昨日のピクシブ配信で聞いた話で面白かったのが、
— 円之怜@新刊は8月頃予定 (@ennorei) August 5, 2020
・今アメコミは日本の漫画に押されてアメリカでの売上で大きく負けている。原因はアメコミはポリコレの嵐で全くストーリーが面白くなくなった
という話だった。
そこで、かつて2000年代かそこらである編集者が日本の漫画に提言した話を思い出した
この件です。
どうすれば論証できるのか
混乱が生じているのですが、ここでの主張の要点は、「ポリコレの嵐」という原因によって「アメコミ売り上げ低迷」という結果が起きている「因果関係」があるということです。つまり、この主張を論証するためには①PCによる要求が年々強くなっており
②アメコミの売り上げが年々低下しており
③この2つの間に因果の関連がある
という少なくとも3つの段階を示さなければいけません。
まぁ、①は統計的なデータを示すのは困難ですし、多様性の要求が強くなっているのは様々な事例から自明であると考えてよいでしょう。よって検討すべきは②と③です。
アメコミの売り上げは?
アメコミの売り上げについて調べてみると、以下のような記事がヒットします。2018年は世界的に電子書籍が大躍進の年であった。つまり、売り上げは減っていません。以上です。
(中略)
アメリカでは、Marvel ComicsやDC Comicsに登場するキャラクターを扱った映画が国内外でヒットしたことにより、原作コミックが注目を集めたが、マンガ市場はほぼ横ばいに推移した1177億円という規模だった。
本記事では、日本と比較する形で、電子コミックが盛んな中国、国内外で人気のアメコミを出版するアメリカの3か国のマンガ市場の比較記事を紹介する。
【市場比較コラム】日本・アメリカ・中国のマンガ市場比較-オタク産業通信
まぁ冷静に考えれば、あれだけアメコミの大作映画が次々と公開されているのにコミックの売り上げが落ちるわけないんですよね。よって、こんな議論は少しでも論理的思考ができれば引っかかるはずのない与太です。
ちなみに、売り上げ低迷の証拠としてシェア割合の話を引っ張り出す人がいますが、意味がありません。シェアの割合はアメコミの売り上げが変化せずとも、別のジャンルの売り上げが変われば変化するからです。「アメコミの」売り上げ低迷を意味することはありません。
②が虚偽であった以上、③を検証する必要もありませんね。
Mangaの躍進は反ポリコレのせいなのか
こういうことを言うと、質の悪いオタクはすーぐゴールポストを動かします。代表例が「日本のMangaがアメリカでシェアを伸ばしているのはポリコレに支配されていないストーリーが面白いからだ」とか。もちろんエビデンスがないのでこの主張に意味はありません。以上です。
個人的には、ポリコレ関係なく単に面白くて目新しいから受けてるだけじゃないかと思います。漫画を読むときいちいちポリコレかどうか気にするのは日本のミソオタとアメリカのコミックスゲートだけでしょう。
アメコミは秘伝のタレかよってくらい同じキャラで何度も話を作るので、いい加減むこうのオタクも飽きている可能性もありますね。「またバットマンかよ!」みたいな。そこに長くてもせいぜい50巻までで終わる漫画が新しく来たらそっちに手が伸びるんじゃないでしょうか。50巻とか、戦前から続いているアメコミよりははるかに短いですからね。
あと、日本の漫画が反ポリコレであるという前提がそもそも自明ではありません。確かに日本の漫画はときおり信じられないほど低レベルな炎上事件を起こしますが、だからと言ってすべての漫画がそうだというわけではありません。というか、アメコミにしたってすべてがポリコレなわけではなく、当然猥雑な漫画だってたくさんあるでしょうから(ネオナチに変身するコミックとかあったぞ)、売れてないのは単にポリコレ関係なく面白くないからってだけでは。
そもそもPCと面白さは一致しない
そもそも、ミソオタたちはポリコレであることがイコールつまらないと考えているようですが、それも違います。そもそも面白さとPCは別の尺度なので、PC的だがクソつまらない作品もありますし、反PCでも面白い作品はあります。つまり、ある作品が面白くないとき、それはPC的だから面白くないのではなく、単にストーリーがクソだから面白くないのです。たぶんPC的で面白くない作品を作る人は反PCで作品を作ってもやっぱり面白くないと思います。
もっとも、反PCであることそれ自体に価値を見出すような、評価軸が狂ったミソオタは話が別でしょうけど。そういう人は鍵十字の旗を背負って公道を練り歩いたら滅茶苦茶反PCで面白いはずなので漫画なんか読まずにそうすべきですね。社会的には終わると思いますが、文化の未来のためにはむしろ終わっておいてほしいですから。
そして、アメリカが反PCな作品を絶対に認めずに消し去ってしまう社会かというと、これも違います。古典的名作などは今の視点から見ると滅茶苦茶反PCだったりしますが、きちんと補足を入れて子供が見たときに勘違いなどをしないように配慮したうえで公開しています。反PCであるというのは要するに「取扱注意」というだけで、反PCだからアウトというわけではありません。
ただ、個人的には反PCであることはむしろ作品のつまらなさと相関すると考えています。というのも、安直に反ポリコレを売りにする創作者というのはたいてい腕が劣っているからです。つまらない芸人が過激な芸に走るようなもので、安直に走る人というのはたいてい腕がないからそうするのです。
私も素人ながら作品を作る立場ですから、どうせなら困難を実現する方向で努力をしたいものですね。
コメント
コメント一覧 (20)
今のコミックの売り上げに変化がないのは下げ止まりの状態で、規制がなければもっと活況を呈したはず、特に日本との比較において、市場規模が大きいアメリカの売り上げが極端に少ないのはPCのためだ、とい主張うことなのかなあ、と考えています。
あとPCって、例えばメリークリスマスをハッピーホリデーにするといった名称の置き換えが主だったと思ったんですけど、多分表現規制と混ざってるんですね。今、コミックスにおいてこの手の議論がどのあたりを主にしていて、誰が主導いているんでしょうか?
それとも「アメコミのみ」実態が違う(ポリコレはない)という証左があるのでしょうか。
2についてアメコミを購入してきた層が買わなくなっているわけではない。
または購入可能層の推移に対して出版状況が変わっていないことが証明されていないのでやはりまったく意味がない。
売り上げが同じならむしろアメコミ以外のコミックが増え続けている現状で、アメコミは減ってるということじゃないのかな?
3についてはこの文章には、関連がないとの証明がされていない。
つまるところ「わからん」という結論にならなきゃおかしいのでは?
コンテンツの良し悪しについての推論も、以上により意味がなさそうですね。
ただ、論点ずらしと言われればその通りなのかもしれないのですが……。
まず、だれかのPixiv配信の内容が間違っていた所に異論はないのです。
ただ、そもそも話として(というか個人的に興味があるのは)「PCが漫画の面白さに影響するのかどうか」という辺りであって。
もっとも面白さなんて主観の問題なのでこれを直接ハッキリさせるのは困難で、その代わりに数値で分かる「売り上げ」でそのジャッジの代用をしているという流れかと思われます。
そう考えた場合、ここの記事を見て私の方では以下の2つが気になっていまして、
1、まず漫画の価格は年々増えているのではないか[憶測]。価格が上昇しているのに売り上げが上がらないのなら、それは発行部数などが減っているのではないか。つまりは価格が増えても売り上げが変わらないなら『つまらないから買わなくなった人が増えているのが、価格の上昇で補填されているのではないか』[憶測の上の推測]
2、あくまでもPC関連で自主規制をしているのはマーベル(市場シェア40%)で有り、DC(市場シェア30%)その他細々とした漫画出版社は特に体感できるレベルでの規制対応をしていないようである[調査]。で、読者が減っていないのなら、PCの影響を受けて今までマーベルを読んでいた人が他のアメコミに移ったから売り上げ自体は変わらない、ということは起きていないのか?[疑問、推測]
もちろん、ここの記事はあくまでも「実況の主張が間違っている」という主張が主旨の記事であり、根本的にPCの全く影響は全く存在しないことを証明する目的の記事ではないことは分かっておりますが、この辺りが疑問として気になっております。
ちなみに、このあたり、自分で検証しようとしましたが、検索の仕方が悪いのか、アメリカコミックの価格の推移や、出版社シェアの推移の数値などが上手く取れませんでした。
たとえば「白」を表現したい時、白い絵の具をふんだんに描いて白を表現する方法もあれば、敢えて黒を出して白を対比で表現する方法もあるかと思います。
どちらが優秀ということではなく、どちらも表現としてはアリで、どちらかでしか描けない表現もあるかと思います。
もちろん自分も黒い絵の具が手に入らない状況で上のような表現をしなければならないのなら、白い絵の具や他の絵の具の色を工夫して「白」を表現する努力をしたいと思います。
が、黒い絵の具を使ってもまだ大丈夫なら、その黒い絵の具をいつでも使えるような状態にしておく努力はします。その絵の具の色を今まで、あるいはこれから1度も使わないとしても。
自分はそうしたいと思っています。
シェアを見ないで売上を語るのはさすがに浅過ぎますねw
「comics」と「graphic novels」の違いも理解してなさそう
ポリコレによる売上の推移データを知りたいならまずそこを調べるのが重要なのに
Comichronすら見ないでアメコミの売上記事書いてるのがちょっと程度が低過ぎる
ほう、ではどの部分がどういう理由でつまらないかご説明願えますか?文章に難しい単語が多いからですか?グラフが多いからですか、少ないからですか?
もちろん九段さんもチェックされてるでしょうし、仮に受け入れられないとしても理由を何も言わないよりはあなた方の選択の幅が広がるでしょう。
この主張の要点はあくまでも「今アメコミは」「日本の漫画に」「売上で大きく負けている」事とその「原因は」「アメコミは」「ポリコレの嵐で全くストーリーが面白くなくなった」事の2本立てなんだな。
すると「②アメコミの売り上げが年々低下しており」という内容はこの主張に入ってないのが分かるんだな。よってこの内容を検討する価値は無いんだな。寧ろこの主張を論証するためには「今アメコミは日本の漫画に比べ売上が少ない」事を検討しなきゃいけないんだな。この事をこの記事にあるグラフから考えると...少なッww
よって③を検討する必要が出て来るが「②が虚偽であった以上、③を検証する必要もありませんね。」なんてどっかの誰かが言ってたんだな。
この記事はポリコレ批判を批判したいんだろうけど、 論証も何も出来てないから批判されるんだな
「オタク産業通信」のリンク記事だとおもいますが、日米中「原産」漫画の「全世界売上ランキング」ではなく、各「国内での」漫画市場で動く金額の比較なのでは?
>アメリカにおけるマンガ市場の規模は、1100億円ほどと日本の3分の1程度であり、国土や人口の多さに比べて市場が小さいという特徴がある
と書いてますから。
アメドラやハリウッド映画について、いちいちポリコレかどうか気にしてる人はたくさんいますね。反オタクみたいな人で。
思想や表現の押しつけであり、創作活動への介入や規制を行う行為になっています。
おぞましいファシストがリベラルの皮を被って蘇ったわけですので創作活動の自由を奪うわけです。
何よりも当の本人たち、アメコミ好きのアメリカ人達が体感して、そしてアメコミがつまらなくなった、買わなくなったと言ってるわけですから、そのとおりなのでしょう。
お前は全てにおいて正しい!!この記事を否定する愚か者が居ても気にするな!俺はお前の正当性を証明する証明書だからな!!!!wwwwww
そもそもことの問題はアメリカ国内市場でアメコミの売上が落ちているということですし日本市場と中国市場のデータで比較する意味や市場規模の推移を見る意味も分かりません
あまりにも遅いコメントですが気になったので
好きなキャラクターでもあったので、ファンとして私はポリコレに対しては良くないと思っています。
>というのも、安直に反ポリコレを売りにする創作者というのはたいてい腕が劣っているからです。
>つまらない芸人が過激な芸に走るようなもので、安直に走る人というのはたいてい腕がないからそうするのです。
現実はまったく逆でしょ。
PCを作品に入れたらつまらなくなる訳ではなく、PCを入れる事ありきの作品を作った
結果、つまらないものばかり生み出してる。