私なりの勉強法を記録しておきます。
補足することを見つけたら今後も書き足していきたいと思います。 

【全体的な注意事項】
・なぜ自分がUSMLEを受験したいのか、どのくらい本気で米国臨床留学する気があるのか、どのくらいの点数を取る必要があるのか、最初に必ず自分に問いかけてみましょう。これ次第で勉強法や勉強期間も変わってきます。

・受験者のブログやFirst Aid for the USMLE STEP1などを読んでUSMLEについて理解し、研究しましょう。

・受験者のブログを読む際には、獲得スコアと勉強法の比較考量をしましょう。どのくらい勉強したらどのくらいのスコアが取れるものなのか、だいたい予想がつくようになります。スコアが付記されていないものは、真似するべき勉強法なのかどうか判断をつけづらいです。

・受験者のブログを読む際には、情報が古くなっていないか気をつけましょう。
 丁寧に書かれている先生のものは年月が経っても参考になる部分が多く残っていますが、よりHigh-Yieldな参考書が登場したりして、スタンダードな勉強法は常に変わっていっています。例えば、薬理学や生化学で分厚いリッピンコットシリーズを通読するのは非効率的な気がしました。現在は、重要事項が簡潔にまとめてあるFlash Cardsで勉強するのが流行りのようです。他にも、2-digit scoreは廃止されましたし、受験者の平均点も上昇していっています。

・教科書、参考書にはそれぞれの本が持つ役割があります。初学者が講義と並行して読むといい本と、時間がないときにさらっと復習するための本は異なります。 
最新版のFirst Aidの参考書ガイドに従えば、大きく外すことはないでしょう。迷ったら簡単で薄い本を選びましょう。薄い本を2回通読するのと、分厚い本を1回通読するのでは、(少なくともSTEP1に関しては)間違いなく前者のほうが効果的です。STEP1で実際に出題されるのは、どの本にも載っている基本的な事項がほとんどです。

・勉強を進めるときは、まず日本語でおおまかに理解してから英語の参考書や問題集にとりかかりましょう。学生のうちに受験される人は、講義や定期試験をしっかりやりましょう。どこでも強調されていますが、日本語での理解が第一です。

問題をたくさん解くことが大事です。10,000問解いてから試験に臨めば、少なくとも確実に3-digit score > 240(昔でいう2-digit score:99)を獲得できるでしょう。(どこかにそういう統計がありました)私自身は、解き直した問題を含めなければ9,000問強です。2回目以降の解き直しを含めれば10,000問に届いているかもしれませんね。

【Scoreについてのよくある誤解】
・2-digit scoreの99は問題の正解率99%という意味ではありません。
・受験者全体の99パーセンタイルにいるという意味でもありません。
・だいたい3-digit scoreで240以上取れている人はみんな2-digit score: 99です。(ただしこれは変更前の話。現在の2-digit scoreは以前よりインフレ状態に比べて低く出るようです。びっくりしないでください。3-digit scoreのほうを見ましょう。)
・3-digit score: 240というのも、300満点中の240点取れているという意味ではありません。
 
【First Aid for the USMLE STEP1について】
First Aid for the USMLE STEP1 2010
私は2010年度版を使い、結局6回通読しました。最後の2回は直前期にスキミングしたもので、じっくり通読とは程遠いものですが、かなり細かいところまで既に頭に入っている状態かつ時間が無いのでそういう読み方になりました。

問題集を解いていて知らなかった知識はFirst Aidに書き込み、自分だけのオリジナルFirst Aidを作ってそれを隅々まで覚え込むのがメジャーな勉強法かと思います。

私のFirst Aidは書き込みと毎日の持ち運びでかなりボロボロになりましたが、結局「ほとんどのページに書き込むスペースが無くなるほど」にはなりませんでした。
試験約1ヶ月前に最新版(私の場合は2012年度版)を購入して、追加・変更点をメインの2010に書き加えました。本気で受ける人には、この作業をすることをおすすめします。


以下に使用した参考書や問題集を挙げます。ここに挙げたものは基本的に通読ないし全問解いています。

【総合問題集・模擬試験】
First Aid Q&A for the USMLE STEP1(1000問)
みんなやっているようなので、必ずやりましょう。私たちは学内での勉強会の教材としても使っています。

Kaplan Qbook(850問)
高得点を狙うのであればやってもいいと思います。

Appleton & Lange Review for the USMLE STEP1(1200問)
やらなくていいと思います。

Kaplan Qbank (2200問、3ヶ月前に終了、73%(予想スコア 239))
高得点を狙う人はやることをおすすめします。Kaplan Qbankを片付けてからUWorldに進むと、UWorldの予想スコアが信頼できます。
High-Yield Lectureをつけると一気に高価になりますが、Qbankだけで充分だと思います。Kaplan Qbankの良いところは、問題の解説にFirst Aidの対応ページを書いてくれているところです。USMLE Worldの解説にはこれがなく、若干ストレスになります。

USMLE World Qbank (2200問、20日前に終了、80%(予想スコア 279))
必ずやりましょう。問題の解説を読むときは、律儀に全て読む必要はないと思います。適当に飛ばし読みしてください。First Aidに全然載っていない知識が出てきたら、自分のFirst Aidに書き込みましょう。
 
NBME form 3(200問、630(予想スコア 252))
NBME form 12(200問、620(予想スコア 250))
NBME form 13(200問、660(予想スコア 259))

予想スコアは、以下の2つのサイトを利用しました。NBMEについては解答終了後に予想スコアが出力されます。

 
【Behavioral Science】
日本では体系立てて習わない内容でありかつ頻出なので、日本人受験者が最も苦手としている分野です。
ちゃんと勉強しましょう。ethicsやpatient-physician relationshipについて、次に取るべき対応を問われる問題が頻出です。何回やってもできるようにならない気がしましたが、直前期になったらある程度パターンが見えてきました。
何回も間違えながらも、とても楽しく勉強できた分野でした。
 
必ず通読しましょう。ethicsやpatient-physician relationshipの章でのミニ会話例はコピーしてマイFirst Aidに挟みこみました。問題も全て解きましたし、直前期・前日にも読み返した数少ない本でした。

High-Yield Behavioral Science
こちらも読みました。こちらも同様に ethicsやpatient-physician relationshipの章でのミニ会話例はコピーしてFirst Aidに挟みこみました。

【Biochemistry】
Lippincott's Illustrated Reviews: Biochemistry
通読しました。やはりイラストが多いため覚えやすいです。しかし、Lippincott'sシリーズの通読は現時点ではマストの勉強とは思えません。もっと薄い本を繰り返し読んだほうが、もしくはたくさん問題数をこなしたほうが効率はよいでしょう。
遺伝性代謝疾患などは、「典型的な問題文を覚える」ことが重要です。

High-Yield Cell and Molecular Biology
もともと生物学のバックグラウンドがあったので、このへんはわりと得意な分野でした。

簡潔に覚えるべきことがまとめられている、暗記・復習用のシリーズです。じっくり読んで理解する本ではありません。

【Embryology】
High-Yield Embryology
この本を読むにあたって、ラングマン人体発生学を読み返しました。
発生学は英単語を覚えるのが大変でした。

【Microbiology】
Lippincott's Illustrated Review: Microbiology
Microbiologyは写真やイラストが出ることが多いので、Lippincott'sは有用だと思いました。
薬理学ほど分厚くありませんし。

有名なRidiculously Simpleは読んでいません。

【Immunology】
Lippincott's Illustrated Review: Immunology
とても良い教科書だと思います。手頃な厚さもポイント。
ただ、読まなくてもFirst Aidだけで何とかなる気がします。

【Pharmacology】
LANGE Pharmacology Flash Cards
最近Flash Cardsが流行のようです。暗記ものはやはり回数をこなせる教材が強いですね。
First Aid巻末の参考書ガイドで評価が高かったので購入しました。とてもよくまとまっていて勉強しやすかったです。これも直前期に復習した数少ない教材の1つです。
基本的な薬の作用機序はNEW薬理学など日本語の教科書で勉強してから使うべき教材です。

Lippincott's Illustrated Review: Pharmacology
この本が受けてきたのは、初めて薬理学を習うときにCourse Work(講義)と併用するからです。日本人がSTEP1の勉強を始めるときには、薬理学は既習の方が多いはずです。良い教科書ですが、必ず通読しなくてはならない本ではないと思いました。

New薬理学
前半の総論的な部分で、リガンド受容体相互作用とシグナル伝達について丁寧に説明してあるのが良いです。日本語の本で気に入ったのがあれば何でもいいと思いますが、私はNEW薬理学が好みでした。
かなり分厚いですが、ハーバード薬理学なんかも評判いいですね。


【Gross Anatomy】
そのまんま問題文になりそうなGross Anatomy関連のVignetteが100個並べてあります。
Gross Anatomyは上肢と下肢についてはしっかり勉強しましょう。でも、Web問題集を解いているうちに自然に出てくるので、参考書の通読から入る必要は感じません。

【Histology】
なし

【Neuroanatomy】
High-Yield Neuroanatomy
直前期に読み返した数少ない本のひとつです。
神経解剖は本番でもたくさん出ました。しっかり勉強しましょう。

【Physiology】
なし
有名なBRS Physiologyすらやっていません。そのためか比較的苦手分野のまま残ってしまったので、やることをおすすめします。

【Pathology/Pathophysiology】
BRS Pathology(450問)
STEP1の勉強を始めるにあたって、一番はじめに取りかかった本です。そのときはまだ3年生で病理学の講義・実習と並行して読んでいました。箇条書き形式と太字ハイライトでとても読みやすい好著です。Pathologyを最初に勉強しておくと、ほぼ全ての分野の英単語を網羅できその後の勉強がスムーズになります。

Goljan Pathology
全世界のUSMLE受験生の間で神と崇められる(?)Goljan先生の講義音声とスクリプトです。First Aidに載っていない内容をマイFirst Aidに書き込んでいきました。ちょっと内容が古いかもしれませんが、役に立ちました。おそらく下記のRapid Review Pathologyのほうがup to dateで良い教材です。

Rapid Review Pathology
上述のGoljan先生の著作です。私はBRS Pathologyを最初に買ってしまったためこちらは持っていませんが、Pathology分野で最も評価もシェアも高いので、これから勉強を始める人はこちらを選ぶべきでしょう。ただBRSシリーズはどれも読みやすくて私は好きです。

Robbins and Cotran Atlas of Pathology
顕微鏡像だけでなくGrossも載っているところがUSMLE向きです。


【タイムスケジュール】
私の場合の、STEP1受験までの大まかなスケジュールです。

18ヶ月前 BRS Pathology, BRS Behavioral Science, First Aid Q&A, Kaplan Qbookなどを少しずつ始める。
17ヶ月前 Harrison's Principles of Internal Medicineの通読を始める。STEP1の勉強は凍結させる。
8ヶ月前 Harrison's Principles of Internal Medicineの通読を終える。
~3ヶ月前 Kaplan Qbank
~1ヶ月前 USMLE World
1ヶ月前~ USMLE World復習、First Aid通読、NBME模擬試験など
 
反省点として、参考書の通読はほどほどに、KaplanとUSMLE WorldのQbankを2周3周するなど、もっと問題数をこなすことに重点を置いていればよかったと思っています。

約1年半と、時間もかけ過ぎたと思っています。上手くやれば、もっと短い期間でもっと高得点が狙えると思います。これから受験される方は、自分なりのベストの勉強法を作り上げてくださいね。この記事がその参考になれば幸いです。


2012年9月22日追記:259/89で合格しました。参考になさっていただければ幸いです。