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読書記録など。

「日本の労働時間は世界15位と低い」の謎を解く

日本人は働き過ぎでないという、誤解だらけの上記記事が話題になっている。

 

上記記事に対する反論記事として以下が出てきた。

全ての項目について反論しており、私からはほぼ付け加えることはない。

ただし、日本の労働時間がOECD調べで15位である点についての説明が不足している。

 

 

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nyaaat/20160228/20160228112827.jpg

id:nyaaatさんの記事より画像を引用させて頂いた。

日本は労働時間が世界15位だが、サービス残業を含めると少なくとも5位になるとしている。

しかし、サービス残業に関して、日本にしか存在しないというわけではない以上、5位であるという主張は無理がある。

 

では、日本は労働時間に関しては長いとは言えないのか?

そんなことは無い。

以下のサイトからデータを参照する。

http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11837898927.html

すると、2014年のOECD調べにおいて、日本の男性労働時間は、OECD26カ国で世界一位となっている。

日本の男性の休日も含んでの1日当たりの平均労働時間は375分で、OECD26カ国の中で最長です。26カ国平均の259分より116分と2時間近くも長く日本の男性労働者は働いているのです。一番少ないフランスの173分と比べると日本の375分は2倍以上もの長時間労働となっています。

 

OECD公式データはこちらを参照。

http://www.oecd.org/gender/data/balancingpaidworkunpaidworkandleisure.htm

 

また、以下のサイトを参照すると、日本女性の労働時間・学習時間は16位であることがわかる(男性はやはり1位)。

こちらもOECD加盟国ランキング2014年版データである。

http://memorva.jp/ranking/world/oecd_paid_work_unpaid_work_2014.php

順位 国名 女性の
有償労働・学習時間
(分)
  順位 国名 男性の
有償労働・学習時間
(分)
1 中国 291   1 日本 471
2 韓国 273   2 メキシコ 468
3 スウェーデン 269   3 韓国 422
4 カナダ 267   4 インド 391
5 オーストリア 249   5 中国 390
6 エストニア 248   6 ポルトガル 372
7 スペイン 246   7 オーストリア 365
8 アメリカ 242   8 トルコ 360
9 スロベニア 234   9 アイルランド 344
10 メキシコ 233   10 カナダ 341
11 ハンガリー 232   11 ニュージーランド 338
12 ポルトガル 231   12 スペイン 334
13 南アフリカ 215   13 ハンガリー 327
14 ノルウェー 214   14 エストニア 326
15 フィンランド 210   15 南アフリカ 325
16 日本 206   16 スウェーデン 322

 

日本は、男女平等度ランキングにおいて非常に低い順位であることが知られている。

世界経済フォーラム(WEF)の2015年版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本は調査対象145カ国のうち101位だった。

日本においては女性が正社員でなく、パート・アルバイトで働いている割合が高い。

その結果、男女を含めた労働時間ランキングでは15位と、一見それほど多く働いていないように見える。しかし、男女別のデータを見れば、それはサービス残業の概念を入れるまでもなく誤りであることが分かるのである。

 

以上。

 

 

 

 

「新しいはてなブックマーク」アプリへの要望

はてなブックマークアプリがアップデート版をリリースした(現在はiPhone版のみ)。

bookmark.hatenastaff.com

 

はてブアプリは普段からよく使っているので、早速アップデートしてみた。

まだ少し触っただけだが、良くなった点もある。

しかし、不満も多いので要望を書く。

 

アップデートで良くなった点

・別の記事に飛んだ後、その記事をブックマークできるようになった点

これはかなりいい。ブックマークしなくても、ブコメが読めるだけでも面白い。

今までは、記事一覧から記事に飛んだあと、他のページに移動してもブクマは元記事のままだったので、派生記事のブクマが面倒だったのが、改善された。

この部分は、以前から不便だと思っていた箇所なので改善されたのは高評価。

 

アップデートで悪くなった点

・記事一覧の画面でブクマ済みの記事が判別できない

今までのはてブアプリでは、記事にブクマ済みの場合は表示が出て、ブクマ済みか判断できた。

アップデートしたところ、記事にブクマ済みを示すアイコンは出ないようだ。

いちいち記事を開いて、画面下部のはてブアイコンがチェックマークに変わることを確認しなければわからないのはかなり不便。

一刻も早くなんとかして欲しい。

・記事の表示速度がダウン?

今までよりも、アップデート後の方が記事をタップしてから記事が表示されるまでにもたつく印象。

前は白い画面のまま待つ印象があまり無かったが、アップデート後は白い画面で少し待たなければいけないストレスを感じる。

 

・記事本文の表示が無くなった

今までは、記事一覧画面において、記事タイトルの下に本文が少し表示されていた。

その箇所で読む価値があるか判断することもあったので、現在のタイトルしか表示されない仕様はきつい(記事中に画像が無い場合だけ本文も表示されるようだ)。

 

・タグつけがもたつく

私は記事にブクマした際にタグをつけるようにしているが、今までと違ってブコメ画面でタグアイコンをタップし、下からせり上がってくる(この演出も邪魔)タグ画面からようやくタグを設定できる。

タグの存在感もずいぶん減少し、今後はてブアプリではてブを始めるような人はタグ機能に気づかないのでは、と思える。

記事ごとに毎回タグをつける身としては、1回1回は少しの手間でも結構なストレスになりそう。

 

・ブコメ欄が、お気に入りユーザ→人気のコメント→その他になった

今までのアプリでは、人気コメントと全部のコメントをタブ形式で切り替える形だった。

それが、お気に入りユーザ→人気のコメント→その他のコメントになったことで、全部のコメントを見る際にやや面倒になった。

個人的には、お気に入りユーザのコメントも別に優先して見たいわけではないし、人気コメントが最も正しい(面白い)コメントでもないと思っているので、人気コメントを優先する形式は便利とは言えない。

 

・ブコメのURLに1タップで飛べなくなった

ブコメで気になるURLが貼ってあったとき、今まではURLをタップすることでリンク先に簡単に行けたが、アップデート後はURLをタップしようとしてもブコメページに移動し、リンク先にはブコメページからしか移動できない。

これも地味に不便。

 

結論

現在使ってみてのファーストインプレッションはこんなところ。

今のところは正直「前の方がよかった・・・」感が強い。

不満ばかりになってしまったが、はてなのサービスは気に入っているので、今後改善してもらえることを期待している。

せめて、ブクマ済みの記事を簡単に確認する方法については、早期の解決を願いたい。

 

記憶を元に書いているので、間違いがあったらコメント下さい。

以上。

 

 追記:記事タイトルを修正しました。

 

足し算の順序にこだわる理由と、それでも言いたいこと

小学校の算数教育について、最近ある議論が熱い。

かけ算の順序問題だ。

 

かけ算の順序問題 - Wikipedia

togetter.com

 

かけ算だけでなく、今度は足し算の順序問題が話題となっているようだ。

togetter.com

 

こちらも、本質的な問題はほぼ同じだと思うので両方を扱う。

 

足し算の順序問題についての反応には、「オカルト」「意味がわからない」といった反応も多い。

私は塾の講師アルバイトを行った経験がある程度だが、このような教育方針について、「オカルト」的だとは思わない。その理由を述べる。

 

なぜ、順序にこだわるのか

算数が苦手な生徒を教えていたときに、気づいたことがある。

彼らは、公式の計算方法は知っていても、その意味については理解できていないのだ。

例えば、

「たかしくんはりんごを3つ持っています。新たにりんごを5つもらいました。ぜんぶでりんごはいくつでしょう」

と聞かれると、

3+5 = 8

と書ける。

「たかしくんはりんごを8つ持っています。りんごを3つ食べました。りんごはいくつ残っていますか」

と聞いても、

8-3 = 5

と書ける。しかし、

「たかしくんはいくつかりんごを持っています。たかしくんは、持っているりんごを3つ食べました。食べたあとには、りんごは1つ残っています。はじめに持っているりんごはいくつでしょう」

と、問題を複雑にすると

3-1 = 2

などと間違えるのである。

これは、この子供が問題文を理解した上で計算を行っているのではなく、「問題文に出てくる数字」を、「足す引くを問題文の雰囲気から想像して」、「問題文に出てくる順番」で計算していることが原因である。

かけ算の順序問題も同じで、やはり順番を理解していないので、割り算の問題になると問題文に出てきた順で割り算を行ってしまう。

(酷い子になると割り算と掛け算を取り違えるが、大抵の場合は問題文の雰囲気は読み取れるようで、割り算であることは気付けることが多い)

つまり、この子供に関しては、計算には順序があることをよく理解させる教育が必要となる。

そこで、足し算やかけ算の段階から、本来の交換法則を無視してでも論理的と思われる順序を重視して教育を行うという発想になるのだろう。

つまり、この教育は、初期段階で今後の文章題に対応する力をつけるためのものだと評価できる。

 

たし算順序の問題

理屈は理解できるが、それでも納得できないところがある。

順序を重視することで、本当に分からない子が分かるようになるのか。

その観点からの批判も多いが、これはしょうがない部分もある。

国家レベルではそのような検証はすべきと思うが、教育者レベルでは、それこそ自分の生徒に試してみて、効果がありそうか判断するしかできないであろう。

今、困っている生徒に対して、「実験結果を待ってから」ができない事情はあるだろう。

最も多いであろう批判は、「そもそも足し算にも掛け算にも論理的な順序など無い」という主張だろう。

こちらに関しては、「常識的には順番がある」ケースがあるとはいえ、考え方次第なので私も同意する。

そもそも、上記の説明でもある通り、順序を理解していない生徒は、引き算や割り算で炙り出せるのだから、数学的におかしい採点をすべきでないと思う。

ここまでなら、多く指摘されているのでわざわざ言う必要もないかもしれない。

私が言いたいのは、次のことだ。

 

文章題を解く力と、計算問題を解く力

以下のサイトから、算数問題を引用する。

算数文章題で脳を鍛える

問題

 A町(川上)とB町(川下)の船着場は16km離れています。船を利用して、A町からB町へ行くには1時間かかります。しかし、B町からA町に帰るときは2時間もかかります。
 船の速さと川の流れの速さが一定だとすると、それぞれの速さはいくらになりますか。

 

さて、解けるだろうか。

「解けるとは思うが、解法がぱっと思い浮かばない」

なんて人も多いのでは?

 

私自身、学生時代に得意な科目は数学であったが、正直言って文章題は苦手だった。

文章題を解くには、計算問題とは違った能力が必要と感じている。

もちろん、数学を理解するには文章題も理解しておくべきなのだろう。

しかし、私はそこそこの大学に行くことができたが、文章題は結局苦手なままであった。

 

以下は、2015年の東京大学、数学過去問である。

http://www.u-tokyo.ac.jp/content/400031716.pdf

ざっと見てもらえればわかるが、複雑な文章題は殆ど出題されていない(確率の問題だけは、やや複雑になっている)。これは東京大学に限ったことではなく、大学受験において複雑な文章題はそれほど重視されていない。

そもそも、文章題というのは個別具体的なシチュエーションを想定して作られる。

それに対して、高等数学になると、分野にもよるが非常に抽象的で、具体的な設定から離れていく傾向にある。

公式というのは、正に高度な抽象化のたまものであるし、整数論に個別具体的な何かを考えるのは無粋だ。

つまり、数学者になるのにも、大学受験にも、必ずしも文章題を解く力は要求されていないようである。

 

算数に挫折するということ

数式操作はできるが、文章題になると途端に解けなくなる。

そんな悩みを持った生徒や親は多いのではなかろうか。

「文章題」で検索すると、「文章題 苦手」が一番の候補に来るくらいには、文章題を苦手とする子供は多い。

私は言いたい。

文章題は、絶対にできないよりはできた方がいいとしても、計算問題ができるならそれほど悲観することはないのだ。

複雑な文章題を読み解いて数式に起こす力がなくても、数学はできるのだ。

そこで挫折して、算数や数学の才能の無さに絶望して諦めて欲しくないのだ。

 

先生方にも、このような視点で教育をしていくことはできないか、考えてみて欲しい。

足し算や掛け算の順序を考えることができなければ、その後の学習でつまずいてしまう。

あるいは、そういうこともあるかもしれない。

しかし、それはあくまで文章題に躓いているだけである。

「足し算がわかる」という子供の「思い込み」を、計算問題はこなせるという自負を、「足し算は順序が理解できないとわかったとはいえない」と子供に教えることで砕くことはして欲しくない。

本来難しくないことを、難しくすることで、算数の段階で落ちこぼれる生徒を増やしてほしくない。

それを切に願う。

 

以上。

 

 

 

 

 

 

 

【注意喚起】IPAの注意喚起に誤りがあるので追加情報を書く

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が、「【注意喚起】SNSの友達リクエストを承認したら、連絡先情報を読み取られ、自分名義の招待メールが拡散」という題の記事で注意喚起を行っている。

この記事への反応を見ていると、内容について誤解が生まれているようだ。

正直言って、この記事は誤解を招くどころか、やや誤った記述になっているので、より正しい情報で注意喚起を行いたい。

 

問題の内容について

当該記事のうち、事案の概要箇所について引用する(画像略)。

■事案の概要

1. 友人・知人の情報が記載された海外SNS の招待メールが届く(図2および図3)
図2.海外SNSの招待メールの例(受信トレイ)
図2.海外SNSの招待メールの例(受信トレイ)
図3.海外SNS の招待メールの例(メール本文)
図3.海外SNS の招待メールの例(メール本文)
2. 招待メールのリンクをクリック後、サービス連携の許可を求める画面(図4)が表示される
図4.サービス連携の許可を求める画面
図4.サービス連携の許可を求める画面
3. サービス連携を許可すると海外SNSはGoogleの連絡先情報が利用可能になる
4. これにより海外SNSより招待メールが送信される

 

 記事タイトルにもあるように、海外SNSが原因でスパムが発生してるように読める。

そのせいか、海外SNSで連想される、「Facebook」や「Twitter」に由来した問題と推測する反応が見られた。

しかし、正確には全く違う。

記事中の上記画像は、私が遭遇したメール内容と同じだ。

念のため、遭遇したメール内容を全文記載しておく。

(メールアドレス)箇所には交流があった実際のメールアドレスが入る。

 

メールタイトル

「(メールアドレス)からフォローのリクエストが届いています。承認しますか?」

本文

「友達リクエストを申請します 

 (メールアドレス)

 承認する 辞退する」

「ここをクリックすると、(メールアドレス)やすべての友達からのメー>ル配信を停止します」

 

最後の文の「メール」表記がおかしい点も含めて全く同じであった。

(多少文面が異なるバージョンも確認している)

 

IPA記事の不正確な点

IPAの記事では省かれている部分だが、ここが重要なので記載する。

このメールの送信元は、「(メールアドレス)<[email protected]>」となっていた。

そこで、検索をしてみると色々な事例が出てくる。

以下では、芝浦工業大学の調査結果が記載されている。

news:20150304 本学学生・教員を偽ったスパムメールについて (続報)

どうやら、Fliporaという海外の会社(実態があるのかまではわからない)が関係しているようだ。

flipora.comというドメインには注意した方がよさそうだ。

実態としては、メールのリンク先に飛ぶと、Googleアカウントにログインしていなければログイン画面を、ログインしていればGoogle APIのサービス連携の許可を求める画面を表示させる。

そして、連携を許可した場合はアドレス帳をFlipora側が把握できるようになるため、スパムメールを勝手に送られてしまうという仕組みとなる。

つまり、FacebookもTwitterも関係無いのである。

IPAの記事では、SNSにだけ注意しておけば大丈夫、という誤解を招く点がよろしくない。

この連携については、一度許可をしてしまったら、アドレス帳情報を全て利用されてしまう恐れがあり、後で許可を取り消しても被害が続く可能性があるため、強く注意して欲しい。

 

以上。

 

「サブカル 騙る」の泣きゲーに関する妄想記事について

シロクマさんの記事を見ていたら、以前金八先生の記事について批判した「サブカル 語る」(以後、「サブカル 騙る」と呼称)の妄想記事について言及されていた。

 

ちなみに、私が以前書いた批判記事は以下。

mahiru123.hatenablog.com

 

本題に戻ると、「サブカル 騙る」の方は、泣きゲのプレイヤーは結局エロ目的でプレイしていたと主張する。

記事の内容を見ても、アニメは見たことがあっても、ゲームの方はプレイしたことがあるかすら怪しい駄文である。

今から10年ほど前、

エロゲーにあるムーブメントがありました。

それはエロゲーだけど、泣ける。

泣けて、抜けるが

ウリのいわゆる「泣きゲー」と言われた

エロゲーというジャンルの台頭です。

まるで見てきたように言っているが、Key作品をまともにやったことがあるのか?

プレイ時間の9割どころか、ヘタすると98%以上が全くエロシーンとは無縁である作品を、著者はエロ目的でプレイするのか?暇人か?

 

アニメにしても、むしろ泣きゲーはあまり肌の露出をしないことも多く、エロコメ系作品の方がよほどそういった需要を満たしてきたことにも気づいていない点で、アニメもせいぜい1、2作見た程度と思える。

 

その物語の

特徴としては主人公とヒロインの女の子が

男女のやる事だけはきっちりやるけど

アンハッピーエンドな結末が基本のコンセプト。

泣きゲーにおいても、アンハッピーは別に基本じゃない。

ゲームでは色んなルートがあり、ハッピーエンドもあればややビターなエンドもあるが、単純なアンハッピーエンドに終わる泣きゲーはそれ程多くない(もちろん無いわけではないが)。

大方、AIRだけのイメージで語っているのだろう。ここでも、決定的に浅い文章にクラクラする。

 

いいから、有名な泣きゲーを「ゲームで」一作やってみればわかる。

人によるとはいえ、エロシーンをスキップしたくなったり、「エロシーンが邪魔」と思ったりする人も多い。

なんといっても、10時間エロシーン無しなんてザラなのだ。

エロ以外のシーンが前フリかと言うと、内容もシリアスで緊迫していたり、コメディでおちゃらけたりはしても、欲情を掻き立てるような描写は殆ど無い作品が多い。

 

一つだけ著者を擁護しておくと、「ではなぜエロシーンをつけるのか?」と言われれば、「その方が注目されて売上が上がるから」と答えざるを得ない事実はあり、この点をついて「エロが欲しいユーザー需要に答えている」と言われたら、その側面は否定しない。

ただ、この著者の文章はそのような分析を経たものとは到底感じられず、またエロゲーによってアニメの低俗化が進んだという論には全く見るべきものは感じられない。

このあたりの反駁はシロクマさんの記事で十分行われているので繰り返さない。

 

私のこの文章も、正直言ってシロクマさんの内容に屋上屋を架したようなもので、あまり書く必要性も無かった。

それでも書いてしまったのは、以前アドベンチャーゲームに無知であるにも関わらず、浅はかに金八先生をネタにした点を批判したことがあったからだ。

また、(広い意味での)アドベンチャーゲームを浅はかな視点でネタにしていたため、突っ込まずにはいられなかった。

まあ、浅はかに騙るのが著者の芸風なのかもしれないが・・・。

 

以上。

 

漫画・アニメ・ゲーム・音楽・・・ 日本のコンテンツ産業の市場規模をまとめる

最近、各種業界の市場規模を調べている。

市場規模を把握すると、普段は気づかない社会構造に気づけて面白い。

情報を整理して参照できるようにすると便利かと思うので、ちょっとまとめてみる。

日本のコンテンツ産業の市場規模と、そこから見えてくるものについて語ってみる。

 

コンテンツ産業の市場規模

前提として、コンテンツ産業全体の市場規模はいくらか。

デジタルコンテンツ白書2010では12兆円としている*1。

◎コンテンツ産業の市場規模:12兆円 

これは、スーパーの市場である13兆円(2014年)と同じくらいの規模となる*2。

スーパーと同じく、生活に欠かせないものとして市場が動いていることが伺える。

全体がわかった上で、個別のコンテンツ産業市場を見ていく。

 まずは漫画・小説など出版業界について。

出版の市場規模

まずは、出版物全体の市場規模 *3。

ここでの関心はコンテンツ産業なので、出版業界全体の市場は割愛する。

◎出版物の市場規模:1.7兆円(2013年)

1996年の2.7兆円弱から大幅に下落し、1兆円近くも減少している。

書籍、雑誌ともに落ち込みが酷いが、特に雑誌の落ち込みが大きい。

◎書籍の市場規模:8000億円 (2013年) [1996年は1.1兆円]

◎雑誌の市場規模:9000億円 (2013年) [1996年は1.5兆円]

雑誌のようなニュース的需要の大きいメディアは、インターネットに取って代わられる部分が大きいことが原因だろうか。

 

電子書籍の市場規模

上記データは紙媒体だが、電子書籍の市場も見ておこう*4。

◎電子書籍全体の市場規模:1400億円 (2014年) 

こちらは順調に市場拡大中。2011年の650億円と比べても、3年で倍になっている。

これからも当分は市場が広がり続けるだろう。

ただし、出版業界の落ち込みをカバーできるほどの市場となるかは不透明。

また、内訳として

◎電子書籍の市場規模:1250億円 (2014年)

◎電子雑誌の市場規模:150億円 (2014年)

となっており、電子雑誌市場も拡大しているとはいえ少なく、雑誌の売上減をカバーすることは不可能か。電子でも雑誌の勢いは期待できないようだ。

 

漫画の市場規模

上記を踏まえて、漫画の市場規模を見てみる。

まずは、紙媒体の漫画について *5。

◎漫画市場:3600億円 (2014年)

1993年の5700億円から下落。ただし、コミックス市場は殆ど下落が見られない。

上記データにおいて、コミックス市場は1993~2014年にほぼ2200億~2500億円の間で推移しており、近年は2300億円を大きく超えることはないが、それでも200~300億円程度の下落にとどまる。

◎コミックス市場規模:2300億円(2014年)

これに比べて、漫画雑誌は落ち込みが激しい。20年前の3分の1近くに落ち込んでいる。

◎漫画雑誌市場規模:1300億円 (2014年)  [1993年は3300億円]

コミックスより大きかった漫画雑誌市場は、2005年に逆転されて以来、その差は広がるばかりとなっている。

漫画雑誌市場は、2005年以降ほぼ毎年、前年比90~95%となっており、このペースで行くと2020年までには1000億円を落ち込む。

マンガ業界のコミックス重視傾向は、強まることはあっても弱まることはないであろう。漫画雑誌で読んで面白かった漫画のコミックスを買うという購買行動はマイナーになっていくのだろうか。

 

電子書籍の漫画市場

次に、電子書籍の漫画市場を見てみる。

以下は、「電子書籍市場の約8割がマンガという法則」に基づいた推測値だが、

◎電子書籍の漫画市場:1000億円(2014年)

と算出されている*6 *7。

今後の電子書籍漫画市場は、紙の漫画雑誌市場よりも大きく、重要になっていくだろう。

 

小説の市場規模

同じく出版市場の一部である小説の市場規模を見てみる。

・・・と思ったのだが、なんと、小説の市場規模データが見つからない。

どうやら、出版市場は公表されていても、漫画以外の書籍市場規模はあまりデータ化されていないようだ。

よって、小説以外のジャンルも恐らくデータが存在しないだろう。

博報堂が出している推定市場規模をもとに小説市場を割り出してみる*8。

すると、漫画・小説の推定市場規模は7800億円とある(2011年の調査)。

ここから、漫画市場3900億円(2011年)を引いた額が推定の小説市場規模となる。

◎小説の市場規模:3900億円(2011年頃)

 小説市場は漫画市場と同等ということになる。

 

ライトノベルの市場規模

小説の中でも、近年勢いが感じられるライトノベルの市場規模はどうだろうか*9。

◎ライトノベルの市場規模:320億円(2011年) 

意外なほどに小さい。他に、2014年は225億円との情報*10、330億円との情報*11などがあるが、恐らく300億円程度であると考えられる。

これは、補聴器業界の市場規模(310億円:2014年)とほぼ同等である。

また、上記情報によると、文庫本におけるライトノベル市場は2割程度を推移している。

 

一部のライトノベルが爆発的にヒットし、アニメ化などでも話題になるため大きい市場であると錯覚しがちだが、一部のみが大きく売れているだけで、大半の作品はあまり売れていないのだろうか。あるいは、対象者が基本的に若年層に限られており、高年齢層には届いていない結果かもしれない。

次に、アニメ業界を見てみる。

 

 アニメ業界の市場規模

 アニメ業界の市場には、ユーザーが支払った金額推定である広義の「アニメ産業市場」と、アニメ制作会社の売上合計である「アニメ業界市場」のデータがある。

それぞれの規模は以下となる*12。

◎アニメ産業の市場規模:1.5兆円(2013年)

◎アニメ業界の市場規模:1800億円(2013年)

 アニメ産業はかなり大きく1.5兆。ここには、「TV放送・アニメ映画・DVD・動画配信・アニメグッズ・音楽・海外アニメ・パチンコ・パチスロ」などの売上全てが含まれる。

パチスロ関係について言えば、近年やや伸びており2013年で2400億円。

おおよそ1.5割以上がパチスロ系であり、アニメファンはパチスロに感謝すべきかもしれない。

ちなみに、よく話題になるDVD等のビデオ売上は1100億円前後であり、市場の1割にも満たないため、ビデオ売上だけで売上を語ることの問題点が伺える。

なんにせよ、1.5兆円とは大産業の一つには違いないだろう。

にも関わらず、アニメ制作会社の市場になると、1800億円しか無くなってしまう。

このデータを見るとどうしても、よく指摘される「中抜き」の問題がちらつく。

このあたりに、若手アニメーターの薄給問題(動画マンは年収110万円という状況)の理由があるのだろうか。

しかし、市場の推移はアニメ業界もアニメ産業も安定しており、大きく上がりもしなければ下がりもしない状況。他のコンテンツ産業を考えると、なかなか固い業界といえそうだ。

次はゲーム業界。

 

ゲーム業界の市場規模

ソーシャルゲームの隆盛もあり、コンシューマーゲーム業界にはあまり元気が感じられないが、実態はどうか。以下、2014年データ*13。

◎国内ゲーム市場規模:1.2兆円

◎コンシューマーゲーム(家庭用ゲーム)の市場規模:4000億円

◎ソーシャルゲームアプリの市場規模:7200億円

◎PCブラウザゲームの市場規模:700億円

コンシューマー市場よりも、ソーシャルゲームの方が市場が大きくなっている。

しかも、ソーシャルゲーム市場は毎年伸び続けており、来年も増加する見通しだ。

 ゲーム業界がソーシャルゲーム重視になっていくのも必然というところ。

ただし、誤解している方も多いが、コンシューマーゲーム市場のうち、ハードウェアを除外したゲームソフト市場は、それほど減少しているわけではない。

2005年に3000億円ほどの市場が、現在は2500億円ほどになるなど、じりじりとした減少は見られるが、他のエンタメ市場と比べると、まだ健闘している方だろう。

むしろ問題は、据え置き機を中心に高画質化による開発費の高騰を招いている点であり、市場が増加していないのに一つのゲームにかける費用が増加すれば利益が減少するのは当然だ。この構造が変わらない限り、ゲーム業界はソーシャルゲームシフトをせざるを得ないだろう。

艦これで注目のブラウザゲーム市場はそれほど大きくはないが、これからの伸びに期待。

 

音楽業界の市場規模

CDが売れないとの声が大きい音楽業界だが、音楽ソフト・配信市場は以下の通り*14。

◎音楽ソフト・配信の市場規模:3000億円(2014年)

この金額は、CD売上だけでなく有料音楽配信などの売上も含む。

また、世界全体における音楽産業の市場規模は1.9兆円で、日本は全体の16%を占める。

金額だけで言えばかなりの音楽大国だが、日本の音楽は海外で殆ど売れないことで知られており、日本市場が萎めば世界の推移に関係なく沈むことになる。

そして、市場そのものは1998年の6000億円をピークにして下落を続けており、下落が止まる気配は無い。

有料音楽配信は現在のところ、売上減のブレーキとしてはパワー不足。

1998年が高過ぎるという点はあるにせよ、それから17年で市場が半分になっているのは厳しいものがある。

朗報もある。近年は音楽CDが売れないということは多く指摘されているが、それとともにライブでの収入が重要になっている点もよく取り上げられる。

そこで、音楽ライブの市場規模を見てみる*15。

◎音楽ライブの市場規模:2750億円(2014年)

なんと、現在の音楽市場に迫る勢いだ。しかも、2008年の1100億円から近年急激に伸び続け、6年で市場が2倍以上になっている。

この伸びを見る限り、あと1~2年で音楽ライブの市場が音楽ソフト・配信市場を追い抜くだろう。

ライブの場合はコンテンツ産業と言っても場所と人件費などが多くかかるためスケールしづらいところはあるが、これだけ伸びているのは音楽業界にとってかなり大きいことだろう。

近年、Youtubeに人気の音楽を配信してファンを増やす戦略を取っているアーティストが増えている。その理由は、この市場推移を踏まえれば、CD音源を渋るよりもファンを増やしてライブに来てもらう方が重要であることから、必然的な流れであることが分かる。

 

映画業界の市場規模

映画館の興行収入は以下となる

*16。

◎映画館の興行収入市場規模:2100億円(2014年)

市場が小さくなっている印象を持っている人も多いかもしれないが、意外なことに2000年頃から2000億円前後で推移しており、特別市場は大きくも小さくもなっていない。

しかし、2000億円とは意外と小さいと思われた方も多いだろう。

上記数字はあくまで興行収入であり、DVD売上は入っていない。近年はビデオ収入がかなり大きくなっているため、以下に記載する*17。

◎映画のソフト市場規模:5200億円(2013年)

実態としてはソフト市場(レンタルビデオとビデオの購入による売上)の方が圧倒的(2.5倍以上)となっている。それでも2005年の6700億円から徐々に下落してこの数字である。

興味深いのが、小さいながらも興行収入が安定しているのに対して、巨大市場である映画ソフトの市場が少しずつ減少していることだ。このあたりは、音楽業界の市場と似た構図になっている。

ただし、映画におけるソフト売上は、むしろ興行収入より圧倒的に重要である点は誤解してはならないだろう。

 

 あとがき

日本のエンタメ産業の市場規模を一通りみてきた。

個人的には、イメージと異なるデータが多く出てきたこともあって興味深かった。

全てのデータには参照元をつけているので、参考にして貰えればと思う。

以上。

 

著作権侵害の非親告罪化は、大量通報祭りを引き起こしネット文化を崩壊させる

東京五輪について、佐野研二郎さん制作のエンブレムが盗作ではないかと話題になっている。

その中で、TPPによる著作権侵害の非親告罪化に絡めた議論をしている記事があった。

このあたりについては思うことが色々あるので、一度書いておく。

 

非親告罪化により想定される現象

以下に、著作権侵害の非親告罪化により(主にネットにおいて)起こりうることを列挙する。

  • サイト、ブログにおけるTV・漫画・ゲーム・アニメ等著作物切り取り画像の大量自主削除と、削除漏れした画像への通報祭り
  • Twitter、Facebookにおける上記著作物を掲載した投稿の大量自主削除と削除漏れ投稿への通報祭り
  • Youtube、ニコニコ動画に投稿されている著作物および著作物の加工作品(MAD、ゲーム実況など)の大量削除と通報祭り
  • 上記流れと関連して、特に漫画、ゲーム、アニメ関連画像投稿の大幅減少
  • 2次創作などの文化崩壊による同人業界、コミケ業界の再編

これは、大げさと思う人も多いかもしれない。

いくら非親告罪化したからって、多数の通報など起きるだろうか?

また、警察がそんな通報を相手にするだろうか?

その疑問について考えてみる。

 

非親告罪になっても通報は多発しない?

非親告罪になったとして、一般人のどうでもいい投稿が通報されることはあるだろうか。

これに関しては、確かに「話題性のない」一般人の投稿に関してはそうだろうと思う。

しかし、これが「話題性のある」人であれば事情は全く異なってくる。

例えば、人気まとめサイト、人気アニメブログ、人気漫画ブログ、人気ゲームブログ。(著作権法の「批評性」を満たしていない)これらのサイト・ブログは、人気があるゆえに問題も多く、またアンチも多いものだ。このようなサイト管理人やブロガーに対して、非親告罪化が成立した瞬間より2chを中心とした勢力による通報攻勢が発生することは想像に難くない。

特に、嫌われているゲームブログである、「はちま起稿」や「オレ的ゲーム速報@刃」、嫌われているアニメブログである「やらおん」などは著作権侵害した画像が多数あると思われるので、通報活動が活発に行われると予想される。

また、ブログ運営者以外でも、SNSで活動している有名人(ネット上で人気があれば十分という意味で一般人も含む)についても、アンチを中心にした同様の通報活動が行われることが考えられる。

結論としては、無名の一般人による著作権侵害に対して通報されることはあまり無さそうだ。

だが、

などについては、間違いなく通報騒動が起きるであろう。

この騒動は恐らく、2chを中心として行われることになる。

「【犯罪】はちま寄稿による著作権侵害を通報するスレ Part15」

「犯罪者やらおん管理人の著作権侵害を通報しよう Part8」

みたいな感じで盛り上がるんじゃないかと。

2chでは通報用のテンプレが出来上がり、多数の通報を引き起こすだろう。

 

警察は通報を相手にしない?

上記の騒動が起きることは確実であると私はみているが、重要なのは通報が事件に発展するかどうかであろう。

警察は、ストーカー被害を相談しても、恐喝にあった、窃盗の被害にあったと相談しても、あまり熱心に対応してくれないという話はよく聞く。

だから、こんな一般人の著作権侵害に関する通報にもまともに対応しないのではないかと思うのはもっともだ。

 

犯罪予告

しかし、犯罪予告はどうだろう。

大抵は実際の被害などまず出ない。

さらに、通報は殆どの場合はネットの一般人によってなされている。

にも関わらず、逮捕された犯罪予告者は枚挙にいとまがない。

これはなぜかというと、

  • 犯罪の証拠が明白に存在する
  • 犯人が明白に特定できる

の2点を満たすからだと考えられる。

恐喝や窃盗については、明白な証拠、犯人を特定できる根拠が無ければ警察は熱心に捜査をしない。

それが無いまま捜を行っても徒労に終わる可能性があるからだ。

ストーカー被害については、そもそも犯罪が成立する段階に進んでいないと、警察としては動きようがない。

このような警察の問題点は別の議論に譲るとして、ポイントは「確実に有罪にできるかどうか」であろう。

この点で、犯罪予告は基本的に「明白な証拠」がある時点でスタートしている上に、「明白な犯人」もほぼ特定できる。

(だからこそ、この方程式を崩した「パソコン遠隔操作事件」は大きな事件だった)

 

犯罪予告と著作権侵害

これと同様なことが、著作権侵害画像にも言えないだろうか。

東京五輪エンブレムのように、「似ている」だけの問題については、通報があっても警察は動かない可能性も高い。これは、「犯罪の明確な証拠」があるとは言えないからだ。

しかし、ネット上の多くのサイト・ブログは、著作物をそのまま画像として貼り付けていることが非常に多い。

これは、「犯罪の証拠が明白に存在する」という要件を満たす。

また、犯罪予告と同様に、「犯人が明白に特定できる」も満たす。

さらに、多くが2chなどに書き込まれる一回性の犯罪であるがゆえに「遠隔操作」の可能性もありえる犯罪予告と異なり、著作権侵害については本人がその記事を削除せずに活動を続けている以上、遠隔操作などの弁は通用しづらい。

結論としては、警察が動かない他の事例と異なり、警察としては「確実に勝てる」案件であるし、動く可能性は高いだろう。

 

非親告罪化への「備え」

現在のTPP交渉では、まだ「非親告罪化」が確定したわけではないし、各国に「例外事項」を設ける可能性についても話し合われている。

よって、しばらくはまだネット上での影響は見られないだろう。

しかし、これがTPPが進行して非親告罪化が確定し、さらに非親告罪化の施行日が確定したら、その段階で有名ブログの画像が大量に削除されることが考えられる。

「はちま起稿」、「オレ的ゲーム速報@刃」、「やらおん」について言及したが、恐らくこのブログについては、TPPが成立し、犯罪が成立するようになる前の段階で著作物削除を行い、通報を回避することになると思う。

悪質なサイトほど、悪知恵が働くものだ。

だから、実は非親告罪でもっと注目すべきは、通報で逮捕者が出ることもそうだが、大量のネットリソースである著作物画像が削除されること、そして著作物画像のアップロードがされなくなることだ。

現在のネット文化の多くが崩壊し、再編を余儀なくされることは確実と思われる。

以上。

 

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