ハイ、なんだかんだ『ファイアーエムブレムエンゲージ』のプレイ時間が50時間を突破しました。いやあ戦闘は最高に楽しいですねえ。あと日本語テキスト英語音声でプレイしてるとめっちゃ表現の勉強になります。
さて、言語が違えば微妙な表現の変更は仕方ないところですけど、自分の見た中では地味にあちこち一貫して修正されているキャラがいて注目しちゃいました。
みんなが序盤に頼る壁、ルイさんです。
けっこう修正の方針が面白かったので、実例を引いて変更点をリストアップしてみます。グローバル化の著しいゲーム界において「大手が西洋で販売するにはどんな部分が修正対象になるのか」を理解するには良い教材だと思うんですよね。まあ、英語圏でFEをやるなら日本語のニュアンスをそのまま楽しみたい人もいるそうで、MOD(改造プログラム)をかまして自家製翻訳を表示するプレイヤーもいるそうです。
ちなみに記事の性質上「ルイのヤバい発言」を数多く取り上げることになりますが、ここに書いてない支援会話には良い内容も多いことはご承知おきください。
■日本語版ルイの設定
■戦闘中ボイス一覧:修正方針を確認しよう
■神竜との支援会話:まずいクセには釘をさせ!
■アイビーとの支援会話:女子vsストーカーでなく、姫vs従者へ
■最後に:ルイの良質な支援会話も紹介したい
さて、言語が違えば微妙な表現の変更は仕方ないところですけど、自分の見た中では地味にあちこち一貫して修正されているキャラがいて注目しちゃいました。
みんなが序盤に頼る壁、ルイさんです。
けっこう修正の方針が面白かったので、実例を引いて変更点をリストアップしてみます。グローバル化の著しいゲーム界において「大手が西洋で販売するにはどんな部分が修正対象になるのか」を理解するには良い教材だと思うんですよね。まあ、英語圏でFEをやるなら日本語のニュアンスをそのまま楽しみたい人もいるそうで、MOD(改造プログラム)をかまして自家製翻訳を表示するプレイヤーもいるそうです。
ちなみに記事の性質上「ルイのヤバい発言」を数多く取り上げることになりますが、ここに書いてない支援会話には良い内容も多いことはご承知おきください。
あと、内容に間違いがあれば指摘をしてもらえると嬉しい限りです。
だいたい以下のようなことを書いていきます。
■日本語版ルイの設定
■戦闘中ボイス一覧:修正方針を確認しよう
■神竜との支援会話:まずいクセには釘をさせ!
■アイビーとの支援会話:女子vsストーカーでなく、姫vs従者へ
■ロサードとの支援会話:見た目を評価する危うさについて
■クランとの支援会話:問題発言を転換する翻訳の技■最後に:ルイの良質な支援会話も紹介したい
■おまけ:ロイとの絆会話
いちおう折りたたんでおきます。続きは下の行から。
■日本語版ルイの設定について
■戦闘中ボイス一覧:わかりやすい修正方針
[日]-------
己の欲望を満たそうと強引に進めるその度胸…嫌いではないわ。
[英]
Your dedication to your goals, off-putting as they may be, is impressive.
目的が不愉快ではあるけど、実現しようとする熱意は見上げたものね。
-------
英語版では神竜だけでなく、アイビーもしっかり「不愉快」と釘を差します。いっぽう「欲望」の代わりに「熱意、献身」を意味する単語が使われているのがおもしろいです。「欲望に忠実」というのは日本のネットスラングっぽい表現ですから、騎士らしい言い回しに変えたのかもしれません。
支援会話Aでその熱意が実ってアイビーが笑顔を見せると、ルイはあわてふためいてこう言います。
近年「ルッキズム」という言葉が知られるようになってきました。「外見至上主義」とも呼ばれ、見た目で価値を決めつけることを意味します。だいたい「人間って見た目に引きずられがちだからこそ、見た目で判断するのをやめようね」という時に使われます。
もちろん、「かわいい」「かっこいい」と口にするのが絶対ダメというわけではありません。ルックス抜群の芸能人も、好きな人も、かわいいしかっこいい。ただしそこまで親しくもない人に使うのは危険ですし、状況によってはハラスメントになり得ますし、「かわいい」「かっこいい」以外の価値で人をほめる語彙は多いほうがいい。
それを念頭に置いて、日本語版の支援会話を見てみましょう。
[日]-------
ルイ:
先ほど、ロサードさんがお話をしてきゃぴきゃぴしている姿をじっと眺めていました。最高でしたね。
ロサード:
あはは! 冗談のつもりだったのにー! ルイは気持ちがいいくらい正直だねー! でもさー、ルイはかわいい女の子たちを遠くから眺めるのが好きなんだろー? オレは男だけどいいのー?
ルイ:
ええ、問題ありません。絶対的なかわいさの前では性別など大きな意味は持ちませんから。貴方は戯れてる可愛らしい子犬を見てその性別を気になさるのですか?
-------
なるほど、ネットスラングでいう「カワイイは正義」っていう話ですね。ロサードは「可愛らしい服を着るのが好き」と自分でも言っており、彼を「かわいい」と褒めるのは悪くないように思います。少なくとも自分はそう思ってました。いっぽう英語版はどうでしょうか。
[英]-------
-In every movement and speech, you are a fountain of energy. To my eye, it is sublime.
身こなしといい話し方といい、ロサードさんは活力の泉ですね。眼福です。
-Hahaha! I was teasing, but I love your honesty! I thought you were mainly interested in seeing people socialize, though. Is it the same thing to watch me without anyone else around?
あはは! 冗談のつもりだったのにー! ルイは気持ちがいいくらい正直だねー! でもさー、ルイは人の交流を眺めるのが好きだと思ってたよ。オレは今ひとりだし、周りに誰もいないけどいいのー?
-It’s not so different. Some people display boundless reserves of energy even when alone. When you spot a puppy gamboling in the road, is it a lesser sight for having no playmate?
ええ、問題ありません。ひとりであろうと尽きない元気を振りまける人ですから。貴方は道でひとり戯れている子犬を見て、遊び相手がいないから見栄えが悪いと思われるのですか?
-------
英語版のルイは「カワイイ」ではなく「エネルギッシュなところ」や「ひとりなのに大人数の交流と同じくらい魅力的なところ」、つまりロサードの内面性を称賛していますし、そもそも性別には言及すらしていません。こうやってみると日本語版が「かわいいのは本来なら女性の属性」「ロサードみたいにかわいいなら男でも許される」というふたつの偏見で成立していることがわかります。人間なかなかステレオタイプから自由になるのは難しい。
ちなみにロサードとメリンの「かわいいvsかっこいい」、セアダスとロサードの「美容」を主題にした英語版支援会話もあり、気をつけるべきは「かわいい」という表現そのものではなく、使い方だというのもわかります。気をつけつつ、次にいきましょう。
■クランとの支援会話:問題発言を転換する翻訳の技
女性のカップル妄想を好む日本語版ルイですが、支援会話によっては男性同士の関係に異様な興味を示します。2015年発売の『ファイアーエムブレムif』でエポニーヌが男性同士の隣接を見るとスキル「邪な妄想」で能力アップしていたので、男女平等の時代には同性愛妄想も男女平等ならOK、とライターさんが考えたのかもしれません。
しかしその『if』では同性愛者の女性ソレイユを「薬で治療して異性愛者にしよう」という支援会話が大問題になって、英語版ではソレイユ関連の支援会話がより同性愛者寄りに修正された経緯があり、『風花雪月』で同性愛が常識として描かれたのはその反省を活かした結果でもあると個人的に思っています。
【会話あらすじ】
主君であるフィレネ王子アルフレッドが少年クランをふたりきりの筋トレに誘ったと聞き、ルイはその意図を邪推し始める。やがて出した結論は……
【解説】
まずは支援会話Bの冒頭いってみましょう。ルイがひとりごとをつぶやいています。
[日]-------
ふむ…なるほどなるほど、やっと読めてきましたよ。クランさんは美形で、幼さの中にしっかり者の芯の強さが見て取れる…王子は恐らくそこに惹かれ、二人きりで会いたいと…筋肉鍛錬はあくまで口実。可能性としてなくはない。いい。いいです。王子とクランさん、ありです。
-------
妄想自体は表に出さない分には問題ありませんし、ファンフィクションとしては西洋でも大人気の分野です。が、いくらゲームでも「眼前の未成年と主君のカップリングを妄想のネタにする」のはまずいに決まってます。
■最後に:ルイの良質な支援会話も紹介したい
ルイの問題発言が多くなったので、フォローするためのステキな支援会話も最後に少しだけ紹介します。
まず、日本語版の設定をざっくり書き上げます。
兵種:アーマーナイト。力・守備・技が高く、速さ・魔防は低い
性格:紳士的で物腰柔らか
特技:おいしい紅茶を淹れること
好物:ブドウ
外見:いつも目を閉じた笑顔に見える
家族:父、4人兄弟の長男。母を早くに亡くし、弟の世話を見てきた
趣味:女性同士が仲良く会話している場面を遠くから眺めること
スキル:「花園の番人」。女性同士が近くで隣接していると能力が上がる
ネットミームに詳しい人はピンと来るかもしれませんが、「壁のシミになって百合カップルのイチャイチャを眺めたい」というネットスラングを体現したようなキャラです。「ゲームと現実を混同するんじゃない」「いやいやコンテンツが与える影響は馬鹿にできない」というのはTwitterで無限に続く争いですが、ここでは実際のゲーム中の翻訳を通じて「日本語版のどこが問題と判断されたっぽいか」を推測することにします。■戦闘中ボイス一覧:わかりやすい修正方針
まずは戦闘中ボイスを一気に見てみましょう。左からゲーム中日本語、英語版の和訳、ゲーム中英語です。スマホだと英語列が読みづらいかもしれませんのでPCレイアウトでご確認ください。
赤字は日本語と英語で大きく異なってる箇所です。なお、耳コピなので聞き間違いがあればご指摘をお願いします。「?」のついてるセリフは特に自信ないやつです。
項目 | 日本語 | 和訳 | 英語 |
Skill | 花園の番人 | 礼讃 | Admiration |
HP大 | お申し付けを | お申し付けを | Your orders, please. |
HP大 | 花園はどちらに? | こちらに控えております | I'm here to serve (?) |
HP大 | 悪くない気分です | 悪くない気分です | This isn't so bad. |
HP大 | 承知しました | 承知しました | Understood. |
HP大 | 行きましょう | 行きましょう | Let us be off. |
必殺 | ティータイムです! | ティータイムです! | It's tea time! |
必殺 | いい眺めです | いい眺めです | What a lovely scene! |
必殺 | 処分しましょう | 処分しましょう | I shall dispose of you. |
必殺 | 花園は守ります! | 終わりです、しかとご覧なさい | Observe your ruin! |
LVUP | これで皆様を守れるなら、嬉しいことです。 | 皆様を守るための積み重ねというのは嬉しいものですね | Every little bit that helps me protect my allies is a blessing. |
LVUP | おや、あちらに花園が…。ぼくのことはお気になさらず。 | 細かいところも見逃さない注意力が得られそうです。 | This will surely benefit my attention to detail. |
LVUP | 素晴らしい眺めです。今なら塵一つも逃しません。 | 嬉しい驚きです。この力で戦場の塵一つも逃さぬことを誓いましょう。 | What a wonderful surprise. With this strength, I vow to keep the battlefields spotless. |
勝利 | 目が開かれました | 目が開かれました | That was eye-opening. |
勝利 | 失礼いたしました | 失礼いたしました | My apologies. |
勝利 | ご満足いただけましたか | ご満足いただけましたか | Are you satisfied? |
勝利 | 美しい花でした | 最期まで美しかったですよ | You were beautiful while you lasted.(?) |
勝利 | 新しい扉ですね | あなたの物語はおしまいです | So your tail ends. |
戦死 | これからは星になって、皆様を見守っていますね… | もう、お仕えできないことだけが…無念です… | I regret only..that I can no longer serve.... |
加入 | 新たな扉が開けそうです。 | 確かに。いい発想の転換になりますね | Indeed. This is a nice change of pace. |
パッと見てみると「花園」「扉」「ストーキング」関連の修正が目立ちます。日本では女性同性愛コンテンツを「百合」と称しますが、あくまで日本限定の呼称ですし、女性だけがすべて花に例えられるというのも画一的ですからね。性的嗜好を「性癖の扉」と呼ぶのも日本式ネットスラングなので、異なる表現に変わっています。
ストーキング系の修正は神竜およびアイビーの支援会話で説明します。observe (観察する、よく見る)という単語が英語版のルイの趣味を理解するキーワードになることだけご留意ください。
では、スキル名と戦死セリフは?
これは完全な推測になってしまうんですが、後述する支援会話を見るとルイの「騎士らしさ」「従者らしさ」が強められ、ストーカー気質は少しだけ薄められています。そして古典的な中世ヨーロッパの騎士は貴婦人に礼儀を尽くして美を讃えるのが習慣になっていました。なのでルイも騎士のひとりとして女性を守る時はテンション上がる、という解釈かもしれません。
ストーキング系の修正は神竜およびアイビーの支援会話で説明します。observe (観察する、よく見る)という単語が英語版のルイの趣味を理解するキーワードになることだけご留意ください。
では、スキル名と戦死セリフは?
これは完全な推測になってしまうんですが、後述する支援会話を見るとルイの「騎士らしさ」「従者らしさ」が強められ、ストーカー気質は少しだけ薄められています。そして古典的な中世ヨーロッパの騎士は貴婦人に礼儀を尽くして美を讃えるのが習慣になっていました。なのでルイも騎士のひとりとして女性を守る時はテンション上がる、という解釈かもしれません。
■神竜との支援会話:やばいクセには釘を刺せ!
主人公である神竜とはスキルの噛み合わせが良く、普通にプレイしていたら割と簡単に支援会話Cが発生します。
【会話あらすじ】
他人の会話をじっと監視しているルイに、神竜が何をしているのか問いただし、相手が嫌がっている時はすぐにやめるよう伝える。だんだん親しくなるうちに、話題はルイの家族構成へ移っていく。
【解説】
まず、日英のセリフを見てみましょう。じっと何かを見つめる不審なルイに神竜が何をしているか問うと、ルイはこう答えます。
主人公である神竜とはスキルの噛み合わせが良く、普通にプレイしていたら割と簡単に支援会話Cが発生します。
【会話あらすじ】
他人の会話をじっと監視しているルイに、神竜が何をしているのか問いただし、相手が嫌がっている時はすぐにやめるよう伝える。だんだん親しくなるうちに、話題はルイの家族構成へ移っていく。
【解説】
まず、日英のセリフを見てみましょう。じっと何かを見つめる不審なルイに神竜が何をしているか問うと、ルイはこう答えます。
[日]-------
ただ遠くから女の子たちが会話しているのを静かに眺めているだけです。(なぜ、と聞かれて)強いて答えるなら僕の幸せのため、でしょうか。
[英]-------
-Merely observing those two over there chatting with one another. To which I suppose I would respond… for edification.
ただ遠くからあちらのおふたりが会話しているのを眺めているだけです。(なぜ、と聞かれて)強いて答えるなら自己啓発のため、でしょうか。
]-------
英語版は性別を特定しない上に、なんか壮大なことを言い始めました。続けて日英見てみましょう。
[日]-------
神竜:
女の子たちが会話しているのを見るのが好き、ということですか?
ルイ:
はい。大好きです。近寄らず、会話に参加もせず、もちろん触れることも絶対にありません。ただ遠くから静かに眺めているだけです。これはいけないことでしょうか?
神竜:
…多分、ダメなことだと思います。法に触れずともダメなことはありますから。もし彼女たちが嫌がったのならすぐにやめてくださいね。
[英]-------
-So you watch people chat in order to learn things?
学びを得るために人々の会話を見守っている、ということですか?
-Precisely. There is deep meaning in these seemingly simple encounters. Through observation, many delightful and subtle details reveal themselves. When one treats them as one would treat a gallery piece, can there possibly be any harm?
その通りです。一見ただの出会いに見えても、深い意味があるのです。観察していると、楽しく、細かく、その人達の真の姿が見えてくるんです。美術館の作品のように扱っていれば、誰かを傷つける心配はないでしょう?
-There, uh… I think maybe there can. What’s right or wrong goes beyond rules and laws. There’s courtesy and decency. If you knew they didn’t like being watched, you’d stop, right?
ええと…傷つくことも十分あり得ると思います。何が良くて何が悪いかを決めるのは決まりや法律というより、礼儀と良識ですから。もしあの人たちが明らかに嫌がっていたら、ルイは観察をやめていたと考えていいですよね?
-------
英語版のルイはやたら理論派ですが、それに対する神竜もきっちり具体的な表現で釘を差します。これは「問題行動している相手に他のキャラが"そりゃあダメだろ"と指摘する」表現スタイルで、2010年代以降かなり見ることが増えました。登場人物に先手を取らせることで「作り手はコレが問題だとわかった上で描いてるぞ」とアピールしているともいえます。前作『風花雪月』でローレンツが女性をナンパしては激しく拒絶され、反省しつつ真摯な愛情表現を学んでいくのがわかりやすい例ですね。
もうひとつ、ルイが男兄弟しかいない家庭環境を思い出すくだりを取り上げます。
[日]-------
僕の趣味もその環境が影響しているのかも。どこを向いても男ばかりの環境で育ったので、女の子の集まりを見るのが好きなのかもしれません。
[英]-------
-Growing up in that way may have given rise to my little hobby. Spending one’s youth in an all-male household gives one a rather narrow view of the world.
僕の趣味も育った環境が影響しているのかも。男ばかりの家庭で育つと、世の中を見る視野が狭くなるのかもしれませんね。
-------
これに神竜が「弟さんの趣味は違うんですよね、じゃあ関係ありませんね」とツッコミを入れて会話終了なんですが、英語版のセリフはこれだけ聞くと「どういうこと?」ってなります。考えられるのは以下のふたつでしょうか。どれかひとつ、というよりたぶん両方。
1. ルイは自身の眼の細さをよくジョークに使うので、そのパターン。
2. 性別の偏ったグループに対するちょっとした皮肉。
日本語の「男兄弟だと全員百合好きになる」も、英語の「男兄弟だと人間観察が趣味になる」も、神竜が「んなわけねーだろ」とツッコミを入れているので、ゲーム中でフォローは済んでいます。
英語版のルイは自分の目が細いのをジョークの種にしつつ、現代社会に今なお残る男性優位文化を皮肉っているように聞こえますし、もっと意地悪に読み解くと、日本語版でルイが女性だけをターゲットにしていることへのクギ刺しにも聞こえますね。
■アイビーとの支援会話:女性vsストーカーから姫vs従者へ
アイビーはドラゴンに乗る魔道士タイプ。魔力・速さ・守備・魔防がすべて高い上に飛行ユニットのため、アーマーナイトとはあまりシナジーが起きないユニットです。頭の焼き肉網みたいな装飾がすごく気になる。
アイビーはドラゴンに乗る魔道士タイプ。魔力・速さ・守備・魔防がすべて高い上に飛行ユニットのため、アーマーナイトとはあまりシナジーが起きないユニットです。頭の焼き肉網みたいな装飾がすごく気になる。
【会話あらすじ】
黙っていても笑顔に見えるルイと、なかなか笑顔を見せないアイビー。人々に囲まれて笑うアイビーが見たいという下心丸出しで、ルイは彼女を笑顔にすると申し出る。当初嫌がっていたアイビーはあまりの熱意に興味を持ち、その申し出に乗る。
【解説】
黙っていても笑顔に見えるルイと、なかなか笑顔を見せないアイビー。人々に囲まれて笑うアイビーが見たいという下心丸出しで、ルイは彼女を笑顔にすると申し出る。当初嫌がっていたアイビーはあまりの熱意に興味を持ち、その申し出に乗る。
【解説】
会ったばかりのアイビーをドン引きさせるルイのセリフを比べてみましょう。
[日]-------
僕は女性が仲良くしている姿を見るのが大好きです。ですので、アイビー王女のそのようなお姿も、ぜひ見てみたいなと思いまして。ニコニコ笑うアイビー王女と女性たち。その光景を想像しただけで僕はもう…!
[英]-------
I have a keen eye for observing the way people socialize, you see. Which is why I was so powerfully struck by the idea of seeing you in such a context. The princess Ivy, among dear friends, wearing a wide grin…what a captivating thought!
僕は人々の交流を観察するのにこだわりがありまして。ですので、アイビー王女のそのようなお姿を拝見するという思いつきは我ながら衝撃的でした。お友達に囲まれてニコニコ笑うアイビー王女…ああ、なんて素敵なんだ!
-------
英語版ルイを理解する上で最重要キーワードが observe(じっと見る・観察する)、2番目が socialize (交流する)です。ゲーム記事ではファイアーエムブレムのキャラ交流にしばしば socialize が使われており、支援会話も socialize のひとつと言えます。なんだ、つまり英語版ルイは俺たちか。
[日]-------
己の欲望を満たそうと強引に進めるその度胸…嫌いではないわ。
[英]
Your dedication to your goals, off-putting as they may be, is impressive.
目的が不愉快ではあるけど、実現しようとする熱意は見上げたものね。
-------
英語版では神竜だけでなく、アイビーもしっかり「不愉快」と釘を差します。いっぽう「欲望」の代わりに「熱意、献身」を意味する単語が使われているのがおもしろいです。「欲望に忠実」というのは日本のネットスラングっぽい表現ですから、騎士らしい言い回しに変えたのかもしれません。
支援会話Aでその熱意が実ってアイビーが笑顔を見せると、ルイはあわてふためいてこう言います。
[日]-------
そんな素敵な笑顔は僕などに見せずに、可憐な女性たちに見せてあげてください。それでアイビー王女を中心に輪ができれば、僕は離れたところからじっと眺めます。
[英]
Such unadulterated joy isn’t meant for my like. It should be reserved for others like yourself. My role is merely to facilitate these bright moments and then recede until I am needed.
そんな純粋な笑顔は僕などに見せずに他の方、たとえば王女自身のためにとっておいてください。僕の役割はただその楽しいひとときのお手伝いをするだけ。あとはお呼びがかかるまで引っ込んでいることにします。
-------
遠巻きに見る気満々の日本語に対し、英語版は「そのひとときに貢献して」「呼ばれたら仕事をする」気なんですよね。「見るのが好き」ではなく「人々が交流していることに喜びを覚える」ので、立ち位置はストーカーではなく従者なのです。
こうやってみると『覚醒』のフレデリクや『if』のギュンターをベースに、より若い立ち位置でデザインされた従者タイプの騎士なんですね。
そんな素敵な笑顔は僕などに見せずに、可憐な女性たちに見せてあげてください。それでアイビー王女を中心に輪ができれば、僕は離れたところからじっと眺めます。
[英]
Such unadulterated joy isn’t meant for my like. It should be reserved for others like yourself. My role is merely to facilitate these bright moments and then recede until I am needed.
そんな純粋な笑顔は僕などに見せずに他の方、たとえば王女自身のためにとっておいてください。僕の役割はただその楽しいひとときのお手伝いをするだけ。あとはお呼びがかかるまで引っ込んでいることにします。
-------
遠巻きに見る気満々の日本語に対し、英語版は「そのひとときに貢献して」「呼ばれたら仕事をする」気なんですよね。「見るのが好き」ではなく「人々が交流していることに喜びを覚える」ので、立ち位置はストーカーではなく従者なのです。
こうやってみると『覚醒』のフレデリクや『if』のギュンターをベースに、より若い立ち位置でデザインされた従者タイプの騎士なんですね。
【解説】
近年「ルッキズム」という言葉が知られるようになってきました。「外見至上主義」とも呼ばれ、見た目で価値を決めつけることを意味します。だいたい「人間って見た目に引きずられがちだからこそ、見た目で判断するのをやめようね」という時に使われます。
もちろん、「かわいい」「かっこいい」と口にするのが絶対ダメというわけではありません。ルックス抜群の芸能人も、好きな人も、かわいいしかっこいい。ただしそこまで親しくもない人に使うのは危険ですし、状況によってはハラスメントになり得ますし、「かわいい」「かっこいい」以外の価値で人をほめる語彙は多いほうがいい。
それを念頭に置いて、日本語版の支援会話を見てみましょう。
[日]-------
ルイ:
先ほど、ロサードさんがお話をしてきゃぴきゃぴしている姿をじっと眺めていました。最高でしたね。
ロサード:
あはは! 冗談のつもりだったのにー! ルイは気持ちがいいくらい正直だねー! でもさー、ルイはかわいい女の子たちを遠くから眺めるのが好きなんだろー? オレは男だけどいいのー?
ルイ:
ええ、問題ありません。絶対的なかわいさの前では性別など大きな意味は持ちませんから。貴方は戯れてる可愛らしい子犬を見てその性別を気になさるのですか?
-------
なるほど、ネットスラングでいう「カワイイは正義」っていう話ですね。ロサードは「可愛らしい服を着るのが好き」と自分でも言っており、彼を「かわいい」と褒めるのは悪くないように思います。少なくとも自分はそう思ってました。いっぽう英語版はどうでしょうか。
[英]-------
-In every movement and speech, you are a fountain of energy. To my eye, it is sublime.
身こなしといい話し方といい、ロサードさんは活力の泉ですね。眼福です。
-Hahaha! I was teasing, but I love your honesty! I thought you were mainly interested in seeing people socialize, though. Is it the same thing to watch me without anyone else around?
あはは! 冗談のつもりだったのにー! ルイは気持ちがいいくらい正直だねー! でもさー、ルイは人の交流を眺めるのが好きだと思ってたよ。オレは今ひとりだし、周りに誰もいないけどいいのー?
-It’s not so different. Some people display boundless reserves of energy even when alone. When you spot a puppy gamboling in the road, is it a lesser sight for having no playmate?
ええ、問題ありません。ひとりであろうと尽きない元気を振りまける人ですから。貴方は道でひとり戯れている子犬を見て、遊び相手がいないから見栄えが悪いと思われるのですか?
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英語版のルイは「カワイイ」ではなく「エネルギッシュなところ」や「ひとりなのに大人数の交流と同じくらい魅力的なところ」、つまりロサードの内面性を称賛していますし、そもそも性別には言及すらしていません。こうやってみると日本語版が「かわいいのは本来なら女性の属性」「ロサードみたいにかわいいなら男でも許される」というふたつの偏見で成立していることがわかります。人間なかなかステレオタイプから自由になるのは難しい。
ちなみにロサードとメリンの「かわいいvsかっこいい」、セアダスとロサードの「美容」を主題にした英語版支援会話もあり、気をつけるべきは「かわいい」という表現そのものではなく、使い方だというのもわかります。気をつけつつ、次にいきましょう。
■クランとの支援会話:問題発言を転換する翻訳の技
女性のカップル妄想を好む日本語版ルイですが、支援会話によっては男性同士の関係に異様な興味を示します。2015年発売の『ファイアーエムブレムif』でエポニーヌが男性同士の隣接を見るとスキル「邪な妄想」で能力アップしていたので、男女平等の時代には同性愛妄想も男女平等ならOK、とライターさんが考えたのかもしれません。
しかしその『if』では同性愛者の女性ソレイユを「薬で治療して異性愛者にしよう」という支援会話が大問題になって、英語版ではソレイユ関連の支援会話がより同性愛者寄りに修正された経緯があり、『風花雪月』で同性愛が常識として描かれたのはその反省を活かした結果でもあると個人的に思っています。
それを念頭に置いて、年若い少年クランとルイの交流セリフを見ていきましょう。
【会話あらすじ】
主君であるフィレネ王子アルフレッドが少年クランをふたりきりの筋トレに誘ったと聞き、ルイはその意図を邪推し始める。やがて出した結論は……
【解説】
まずは支援会話Bの冒頭いってみましょう。ルイがひとりごとをつぶやいています。
[日]-------
ふむ…なるほどなるほど、やっと読めてきましたよ。クランさんは美形で、幼さの中にしっかり者の芯の強さが見て取れる…王子は恐らくそこに惹かれ、二人きりで会いたいと…筋肉鍛錬はあくまで口実。可能性としてなくはない。いい。いいです。王子とクランさん、ありです。
-------
よくねえよ! これ読んだ時は結構リアルに頭を抱えました!
妄想自体は表に出さない分には問題ありませんし、ファンフィクションとしては西洋でも大人気の分野です。が、いくらゲームでも「眼前の未成年と主君のカップリングを妄想のネタにする」のはまずいに決まってます。
とはいえ今作は3D。キャラがしゃべりながらアクションするので、あまり実際の会話とかけ離れたものにするわけにもいきません。さあ、どうする。
[英]-------
-Yes…it is plain to me now. At last, I have a firmer grasp of the situation. Within Clanne's slight frame, there lies a discernible core of strength. The prince, noticing this, took the Lythian under his wing with a private workout. How grand! There's still a piece of the puzzle that eludes me, but I'm one step closer to understanding!
ふむ…なるほどなるほど、やっと読めてきましたよ。クランさんは線が細いけれど、芯に秘めた力がはっきりと見て取れる。王子は恐らくその才を見抜き、あのリトスの少年を個人鍛錬に誘ったのですね。なんと立派なお方だ! まだ謎は残っていますが、理解は深まりましたよ。
-------
ルックスの魅力ではなく、体格と身に秘めた才能の話へ! いかがわしい話ではなく、王子の誠実さを讃える方向へ! 原文のテイストは残したまま、絶妙に方向性を変えています。ちなみに特定の人物の呼称を「クラン」「リトス人」「若者」など言い換えていくのは西洋の小説や新聞でよく見るスタイルです。
やがてやってきたクランから、ルイはアルフレッド王子との関係を聞き出そうとします。英語版でも「まだ謎が残っている」という先ほどのセリフがいろいろ聞き出す動機になってますね。日英続けていってみましょう。
[日]-------
クラン:
アルフレッド王子はいつも以上に優しくて、手取り足取り筋肉鍛錬のやり方を教えてくれたんだ。
ルイ:
な、なんですと!!!? ちょっ…いつも以上に優しくてと…その部分について、詳しくお聞きしてもいいですか? その優しさは、仲間に対してのものでしたか…? それとも、何か別の感情が読み取れるような…?
クラン:
別の感情? あぁ、そういうことか。仲間っていうよりは、お兄ちゃんっていう感じの優しさだったよ。
ルイ:
お、お兄ちゃん!! 兄と弟…禁断の関係…これも僕の新たな領域…しかし悪くない…!!
[英]-------
-Yes…it is plain to me now. At last, I have a firmer grasp of the situation. Within Clanne's slight frame, there lies a discernible core of strength. The prince, noticing this, took the Lythian under his wing with a private workout. How grand! There's still a piece of the puzzle that eludes me, but I'm one step closer to understanding!
ふむ…なるほどなるほど、やっと読めてきましたよ。クランさんは線が細いけれど、芯に秘めた力がはっきりと見て取れる。王子は恐らくその才を見抜き、あのリトスの少年を個人鍛錬に誘ったのですね。なんと立派なお方だ! まだ謎は残っていますが、理解は深まりましたよ。
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ルックスの魅力ではなく、体格と身に秘めた才能の話へ! いかがわしい話ではなく、王子の誠実さを讃える方向へ! 原文のテイストは残したまま、絶妙に方向性を変えています。ちなみに特定の人物の呼称を「クラン」「リトス人」「若者」など言い換えていくのは西洋の小説や新聞でよく見るスタイルです。
やがてやってきたクランから、ルイはアルフレッド王子との関係を聞き出そうとします。英語版でも「まだ謎が残っている」という先ほどのセリフがいろいろ聞き出す動機になってますね。日英続けていってみましょう。
[日]-------
クラン:
アルフレッド王子はいつも以上に優しくて、手取り足取り筋肉鍛錬のやり方を教えてくれたんだ。
ルイ:
な、なんですと!!!? ちょっ…いつも以上に優しくてと…その部分について、詳しくお聞きしてもいいですか? その優しさは、仲間に対してのものでしたか…? それとも、何か別の感情が読み取れるような…?
クラン:
別の感情? あぁ、そういうことか。仲間っていうよりは、お兄ちゃんっていう感じの優しさだったよ。
ルイ:
お、お兄ちゃん!! 兄と弟…禁断の関係…これも僕の新たな領域…しかし悪くない…!!
[英]-------
-Prince Alfred was even nicer than usual. He was very patient and taught me a lot about exercise.
アルフレッド王子はいつも以上に優しくて、辛抱強くいろいろと鍛錬のやり方を教えてくれたんだ。
-Even nicer than usual?! The prince is always so kindhearted, I struggle to imagine that. Might I ask you to elaborate? Do you think he was being nicer because he considers you a friend, or was there more to it?
いつも以上に優しく!? 王子はいつもお優しい人なので、想像するのが難しいですね。失礼ながらもう少し詳しくお聞きしてもいいですか? そんなに優しいのは友達だからでしょうか、それとも、それ以上の…?
-Oooh, I see what you mean. Yeah, he did have kind of a different energy. It felt almost like he wished we were brothers.
あぁ、そういうことか。そうだね、確かに特別な力の注ぎ方だったかな。もう少しで王子と僕が兄弟なんじゃないかって思っちゃうところだったよ。
-Brothers, you say! A pair of brothers…one from Firene, and the other from Lythos. A rare occurrence indeed!
きょ、兄弟と!! 兄と弟…かたやフィレネ人、かたやリトス人の兄弟。これはなんとも実に貴重だ!
-------
英語版は絶妙に「禁断の関係」を「フィレネとリトス2国の強い関係」「レアな人間関係に交流観察オタク大はしゃぎ」へそらしているのがわかるでしょうか。「ホームズとワトソンのカップリング」みたいに同性愛シチュエーション設定は西洋でも盛んですけど、さすがに公式が(偏見に基づく同性愛を)やっちゃいけないということでしょう。まあこの後に「僕は妄想を楽しんでおきますので」とは英語でも言ってるので、察する英語話者もいるような気がしますけど。
余談ながら、英語圏の同性愛フィクションのありかたについてはこちらの記事が参考になります。
さて、支援Aでクランとアルフレッドの鍛錬が全メニュー終わったことをルイは嘆きますけど、今度は参加者を増やしてより大規模な筋トレを行うと聞き、喜びを噛み締めながらつぶやきます。
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[日]
…終わってなかった。終わったと思ったら、始まっていた…ただ始まっていただけではない…二つに倍加していた…きっと、この二つはさらに倍加する…あぁ…なんという尊さの無限増殖…これら全ての現場において、僕は警護という名の慎ましい壁になろう…そうだ…ぜひともそうしよう…
[英]
-What I thought was a finale was, in truth, a prelude. And the cast has doubled in size! How many more voices will be recruited into this muscular chorus? Who can truly say? And I shall be there for all of it─a connoisseur of the human condition. I eagerly await my role.
僕が終曲だと思っていたのは、本当は序曲だったのか。しかも演者が倍加していた! このたくましい合唱隊に、いったいどれだけの声が加わっていくのだろう? 誰にもわかるまい。そして僕はその全てに立ち会おう……人の調子の評論家として。その役割をこなす日が待ち遠しい。
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英語版のルイはアイビーの時同様に「自分もその一翼を担う」宣言をしているのが特徴的です。「なんでもカップリングにする変人」と「文化レベルが高く仕事熱心な変人」なら、まだ後者のほうがマシってことでしょうか。
-Prince Alfred was even nicer than usual. He was very patient and taught me a lot about exercise.
アルフレッド王子はいつも以上に優しくて、辛抱強くいろいろと鍛錬のやり方を教えてくれたんだ。
-Even nicer than usual?! The prince is always so kindhearted, I struggle to imagine that. Might I ask you to elaborate? Do you think he was being nicer because he considers you a friend, or was there more to it?
いつも以上に優しく!? 王子はいつもお優しい人なので、想像するのが難しいですね。失礼ながらもう少し詳しくお聞きしてもいいですか? そんなに優しいのは友達だからでしょうか、それとも、それ以上の…?
-Oooh, I see what you mean. Yeah, he did have kind of a different energy. It felt almost like he wished we were brothers.
あぁ、そういうことか。そうだね、確かに特別な力の注ぎ方だったかな。もう少しで王子と僕が兄弟なんじゃないかって思っちゃうところだったよ。
-Brothers, you say! A pair of brothers…one from Firene, and the other from Lythos. A rare occurrence indeed!
きょ、兄弟と!! 兄と弟…かたやフィレネ人、かたやリトス人の兄弟。これはなんとも実に貴重だ!
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英語版は絶妙に「禁断の関係」を「フィレネとリトス2国の強い関係」「レアな人間関係に交流観察オタク大はしゃぎ」へそらしているのがわかるでしょうか。「ホームズとワトソンのカップリング」みたいに同性愛シチュエーション設定は西洋でも盛んですけど、さすがに公式が(偏見に基づく同性愛を)やっちゃいけないということでしょう。まあこの後に「僕は妄想を楽しんでおきますので」とは英語でも言ってるので、察する英語話者もいるような気がしますけど。
余談ながら、英語圏の同性愛フィクションのありかたについてはこちらの記事が参考になります。
さて、支援Aでクランとアルフレッドの鍛錬が全メニュー終わったことをルイは嘆きますけど、今度は参加者を増やしてより大規模な筋トレを行うと聞き、喜びを噛み締めながらつぶやきます。
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[日]
…終わってなかった。終わったと思ったら、始まっていた…ただ始まっていただけではない…二つに倍加していた…きっと、この二つはさらに倍加する…あぁ…なんという尊さの無限増殖…これら全ての現場において、僕は警護という名の慎ましい壁になろう…そうだ…ぜひともそうしよう…
[英]
-What I thought was a finale was, in truth, a prelude. And the cast has doubled in size! How many more voices will be recruited into this muscular chorus? Who can truly say? And I shall be there for all of it─a connoisseur of the human condition. I eagerly await my role.
僕が終曲だと思っていたのは、本当は序曲だったのか。しかも演者が倍加していた! このたくましい合唱隊に、いったいどれだけの声が加わっていくのだろう? 誰にもわかるまい。そして僕はその全てに立ち会おう……人の調子の評論家として。その役割をこなす日が待ち遠しい。
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英語版のルイはアイビーの時同様に「自分もその一翼を担う」宣言をしているのが特徴的です。「なんでもカップリングにする変人」と「文化レベルが高く仕事熱心な変人」なら、まだ後者のほうがマシってことでしょうか。
ついでに、筋トレを「終曲」「序曲」「演者」「コーラス」「声」「評論家」と、すべて音楽に関わる表現で一貫させているのがオシャレでもあり、同時にオタクっぽくもあります。英語翻訳チーム、すごく優秀。
■最後に:ルイの良質な支援会話も紹介したい
ルイの問題発言が多くなったので、フォローするためのステキな支援会話も最後に少しだけ紹介します。
たとえば、小説家としての顔を持つ騎士ジェーデとの会話。物語の着想が湧かない彼女に、ルイは「女の子(英語版ではもちろん「人々」)が他愛ない会話をするだけのお話」を提案します。物語には筋書きが必要だと渋い顔のジェーデに対し、ルイはこう言います。
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ジェーデさんの書きたい場面さえあれば、突然始まって突然終わってもいいのでは?
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英語版はさらに凝っています。
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- “Enter late, leave early,” they say. An enjoyable scene justifies itself without “plot” scaffolding.
「遅く入って早く出る」という言葉があります。筋書きという足場がなくても、面白い場面がひとつあれば許されるんですよ。
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この「遅く入って早く出る」は映画やドラマの脚本における金言らしく、長々と状況説明をやってグダグダになるよりも、キーパーソンが短時間で出番を終えて去るほうがいい絵になるという意味だそうです。説明が大事になる小説ではちょっとリスキーな発想ですけど、筆が進まないジェーデにとっては刺激になりそうですね。
それにしても、筋トレを合唱に例えるだけでなく、物語の構成についても語れる英語版ルイって超インテリなのでは?
他にも直属の主であるセリーヌ王女との支援会話は雑念なき姫と従者の交流で心が温まりますし、隣国の騎士ザフィーアとの支援会話は特に好きです。A会話ではちょっと泣きそうになった。このふたりの会話ではルイの特技がフルに発揮されます。
最後に、異世界の英雄ロイとの絆会話を紹介します。
「ロイさん、気づいていましたか? 僕たちの名前、とてもよく似ているんですよ!」と微笑むルイですが、英語で見るとLouisとRoyでほとんど似ていません。日本語のダジャレをどう翻訳するのでしょうか。
[英]-------
-Do you know what I noticed, Roy? Both our names are vowels bookended by consonants.
ロイさん、気づいていましたか? 僕らの名前はどちらも母音が子音で挟まれているんですよ。
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よく気づいたなそんなポイント! アンナ(Anna)がいるだろうと思ったら、子音が母音で囲まれてるから逆だ! なんと全軍探してもこの法則に当てはまるのはルイとロイだけ。翻訳チームってスゴイ、改めてそう思った。
・ルイの趣味は「女性の監視」から「人間交流観察」で、性別・外見にとらわれないスタンスへ変わっています
・さらに「ストーキング」から「交流の演出役」にすることで、単なる変態から勤勉な変人へとイメージが変わっています
・総じてカップリングトークについては日本語版を尊重しつつも、性的なニュアンスを薄めています
・ロサードとの支援Bで海ブドウを批判するルイの語彙は英語版だとさらに悪口のバリエーションが増えていて好きです
・他キャラでいうとゴルドマリーとエーティエの「どちらが殿方にウケるか」は英語版だと「過剰な筋トレのエーティエvs整理整頓にこだわるゴルドマリーの人生観争い」になっていて、恋愛脳発想や女性の体型ネタは全体的に抑えられているようです
・英語版のゼルコバは語彙や文法がとても凝っているのでぜひ読んでみてほしいです
以上です。皆さんのオススメ英語版セリフがあったらぜひ教えてください。
ゲーム全体の感想も書きました。
あと最終決戦スタメンはこちら。