2012年09月25日

背景:
神経細胞は生物の行動や感覚のすべてを司っているため、個々の働きやそれぞれの相互作用を理解することで、生物全体を理解することにも繋がっていく。また原始的な神経細胞は多くの生物で共有しているため、線虫のように単純な神経系を持つ動物がモデル生物として研究されている。

要約:
線虫は302という少ない神経細胞と単純な構造を持ちよく研究されているため、モデル生物として利用されている。この度、ハワード・ヒューズ医学研究所のSharad Ramanathan博士らが、線虫の行動を光でコントロールすることに成功した。

Ramanathan博士によると、もし線虫のような単純な神経系を持つ動物を完全にコントロールすることができたら、より複雑な神経系を理解することに繋がっていくだろう。今回のような研究によって、どのように神経回路を操作することができるのか、どの回路の操作でどのような行動に繋がるのかという基本的な構造を知ることができるという。

神経系の研究では、それぞれの神経細胞を取り除いたり遺伝的に不能にしたりと、神経細胞の機能を破壊することで行われていた。そこで彼らは神経系の破壊を伴わないで、そのコントロールを行うことができるのか、またそれによって動物を思い通りにコントロールすることができるのかどうかという研究を行った。

彼らはまず線虫の神経細胞を蛍光を発するように操作することで、実験中にそれぞれを確認できるようにし、また神経細胞を光に敏感にすることで、レーザー光によって活性化させられるように操作した。

この実験で最も困難を伴ったのはハードウェアの開発であり、動き回る線虫を追跡し目的の神経細胞に正確に光を当てなければならなかった。そこでは 50分の1秒の間に、線虫の画像を得、それを処理し、神経細胞を特定し、線虫を追跡し、レーザー光の照準を定めて光を当てなければならなかった。

これらは動き回る線虫を常にカメラとレーザーの下へ位置するように稼動するテーブルと、特別に設計されたコンピューターとソフトウェアによって可能とされた。その結果、彼らは線虫の行動をコントロールするだけでなく、その感覚までもコントロールすることで、まるでそこに餌があるかのように振舞わせ ることも可能とした。

今回の研究では、線虫を左右に曲がらせたり円を描くように進ませることや、線虫の近くに餌があると思わせることに成功した。今後彼らは、ほかの行 動をコントロールしていき、また新たなカメラやコンピューターをデザインし、1000分の1秒で必要な動作を行えるように開発していくという。これらの開発が進めば、ゼブラフィッシュのように線虫より複雑な動物でも同様の実験を行うことができるようになるだろう。

補足:
以前にも光で線虫をコントロールするという実験がありました。興味がありましたらどうぞ。
小記事:マリオネット線虫

元記事:
Using Precisely-Targeted Lasers, Researchers Manipulate Neurons in Worms' Brains and Take Control of Their Behavior
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120924102658.htm

参照:
Askin Kocabas, Ching-Han Shen, Zengcai V. Guo, Sharad Ramanathan. Controlling interneuron activity in Caenorhabditis elegans to evoke chemotactic behaviour. Nature, 2012; DOI: 10.1038/nature11431

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