レビュー

Xbox One S発売。最安Ultra HD Blu-rayプレーヤーの実力は?

 マイクロソフトは、新ゲーム機「Xbox One S」を11月24日に発売した。ゲーム「Halo collection」を付属し、価格は34,980円。基本的には“ゲーム機”のXbox One S。しかし、AV機能において注目したいのは、なんといってもUltra HD Blu-ray(UHD BD)プレーヤー機能を搭載していることだ。

Xbox One S

 ディスクメディアの歴史を見ると、DVDにおけるPS2、BDにおけるPS3など、新フォーマットの黎明期の“ゲームプラットフォーム”対応が、その後の普及に大きく影響した。しかし、UHD BDとほぼ時を同じくして発売されたSIEの「PlayStation 4 Pro(PS4 Pro)」は、UHD BD非搭載となり、“次世代ゲームプラットフォーム”としては、Xbox One SのみがUHD BD対応製品となった。

 Xbox One Sの価格は34,980円(税込37,778円)。現在国内で最も安価なUltra HD Blu-rayプレーヤーとなる「DMP-UP90」が約6万円(税込)なので、2万円ほど安価といえる。“最安UHD BDプレーヤー”Xbox One Sの実力を早速試してみた。

パッケージ

落ち着いたデザイン。HDMI入力も装備

 Xbox One Sの筐体は白を基調とした落ち着いたデザインで、サイズは従来モデルのXbox Oneと比べて40%小型化され、外形寸法は295×230×63mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約2.9kg。リビングに設置しても違和感の無いデザインになったと感じる。

Xbox One S。BDドライブはスロットローディング型

 電源も筐体に内蔵しており、縦置きも可能。縦置き用のスタンドも2,480円で発売する。

前面。BDドライブ下にUSB端子
縦置きも可能

 AV的な注目は、Ultra HD Blu-rayの再生に対応し、UHD BDプレーヤーとしても利用できること。HDR(High Dynamic Range)もサポート。Blu-ray、DVD、CDの再生も可能。ストリーミングの4K映像配信もサポートする。

 出力端子として、HDMI、光デジタル音声を各1系統装備。また、HDMI入力も備えており、STBやレコーダの信号も入力できるもXbox Oneならではの特徴だ。

背面。HDMI出力や光デジタル音声出力、HDMI入力などを装備。USBは2系統

 内蔵HDDは1TB。IEEE 802.11a/b/g/n/acの無線LANと、Ethernet端子を装備。USB 3.0端子×3も備えている。テレビの音量などを操作するためのIRブラスターも本体に内蔵している。

電源は本体に内蔵

 コントローラは、Bluetooth接続に対応し、Windows 10搭載のPCやタブレットで利用する事もできる。なお、コントローラは単品でも5,980円で発売する。付属品はHDMIケーブルなど。

コントローラはBluetooth接続
付属品

再生するまでの一手間。BDプレーヤーは“アプリ”。対応テレビに注意

 Xbox One Sの最初の導入時には、まずソフトウェア・アップデートが必要だ。その後、マイクロソフトアカウントを設定する。あとは、ゲームのディスクやダウンロードした、ゲームタイトルをインストールして、プレイ可能になるという流れだ。起動時のホーム画面にアプリとして、ゲームが追加される。

初回起動時には本体ファームウェアのアップデートが必要
アプリをダウンロード

 ユニークなのは、UHD BDを含む「Blu-rayプレーヤー」もアプリとして提供されること。BDプレーヤーアプリもストアからダウンロードする必要があるのだ。普通のBDプレーヤーであれば、購入してテレビに接続すればすぐに使えるが、Xbox One Sは幾つかの手間が必要となる。

ホーム画面
ストアからBDプレーヤーをダウンロード

 Xbox One S側のテレビ設定がしっかりしており、設定画面から、[HDTVの設定]を選ぶと、[アスペクト比とシャープネス]、[輝度]、[コントラスト]、[輝度の再調整]、[色設定]などを画面のチャートを見ながら調整できる。今回使った東芝「50Z10X」の場合、ほとんど設定しなくても、許容値内になったが、こうしたわかりやすい画質設定があるのはありがたい。

設定画面
[HDTVの設定]
アスペクト比とシャープネス
輝度の設定はグレースケールを見ながら表示を調整
輝度の再調整
高度な色設定
HDR表示のための要求スペックが高いXbox One S

 HDR出力にはXbox One S側とテレビ側の設定が必要。Xbox One Sの[出力]で、[ビデオの詳細設定]で、[テレビ接続自動検出]を選ぶだけでいい。テレビ側がHDR対応していれば、問題なく出力できる“はず”だ。

 なお、HDR表示するテレビ側も設定が必要。今回はテレビに2014年12月発売の東芝「REGZA 50Z10X」を用意した。50Z10Xの場合、HDR信号が入力できるのが、HDMI3のみとなっている。しかし、残念ながらXbox One SからのHDR出力は行なわれず。出力解像度は4K(3,840×2,160ドット)だが、色空間がsRGBとなってしまい、うまく動作しなかった。どうやら、Xbox One SがZ10Xを10bit非対応テレビと認識しているようだ。

ビデオ出力の設定
色空間は[標準]とPC[SRGB]のみ
[4Kテレビ詳細]を見ると、10bit非対応と出てしまう

 ちなみに、パナソニックのUHD BDプレーヤー「DMP-UB90」から、50Z10XにHDMI出力すると問題なく4K/HDRで表示されるため、テレビ側だけの問題ではないことは確認済みだ。

Xbox One SをREGZA 50Z10Xに接続。4K出力できたが、色空間はsRGBになってしまい、HDRでは視聴できなかった
DMP-UB90では問題なく4K/HDR出力可能で、色空間はBT.2020、信号はYUVとなる

 どうやら、これはXbox One Sが“RGB出力しかできない”ことと、Z10Xの[HDMI 3]入力が10.2Gbpsまでの対応となることが要因のようだ。

 通常のUHD BD/BDビデオ作品の色空間はYUV 4:2:0で収録され、プレーヤーからもYUV(YCbCr)出力される。10bit 4:2:2のYCbCrであれば、10.2GbpsのHDMIでも伝送できるため、50Z10XとDMP-UB90の組み合わせで、問題なくUHD BD(24p)の4K/HDR映像が再生できた。

 しかしXbox One SはYCbCr出力がなく、RGB出力のみ。RGBの場合、クロマフォーマットが4:4:4となるので、4K/24p信号のHDMI伝送に18Gbpsの帯域が必要となる。しかし、Z10XのHDMI 3入力は10.2Gbpsまでなので、HDR出力ができない、というわけだ。余談だが、Z10Xの[HDMI1]は18Gbps対応なのだが、著作権保護技術のHDCP 2.2対応は[HDMI 3]のみのため、やはりXbox One SではHDRを体験できない。

 2014年から2015年に発売された4Kテレビは、HDMI入力が10.2Gbpsまでの製品が多かった。また、'16年製のテレビでも全HDMI入力端子のみが18Gbps対応というものは少ない。そのため“HDR対応テレビ”でも“Xbox One SではHDR対応できない”製品は結構多そうだ。その点、DMP-UB90のような専用プレーヤーは安心感がある。

 ゲームは、制作も出力もRGBが当たり前なので、こういう仕様なのだろうが、ビデオプレーヤーとしてはやや残念だ。できれば、Xbox One Sに、YCbCr出力を追加して欲しいものだ。

 そこで、2016年発売のソニーBRAVIA「KJ-49X8300D」も用意し、Xbox One Sに接続した。X8300DのHDMI 2/3端子を[HDMI信号フォーマット]を高速伝送のための[拡張フォーマット]に変更し、Xbox One SからUHD BDを出力したところ、「マッドマックス 怒りのデスロード」、「エクソダス」などの作品でHDR再生が行なえた。ただし、なぜか「デッドプール」が再生できなかった。

BRAVIAのHDMI信号フォーマット設定で、[拡張フォーマット]を選択
HDRで出力された

 また、X8300DのHDMI信号フォーマットを[標準フォーマット]に切り替えると、HDR出力できなくなった。やはり、Xbox One Sからの4K/HDR出力には18Gbpsが必要なのは間違いなさそうだ。

4Kテレビ出力でもX8300DをHDR対応と認識

    【Xbox One SのUHD BD再生に必要なもの】
  • Xbox One S本体(HDMIケーブル付属)
  • 4K/HDR対応テレビ
  • テレビのHDMI入力の18Gbps対応とHDCP 2.2対応

標準的なBDプレーヤー。リモコンが欲しい

 なお、Xbox Oneの起動時間は、省電力とクイック起動が選択できる。省電力の場合は、メニューが立ち上がるまで48秒、一方クイックであれば2秒程度で出画される。待機時消費電力は高くなってしまうが、利用頻度が高ければクイックのほうがオススメだ。なお、DMP-UB90の起動時間はクイックで7秒、OFFで17秒だった。

 BDプレーヤーアプリを起動してしまえば、あとは普通のプレーヤーだ。今回HDRで出力できていないが、「マッドマックス 怒りのデスロード」のディスクを入れたところ、30秒程度で起動スプラッシュ、40秒でメニューが立ち上がった。ちなみに、通常のBDだと再生開始まで約20秒だ。

 コントローラで両手で操作する。操作自体は簡単で、ポップアップメニューやチャプタ選択/スキップなどが可能。操作レスポンスも良好だ。ただ、UHD BDプレーヤーとして使うのであれば、片手で操作できるリモコンも欲しいと感じた。

ディスクの設定
Blu-rayの設定。あまり細かい設定はできない

 「マッドマックス 怒りのデスロード」や「宮古島」などの作品では、HDRではなくても、4Kの高解像度は確かに体感できた。

 また、BRAVIA「KJ-49X9300D」でのHDR視聴では、「マッドマックス」の雲と砂漠のコントラスト感やバイクのパイプや炎の煌めき、「エグゾダス」チャプター2の暗部と首飾りのコントラストなど、HDRらしいハイコントラストとスッキリとした空間描写が印象的。HDRの魅力は十分に体験できた。

Xbox One Sとゲームにどこまでの魅力を感じるか、が決めてに

 最も安価なUltra HD Blu-rayプレーヤーとして登場した「Xbox One S」。単にUHD BDプレーヤーとして使うのであれば、正直、パナソニック「DMP-UB90」などの専用機を買ったほうが使いやすいのは間違いない。あくまでゲーム機の付加機能なので、使い始めるまでの手間やコントローラ操作なども課題はある。

 また“RGB出力のみ”という仕様による、対応テレビの制約も気になるポイントだ。事前に手持ちのテレビが18Gbps対応かどうかわかっていればいいが、細かなことなので調べるのも難しい。できれば、マイクロソフトによる動作確認済みテレビのリストなども公開して欲しい。

 ただ、“ゲームのついで”にUHD BDが再生できる、というのも魅力的。ゲーム機としてのXbox One Sの魅力を感じれば、付加価値としてこのUHD BD再生機能が魅力的に思えるはずだ。もちろん、HDR対応テレビとゲームを試したい、という人にとっても魅力的だろう。20型台などのPC用ディスプレイでもHDRゲームやUHD BDが見られれば、4Kテレビの大画面映画体験とは別の魅力が出てくるのでは、とも感じた。ともあれ、Xbox One Sの登場によって、UHD BDがもう少し手に取りやすい存在になってほしいところだ。

Amazonで購入
Xbox One S 1TB
Halo Collection 同梱版
DMP-UB90

臼田勤哉