気になるアクティブスピーカーを聴く【クリプトン:KS-1HQM】

-強力な振動対策で、PCスピーカーの枠を飛び越えた


クリプトンの「KS-1HQM」

発売中

直販価格:49,800円


 東和電子の卵型スピーカー「TW-S7」、オンキョーのDAC内蔵スピーカー「DP-M1」と紹介してきたこの企画。3回目に登場するのは6月下旬から直販が開始されているクリプトンの「KS-1HQM」という製品だ。

 クリプトンは、ピュアオーディオファンにはインシュレータや吸音材、電源関連などのアクセサリでお馴染みだろう。最近では密閉型で音楽性豊かなスピーカー「vigore(ビゴーレ)」シリーズが高い評価を得ている。しかし、これまでPC用など、低価格なスピーカーは手がけていないので、オーディオに詳しくない人にはあまり知られていない(もちろん初音ミクを手掛けるクリプトン・フューチャー・メディアとも違う会社である)。

 「KS-1HQM」が注目モデルなのには2つの理由がある。1つは前述のように、ピュアオーディオメーカーが、PCとの接続をメインに考えて開発したコンパクトなアクティブスピーカーだという事。もう1つは、下は約20万円、上は約100万円のスピーカーを展開している同社としては破格と言っていい、直販で49,800円(1セット)という、“購入しやすい価格”を実現している事だ。

 もちろんPCスピーカーとして49,800円という価格は安くはない。ボーズの人気モデル「M3(Micro MusicMonitor)」(49,980円)と同額で、PC用アクティブスピーカーとしては“上限”に近い値段と言える。しかし、機能/音質面でPC用アクティブスピーカーの枠を超える、極めて意欲的なモデルに仕上がっていた。


■ 高級感のある仕上げ。謎の黒い箱が付属

ノートPCの横に設置したところ

 まずは機能とデザイン。機能としては、スピーカー内にデジタルアンプとDACを内蔵。さらにPCとのUSB接続にも対応している。前回のオンキョー「DP-M1」もDAC内蔵だったが、USB接続には非対応。前々回の東和電子「TW-S7」はUSB接続専用なので、これまでで最も高機能だ。デジタル入力は光デジタルを採用。アナログ音声入力(ステレオミニ)も備えている。

 利用イメージとしては、USBでノートPCなどと接続し、PC内に蓄積した音楽ファイルや、24bit/96kHzなどの高音質音楽配信を再生。CDプレーヤーやiPodトランスポートと光デジタルで接続すれば、コンパクトなオーディオシステムとしても使用できる。もっと単純に、ステレオミニでポータブルプレーヤーや、ポータブルゲーム機などと接続しても面白いだろう。

 外観で特徴的なのは、スピーカーが“黒い箱”に乗っかっている事だ。箱のサイズは100×120×50mm(幅×奥行き×高さ)、左右各800gもあり、手にすると“ズシリ”と重い。スピーカーの重量は右側(アンプなど内蔵)が710g、左側が700gであるため、スピーカーよりも重い。一見すると単なるスタンドだが、実はこれ「オーディオボード」という特殊なモノだ。詳細は後述する。

KS-1HQM。一見すると黒い縦長のスピーカーだが、よく見ると“黒い箱”の上にスピーカーが乗っかっていることがわかる傾斜が設けられており、机に設置するとリスナーの方にユニットが向くようになっているスピーカーを黒い箱から降ろしたところ

 スピーカーの外形寸法は86×105×170mm(幅×奥行き×高さ)。真ん中部分がアルミ製、左右の側面がモールド樹脂。アルミ部分は光沢のある仕上げで、プラスチックがメインの低価格PC用スピーカーとは違う高級感がある。ユニットは6.35cmのフルレンジで、Tymphany(旧Peerless)製。サイズとしてはオンキヨー「DP-M1」(8cm)より小さい。

 背面にまわるとバスレフポートが1つ。クリプトンでバスレフは新鮮だ。右スピーカーにはUSB(タイプB)、光デジタル、アナログ音声(ステレオミニ)の入力。アンプは右スピーカーに2ch分内蔵しており、右スピーカーから左スピーカーへケーブルを接続するタイプだ。

 操作は付属のカードリモコンで行なう。ボタンは音量調節、入力切替、電源とシンプル。右スピーカー前面に赤色LEDが内蔵され、光り方でステータスを確認する。発光部にはタッチセンサーが埋め込まれており、直接触れて操作も可能だ。リモコンが見当たらないとか、急に音を消したいシーンもあるため、本体で操作できるのは便利。ただ、前面が真っ黒で突起も無いため、どこに指を当てれば操作できるか慣れないとわかりにくい。デザインのシンプルさとトレードオフと言ったところだろう。


右スピーカーの背面。USB、光デジタル、ステレオミニの入力と、電源、左スピーカーへの出力を備えている左スピーカーの背面はとてもシンプル付属のカード型リモコン。入力ソース切り替えと電源、ボリュームのみだ

右スピーカーの前面。ロゴの上にあるのが電源ランプ、その上が入力ソースを示すランプリモコン操作または、指で触ってソースを切り替える。連動してインジケータ表示が変わる。右下の表示はボリュームを上げているという意味

 電源はACアダプタを使用。ACアダプタのサイズはかなり大きめだ。電源ケーブルはOFC線で、同社が単品販売もしているものを同梱。音質向上にかなり寄与しているという。

BOSEのM3(左)とACアダプタのサイズを比べたところ。小ぶりではあるが、それでもかなりのサイズだ付属の電源ケーブル。単品販売されているものだけあり、太さと質感は普通のPC用アクティブスピーカーのそれとは大違いだ


■ オーディオボードの役割

 オーディオボードが付属する理由は、音を出してみるとわかる。サイズからは想像できないほど、低く、そして締まった低音が出せるスピーカーになっており、その秘訣がオーディオボードにある。

ユニットは6.25cm径のフルレンジ
 6.35cm径という小さなユニットで豊富な低音を出すためには、ユニットの前後の振幅幅を、長くする必要がある(ロングストロークユニット)。同時に、駆動力を高めるため、ボイスコイルの巻線も多くなる。結果としてユニットの能率は低下してしまうが、それを強力にドライブするため、25W×2chという強力なデジタルアンプを内蔵している。

 だが、小型筐体で搭載ユニットが激しく動くと、当然ながらスピーカー自体も盛大に振動する。例えばスピーカーを床や机にダイレクトに置くと、そこにも振動が伝わり、音が出てしまう。“床や机の音”も加味された音を聴く事になるので、音が濁り、不明瞭になる。これを防ぐために使われるのがインシュレータだ。KS-1HQMもスピーカーを持ち上げると、ハイカーボンスチール製のインシュレータが3点支持で使われている。


付属のインシュレータはハイカーボンスチール製の本格的なものオーディオボードにインシュレータを設置。この上にスピーカーを乗せる

オーディオボード。手にするとズシリと重く、振るとザラザラと中で鉄球が動くのがわかる
 難しいのは“単にスピーカーの振動を抑制すればいい”というものではない事だ。スピーカーにもよるが、筐体が楽器のように振動する事で、豊かな低域を出す製品は多い。抑えつけ過ぎず、ある程度自由に振動させつつも、その振動を床や机に伝えない事が重要になる。インシュレーターが3点や4点など、ポイントで支えるのは、スピーカーの底板の振動を必要以上に阻害しないためだ。

 オーディオボードは、このインシュレーターから伝わる振動を、さらに低減するためのパーツだ。ボードだけ持ち上げて振ってみると、中で何かがザラザラと動いているのがわかる。内部には小さな鉄の玉が入っており、これが伝わってきた振動を相殺するように動き、机などに振動を伝えない仕組みになっている。原理としては、電車のレールと枕木の下にあるジャリ(バラスト)を思い浮かべるとわかりやすいだろう。

 “強固な床”と、“スピーカーの振動を伝えないための対策”は、ピュアオーディオにおけるスピーカー設置の基本だ。だが、机に設置するPC用スピーカーではおろそかにされがちなポイントでもある。特にPC用デスクは薄かったり、中が空洞だったりと、“鳴き”やすいものが多く、直接スピーカーを置くと盛大に鳴ってしまい、机の音を聴く事になり、同時にスピーカー自体の振動も阻害する。これでは良い音を聴くのは難しい。

 オーディオボードは、例えばタタミのように、床が“やわ”な時の対策アクセサリとしてピュアオーディオでも使われているもので、簡単に言えば“仮想的な床”だ。つまりKS-1HQMは、どんな机に置かれてもしっかりとした音が出せるように、“ガッシリした床”と“インシュレータ”もセットにしてスピーカーを売っているようなものだ。そのため、KS-1HQMは“デジタルオーディオ・システム”と名づけられており、スピーカー単体には「SP-1PWD」という別の型番が付けられている。ボードと組み合わせることで、初めて「KS-1HQM」というシステムになるという意味なのだ。



■ 音を聴いてみる

 まずはUSBで接続。接続PCのOSはWindows 7 64bit、ソフトは「foobar2000 v1.0.3」を使用。プラグインを追加し、ロスレスの音楽をOSのカーネルミキサーをバイパスするWASAPIモードで24bit出力している。

 「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」をかけると、冒頭のアコースティックギターが聴こえた瞬間に、これまでのアクティブスピーカーとスケールの違うサウンドが展開。あまりの違いに思わず笑ってしまう。

 低域から広域まで、レンジが広く、かつ無理なく自然な音が出る。最大の特徴は音の“クリアさ”だ。ヴォーカルの声が極めて自然で、エンクロージャの付帯音をまったく感じない。同時にギターやアコースティックベースの響きは芳醇で温かみがあり、個々の音像が、そのキャラクターを発揮させながらも、それぞれの音に影響を与えず、楽器による音色の違いをキチンと描写しわけている。

背後のバスレフポートに指を近付けると盛大に空気が吹き出している。この空気の流れを使い、アンプの冷却も行なっているそうだ
 低域も量感が豊かで、1分過ぎから入るベースの響きが胸を圧迫するほど迫ってくる。ここまで量感が豊かだと、低音が膨らみすぎて描写が不明瞭になる事が多いが、このスピーカーの場合は低音に解像感があり、うねりの中でも、ベースの弦の細かい動きがよく聴き取れる。よく締まった低域だ。

 そのため、迫力があるのにうるさく感じず、どこまでもボリュームを上げたくなる、オーディオ的な快感が味わえる。試しに、隣にいる人の声が聞こえないほどボリュームを上げても、筐体はビビらず、なおかつ中~高域に覆い被さらず、明瞭さや定位はしっかり保たれている。隣の家から怒られそうな音量でも、「この程度の音、なんでもないですよ」と言うかのような余裕が感じられる。

 ハードロックやパイプオルガンなどで、低い音を継続的に出力させると、小さなユニットが凄まじい勢いで振動する。エンクロージャに触れてみると、指にビリビリと振動が伝わってくる。だが、すぐ下のオーディオボードに触れると、まったく振動していない。インシュレーターでスピーカーの自由な動きを確保しつつ、オーディオボードで振動を強力に殺している事がわかる。

 これまで紹介してきたスピーカーでは、低音の強さを表現する言葉として「ノートPCのキーボードに指を置くと、ビリビリと振動が伝わる」という書き方をしてきた。だが、それは机やノートPCが振動した音まで耳に入るという意味でもある。小型スピーカーで机をわざと振動させて低域を稼ぐものもあるが、原音再生という観点からは褒められた事でもない。KS-1HQMは余計な所から音を出さない事で、原音が汚れずにそのまま耳に届く事になり、前述のような“クリアさ”に繋がっているわけだ。


東和電子の「W-S7」(左)と、BOSE「M3」(右)との比較。写真はオーディオボードを外したところ

 低音に定評のあるBOSEの「M3(Micro MusicMonitor)」と比較してみる。同モデルはアナログ接続のみなので、ノートPC(ThinkPad X201:オーディオデバイスはConexant 20585 SmartAudio HD)のヘッドフォン端子に接続する。

 M3のサイズを感じさせない低域の量感は流石の一言だ。しかし、KS-1HQMと比べると明瞭さに欠け、何の楽器がどんな音を出しているのかわかりにくい。音像がくっつき気味で、音場も狭い。高域には筐体が振動した甲高い付帯音が乗り、小音量時は“軽快な音”という良いイメージだが、ボリュームを上げていくと付帯音が増え、女性ヴォーカルやシンバルなどが硬い音になる。プラスチック製の壁を目の前に置かれたようで、薄いエコーがずっと鳴っているようにも聞こる。そのため、ボリュームを上げるとうるさいく感じる。

 東和電子の「W-S7」(16bitまでの対応であるためWASAPIで16bit出力)に切り替えると、M3ではスピーカーのまわりに漂っているだけだった音場が霧散し、広大かつ、奥行きを感じさせる立体的な音場が創成。付帯音も少なく、楽器や人の声が生々しい。ボリュームを上げても音像がブレない。だが、中低域の量感は控えめで、ベースの芳醇な響きに体を包まれるような感覚には届かない。また、部屋に充満する程ボリュームを上げると、ピアノやヴォーカルの高域に若干、プラスチックっぽいカンカンした硬い音が乗ってくる。

W-S7との比較。こちらの写真はオーディオボードの上に乗せている
 KS-1HQMに戻すと、W-S7と方向性は同じだが、そこから1ランク、いや2ランクほど飛び越えた音になる。ボリュームをかなり上げた状態でもバランスが良く、低域がしっかりと沈み、Kenny Barron Trio「The Moment」から「Fragile」を再生すると、ルーファス・リードの芳醇なベースの中に、弦が震える「ブルン」、「ゴリン」という音がしっかり描写される。同時にピアノの高域は遥か上に突き抜け、付帯音も感じられず、ピアノが“安く”ならない。各音像には安定感があり、陰影がしっかりと描かれ立体的だ。音量を上げると高出力アンプならではの安定感が感じられる。

 音場の広さはW-S7と同程度か若干広いくらい。定位も明瞭で、「Best of My Love」のヴォーカルの口が、リスナーのちょうど正面をポッカリと浮かび、シャープに定位。W-S7でも口の開閉が生々しく描写されるが、KS-1HQMはその中の湿度や舌の動きまで連想させるようなクリアさだ。

 総合的な印象は、“PC用アクティブスピーカーという枠を1歩超えたサウンド”だ。“PC用アクティブスピーカーにしては”という前置きを使わず、ピュアオーディオ用スピーカーのつもりで判断できるクオリティと言っていい。この違いは大きく、これまで紹介した機種と、何曲も聞き比べて判断するというものではなく、切り替えた瞬間に、おそらく誰にでも“1つの境界を超えた音”とわかるレベルだろう。

 また、大音量でも余裕を持って再生できるため、書斎や勉強部屋などの個室だけでなく、例えばリビングの薄型テレビの前に設置し、映画を大音量で再生すると言った使い方にも対応できそうだ。


オーディオ用のブックシェルフスピーカーと比べるとかなりコンパクトだが、サウンドは堂々としたものだオーディオルームに、ブックシェルフスピーカーのように設置して大音量を出しても耐えられるスピーカーだ

クリプトンのDRMフリー高音質楽曲配信「HQMストア」
 PCと繋いでいるので、CDを超えるクオリティの24bit/96kHzの楽曲も聴いてみたい。クリプトンはDRMフリーの高音質楽曲配信「HQMストア」を展開しており、実はKS-1HQMは、HQMストアなどで購入した24bit/96khzの楽曲を、手軽に良い音で楽しんでもらおうという目的で作られたスピーカーでもある。

 「日比野則彦/GENTLE LOVE」というアルバムから、「アンド アイラブユー ソー」を再生する。日比野則彦(サックス)、大貫祐一郎(ピアノ)、成川修士(ギター)というシンプルな構成のヒーリングミュージックだが、シンプルゆえに、サックスの音が広大な音場に際限なく広がる様がよく見える。各楽器の定位の良く、特にサックスの管で増幅された豊かな中音の上に位置する、リードが振動する硬い音の場所までわかる。楽器の構造が眼に浮かぶような音質だ。なお、日比野氏はメタルギアシリーズでゲームファンにもお馴染みだが、こうしたヒーリングミュージックにも積極的に取り組んでおり、重厚なゲームミュージックとは別の魅力を感じさせる。。

 クラシックでは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の精鋭を中心に結成された実力派アンサンブル、フィルハーモニック・アンサンブル・ウィーン“モーツァルティステン”によるアルバム第2弾「シューベルト:交響曲第5番,他」から、「弦楽のためのアダージョとフーガ ハ短調 K.546d: I. Adagio」を再生(指揮はハンス・ペーター・オクセンホファー)。


オンキヨーのiPodトランスポート「ND-S1」と組み合わせたところ
 楽器が奏でる音のレンジが広いクラシックでは、ボリュームを上げてもバランスや定位が崩れないKS-1HQMの利点が活きる。音場の見通しが良く、ホールの広さがよくわかる。弦楽器の音は、弦の描写が細かさに注目すると、深く沈み込む低音に、複数のヴァイオリンが重なる場面でも、個々の楽器の弦の音がしっかり描写されているのがわかる。ソースの情報量の多さと同時に、それを雑味の無く、クリアに再生できるスピーカーと組み合わせてこその描写と言えるだろう。

 リビングに移動し、オンキヨーの低価格なiPod用トランスポート「ND-S1」(実売1万5,000円前後)と光デジタルで組み合わせてみたが、こちらも価格やスペースを考えると、極めてクオリティの高いオーディオセットとして機能する事が確認できた。



■ オーディオの基本と楽しさを低価格で

 49,800円という価格はPC用アクティブスピーカーとしては“上限”だろう。だが、24bit/96kHz対応のDACと、USBオーディオ機能、そして高出力なデジタルアンプも内蔵し、さらにしっかりとしたオーディオボード、インシュレータ、太い電源ケーブルというオーディオアクセサリまで付属していると考えると、個人的には“激安”と言っても過言ではないと思う。

 音質も、ノートPCやキーボード脇のわずかなスペースに設置できるスピーカーとしては、トップクラスのクオリティと言って良い。接続端子も豊富で使いやすく、PCと接続して24bit/96kHzの楽曲を真剣に楽しんだ後は、ポータブルオーディオ機器やゲーム機を繋いでベッドサイドで楽しんだり、PCを使わない時はiPodトランスポートと組み合わせるなど、アイデア次第で色々使えそうだ。

 難点を挙げるとすれば、直販のみの製品であるため、試聴が簡単にできない事だ。試聴会なども行なっているようなので、気になる人は参加してみて欲しい。普通の家電量販店でも販売して欲しいところだが、逆にこの価格は直販だからこそ実現できている面があり、なかなか難しいようだ。

 バーチャルサラウンド機能など、DSPで音を加工してそれっぽく聞かせる製品が多い中、机の上に設置するPC用スピーカーでも、“振動対策”や“強固な床”といった“オーディオの基本”に真正面から取り組み、結果として良い音が出ている事が小気味良い製品だ。

 そうした“基本”の大切さと、それにより音が良くなる“オーディオの楽しさ”を改めて教えてくれ、同時に24bit/96kHzなどの“新しいオーディオの魅力”も手軽に体験できる。新しい時代のピュアオーディオ入門機と言っても良いだろう。おかげで、自宅のPC用スピーカー(Blueroom Loudspeakersのmini pod)に敷いている黒檀のキューブにブチルゴムを積層した自作インシュレータの下に、さらにオーディオボードを敷くとどうなる?などと、セッティング熱に再び火が付いてしまった。


(2010年 8月 10日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]