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sugar pot : とりあえず何か行動をしたという錯覚は、とりあえずしないほうが良いという話

ほろ苦い夢のかけらのおすそわけ

とりあえず何か行動をしたという錯覚は、とりあえずしないほうが良いという話

2006年11月13日(月) コメント:0 トラックバック:1

私はヤフーの転載機能について詳しいことは不案内です。でも、「なぜ転載なんだろう、なぜリンクや引用じゃないんだろう」という疑問を常々持っています。

そして、今日これを目にしました。
転載先検索番号YTK000004で検索した結果


「転載」なので一言一句変更がないものと安易に見なして、試しに適当にクリックして読んでみます。記事は「あなたの善意の転載で自殺予告の子供を救って下さい!!」というタイトルです。

Yahooブロガーの皆様へ

普段は、自分のためにブログ記事を書いて発信しているブロガーの皆様へ。

あなたのそのブログに使うお時間を、
ほんの少しの 『転載ボタンを押すだけの善意行動』 に
使っていただけませんでしょうか?

または、この件をあなたの言葉で記事にして訴えていただけませんか?

Yahooブログの転載機能については、様々な賛否両論があったり
人によっては無駄に思える転載記事の氾濫などの現状もありますが

もしかしたら、こういった緊急性を要する問題に関しては
非常に有効にこの「転載機能」が役に立つ可能性はあると思います。

一人の大切な子供さんの命を、救う可能性がゼロだとは言い切れないと思います。

いくつかクリックしてみましたが、まったく同じ言葉が並んでいました。改変の可能性は否定できませんが、多くは「ちゃんと」「転載」されているのでしょう。ヤフーの転載機能をつかえば、簡単に「転載」できるからです。元の記事はこれです。
楽しむYahoo!ブログの作り方♪:あなたの善意の転載で自殺予告の子供を救って下さい!

なぜ、「あなたの言葉で記事にして訴える」だけじゃないんでしょう?私が引っかかったのは、 『転載ボタンを押すだけの善意行動』というフレーズです。

1秒もかからない善意の行動。それによりもたらされるのは、最初に呼びかけたこの記事の筆者と、それに連なるボタンを押したひとびとの、「何かよさげなことをした」という満足感と、山のようにあふれる同じ文章です。冒頭にあげたリンクで表示されるページをご覧いただければ理解していただけるでしょう。これはもはやスパムです。失礼ながら、こんな文章が、いじめで苦しんでいる子どもを救うでしょうか。

これほどまでの 君を想う声があるのですよ

同記事より

「1秒にも満たない善意の行動」の集合体に「君を想う声」を読み取るのだったら、おそらく最初から「かれ」はそんな手紙を書いたりしちゃいない、と思ってしまうのですが。

私たちは知っています。流行歌や流行り言葉の寿命の短さを。それが「新鮮」であるとき、ひとびとは大々的に取り上げますが、そのほとんどは、一定の時期を過ぎると隅っこに追いやられます。大騒ぎしたひとびとは、次の話題に食いついていきます。せいぜい、「ああ、そんなこともあったね。」程度か、「懐かしいね」と郷愁にひたるかです。それは、ことが「ひとのいのちにかかわる緊急のこと」であったとしても、大きな変わりはないでしょう(ここではずっとその問題に取り組んでいるひとたちについては含みません)。

「かれ」が手紙を送るという行為に至るまでにも、たくさんのたくさんのたくさんの子どもたちの「声」が、「様子」が、マスコミで、学校で、地域で取り上げられてきたじゃないですか。そしてその都度、多くの文化人やタレントや自治会長やPTA会長、教師、近所のおっちゃんおばちゃん、AくんのママやBちゃんのパパ…たくさんのひとたちがいろんな言葉を発してきました。「いじめは絶対にいけない。そんな連中に負けるんじゃない。」「ひとりで抱え込むんじゃないよ、周りの友だちや親や信頼できるおとなに伝えるんだ。君はひとりじゃない。君の声を聞いてくれる誰かがきっと傍に居る。」「もし、傍に居なければ、いろんな相談機関も君のことを待っているよ。」「とにかくSOSを発して。」

でも、それでも「かれ」は楽にはならなかった。「いじめ」は「かれ」に向けられ、「かれ」は「君を想う声」をどこにも読み取ることができず、文科省大臣に文書を送るという行為に出たのです(あれだけの文章を大臣に直接送付するひとに、それまでの情報が届いていないとは考えにくいです。ただ、「かれ」に向けてと「かれ」が感じられなかった、それがあるのでしょう)。

私は「赤い羽根共同募金」にも疑問を感じる(ここでは言及しません)「ひねくれた大人」ですが、赤い羽根共同募金はたとえ1円でも10円でもたいせつなお金をひとのために供出するという「痛み」は負うていると思っています。そして、その結果、まとまった金銭が得られ、しかるべきところにつかわれるなら、それはそれなりに有益であろうとは思います。

が、今回の「1秒にも満たない善意の行為」に、それをなすひとの「痛み」は伝わってきません。ボタンを押すだけの行為が、たとえどれだけの数あったとしても、「理解された」「受け入れられた」として届くと は到底思えないし、「かれ」の周りのひとびとを突き動かすようにも思えないのです。

転載が力になるなどというのは思い上がりです。「かれ」を、子どもたちを舐めています。「転載」には「痛み」も「苦しみ」も「迷い」も感じられない。一言一句他人の言葉を貼付けて「かれ」を救うことができるでしょうか。

チェーンメールやチェーン日記の例を出すまでもなく、「善意」から来ていることが、必ず正しく、ひとの役に立つわけではありません。「失礼ながら」と書いたのは、「1秒にも満たない善意の行為」をほんとうに心から正しく、役立つと信じ、「善意」で「転載」してるひとも少なからずいらっしゃるだろうからです。「善意」には温度差があり、ときには「悪意」ともみまごう場合だってありそうですが、多くのひとはこれを「善意」だと思ってやっていらっしゃる。

でも、私は、こんな記事を書いています。そして、こんなことを書きます。

ブログというツールを手にしているのなら、転載ではなく言及しましょうよ。今起こっていることを飲み込み、咀嚼し、少なくとも自分で文章書きましょうよ。「1秒にも満たない善意の行為」の向こう側に、「痛み」や「苦しみ」「悩み」があるなら、そこを伝えていきませんか。

「緊急性」という言葉で飾られてはいても、「転載」行為の肯定でしかない

とまぁ、ここまでせっせと書きましたが、この記事の「おかしさ」は、もっともらしい御託を並べているけれど、「転載」という行為を正当化しようとしていることにあります。

この記事に書かれているのは、「この記事を転載してほしい」ということと、「転載すれば「かれ」が救える」ということです。でも、私には、この記事が言わんとしていることがどうにも読み取れません。筆者は「何」をたくさんのひとに知らしめたかったのかが、まったく見えてこないのです。この記事を転載すると、なぜ、「かれ」が救えるのでしょうか。

「転載」するひとも多かった一方で、批判も寄せられたのでしょう、多くの人の善意 を、ひねくれて受け取るような大人という言葉が見られる次の記事では、筆者が「転載記事に込めた想い」について語っています。要約すると次のようなことです。

「かれ」を説得しようと試みるのでも、大人の論理を押し付けようとしたのでも、 事情も知らない第三者からの価値観からの言葉を届けようとしたのでもなく、「かれ」の周囲の「かれ」を「愛情を持って」かかわれる人たちにこの件を気付いてもらい、「かれ」に救いの手が差し伸べられる可能性に賭けた

楽しむYahoo!ブログの作り方♪:善意呼びかけ転載記事の私の心情より要約

街頭に立ってばらまくチラシじゃないのだから、「転載」=「複製」する必要はないのではないか、というのが、この「心情」を読んでもなお、私の感じる疑問です。いいえ、さらに疑念は深まりました。

インターネット(www)上でハイパーリンク文書をつかいながら、「転載」というきわめてアナログで原始的な手法で(しかし手段としてはデジタルツールをつかい「転載ボタンを押すだけ」という簡便さをもってして)、「かれ」の周囲の「かれ」を「愛情を持って」かかわれる人たちに届けるためにという大義 名分のもと、多くのひとの善意によってなされたのは、「転載」という行為の正当化であり、大いなる「無邪気で無意識的な」スパム生産ではなかったでしょうか。< /p>

「ひとのいのちに関わることだから、緊急性があることだから」という言葉に反応して、他人の言葉をそのまま無批判に、安易に「転載」してしまう感性では、たとえ子どもであったとしても、複雑な、ひとの「ほんとう」なんて見えないです。私はそう思い、もう一度書きます。

ブログというツールを手にしているのなら、言及しましょうよ。今起こっていることを飲み込み、咀嚼し、少なくとも自分で文章書きませんか。

既に書かれている記事

えっけんさんのとっても端的な文章が、既にありました。

#637
カテゴリ:101 インターネット(www)

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