さて、溜まってるネタの大掃除を続けます。日付け的に前後してしまいますが、ご容赦下さい。

このブログでもお世話になっているニーマン・ラボが、ちょっと目を引く見出しをつけた記事を掲載しています。

「写真家は、如何にしてフェースブックを通じて10万ドル以上を稼いだか?」(How a photographer generated over $100,000 through Facebook)という見出しがそれ(2011年11月22日午後2時投稿)。

ドル安のご時世とはいえ、日本円で750万円超! こらごっつい額でんな。脇見出しが「カスタマーが広告主になる時、趣味がビジネスに」(When your customers are your advertisers, a hobby can become a business.)。しかも、元記者さんなんだって。おぉ、久しぶりの「新聞社辞めて、どうしてる」ネタやん!

これは訳さねばなりますまい(笑)。
私がクレイグ・フィンレーに、自分の結婚写真ビジネスをどうやってフェースブック上で大きな収入の手がかりにしたのか訊ねた時の事だ。彼は私の質問を途中で遮り、こう言った。「あれは収入の手がかりなんかじゃないよ」(“It’s not a major lead generator,” )。そう話す彼は、こう続けた「もう実質上のビジネスだね」(“It’s the entirety of the business.”)。

フィンレーの体験は、ソーシャル・マーケティングの力の素晴らしいケース・スタディだ。2010年頃までは、写真は趣味でしかなかった。

彼は都心の調査を熱心に実践していた。写真家として駆け出しの頃は~時として違法ではあったが~廃墟となった建物や都会の建築物やインテリアを撮影していた。2009年、私はフィンレーによる、そんな撮影旅行に同行した。10年以上も打ち捨てられたイリノイの小さな街に忍び込んだのだ。そこでの体験はシュールだった。そして私はフィンレーが部屋から部屋へと入念に動き、教室の様子をレンズに収めていくのを眺めていた。その教室ったら、まるで突然、嫌も応もなく生徒が避難してしまったかのようだった。地下室では数フィートの水が溜まっている中、吊された電灯が未だに着くのに気づいたりもした。「こういうビルにありがちなんだけど、売ろうとしたいが為に電気を切ってないんだよ」(“The thing about buildings like these, sometimes they want to sell them so they never disconnect them from the grid,”)。

「たまたま空き家でしかないんですって感じだよね」(“It’s just considered vacant of occupants.”)。

フィンレーはイリノイの小さな日刊紙で1年間記者として働いた。定期的に写真も撮っていた。その他の彼の趣味はといえば、金にはならず~むしろ金のかさむ試練となっていった。金になると気づかせてくれたのは妻のミッシーだ。彼女は2009年の初め頃、インディアナのブルーミントンから移り住んできた。「丁度カメラの用具を全部手入れしていながらミッシーと話していた時に、アイディアがポンと出たんだ」(“It grew out of a conversation I had with Mysi while I was just sort of going through and cleaning all of my camera gear,”)とフィンレーは振り返る。「用具をテーブルの上に置いてたら、彼女はカメラの用具一式に幾ら俺がつぎ込んでいるのか、ぼんやりと考えていたんだって。そこらに置いた用具に5000ドルほどかなと考えてたら、彼女が思いついたんだ。俺は気づかなかったけど、つぎ込んだ金のナンボかを取り戻せるかもしれないってね」(“I had it lying on the table and she just idly wondered how much money I had invested in all this camera gear. I think I had like $5,000 in gear just lying around, and she had the idea that, I don’t know, maybe we should start recouping some of those costs.”)。

結婚式の様子を収める事は、当然の選択だった。フィンレーはインディアナ大学の情報科学の博士課程に通っていた。そして結婚式の撮影はスケジュール上の問題とならなかった。式は週末に良く行われていたからだ。

もっとも、最初に撮影した結婚式は数少なく、金にもならなかった。フィンレーは友人の式の模様を無料で撮影し、結婚の贈り物とした。他のカップルの結婚式の撮影は、僅か200ドルにしかならなかった。しかし、後半になってレンズに収めたのはミッシーの母の友人の式の模様だった。その友人はたまたま美容師だったのだ。「それで分かったんだけどさ、もしアンタが結婚式のベンダーとして働いてだぜ、美容師の喜ぶような事をする機会に恵まれたらだよ、是非とも喜ばせなさいってんだ」(“It turns out if you ever work as a wedding vendor and have an opportunity to do a favor for a hairdresser, always do so,”)と彼は話していた。「それが配当になるって事なんだよ」(“It’ll pay dividends.”)。

というのもだ。式の写真は、突き詰めるなら実質的にクチコミで成り立つ仕事だからだ。1つの式が次の式に繋がり、そして更に別の式に繋がっていくのだ。フィンレーは徐々に数を増やし始めた。もっとも大半は、同じ付き合いの輪の中にいる友人向けに安くこなした。そうした式を全て変えたのは、レベッカという少女の写真を撮影した時の事だった。ミッシーが高校時代、一緒に通った娘である。「花嫁の付添人の全員が婚約しているか、もしくは婚約しそうな事が分かったんだよ」(“It turned out that all of her bridesmaids were engaged or about to get engaged,”)フィンレー。「そんな訳でレベッカの教えてくれた結婚式をゾロゾロと撮り始めた。そしてフェースブックでも同じ手法を取った」(“And so it started this whole chain of Rebecca-referred weddings. And that’s how this Facebook thing started, too.”)。

フィンレーが言う「このフェースブックでの事」(“this Facebook thing,”)というやり方は、殆ど思いつきの類のように見えた。彼とミッシーは、レベッカの写真を編集し、自分達が起業したソーダ・ファウンテン・フォトグラフィー社のフェースブックのページに幾つかを掲載する事にした。

一連の写真に2人は花嫁と花婿のタグを付け、残りのひとまとめの写真の編集に取りかかった。そこで面白い事が起きた。フェースブックのウォールに花嫁と花婿の写真を投稿すると、式に出席していた友人等が自分達自身でタグを付け始めたのだ。その結果、今度は友人等のウォールに写真が載るようになったのである。つまり、式に出ていた招待客全員がソーダ・ファウンテン・フォトグラフィーのコンテンツをプロモートしてくれたのだ~それぞれの写真は同社の透かし模様が入っており、招待客のソーシャル・グラフに載ったという訳なのだ。

「あっという間としか言い様が無いほどの速さで、クライアントがフェースブック上で生まれていった」(“Almost immediately, our clients were being generated on Facebook,”)とフィンレーは振り返る。「というのも、式でタグを付けられた人がいたし、結婚式の写真で幸運な事は、クライアントの友人は皆が狙う層の集まりだと思えるからだ。友人等は20代かそこらだし、婚約中か今から婚約するかって所だ。だから写真を撮ってフェースブックに投稿したらだよ。皆さんの花嫁と花婿のタグを付けてくれるんだ。何ていうかさぁ、アルバムに写っているのは多くが家族だけど、友人も沢山写っているよね。それに婚約している人ってさ、雑誌の綺麗な広告以上の相乗効果があるんだよ。お友達はフェースブック上に直ちに投稿された数十もの式の写真をクリックする訳だけど、自分たちは広告を見ているとは思ってない。彼らにしたら、ただ友人の結婚式の写真を見ているだけと思っているんだ。ところが、全ての写真には透かしのマークが入ってるし、見る度にそれが心に印象づけられるって訳なんだよ」(“Because there were the people in the wedding who were getting tagged, and I guess the fortunate thing about wedding photography is that the friends of your clients are the demographic you’re always trying to hit. They’re 20-somethings, and they’re either getting engaged or are engaged. So when you take photos and throw them up on Facebook, you tag the bride and the groom, and, yeah, a lot of people looking at the album are family members, but a lot of them are their friends too, and the people who are engaged really interact with your photography in a much deeper way than they could with just a pretty ad in a magazine. They’re clicking through dozens of photos that you immediately throw up on Facebook from the wedding and they don’t think they’re looking at an advertisement — they just think they’re looking at their friends’ wedding photos. But every photo has a watermark on it, so every time you look at it it’s like it’s being imprinted.”)。

結婚式毎に40枚から50枚の写真を「チラ見せ」(“sneak peek”)として投稿するのは、あっという間に標準の操作手順になっていった。もし式が土曜にあったのなら、2人は大急ぎで撮影した写真を早くも月曜には投稿する。この戦略の結果として、2人が受け取る、次なる式の撮影依頼は本当に圧倒されるまでの数だ。

一連の目も眩む体験から、2人は最初の戦術を少しだけ修正した。フェースブック上のチラ見せ写真を投稿し、花嫁と花婿のタグを付けた後、残りは好きなようにさせるようにしたのだ。「メールを開けたら、こう書かれている。『誰それさんは貴方の8枚の写真にタグを付けた』。そしたら、こう考えるだろう。『これって式の写真に違いない』。そして、楽しもうと見に行き、友人にタグをつけるって訳だ」(“You open up your email and it says, ‘So and so tagged eight photos of you,’ and you think, ‘those must be the pictures from the wedding.’ So you start going through it and tagging your friends.”)。

実際、フィンレーは言う。「フェースブック上では、実はこういう人達の代表者に俺たちと接触するには、タグを付けられた写真を見るようにって言ってるに等しいんだよ~ 俺たちが透かしの印を入れた写真を見てくれって事なんだ。~そして、そういう人達はあちこちをクリックするし、そこには我々の連絡先もあるって訳さ」(“Facebook is actually reaching out on our behalf to these people and telling them to look at the photo that they’ve been tagged on — a photo with our watermark — and then they can click around and the option to contact us is right there.”)。

まだ12月ではないけど、ソーダ・ファウンテン・フォトグラフィーは既に来年の結婚シーズンの予約が入っている。週末は全部で25だそうだ。需要が増えたので、価格も上げた。初期の頃は800ドル以下だったが、最近ではクライアントの大半が3500ドルのパッケージを選んでいくとフィンレーは言う。1年余りの間に、2人は趣味を数十万ドルのビジネスに仕立て上げたのだ。

こうした収入のほぼ全てが、フェースブックを通じてのものだ。余りに上手くいったので、フィンレーは未だに当惑しているようだ。「まるで誰かが、このプログラムを写真で儲ける為だけに作ってくれたような感じだよ」(“It’s as if someone designed a program solely for generating photography leads.”)。

(文中敬称略)

翻訳終わり。ちょっと砕けすぎた感じになってしまってすいません。

これ、透かしの技術さえ取得すれば(フォトショップとかだと直ぐか)、明日からでもソックリ使える手ですね!

新聞社勤めに嫌気のさした写真部員の皆様、皆様が一番PCの画像系アプリの操作に詳しいんですから、これを御参考になさってみては!?

※新聞メディア・ビジネスが今後どうなっていくか、海外の事例を交えながら講演したく思ってます。往復交通費プラス日当2万円から。ご興味のある方はこちらまで御連絡下さい

★追記(2011年11月27日午前5時39分)佐々木俊尚さんがRTなさって頂いた事もあって、本当に凄まじいアクセスとなりました。

週明けの有料メルマガ「UNA-DON」で、総括します。宜しくお願いします。

★追記(2011年11月28日午前11時29分)本日正午からUNA-DONを配信します。最初の1ヶ月間は無料。過去の記事も読めるようにしてます。正直、面白くないと思ったらお試し期間中に退会なさって頂いても構いません。これだけ読まれた中、メディア業界の関係者も多かろうと思います。そうした人に、少しでも参考になればと思っておりますので。