4月23日、都庁にて私ども「『有害』コミック問題を考える会」のメンバーが初会合。

議員控え室などをまわり、情報収集したあとで向かったのは、
都庁舎35階にある「青少年治安対策本部」ッ!

え?マジで行くんですか?(・_・;

のぞきに行くだけですよね?
と金魚のフンみたいにくっついてた自分は思っていたのですが、
リーダーは当然のようにつかつかと中に入る。
オフィスは広いが、まぁ普通の会社とそれほど変わらない。
壁を背にした、櫻井青少年課長のご尊顔も拝見させていだきました。

さて、リーダー、職員さんをつかまえて、
「条例改正案について、疑問点があるので教えてください」
と名刺を渡して言う。
「あ…少々お待ち下さい…」
とあたふたとしたあと、
「アポなしなので会議室はとれませんが…」
と、小さなパティションに場所をとってくれました。

こちらの人数は7人。それに対して1人の職員さんがお時間をとってくださいました。

さて、まな板にのせたのは
「条例改正案のポイント」として都議に配布された資料。
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/pointo1.pdf

この1ページ目の図の説明をお願いしました。

「ここに書いてある図が全く理解できないんです。説明していただけませんか」

というこちらの問いに対して、

「これはゾーニングの基準を変えるということです」

という内容の返答。
それに対してこちらが食いついたのは、

「それって、現行の条例で充分なんじゃないですか?」

「従来の規制によるゾーニングでは適応できない、青少年に見せるにはあまりにもおぞましい漫画が青少年の手の届く普通の棚に置かれるようになりました。そうした図書に対しては、従来の条例では成人のコーナーにもっていく事ができなかったんです。この条例はそうしたものも対象にするための改正です 」

(ここで、「じゃ、具体的にどんな作品なんですか?」と訊けばよかったのですが…反省。)

「『おぞましい』ってどういうことですか?誰がそんな基準を決めるんですか?」

「私どもはゾーニングされていない棚の漫画をしっかりチェックしています。その中には、幼女をレイプしたり、輪姦したり、画面に体液が夥しく描かれていたり、激しい擬音が書き込まれていたり、とても子供が見るようなものでものでない描写があるんです。これはやはりゾーニングすべきだと考えるんですけど、現行の条例ではできないんです」

「で、決めるのは誰なんですか?」

「業界さんを含めた青少年健全育成審議会が月1回開かれています。そこで慎重に検討いたします」

「七条二項の『みだりに性的対象として肯定的に描写することにより』…これ、どういう意味ですかね?」

「それは今言ったような、まだ幼い子供をレイプしたりする行為が、子供達に対してさもいい事だ、問題ないことだというような印象をあたえ、そのような行為を助長させてしまうような描写を言っています」

「でも…それは、単純に絵の中では決められませんよね。同じ絵が、ストーリー上、全然違う意味を持つ場合もある。」

「それはちゃんと判断しています。」

「つまり、肯定的かどうかということは、単に絵の表現どうのこうのでなく、文脈の中でその絵がどういう意味を持つかで判断しているということですか?」

「はい、文脈で判断しています」

「連載中の作品についてはどうですか?その絵が作品の中で持つ意味なんて、終わってみなければ分からない場合もありますよね」

「はい。ですから作品が完結するまでは判断はしません」

「あれ?じゃあ、猪瀬副知事はテレビに出演していて、あなたの今の発言からはあきらかにOKだと思われる作品を振り回して、『こんなのが出回ってるんですよ、こんなのが!』と言って、この条例のキャンペーンをしてたんですけど、それってあなたの今おっしゃった事と違うこと言ってません?」
「しかもあの漫画は既に絶版になってるんですよ」

「……あの、誤解しないでいただきたいんですけど、これは規制ではないんです。あくまで業界さんにそういう努力をしていただくということで…」

「猪瀬副知事は『これはエロ規制じゃない、ロリ規制だ』っておっしゃってましたけど。ツイッターで」

ツイッターですよね、それ?!ツイッターはあくまでツイッターで…」
(たんなるつぶやきであり、公式な見解ではないと言いたいのだろう)


「まぁ、いずれにせよ、非常に多くの人々が関心を持っているこの件について、東京都の見解がこうも違うというのはどうかと思うんですが」

「あの…言っておきますが、私は職員の下っ端のペーペーです。私が何と言おうと、副知事が何と言われようと、結局、条文が都の見解のすべてです。条文がすべてなんです」

「副知事は条文読んでないんじゃないですか?」

「読まれてます。副知事は読まれてます」

「読んでるようには思えないんだけどなぁ」

「説明はいたしました」

「都知事も読んでないんじゃないですか?」

「そんなはずありません。読まれてます」

「精読してないって…」

「私どもはレクチャーいたしました」
(…寝てたんじゃないのか…)

また話は表現に戻って、今度はBL作家さんからの発言。
「しかし、その絵が肯定的か否定的かっていうのは…そういう絵が逆に救いになっている場合もあると思うんです」

「こういう作品をあなたは、小学生や中学生に見せたいと思いますか?」
(おっと…「高校生」が脱けたぞ…)

「例えば、すごくトラウマを抱えていて、そういう幻想が癒すっていうことも考えられると思います。それを一概に描くなっていうのはちょっと…」

「あの、誤解していただきたくないのは、『描くな』とは一言も言っていないんですよ。あくまで業界さんにそういうご理解をいただいて、努力していただく。努力義務なんですよ、これは」
…つまり、憲法に保障された人権の侵害はしていないと。

「努力しなかった場合は?」

「努力しなかったからといって、一切の罰則などはありません」

「でもまぁ、出版がその義務に従ったら、実質、描けないのと同じことですね」

「……」

話が長くなってきましたし、一介の担当者さんからはいくら伺っても、「公式見解」がでるわけでもなんでもないですから、そろそろおいとますることにしました。
しか、最後にこう言うのは忘れませんでした。
「ほんとにいろいろな事をご説明いただきましたけど、あの条文ではあなたの言っていることは一切保証されませんね

…結局、条文がすべてなんでしょ。

アポなし突撃のあらましはこんなところです。
ぼくの記憶で書いたので、他の方の発言はちょっとスキップしてしまいましたが…。(すみません)

それにしても、職員さんが7人もの相手を1人でしっかり対応されていたのはほとほと感心しました。
かなり有能な方ですね。
少なくとも、アポなしでこれぐらいのことは訊けるという事がわかっただけで大収穫です。

また、条例の担当局と上層部の猪瀬副知事との言い分はもう全然かみ合ってなくて、都側は gdgd になってるらしい、という感触も収穫といえば収穫です。

あと、これは有力情報です。
都から都議員さんに説明した際に「条例改正案のポイント」と共に、ほぼ上記の内容の説明がされたであろう、ということ。
このように口頭で説明されると、
「はーん、なるほど。じゃあ、問題ないじゃないか」( ̄。 ̄)

と納得してしまう議員さんもいたのではないかと思います。
議員さんに陳情する際には、それも念頭に入れた方がいいですね。


今回はコミック中心の内容でしたが、ネット規制に関しては詳しい内容を訊けませんでした。
もの足りない、という方、直接出向かれて質問されることをおすすめします。
複数で行かれるときは、何か団体名を名乗った方がいいと思います。
職員さんはなかなか優秀ですので、理論武装もきちんとされていくこと。
礼儀正しく質問すれば、きちんと対応してくれるはずです。
予めアポをとれば、櫻井課長のお話しも聞けるかもしれません。

問い合わせ先もちゃんと正規の文章にのってますし。

青少年・治安対策本部総合対策部青少年課
電話 03-5388-3186

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さて、帰り道に上記の都の説明に対して、どのあたりを突くべきか、いろいろ考えてみました。

(1) まず、現行の条例では本当に適応できないものが存在するのか、ということ。
これは具体的作品を聞き忘れたのでなんとも判断しがたい。

現行の条例;
第7条 図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない。

職員さんの言っていた
「幼女をレイプしたり、輪姦したり、画面に体液が夥しく描かれていたり、激しい擬音が書き込まれていたり、とても子供が見るようなものでものでない描写」
はこれで充分にカバーできるのではないか?

改正案7条2項の「非実在青少年」の定義云々を加えないと、
「今までゾーニング対象したくてもできなかった作品」
を新たに対象にできる、という論理には全く納得できないです。


(2) 次に、図書が条例に抵触するかどうかを検討する
「業界さんを含めた青少年健全育成審議会委員会」
はさも中立的な立場にように聞こえたのですが、その保証は全くありません。


(3) 次に、この条例の規定は「努力義務」であり、自主規制に委ねられるということですが、例えば仮に、こんな状況を考えてみたいと思います。

日本がある国(仮にA国としておきます)と非常に非友好的な関係になり、国内にも反A国感情が蔓延していたとします。
そんな状況で、仮にあるマンガ家がA国人の男性が日本人の少女に無理やり性関係を結ぼうとするシーンを描いたとします。
ところが、このマンガをその委員会が「A国人が危険であることを子供達にも知らしめる必要がある」と考え、ゾーニングの対象から外し、青少年でも閲覧可能にしたとします。
もちろん、世論を煽り、反A国感情を高めるためです。

一方、別のマンガ家が全く同じ状況で、日本人男性がA国人の少女に無理やり性関係を結ぼうとするシーンを描いたとします。
するとその委員会は「こんなマンガを描くなど青少年に悪影響を与えるではないか」と、ゾーニングし、そればかりかそのマンガ家の過去の作品もすべてどこかしらに何癖をつけてゾーニング対象にしてしまう。
それが「努力義務」であったとしても、世論が反A国の気運が盛り上がっているなか、「努力義務の放棄」という負い目を負ってまで出版することなんて誰もできませんよ。

この条例が通ると、時勢によってはそんな事態もおきかねないわけです。

いや、条例が通ると今でも充分に起きうることです。

なんせ都知事が石原慎太郎というレイシストなのですから。