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ITの観点から見たDXの「あるべき姿」/ビジネスをITの制約から解放すること

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このリストは、現在提供されているセキュリティ対策のためのソフトウエア・パッケージやサービスを列挙したものです。実に沢山あります。そこで質問です。

「なぜこれほど沢山のセキュリティ対策製品が存在するのでしょうか?」

答えは次のとおりです。

「現状を変えないままで求められるセキュリティ対策を実現しようとするから。」

ITシステムに関わる製品やサービスを利用するには、次の2つの方法があります。

  • 現状の仕組みを変えることなく、それ合わせた製品やサービスを選択して利用する
  • 製品やサービスの考え方/思想を反映して仕組みを変える

前者は、言わば対処療法です。風邪を引いて、咳が出るから咳止めを飲み、熱が出るから解熱剤を飲み、頭が痛いので鎮痛剤を飲む。そうやって沢山の薬を飲み、薬でお腹いっぱいです。何よりもお金がかかります。

こんなことにならないためには、どうすればいいでしょうか。答えは、「風邪を引かない健康な身体になる」ことです。健康に配慮した食事、毎日の運動や健康管理、定期的な健康診断などをこころがけることです。これが後者のやり方です。つまり、セキュリティ・リスクを排除できるITシステム・アーキテクチャーにしておけば、最低限の対策で、つまり、低コストで確実な対策が実現します。ゼロトラスト・アーキテクチャーは、そんな考え方を実現する考え方です。

セキュリティ対策に限りません。ITシステムとは、本来、業務やビジネスの思想、それに基づき作られたプロセスがあり、それをうまくこなすために作られるものです。つまり、ビジネスが先にあり、ITシステムは、これに従って作られるのが、本来のあるべき姿です。

しかし、かつては、ITシステムを作るには、多大のコストや時間がかかることが、当然とされ、そうやって作ったITシステムは、資産計上されていました。そのため一度作ったシステムを容易に作り変えることはできませんでした。

経済産業省が、2018年に公表したDXレポート「2025年の崖」には、次のような記載があります。

「多くの企業で、1990年代から2000年代に構築したシステムがいまだに基盤となっており、老朽化・ブラックボックス化が進行。システムが複雑で変更が困難なため、新たなデジタル技術の導入を阻害している。」

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例えば、温泉が湧いたので、温泉旅館の「本館」を建てました。人気が出て宿泊客が増えたので「別館」を建てました。その後インバウンド需要に対応するために「新館」を建てました。今度は、温泉ブームでさらに宿泊客が増え「第2別館」を建てました。それらを渡り廊下でつなぎ、気がつけば巨大で複雑な旅館になっていたわけです。

第2別館の宿泊客は、迷路のような渡り廊下を迷いながら本館にやっとの思いでたどり着き温泉につかります。帰りもまた迷路を迷いながら自分の部屋に戻ることになり、戻る頃にはすっかり湯冷めしていたというような話しです。

このような事態を解消するには、モジュール化されたアダプティブ(環境や状況に柔軟に対応できる)ITシステム・アーキテクチャーに、「新しく作り変える」ことが不可避です。マイクロ・サービス・アーキテクチャーは、このような考え方を具現化しようとするものです。

そもそもソフトウェア資産は、それを廃棄しても産業廃棄物にはならず環境負荷はありません。ならば、必要であれば新規に作り、不要になれば廃棄すればいいわけです。これを可能にするには、アジャイル開発やDevOpsが必要です。それを支える技術として、コンテナ、サーバーレスを駆使し、インフラもまたクラウドを使えば、資産化することなく必要な機能や性能を経費として調達できます。

IaCInfrastructure as Code)やイミュータブル・インフラストラクチャー(Immutable Infrastructure)で運用すれば、ソフトウェアだけではなく、必要なインフラの機能・性能の新規や廃棄も容易に繰り返すことができるようになります。こうして、変更や変化に俊敏に対応できるITアーキテクチャーが実現します。

ウオーターフォール開発と固定化されたシステム資産を前提としたレガシーなITアーキテクチャーから、アジャイル開発やクラウドを前提としたモダンなITアーキテクチャーへの転換により、ビジネスをITの制約から解放することができるわけです。これもまた、ITの観点から見たDXの「あるべき姿」といえるでしょう。

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