この件です。

どうすれば論証できるのか

 混乱が生じているのですが、ここでの主張の要点は、「ポリコレの嵐」という原因によって「アメコミ売り上げ低迷」という結果が起きている「因果関係」があるということです。つまり、この主張を論証するためには

①PCによる要求が年々強くなっており
②アメコミの売り上げが年々低下しており
③この2つの間に因果の関連がある
 という少なくとも3つの段階を示さなければいけません。

 まぁ、①は統計的なデータを示すのは困難ですし、多様性の要求が強くなっているのは様々な事例から自明であると考えてよいでしょう。よって検討すべきは②と③です。

アメコミの売り上げは?

 アメコミの売り上げについて調べてみると、以下のような記事がヒットします。
 2018年は世界的に電子書籍が大躍進の年であった。
(中略)
 アメリカでは、Marvel ComicsやDC Comicsに登場するキャラクターを扱った映画が国内外でヒットしたことにより、原作コミックが注目を集めたが、マンガ市場はほぼ横ばいに推移した1177億円という規模だった。
 本記事では、日本と比較する形で、電子コミックが盛んな中国、国内外で人気のアメコミを出版するアメリカの3か国のマンガ市場の比較記事を紹介する。
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 【市場比較コラム】日本・アメリカ・中国のマンガ市場比較-オタク産業通信
 つまり、売り上げは減っていません。以上です。

 まぁ冷静に考えれば、あれだけアメコミの大作映画が次々と公開されているのにコミックの売り上げが落ちるわけないんですよね。よって、こんな議論は少しでも論理的思考ができれば引っかかるはずのない与太です。

 ちなみに、売り上げ低迷の証拠としてシェア割合の話を引っ張り出す人がいますが、意味がありません。シェアの割合はアメコミの売り上げが変化せずとも、別のジャンルの売り上げが変われば変化するからです。「アメコミの」売り上げ低迷を意味することはありません。

 ②が虚偽であった以上、③を検証する必要もありませんね。

Mangaの躍進は反ポリコレのせいなのか

 こういうことを言うと、質の悪いオタクはすーぐゴールポストを動かします。代表例が「日本のMangaがアメリカでシェアを伸ばしているのはポリコレに支配されていないストーリーが面白いからだ」とか。

 もちろんエビデンスがないのでこの主張に意味はありません。以上です。

 個人的には、ポリコレ関係なく単に面白くて目新しいから受けてるだけじゃないかと思います。漫画を読むときいちいちポリコレかどうか気にするのは日本のミソオタとアメリカのコミックスゲートだけでしょう。

 アメコミは秘伝のタレかよってくらい同じキャラで何度も話を作るので、いい加減むこうのオタクも飽きている可能性もありますね。「またバットマンかよ!」みたいな。そこに長くてもせいぜい50巻までで終わる漫画が新しく来たらそっちに手が伸びるんじゃないでしょうか。50巻とか、戦前から続いているアメコミよりははるかに短いですからね。

 あと、日本の漫画が反ポリコレであるという前提がそもそも自明ではありません。確かに日本の漫画はときおり信じられないほど低レベルな炎上事件を起こしますが、だからと言ってすべての漫画がそうだというわけではありません。というか、アメコミにしたってすべてがポリコレなわけではなく、当然猥雑な漫画だってたくさんあるでしょうから(ネオナチに変身するコミックとかあったぞ)、売れてないのは単にポリコレ関係なく面白くないからってだけでは。

そもそもPCと面白さは一致しない

 そもそも、ミソオタたちはポリコレであることがイコールつまらないと考えているようですが、それも違います。そもそも面白さとPCは別の尺度なので、PC的だがクソつまらない作品もありますし、反PCでも面白い作品はあります。

 つまり、ある作品が面白くないとき、それはPC的だから面白くないのではなく、単にストーリーがクソだから面白くないのです。たぶんPC的で面白くない作品を作る人は反PCで作品を作ってもやっぱり面白くないと思います。

 もっとも、反PCであることそれ自体に価値を見出すような、評価軸が狂ったミソオタは話が別でしょうけど。そういう人は鍵十字の旗を背負って公道を練り歩いたら滅茶苦茶反PCで面白いはずなので漫画なんか読まずにそうすべきですね。社会的には終わると思いますが、文化の未来のためにはむしろ終わっておいてほしいですから。

 そして、アメリカが反PCな作品を絶対に認めずに消し去ってしまう社会かというと、これも違います。古典的名作などは今の視点から見ると滅茶苦茶反PCだったりしますが、きちんと補足を入れて子供が見たときに勘違いなどをしないように配慮したうえで公開しています。反PCであるというのは要するに「取扱注意」というだけで、反PCだからアウトというわけではありません。

 ただ、個人的には反PCであることはむしろ作品のつまらなさと相関すると考えています。というのも、安直に反ポリコレを売りにする創作者というのはたいてい腕が劣っているからです。つまらない芸人が過激な芸に走るようなもので、安直に走る人というのはたいてい腕がないからそうするのです。

 私も素人ながら作品を作る立場ですから、どうせなら困難を実現する方向で努力をしたいものですね。