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このイベントは、ICJも支援する日本最大級のC2Cサービス「ココナラ(http://www.coconala.com)」が、各分野のビジネス・サービス最前線の方をお招きして、未来を語る「ココナラ未来会議」の第二回に当たります。
今回は、「音楽ビジネスの未来」というテーマにて、BOØWYやGLAYなど、日本を代表する音楽プロデューサーである佐久間正英氏、アーティスト支援サービス「Frekul」(http://Frekul.com/)を牽引し、自らもメジャー・デビュー経験のある海保けんたろー氏、クラブミュージックを紹介する「WASABEAT」(http://www.wasabeat.jp/)やblock.fmのペ・ヨンボ氏をゲストに迎え、ココナラを運営するウェルセルフ社の南章行と、新明智を交えて開催されました。
以下、速記議事録にて、お楽しみください。
ココナラというのは、我々のやっているビジネスなんですが、この「ココナラ未来会議」は、それに紐づくものばかりでなく、世の中で変革にあるビジネスなどについて、その最前線の人をお招きして行うものです。前回は、コマースの未来でした。今回は、音楽のビジネスの未来です。本日の登壇者です。
特別ゲスト。音楽好きだったら、知らない人のいない、音楽プロデューサーの佐久間正英さん。それから、ワールドスケープの海保さん。べ・ヨンホさん。そして、弊社から、私と、新明です。
南:今日のお願い事項です。ライブトークに近いので、途中で質問募集しますので、積極的にご質問ください。それから、3社のサービス、ぜひとも使ってみてください。それから、3つ目。本日のフィードバックを、TwitterやFacebookでお願いします。ハッシュタグは #音楽ビジネスの未来 です。
海保さんのサービス「Frekul」の紹介
海保:株式会社ワールドスケープの代表をやりつつ、ドラマーをやっています。自己紹介から。SONALIOというバンドでやってるんですが、そのプロモーションビデオをご覧ください。
このドラムを叩いてるのが、僕です。
元をただせば、僕は高卒でフリーターをしながら、貧乏バンドマンをして、いつか売れてやるぞ、とやっていました。そうしたら、めでたく2008年にメジャー・デビューのチャンスをもらいました。TVに出たり・・・ミスチルに・・。ですが、現実は甘くなかったというのを知るわけです。
1つは、意外とTVで流れてもCDは売れなかった。もうひとつは、CD売上に対して自分たちに入ってくるお金が少ない。契約にもよりますが、苦しい契約だったので、正直給料をもらってなくて、結構ギリギリ。同時期の仲間も難しいし、有名なバンドのメンバーも、結構生活厳しいと。そういうことに、初めて気付きました。それで、どうやったら喰っていけるか、というのがスタートでした。
例えば、日本のCD売上の推移ですが、1998年からどんどん下がって、ダウンロード課金の増分もあるけれど、CD売上の減少をカバーしていなくて、AKBの商法などもあり、純粋な音楽、というところは、もっとすごい勢いで下がっていて、これで生活は無理だなと思いました。
もう一つは、印税の配分。アーティストには、1%しか入ってこない。作詞などは印税が別なので、ちょっとましですが。これだと、普通にオリコン10位でも、バンドのメンバー1人あたりには、数十万円しか入りません。
JASRACの徴収額の総金額は、変わっていない。つまりこれは、CDから人が離れているだけで、人は音楽を聞いている。
で、どうすればいいか?
殆どの音楽は、データ形式で聞かれています。でも、これはコピーが出来てしまうので、売り物としては適していない。で、適しているものは、コピーできないもの。それは、体験と物体。ミュージシャンでいうと、体験はライブとファンクラブ、物体はグッズとファンクラブ。なので、できるだけこういうものに効率よく、そして中間業者を挟まずに誘導すればいいのでは、という発想です。
そこで、音源は無料化するけれど、メールアドレスだけは貰うことにして、メールリストをどんどん取っていきました。それによってプッシュし、ライブを告知したりして、僕らは事務所を辞め、独立して、やっていこうということになりました。そこでは、メールの一括送信システム、楽曲が遅れるシステム、ファンクラブの運営システム。これがあれば出来るね、という話だったんですが、これが無かったんですね。
それで、じゃあ「作る?」という話になって、でも、ITビジネスは全然知らなかったです。で、プログラマーの友達に聞いたら、結構お金がかかると。じゃあ、会社を作って、それを使ってもらったら、ビジネスにもなり、新しいムーブメントになるのではないか、という発想です。これがFREKULです。1,000組くらいのアーティストが使っています。ここで、楽曲をダウンロードするとメアドがとられて、そこで告知がされる。いままでは何万人もいないといい生活ができないのが、これなら、熱心なファンが500人いれば、食べていける、というシステムです。
で、ミュージシャン自身がスタッフをやとって、どんどん規模を大きくして、ミュージシャン自身が音楽ビジネスを回していけるのではないか、と思っています。今日は、よろしくお願いします。
ペ・ヨンボさんの自己紹介
僕自身、韓国人です。日本で産まれて、出身は愛知県名古屋市です。僕自身は、元々音楽業界の人間ではなく、飲食事業で経営を始めて、それが一段落したときに、その前に少しWeb会社で働いていて、僕も音楽好き。2004年くらいだったんですが、丁度iTunes が出てきて、競合が出てきて、このビジネスを始めました。
このWASABEATは僕が始めたサービスなんですが、クラブミュージックのiTunes です。僕は、クラブミュージックという言葉があまり好きではなく、場所が限定されたり、悪いイメージを持っている人もいますし。これは、異種格闘技戦です。ルールなし、なんでもあり、ヤバイ・カッコイイ音楽を作った人が勝てる、という世界なんです。世界中の人からの音楽をキュレーションする、そんなサイトとなります。クラブミュージックというジャンルなので、日本では中々紹介されないんですが、それを少しでもわかりやすくキュレーションして、配信しています。TOP10ですとか。進化の早い世界ですので、テクノの最新系をコンピレーションにしたりとか、それから、最新のアーティストをピックアップして、ジョージ・フィッツジェラルドの特集をしたり。わかりやすくして、配信しているというのが、特徴です。
もう一つやっておりますのが、block.fmというインターネット。M-floの高橋 拓と一緒にやっています。彼のバックグラウンド、やっていることは、クラブミュージックの影響が強い。彼は、定期的にクラブイベントをやったりだとか、インターネットラジオ番組をやっていたり。ひょんなきっかけで親交があったんですが、クラブミュージックみたいな良い音楽があるのに、知られる場面などがなくて、殆どTVでも扱われない。ラジオですら、かかることが少ない。いい音楽があるのに、それを宣伝する場所がない。だったら、そういう場所をつくればいいじゃん、というのがblock.fmです。大沢伸一さんですとか。
僕自身は、この2つのサービスを通じて、よりいい音楽が日常に染み渡るような、そんなことを心がけて事業にしています。ありがとうございます。
第二部(フリートーク)
南:では、音楽ビジネスの未来というテーマで、このメンバーと話をしていければと思います。ぜひ、気になることはメモしておいて、質問してください。
まず最初に、佐久間さんに聞いてみたいんですが、一言でいうと、日本の今の音楽シーンはどうですか?今の現状はどう見ていて、何が面白くて、何が懸念ですか?
佐久間:まず、音楽自体は僕は面白くなってくるんじゃないかな、とおもいます。作り方とか変わってきたし、作り手も自由な発信ができる。ただ、ビジネスと捉えるとかなり深刻で、今までの延長線上にはいられないかな、と思います。楽しい面と、悲惨な面が同居。
南:悲惨な面といいますと、先ほどの海保さんのときにもありましたが、どのあたりが大きく変わってきているんですか?
佐久間:おおざっぱにいえば、音楽の商品としての価値がなくなってきたというのがありますね。売れないものを、どうして作るのか?というのがあります。
南:音楽を聞いている時間は、減ってるんですかね?
佐久間:そういう調査結果も、ありますね。あと、情報がどこでも手に入り、YouTubeで聞けちゃう。例えば、音楽番組を見たりとかでいくと、YouTubeでも平均1日で2曲。これは、音楽番組などと比べると少なくて、減ってきている。通勤・通学中の音楽までは、カウントされていませんが。
南:そうすると、業界として、昔からレーベルの人からすると、ミリオンセラーが昔はあって、会社にお金が入る。会社が潤って、新人バンドの発掘もできたかと思うのですが、その発掘が難しくなったり、スタジオの運営も難しくなってきているのかなと。制作サイドは、どう変わってきているんですか?
佐久間:そうですね、人員削減から始まって。制作サイドは、人員不足で忙しい。ただ、これから大きな問題になるのは、新人の育成が難しくなり、新しい音楽が生まれない。コマは、売れている人のベスト盤。そうすると余計音楽離れが進む。世の中は、AKBと嵐だけ、というふうになっちゃう。
元々、音楽が好きな人は、能動的に探していくから大丈夫だけれど、一般的な人、なんとなくGLAY買ってみよう、という人がどんどんいなくなる。
南:面白くなってきているというのは?
佐久間:興味のある人、やっている側ですね。
南:音楽を本当につくる、プロデユースするという立場での変化はどうですか?
佐久間:僕自身は、あまり変化はなくて、自分の価値観としてのいい音楽をつくる。変化してきたのは、予算ですね。人件費・スタジオ代。影響が出るのが、レコーディングの時間が無くなるという点です。
2005年くらいまでは、1つのアルバム12曲で、リズム取りに6日。そのペースでいくと、エンジニアのお金、スタジオ代などで、ギャラ抜きで1600万円位。で、だいたい1アルバムでトータル1ヶ月くらいかかる。それが、最近だと1アルバム60万円。
南:佐久間さんが関わっているもので?
佐久間:ですね。それだと、1日5万のスタジオを6日。で、あとは人件費。これが、インディーズだと、そこに広告宣伝費も入っていたりする。恐ろしいことに、インディーズならあれですが、某メジャーバンドだと、やはり5万円のスタジオで2日間で3曲。
海保:なんのためのメジャーバンドなのか、わからなくなりますね。
佐久間:はい。それが、音楽のクオリティに関係してしまう。多くのバンドは、1日2曲くらいを本気でやって、ドラムが集中してと。集中できない、よくない演奏を、頭から最後までいけるので、それでOKと。
南:海保さんの時は?
海保:僕のバンドは、ローコストバンドで、正直60万もかけてないですね・・・。メジャー時代は、多少予算もありましたが、安くできるなら自分たちでやってよ、となりました。今とそんなに変わらないようになって、ドラムだけスタジオ。ベースとかギターは、爆音をシミュレートできるソフトを使って、自宅で録音してしまう。
南:やり易くは、なってるんですかね?
海保:はい、技術やエンジニアが良くなっているので。
南:海保さんにも聞いてみたいのですが、アーティストを食べさせるためのサービス。500人のファンがいることで、音楽が続けられるサービスということですが、日本の音楽業界って、一部の人の売上の余剰で新人発掘。でも、最近だと発掘に回らなくて、ベスト盤で食べると。新しいバンドが出る中で、食えると、売れる、は違うと思うのですが、「食うためにはこういう方法がある」「売れるための仕組み、こんなのがあったらもっと発掘」という観点で教えてください。
海保:基本的には、メジャー・デビューして、宣伝して、全国のタワレコで売って稼ぐというビジネスは、そのプロジェクトに多くの人が関わってしまう。さっきの話で、1%しか入ってこない。あの図って、ここが持って行っているからずるい、という話ではなく、多くの人達が関わっているからああなる、という話です。
最近は、先ほどの話のように、60万より抑えられるし、ネットを使ってススメたり、あるいはココナラさんのサービスのように、色々なものが外注できます。個人レベルで、素人が聞いてもわからないものは作れるようになってきている。しかも、そこに人件費をかけない、単純に売上に対して取れる部分が増える。食える状態にもっていくことのできるやり方は、増えているのかもしれません。実は、食うということでは、昔より環境が整っているのかもしれません。
南:Frekulは、ファンクラブやグッズのためのサービスというのがありましたが、今日きている起業家やITの人たちへの参考として、「ここは苦労している」「ここが解決できると」というのは何ですか?
海保:ありますね!音楽業界の、完成形のイメージが僕にはあって、そこに圧倒的に足りないのは、Pandoraのようなパーソナライズドラジオ。
海保:あなた専用のレコメンドラジオ。あのジャンルが、音楽業界の未来をつくる。いい音楽があるのに、どうやってそれを知らせるのか?どうやって届けるか?と、どうやってマネタイズするか、というところ。この前者のところ、あなたの耳に届けるものが絶対必要。そのための効率が最もよいのは、Pandoraのようなものかなと。
海保:あなた専用のレコメンドラジオ。あのジャンルが、音楽業界の未来をつくる。いい音楽があるのに、どうやってそれを知らせるのか?どうやって届けるか?と、どうやってマネタイズするか、というところ。この前者のところ、あなたの耳に届けるものが絶対必要。そのための効率が最もよいのは、Pandoraのようなものかなと。
さっきの売れるという話ともつながりますが、TVはメジャーでないと難しいし、それがメジャーになるメリット。でも、それは、生活につながりにくい。独立したビジネスの状態に近い。僕は、Pandoraのようなものが近いかなと。
南:ありがとうございます。WASABEATですが、イメージ的にはiTunes は購入するだけですが、WASABEATは、DJの人のコミュニティにも近いかな、とも思うのですが。クラブミュージックの文脈ですが、人々はどうやって音楽に触れるのか、このあたり、海外との違いはどうですか?
ペ:クラブミュージックは、音楽の販売の部分で食べられない状況はかわりないです。音楽自体をプロモーションとして捉えている。それが近年、顕著に現れているとおもいます。クラブミュージックって、レコードの文化から発展しているのもありますが、昔からやっているクラブのDJに配るというのがありまして、DJってどこでプレイするかといえば、沢山の人がいるところでプレイする。そのプロモーションで配られたレコードをきかせるというやり方がありました。今は、サウンドクラウド、ミックスクラウド、といったところで、販売より前に、こういったところで公開し、フリーダウンロードしたりするのが多いです。
▼ペさんが運営に関わるblock.fm
▼ペさんが運営に関わるblock.fm
ペ:そういった意味では、クラブミュージックの中で、先に聴かせて、ファンにするという、ベースが世界。世界中で、自分のギーグができたり、活動の場が増えるんですね。それが盛り上がって、世界中の年からオーガーナーザ−がかかって、ずーっと飛行機にのって世界中で飛び回って、それで食べていけるアーティストが多いんですね。ほんとに、ヨーロッパの小さい国に出て行って、日帰りの国にいったり。DJだったり、フェスだったり、ライブでそこそこのお金を稼いだりと。億万長者にも、なれちゃうんですね。クリエイティブな音楽をつくって、世界中に発表しています。
南:ヨーロッパって、すごくライブハウスやクラブにいくのが日常だし、クラブとポップ・ミュージックの境があいまいで、人が音楽に触れる機会が多い気がしますが。
ペ:日本の場合は、日本語の音楽があり、別にクラブミュージックがあり、という風になっていますが、向こうでは、どれも距離が近いですね。クロスオーバーして、一つのシーンにいる、という感じです。イギリスとかで、顕著ですね。イギリスのBBC1という国営の放送局での番組も、蓋を開けるとクラブミュージックの音楽ばかり。そういう区別が、あんまりないですね。
新明:クラブミュージックって、B2Bに近い気がするんですよね。DJが購入する。本当のファンだけでなくて、業界の人がレコードを購入して、グルグルまわる印象があるんですが。プロモーションでいうと、始めはDJだったり?
ペ:WASABEATのお客さんは、大半がDJですね。そのあと、出かけていって、いろんなところでプレイするという媒介役になってるんですね。そういったことによって、音楽が拡がると。
南:佐久間さん、音楽好きの人はいいんだよという話がありましたが、なんとなく聞いている人もいて。本当に好きな人にとっては、ツールの進化って面白くて、前よりも面白いものに出会えるようになっていると思うのですが。そういったものがあって、言うても音楽好きのためのものだと思うんですよね。音楽の、本当の意味でのファンじゃなくて、マス層が音楽を聞くようになるためには、どうしたらいいんですかね?
佐久間:それにはまず、いい音楽を作ることですね。普通の人も興味を持てる、いい音楽。それをどう届けるかもそうだし、若い子がいい音楽をつくったときに、どう陽の目を当てるのか?今、才能のある子を含めて、音楽をする子の数が凄く増えてきている。そうすると、見出すのが難しい。そして、才能のある子は、売り出すのが苦手で、自分の世界に閉じ込もっていることが多い。そういう意味で、数が増えた分、大変になってきているなという感じがありますね。そして、ボーカロイド。これは、普通の音楽と同じで批評家がいて、というのが、ここのところはヒットチャートの入れ替わりが激しくて、評論を書いている間に、チャートが変わってしまう。これは、一般の人には、尚更探すのが面倒になってしまう。
南:どこにいるんですか、そういう人たちは?
佐久間:家ですね。あとは、バンドがライブをやっても、数は限られますし。
南:インディーズといっても、色々と幅はあると思うのですが。ライブビジネスというのは、今も昔も、変わらない環境なんですかね?
佐久間:上手くいっているところと、潰れるところの二極化している気がしますね。そろそろ、厳しくなってきている感じがしますね。最初友達を読んだりして10人—20人来ても、友達が見に行くのに2,500円〜3,000円。それって、CDですよね。長くて30分、普通は20分。でも、そういうバンドに月に何本もできないですよね。違う町にいったら、友だちも呼べないし。
もちろん、育って大きくなって、というライブハウスがあればいいんですが、それは、大手のライブハウスが忙しくなって・・・という形になってしまいます。
南:音楽だけに閉じた話では、全くないんですかね。他に使う。30分〜60分の競争、が根っこにあるんですかね。
海保:インディーズ規模のライブハウスは、時代の移り変わりごとに、重大な問題をはらんでいます。海外だと、クラブとかライブハウスにいくのが気軽な感じだったりするんですが、それは、ほんとにもう20−30年前は、日本もそれに近かったらしいですね。そもそも、全然今よりもライブハウスの数が少なかった。10分の1とか。そこしかない、という感じ。そもそも、昔はライブハウスに出るのが難しく、落とされて落とされて、という。そこに業界人がきて、ピックアップされるエコシステムがあった。お客さんが沢山いる。なので、お客さんがいて、力のあるバンドがやっているので、知らないで飛び込んでも、いいバンドに出会える確率が高く、楽しめる確率が高かった。
でも、ライブハウスが増えてきた。バンドが増えてきたというよりも、ボーカロイドなど。そうすると、スケジュールが埋まらないライブハウスが増えて、質が下がる。これは、ラーメン屋だと、潰れて淘汰されるが、ライブハウスの場合は、バンドからお金を取り始める。お客さん入らなくても、金を払ってくれるならいいよ、という風になり、お客さんが入らないバンドは、ライブハウスにお金を払っているというのが、当たり前になってしまった。
ということは、ラーメン屋と違って、ライブハウスは潰れない。そうすると、仕事終わった後にライブハウスにいっても「何このバンド?最悪」となって、ライブハウスという選択肢がなくなるという、負のループが回るわけです。
なので「赤字になるライブはやらない」というのを、言っています。200人入るライブハウスで、1人1万支払ってやるというのは、ばからしい。冷静になって、客を呼べないなら小さいところでやって、誰も出ないライブハウスは潰れ、素晴らしいライブハウスが生き残って、高確率でいいバンドが出ている、という風に戻せる。ただ、ミュージシャンは、ばかなんですよ(笑)。
南:上手く発掘して育てるエコシステムが崩壊していて、それをこれから再構築する、という感じですかね。
海保:そうです。そこで、Pandoraのようなものを。
新明:ユーザーからすると、可処分時間の話が深刻。画面に何かが動いているものとセットという世界に変わってきていて、それに音楽が耐え切れていないかも。電車の中で、画面なしで音楽というのは・・・
海保:それは、危惧というか、しょうがないな、という風に思っています。音楽が映像に勝つのは難しいので、映像と組んでいって、いいPVを撮影して、拡散など。あとはFrekulじゃないですが、ライブって絵があるじゃないですか。そういうところにつなぐためのツール、ライブのエンターテイメント。僕のバンドのライブを観るというのにしていけば、まだまだ戦えるのかと思います。
新明:コンテンツとしては、クラブミュージックが強い?
ペ:耳で感じて、踊るという文化なので、絶対になくならないし、根源的な欲求につながりますね。音楽を純粋に楽しむ文化という意味では、そこに価値があって、アメリカは空前のダンスミュージックブーム。アメリカにいって、産業化されたというところもあるんですが、我を忘れて踊りまくるという背景が少なくて、どちらかというと、クラブというネーミングの元になった、元々アングラで密かにやっていたのが、野外フェスになって、みんな爆音で聞いて、日頃のストレスを解放して、そういう純粋な人間の楽しさが紐付いているのが音楽。そういう意味では、なくならないし、もっと盛り上がっていくとおもいます。
海保:クラブは、音楽コンテンツというより、体験ですね。ただ、僕は逆に、クラブシーンって、アーティスト単位で熱狂があるというよりは、もうちょっと広い意味で、そのイベント単位でファンがいるイメージですね。
ペ:今のクラブは、自分でパーティを企画する人が日によって違ったり、翌週には違うアーティストがきたり。
海保:そういうときって、みんなの視野が、特定のミュージシャンでなくて、もっと広い。そうすると、マネタイズが、もっと難しくなる印象もあるのですが、どうでしょうか?
ペ:日本では、まさにそんな感じですね。海外では、作り手の顔がキチンとメディアに出ていたり。ちゃんとしたマスメディアで、顔を出して活動できるのが、海外です。
新明:Pandoraですが、今って発見の部分ですよね。音楽が耳に触れる時間が少ないなかで、どう発見するか?実際、日本でPandora的なものがきて、使われますかね?
海保:ぼくは、ある程度くるかなと思いますね。iPhoneは、飽きるんですよね。とりあえず、YouTubeとかにいってみるんですよ。入れてみて、検索して、再生してみて。関連動画っていうのも、別に本当にマッチングされているわけではないので。YouTubeが、役割を果たせていないのかなと。例えば、iTunes と連動していたりとか。そこで学習精度が高まって、など。それが、iPhoneだけではなくて、リビングでも動機したり。そういう入り口が浸透する可能性が、あるんじゃないかと思ってるんですよね。
新明:ナップスターというのがあったじゃないですか。あれ、全然日本では、上手くいかなかったんですよね。音楽をダウンロードすると、そのときのナップスターは、コンテンツのアクセス権が制限されてたんですね。今は、僕ら、マルチデバイスで聞けないとイラッとしますよね。そのアクセス権が、今にマッチしたものになると、使われる可能性もある?
海保:スポティファイは、最終的にミュージシャンへの還元性が低くて、続かないと思います。そこには、代表曲はあって、これは好きかもとなり、そこからFrekulみたいなものに入っていく。誘導する。
南:1ユーザーとしては、Pandoraみたいなのが入ってきたらいいなと思いつつ、難しさも感じますね。日本だと、著作権はJASRACだけど、楽曲権は個別の会社となって、契約が難しい。35社くらいと、個別に契約しなくちゃならない。
海保:僕は、根っこからひっくり返すのが好きなので、この35社を入れないようにするのが好きです。
南:クラブミュージックのサービスについては、レーベルに権利を取っている?
ペ:各出演者の人たちに、それを取ってもらっています。ただ、クラブミュージックについては、宣伝してもらってなんぼ、という感じなので。
会場からの質問
南:ここで、会場のみなさまから、質問を受けてみたいと思います。
会場質問「ソーシャルカラオケという、友達でなくて、好きな人がオフ会に行くサービスを運営しているのですが、佐久間さんと海保さんにお聞きしたいです。今、カラオケの問題点は?」
佐久間:僕は全然いかないので、わからないなあ・・・(会場 笑)
海保:僕は、カラオケが好きで、よくいくんですが、アーティストのときに口コミでというのもありますし、一定の量で盛り上がると思っています。問題点というか、要望は、別にYouTubeみたいにオープンにすればいいなあと。検索じゃないですか、どのみち。アップロードしておけば、どんなインディーズにも歌えるし。
会場質問「音源にも問題があるかなと。MIDIでつくると、俺の音源がない、とか。それって、事情があるんですかね?」
海保:2つあって、スタートしたときは、データ配信の回線スピード。もう一つは、原盤権の問題。レコード会社に対して使用料を支払う必要が出てしまうが、レコーディング音源でなければ、著作者への支払いのみでOK。ああ、あとはキーが変えられないか・・・
会場質問「Pandoraなどの話ですが、あそこの本質って、人の好みによっての膨大なレコメンドエンジンが本質かと思っています。昔は、人に教えてもらってやるというのがありますが、サウンドクラウドなどに変化。機械的に集められた人の好みが上陸したときに、本当にそれは、人のおすすめになるのか?自動パーソナライズドの可能性は?」
佐久間:Pandoraの場合、音楽家が100人くらいいて、人が分析していて、だから新曲のUPに時間がかかる。そういう人が毎日やっている。日本の場合は、日本でそれをやる人の資質にかかっているのではないかと思う。自動でできればいいが、自動でできないので、それ次第かなと。
ペ:スポティファイのレコメンデーションエンジンは、クラブミュージックについては、まあまあいい。多分API、Facebookからひっぱってきてるかと思うんですが、専門的にやっている人間にとっても、なかなかいいですね。
海保:根本的には、かなり好みが割れるところかなと。圧倒的に技術の進歩よりも、それが早い。怖いようで興味があるのは、本当に人間はこういう人がこれが好きになると、解析し続けたゴールに、パーフェクトなものができるかもしれないな、というのに面白みを感じます。人力を使わないでも、かなりの精度にできるというのに。でも、それを裏返すと、世界で最も好まれるのは、この曲である、というのも作れてしまうので、それは怖いですね。学問的な、好奇心?
会場質問「ケータイ会社に勤務しているのですが、佐久間さん・海保さんみたいな、音楽を作って届ける人に聞きたい質問です。今まで音楽が売れてきた時代と、売れなくなってきた時代を比べて、音楽を売れない時代に変化したのか、響かなくなったやり方があるのか、その変化で感じているものがあれば、教えていただけないでしょうか?」
海保:分り易いのは、タイアップ神話。90年代は、月9や人気アニメ。要は、認知されれば売れる。何回か聞けば、なんとなく好きになり、3000円を出す。それが、完全に聞かなくなった。今、いやらしく数字を見ていても、たとえばワンピースの主題歌をやっていたバンドも、マジこれだけ?など。ネットによって、趣味は多様化していて、単純にマスに、というのも増えたという印象ですね。
佐久間:海保くんがいった通りで、タイアップが効かなくなってきましたね。もちろん、やらないよりはやったほうがいいですが。今、難しくなってきたのは、単純に予算のなさ、動ける人間が減ったということ。それから、思い入れ。そういうものがとても希薄になっている感じがしますね。そういう気持ちが、わりと少ないかなと。インディーズにも、本人にしかそういう気持ちがなくて、周りに人が少ない。方法論としては、ネットを使ったプロモーションですが、それをやるための人員や資金など。その確保ですかね。
会場質問「海保さんあたりにお聞きしたいのですが、Pandoraのお話がありましたが、ビジネスとしては毎年赤字。ビジネスとしては、健全ではない。でも、投資家が投資をしていて、それが結局音楽業界に流れているというのは、いいかなと思うんですよね。別のところからお金をとって、それを音楽に還元、というのはどうですかね?二人が考える、他からお金をとるという流れは?」
海保:実は、さっき省略した3つ目は、「権利」。使っていいですか?という権利は、企業に売れるものですね。コーポレイトサイトで流すとか。しかも、できれば、JASRACのように大きすぎる組織ではなく、中間に介在する人が少なく、アーティスト本人にダイレクトにお金が入る、ということならB2Cになるかと。
会場質問「青春時代、BOØWYとかを聴いていて緊張して、質問出来ません(会場 笑)。
最近、機材の進化とかで、安くてもハイクオリティでできるとは思っているんですが、昔のアナログ時代とはお金のかけ方などが違うと思うのですが、安くてもクオリティが高いところに近づいているのか?というところ。それから、近づいてないのであれば、それって満足か?という。iPhoneで聞くと、音質は落ちてもいいのかなあ・・・と」
佐久間:そこは、シビアな話ですね。ある程度のクオリティでは、そこそこできるんですね。ただ、そこにはある程度以上は求められないで、諦める。自宅でやってこい、とか。そこそこな音楽の時間しか、とれない。音楽はいくらでもデジタルで処理できるけれど、入り口と出口はアナログ。そこは、どんなにデジタルが進んでも。いい音を取ろうとすると、大きなもの、高いもの。ボリューム1つでも、ラジオについているものから、馬鹿でかいものもあり、音は違う。入り口と出口だけは、アナログをキチンとしないと、いい音は出ない。
いいエンジニアがやったら、それは違う。そこで、僕は戦ってますね。iPhoneとか、MP3とかじゃないですね。MP3とWAVの違いは、プロでも差は解らない。プロのエンジニアでも、正答率は50%。人の音楽だと、わからない。それでも、いい音、悪い音というのがあって、それはこういう音質の問題ではなくて、音楽の質。これは、iPhoneで流してもいいものになる。そこだけはちゃんと作らないと、逃れようがないです。
会場質問「海保さん。ミュージシャン主体の活動をしていて、そこで食べられる人が少ないのを打破したいというのは、理解しました。音楽業界の最終形という話がありましたが、そのイメージを教えていただけませんか?」
海保:年々新しいサービスが出てきているので、Pandora、とか、フリークとかではなく、本格的なパーソナライズドラジオが入り口になっている。飽きていても、いい音がきけたり、など。で、そこに音楽を提供しているミュージシャンは、Frekulのようなものでマネタイズができる。シンプルに言えば、ミュージシャンは、曲をアップロードしたら、Pandoraのようなもので世界、国境に関係なく流れる。そこで、これが物凄く好きで、この人達のものを全部聞きたい。で、ライブ告知につながったりと、アクセス権のマネタイズ。
あるいは、それも無料で提供して、その先のグッズなどへの導線が自動的にひかれる、というものですね。ミュージシャンとしては、ひたすらいい曲をつくって、あとは放っておく。翌月に、FREKULからの金額で答えが出る。そういう自動化ですよね。
ただ、細かい戦略や事務作業、ライブといったところは、バンドメンバー以外のスタッフが必要になるシーンが増える。今の音楽業界の人は仕事を止めてくださいではなく、個別のアーティストをサポートする人が増える。
会場質問「先程の佐久間さんの予算減の話も、この流れで解消されるという?」
海保:素晴らしい音楽を出せば、勝手にお金が流れると。
南:最後に、司会者特権での質問を佐久間さんに。今まで、あったアーティストの中で、一番衝撃が走った人は?
佐久間:会ったときに緊張したのは、早川義夫だけですね。ジャックスバンド。全然違う意味で、会った時の印象が強いのは、GLAYですね。たまたま、撮影をしてたあとで、すごい化粧で(会場 笑)。それから、東芝の会議室で会ったBOØWY、怖かったですね(会場 笑)。
南:ありがとうございます。今日は、何が結論というわけではありませんでしたが、今後の音楽ビジネスを考える上で、新しい視点を得られたのではないかと思います。
続きはまた、この会場で懇親会をやる予定ですので、一旦お開きとします。
音楽ビジネス専門ではないので、つたないですが、海保さん、佐久間さん、テさん、新明さん、ありがとうございました。
(会場 拍手)
次回は、6月28日。今度は、コンテンツ・ビジネスの未来について、東京オタクモードの方などをお招きして、開催する予定です。