2014/12に関西の個人特許事務所を退職し、2015/1からグローバルな知的財産のマーケット、マッチングWebプラットフォームIPNexusを立ち上げているスタートアップのバッグエンドエンジニアに転職しました。
これで2回目の転職で、それぞれ、まったくキャリアの異なる業種への転職です。
新卒の就職活動時の動機
大学では情報系を専攻していましたが、単位をこなすためにプログラミングをやる程度でした。
IT業界について就職活動やネットで情報収集をしていると、日本のプログラマーという業種について、 以下のようなとても悪いイメージをうえつけられました。
- ITゼネコン
- 偽装請負、客先常駐
- プログラミングは下流工程
- コーディングは設計どおりにやるだけで誰がやっても同じ
- 上流工程の設計、仕様変更の皺寄せをくらう
- 激務
- 単価が安い
- 35歳定年説
こんな情報が蔓延していて、就職活動からプログラマーという選択肢が消えてしまいました。 そこで、元請になれる大手のSIベンダー、ユーザ系SIのSEを中心に就職活動をすることになります。
業種にもよるでしょうが大手のSIベンダーであっても基本的に客先常駐は変わらないだろうし、 それだったら、最初から顧客先のSEになったほうが当事者意識を持って働けそうと思って 金融系のユーザSIに就職しました。
1社目 金融系のユーザSI
新卒で入ったユーザ系のSIではITインフラの業務に携りました。
この会社では金融系ということもあり、勤怠管理や規則が非常に厳しく、残業時間が月に30時間を超えることはあまりありませんでした。今時、年齢給の部分があって勤務年数が増えるだけで給料があがっていき、役職に付けなくとも30ぐらいになれば、それなりの収入が見込めました。
この仕事では、安定性や収入、勤務時間等に不満はありませんでした。
しかしながら、この仕事では自身でシステム関係について手を動かすことはほとんどなく、仕事上で技術知識を得ることは困難でした。
SIベンダーの成果物を検証したり、作業報告を上司や社内に噛み砕いて報告できれば十分です。いくつものプロジェクトの進捗会議とその進捗資料(エクセル)を更新する作業や社内向けの調整や社内承認会議等が中心です。 印刷時にエクセルの枠内に文字をおさめる技術とかは身に付けられるかもしれません。
また、仕事の速度がとても遅く、数十万円程度の発注をするだけでも複数部署で稟議を通す必要があって数ヶ月かかります。ほとんどが社内調整や社内事務をこなすためだけに時間が割かれることになります。
このため、軽微なシステムの修正やバージョンアップ作業であっても、うん千万円という単位の工数費用見積になります。
これでは技術知識が得られないだけではなく、このような仕事にこれだけの時間とコストをかけてどれだけの社会的意味があるんだろう?っていう疑問を持つようになり、とても苦痛になっていきました。
たとえば、特許庁の情報システムの入札結果を見れば官公庁等が既存システムの維持開発でSIベンダーにどれぐらいのお金を降ろしているかがわかるでしょう。 http://www.jpo.go.jp/koubo/choutatu/choutatu2/h26system/h26menu.htm
業務系のSIベンダーもそのような業務から生じる仕事を受注している関係であり*1、ユーザ側からある程度仕事内容も見ることができたので、業務系のSIベンダーで働きたいとも思いませんでした。 この結果、SI業界自体に興味を失うことになります。
そこで、情報系の知識を活かしつつ、何か自分自身のスキルでお金を稼げることを実感できる仕事はないかなと思って、特許事務所で弁理士を目指すこととなります。
2社目 特許事務所
特許事務所での仕事は、発明者から発明の内容をヒアリングし、発明の権利範囲と構成と作用効果を文書化する特許出願の代行が主な仕事です。
システム開発等に比べれば、仕事の粒度はとても小さく、ほぼ1人で数日~1週間ぐらいで1件をこなします。 このため、マネージメントや他者に振り回されることがほぼなく、ほとんど自分だけで仕事が完結します。
こういう点では、自分自身のスキルでどの程度のお金になっているかを実感することができました。
しかしながら、基本的に他人の発明の特許出願の代行であるということと、それがどれぐらい活用されているかということを考えると、この仕事にモチベーションを保つことはできませんでした。
大手のメーカーには出願件数のノルマがあり、発明者自身ですら具体的な内容を考えていなかったり、発明者自身が興味がないような内容についても特許出願することがよくあります。当事者ですら興味のないことを意欲的に仕事をすることは困難です。
また、特許庁に審査を依頼するには出願時よりも高額な費用がかかり、特許出願をしたうち、何割かは審査にすらかけられません。 長時間をかけてやった仕事の何割かはほとんど活用されずに捨てられていきます。
技術の先行開示により他者の権利化を防ぐといった意味はあるのですが、知財情報は弁理士や審査官、サーチャーなどの専門家に稀に参照される程度です。 現状、知財情報の活用や知財の流通というのは、ほんの一部の大企業や専門家に限られています。
仕事外でのWebサービスの開発
上記のように知財が十分に活用されていないといった不満があり、また、知財が十分に活用されるためのプラットフォームがないと感じ、仕事以外の時間で独学で特許のWebサービスの開発を始めました。
幸い、そこそこの性能のサーバーを安価に借りることができるようになっており、Web開発に必要な技術情報はインターネットにあふれていて、オープンソースも十分に使えるまで発達していました。
仕事でプログラミングのスキルを得ることができなかったため、オープンソースのコミットログやソースは非常に良い勉強材料になりました。 自分で改造したり、ソースを確認することができるオープンソースを利用するのは自分にとって非常に面白いものでした。
今になって思えば、就職活動時にプログラマーとしての選択肢を消さずに、自社サービス開発をしているWeb系や海外といったところを視野にいれておけばよかったなと思います。
ブログを通じた仕事のオファー
Webサービスを作りながら技術内容についてブログに書いていると、いくつかの会社から声をかけていただけました。
その中からこれまで作っていた内容を活用でき、目指していたビジョンと共感ができる知財のWebプラットフォームを製作しているスタートアップに参加することになりました。
特定業務に捉われない技術的な内容はオープンにしていいということなので、これからも仕事以外の場での技術の吸収や公開は続けていきたいと考えています。最近、東京に引っ越してきて東京で働いていますので、何らかの交流の機会があればよろしくおねがいします。
*1:すべての業務がそのような仕事ではないと思います。