかかわるなら moderate needか) 意味の推測もしていないのでNo Evaluation, 辞書も引かないので,No search ということになります。この理論からすれば最悪な覚え方ということになります。覚えたつもりでも忘却率が高いということでしょう。
ここまでのことをまとめますと
- 生徒には文脈から意味を推測させよ。(深い処理Evaluation)
- 辞書等で「確かめる機会」を持たせよ。(深い処理Search)
- いくつかの関連情報(反意語,同意語,コロケーション,例文)を一緒に 覚えさせよ。(Semantic Mapping)
- イメージを思い浮かべさせて単語を書かせよ。
ということになります。ベネッセ(進研模試)の分析会などで話を聞いても,最近は単語帳を使わせている学校の話はあまり聞きません。「教科書や副教材の単語を覚えさせよう」という流れが強まっているそうです。これなら定期考査にも出ます。Needがなければ生徒は覚えようとはしないわけです。
達人セミナーで山形県立長井高等学校の布川裕行先生の発
表をみる機会がありましたが,同校では,JACET8000 を
ベースにし,それを最も高い確率でカバーしている教科書
を選び出しました。これは新出語句数でももっとも数の多
い教科書でもありました。その教科書の単語を週3回の
Readingの頭十分ほどでトレーニングしているそうです。布
川先生の実践は,達人セミナーでDVDになっていました
ので,そちらをどうぞ。
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