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シリコンバレーのVCから日本の起業家に対してのアドバイス
先日開催されたJapan Nightの出場チームに対して、イベント翌日にシリコンバレーで活躍するVCの方から個別にアドバイスをもらうための面談を行った。
このセッションは、サンフランシスコSOMA地区にあるbtraxオフィスの会議室にて10/4の午前10時から1社それぞれ15分の予定でスタートした。結果的には平均1社45分というかなり充実した内容となった。
日本から来た若き起業家のアドバイザー役を買ってくれたのは、友人もでありシリコンバレーにてVCファーム: Fenox Venture Capitalを経営しているAnis Uzzamanである。Anisはアメリカの大学を卒業後、東京工業大学で修士を、首都大学ではPh.Dを獲得している。
それ故に日本語も堪能で、日本のスタートアップや起業家を応援する気持ちが人一番強い。その後IBMの社内M&Aを経て、現在のVCファームのCEOに就任した。彼は今回のイベントを知り、通常は分刻みのスケジュールで超多忙なところを、好意で面談を申し出てくれた。
自身も投資事業だけではなく、他社のアドバイザーや会社の立ち上げにも関わっている彼が、Japan Night出場者に対し提供するアドバイスはどれも的確で、聞いている方としてもとても勉強になった。それらの中で、これからアメリカやシリコンバレーでビジネスを展開して行く上で、非常にユニークで有益なポイントが幾つかあったので、ご紹介する。
シリコンバレーのVC; Anis Uzzamanから起業家へのアドバイス
日米の会社のレベルの差は大きく無いが、絶対的なコネクション量が違う
日本とアメリカの両方のスタートアップ企業を詳しく調査している彼によると、会社やそこで働いている人材のクオリティー、そして提供する商品やサービスに於ける日米の差はあまり大きく無いという。しかしながら、アメリカ、特にシリコンバレーの会社や関わる人々が持つコネクション量と質が絶対的に有利なので、同じような展開をしようとしても、アメリカでは成功の可能性が上がる。
意思が強ければ誰とでも繋がれる
誰かと繋がりたいと思った時に、それが可能かどうかは本人の意思の強さ次第。強烈な思いで突き進めば、何らかの方法でアポイントが取れるはず。現に彼自身も、最近多くの知り合いに声をかけ、1週間以内でバンク・オブ・アメリカの社長とアポを取る事が出来たという。思いが強ければ、それが行動に現れ、周りが助けてくれる事もある。
アメリカはアグレッシブでスピードが速い
アメリカでビジネスに関わる人々は、図々しいぐらいにアグレッシブでスピードが速い。目標を達成する為には、ある程度強引な裏テクも駆使する。真面目で堅実な日本人起業家では、なかなか太刀打ち出来ないケースもある。
シリコンバレーでは有望な会社に投資するのは至難の業
いくら著名なシリコンバレーのVCでも、有望で注目されているスタートアップに投資するのは容易ではない。お金以外に何かしら提供出来る要素が無いと、他のVCを優先される事もある。実際彼の会社も今年のY Combinator主催のピッチコンテストでの出場企業に声を掛けたが、既に他のVC25社が面談待ちの状況だったらしい。
サービス名に関連するドメイン名は全て取得するべし
Anisが全てのチームにアドバイスしていたのが、ドメイン名について。.comだけに限らず、.netや.orgを初めとして、出来るだけ多くのバリエーションを取る。そうする事により今後他の会社が同じような名前で展開するのを未然に防げる可能性がアップする。また、最近ではTwitter, YouTube, Facebook等のアカウント名も併せて取ってしまうのが◎。逆に既に名前が取られている場合は、サービス名の変更も検討した方が良い。
名前やロゴが良い会社やプロダクトはそれだけで成功する場合もある
とても知的で論理的な彼からアドバイスで一番意外だったのがこれ。最終的に人間は感情で決断する。会社やプロダクトの名前やロゴがキャッチーで、人の記憶に残りやすく、上手に表現が出来ているそれだけでも、成功の可能性が大幅に上がる。ある出場社にも”良い名前だね。成功するんじゃない?”と言っていた。
スタートアップにとって、社会貢献イメージは大切
全く何もない所から始めるスタートアップは、どれだけ多くの人からの協力を得られるかが勝負。周りから協力してあげたいと思わせるのが非常に重要になる。提供するプロダクトが何かしら社会貢献に役立つのであれば、賛同者を得られやすく、成功へ結びつきやすくなる。スタート時に、”売り上げのX%を何々に寄付します!”と宣言するのも良い。
Necessity vs Commodity
提供するサービスが消費者にとって、無くてはならないもの(Necessity)なのか、欲しいもの(Commodity)なのかで、その後の成功のスケールが変わってくる。やはり、Necessityとみなされる商品やサービスは大成功を治める可能性が高い。ちなみに、人々にとって必要不可欠なのは衣食住だけではなく、FriendsやLove等も含まれるという。
日本で登記した後、アメリカに会社を移すのは難しくない
ケースバイケースだが、一度日本で法人登記をしてから、会社をアメリカに移すのはそれほど難しくは無い。日本の会社を子会社にしたり、吸収合併する等、幾つか方法がある。ビジネスの展開パターンやファンディング状況に合わせて臨機応変に対応すべし。
会社は”カタチ”が重要
アメリカで会社を経営した人は気づくだろうが、法務や財務に関する資料作りから、社内外組織作りまで、細かな会社の”カタチ”、英語で言うとFormalityは非常に重要。これがおろそかになると、思わぬ所で痛い目にあう事も。企業は外からも中からもキレイに構築すべきである。
CEOの仕事はプロダクトを進める事。その他役員の仕事は組織作りと資金調達
スタートアップは、ついCEOが全てを行ってしまうケースが多いが、少しでも早くCEOがプロダクト作りとその普及に専念出来る組織作りを行うべき。その為には、優秀な人材を役員として採用し、COOによる社内外の組織作りや、CFOによる資金調達等の役割分担を行う。
役員の報酬2に対しアドバイザーの報酬は1が目安
より多くの優秀なアドバイザーを集めるのも非常に重要であるが、その際のアドバイザーに対する報酬は、役員の1/2が目安となる。これは現金ではなくストックオプション等でもOK. なお、上場後はストックオプションは使えなくなるので、引き続き必要な場合は、きっちりと現金を支払う事になる。
特許はとても大切
これもほぼ全ての出場者の方々にアドバイスしていたポイント。資金調達やバイアウト、そして会社の競争力を高める為には、取得してる特許の種類と数が非常に重要になってくる。日本ではなかなか取りにくいビジネスモデル特許も、アメリカだと専門の弁護士に頼めば取りやすい。特許を持っているだけでも、投資家との面談の際の希望出資金額が格段に変わってくる。
人間は感覚で動く、心理戦は非常に効果的
投資家へのピッチや、エクジットの際のネゴシエーション等で心に響くプレゼンを提供出来るかどうかは非常に重要。相手がどんなに優秀で大物だったとしても、最終的には心理戦になる。特許の数や、具体的な数字、会社の大きなビジョン、アドバイザーの名前など、見た目に響く要素を提示出来るかが大切。
各投資元へのエクイティは最大20%を目処にする
エンジェルやVCから投資を受ける際は、そのボリュームを必ず会社の20%以下に抑える事。それ以上の配分になってしまうと、将来的に様々な理由で会社が不利な立場になる。”どうしても”という時でも、23%以上は割り当てない。
立ち上げ時 対 エクジット時の希薄化率は約60%
会社を立ち上げた際に割り当てられた株式はその後、追加出資等で希薄化され、エクジット時には目減りしてしまう。これを英語でDilutionと呼ぶが、その際のDilution Rate (希薄化率)は約60%が目安となる。例えば、立ち上げ時に会社の10%を保有している場合は、エクジット時には6%に目減りする。なお、会社によって大きく違いがある場合もあるので、ご注意。
会社立ち上げ直後にM&Aを考える
会社のエクジットをバイアウトと設定している場合は、プロダクトリリースがされる随分前や、場合によっては会社の立ち上げ直後からM&A活動を開始するのが良い。それにより、目標とするバイアウト先がどのようなプロダクトに興味があるかを知る事が出来、商品開発に有利に働く。そのようなケースは、大きな企業のM&A担当者と知り合いになっておくのは非常に重要なポイント。
バイアウト向けのCEOは、背が高く、顔が良く、話が上手い人を
実際にエクジットが見えて来た際には、それを本職としてる人間をCEOとして雇うのもセオリー。この辺だと、会社のバイアウトを請け負う専門家が沢山居る。多くの場合彼らは背が高く、顔が良く、話が上手い。それにより買収額が何倍になる事もあるという。
イメージ作りの為のMBA中退?
最近のスタートアップCEOの”はやり”はMBA中退。出場者からの、”やっぱアメリカでMBAとか行った方がいいですかね?”の質問に対し、”初めは通い始めて、会社がうまく行きそうになったらドロップアウトしたら?良いイメージ作りになるんじゃないの?”とAnis. 実に、アメリカで成功して名が知られている多くのCEOは、なぜかMBAや大学を中退している。大胆な行動力で、ある意味ハクが付くのかも。
今回、これから世界で活躍するであろう日本の起業家達に対して、具体的且つ役立つアドバイスを完全なる好意で提供してくれたAnisにはとても感謝している。ちなみにアドバイスを受けた何人かは、「自分の会社にこんなに可能性があるとは知りませんでした。めっちゃテンション上がりました。」と言っていた。これからも彼と協力し、少しでも結果に繋がるスタートアップ支援が提供出来ればと思う。なお、彼は今月末に開催されるTechCrunch Tokyo 2011のイベントにてモデレーターを務める予定なので、ご興味のある人は是非会ってみると良いと思う。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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