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ソニーの歴史を振り返る「It's a Sony展」。トリニトロンやウォークマン、AIBO
2016年11月12日 10:45
ソニーの歴代製品を集めた、東京・銀座ソニービル建て替え前のカウントダウンイベント「It's a Sony展」が11月12日に開幕した。ソニービルが歩んだ50年の歴史と今後の進化について、歴代のソニー商品とともに紹介するイベントで、会期は11月12日~2017年3月31日、会場はソニービルの1階~4階(東京都中央区銀座5-3-1)、時間は11時~19時(12月31日、'17年1月2日、3日は18時まで)で、入場は無料。
2017年3月31日に一時閉館する銀座ソニービルの最後の大規模展示。イベント期間は、前半の11月12日(土)~2017年2月12日(日)と、後半の2017年2月17日(金)~2017年3月31日(金)の2部に分かれ、全138日間開催。1月1日(日)と2月20日(月)はソニービール全館が休館となる。
「It's a Sony展」は、前半の11月12日(土)~2017年2月12日(日)と、後半の2017年2月17日(金)~2017年3月31日(金)の2部に分かれ、全138日間開催。イベント名の「It's a Sony」は、1970年代にアメリカの広告で使われ始めたタグラインで、日本国内でも1982年から2000年にかけてテレビコマーシャルのサウンドロゴとして使われた。「ソニー製品のユニークさや違いを短い言葉で表現したこのフレーズは、世界中のお客様にソニーの名前に親しみをもっていただく大きなきっかけの一つとなった」としている。
前半は、「歴史」をテーマに、日本初のトランジスタラジオ「TR-55」や初代ウォークマン「TPS-L2」、エンターテインメントロボット「AIBO」などを、当時の広告などとともに展示。合計展示点数は約730展となる。
'17年2月17日からの後半は、「未来」をテーマに、2018年夏にオープン予定の「銀座ソニーパーク」を、いち早く体験できるというインスタレーションを展示。次世代アーティストによる音楽ライブなども予定している。
それぞれの「ソニー史」を共有。It's a Sony展の狙い
2016年に開業50周年を迎えるソニービルだが、2017年3月31日で営業を一旦終了。ビルを解体し、訪日観光客の増加が見込まれる2018年~2020年の間は「銀座ソニーパーク」と称したフラットな空間として開放。2020年秋以降に新ビル建設を開始し、2022年秋に新ソニービルの営業を再開する計画。なお、ソニービルの歴史については別記事を参照して欲しい。
ソニービルの一時閉館に先立ち、ソニービルが歩んだ50年の歴史と今後の進化を紹介するイベントが「It's a Sony展」。ソニー平井一夫社長兼CEOは、建て替えに伴う「銀座ソニーパークプロジェクト」について「ソニーの新たな挑戦」と切り出し、「ソニー創業から70周年。東京通信工業の創業時から、初代トランジスタラジオやウォークマン、AIBOなど730ものエポックメイキングな製品を集めています。是非、楽しんで、ソニーの『WOW』をもう一度体験して欲しい」とアピールした。
ソニービルに入ると正面に歴代ソニー製品を並べた「It's a Sony展」のサインが大々的に表示。右手の入り口の展示スペースが「My Favorite Sony」コーナーだ。
My Favorite Sonyでは、著名人が実際に使っていた思い出深いソニー製品を、コメントともに展示するというもので、雑誌「ポパイ」とのコラボ企画。例えばピエール瀧氏は、「グラストロン PLM-50(1996年発売)」、みうらじゅん氏はカセットテープ「C-30(1969年)」の実機を出展している。
ソニー平井一夫社長もこのコーナに参加。短波ラジオの「スカイセンサー ICF-5800(1973年)」を、南米の放送局のベリカード自慢や上位モデルが欲しかったなどの思い出とともに紹介している。
ソニービルを運営するソニー企業の菅原健一社長は、「It's a Sony展は、これまでのソニーの50年とこれからの50年に向けた展示です。ソニービルが竣工50年で、当時を知る人は、もうソニー社内には在籍していませんし、ソニーの歴史の全てを網羅している人は居ません。ただ、お客様や社員のそれぞれのソニーとの接点、その製品が使われた時代や思い出こそがソニーの歴史。この機会に、ソニービルを訪れる人にそれぞれのソニーを思い出して欲しいと考えました」と企画意図を説明する。
ソニー初製品は電気炊飯器。モルモットやトランジスタラジオ
My Favotite Sonyから、上のフロアにあがると、ソニーの前身となる東京通信工業の創業初期の1940~50年の展示。同社初の製品である、電気炊飯器(1945年)や真空管電圧計NP-4(1945年)、電気ざぶとん(1946年)、天皇陛下のインターホンなどが並ぶ。
「自由闊達なる理想工場」で知られる東京通信工業の設立趣意書(本文はこちら)のレプリカや、ソニーの先進的な商品作り「モルモット精神」(モルモットのソニーの逸話)を示し、創業者の井深大氏の藍綬褒章受章を祝って、社員から贈られた「金のモルモット」の像なども展示されている。
以後、フロアをあがる毎に、年代が近づいていく。初のG型テープレコーダ(1950年)や、ソニーの社名の元となった、録音テープ「Soni-Tape KA(1950年)」、コンデンサマイク「C-37(1958年)」などが並ぶ。日本初のトランジスタラジオ「TR-55」も、もちろん展示。このTR-55から、本体にSONYロゴが入れられている。
1981年に導入された三宅一生デザインの作業衣も展示。夏冬兼用でファスナーで袖を外せる。
注目したい展示は「ソニー ロゴタイプ原器」。現在のソニー(SONY)ロゴは、1973年に定められたものだが、それ以前は1955年から5回に渡り変更されてきたという。そのロゴのデザインの細部まで細かく規定したものがロゴタイプ原器だ。
ソニー企業菅原社長は、「看板やネオンなどでの見やすさ、わかりやすさにこだわって、今のロゴに決まったようです。大賀さん(1982~1995年まで社長を務めた大賀典雄氏)から聞いた話ですが、かつての香港 啓徳(カイタック)空港に降りるときに見えるSONYのロゴを見やすくしたい、という目標があったそうです」とのエピソードを教えてくれた。
トリニトロン登場
1960年代に入ると民生用のテープレコーダなどが発売されてくる。1961年発売のオールトランジスターテープレコーダー「TC-777」が、1966年にはポータブル型の「TC-100」やカセットテープメディア「C-60」なども発売される。「テレコ」という言葉が生まれたのもこの頃だ。
テレビも登場。世界初のポータブルトランジスタテレビ「TV8-301」は、1960年発売。「売れなかった」とのこと。一方、ポータブルテレビ「TV5-303」(1962年)は、マイクロテレビの愛称でショールームに7,000人もの見学者を集めたという。
また、ソニーの失敗作として展示するのがクロマトロンカラーテレビ「19-C70」(1965年)。画質は当時主流のシャドウマスク管より良かったものの、量産に苦心し、故障も多く、社内では「苦労マトロン」と呼ばれたとのこと。この失敗から、ソニーの70年代以降を支える製品になったのが、自社開発の「トリニトロン」だ。
初のトリニトロンカラーテレビ「KV-1310」は'68年発売。トリニトロンは、高画質とともに左右の歪みのない画面とフォーカスの良さなどで、ソニーのテレビを支える技術となった。
1970年台以降はトリニトロンカラーテレビが多数登場。ソニーの人気を支えた。また、ごろ寝対応の「TV501」(1977年)やラジオ、テレビ、テープレコーダを一体化したジャッカル「FX-300」(1976年)などの製品も展示されている
1970年代は、テープメディアを使った「録音」にも注目が集まった時期。オープンリールデンスケ「TC-5550-2」(1974年)や、ショルダータイプのデンスケ「TC-2850SD」(1973年)などが紹介されている。
そして、ビデオデッキも1975年に登場。初代ベータマックス「SL-6300」や、テレビチューナ内蔵のベータ「SL-7300」などが展示されている。
ウォークマンやCDなど人気製品が集結
'80~'90年代を中心としたソニーミュージック所属アーティストのビデオクリップなども紹介。そして、ソニーで、音楽といえばウォークマンだろう。初代「TPS-L2」(1979年)を始めとして、多くの製品を一堂に紹介している。
'80年代はCD黎明期。1982年発売の初代CDプレーヤー「CDP-101」(1982年)や初代ディスクマン「D-50」(1984年)などが展示されている。
プロフェッショナル用の映像モニターとして、支持された「プロフィール」シリーズや、パスポートサイズの8mmビデオカメラ「CCD-TR55」なども展示。
90年代はVAIOやサイバーショット、AIBOなどが登場
90年代には、VAIOブランドでパソコンに参入し、VAIO「PCG-505」(1997年)が銀パソブームを起こした。また、デジタルカメラもマビカブランドからサイバーショットに変更。初代サイバーショット「DSC-F1」はレンズ部が回転するユニークな製品で、1996年に発売された。動物型のペットロボット「AIBO」も初代モデル「ERS-110」が1999年発売。
この時期のブラウン管テレビは「ベガ」ブランドで展開。ハイビジョンブラウン管を搭載した「KW-32HDF9」(1997年)などの製品を紹介している。
また、3階には大型のビデオウォールを用意し、Instagramでハッシュタグ[#Itsasony]付きで投稿した画像を一覧表示。訪れたユーザーのソニーの思い出を共有できるスペースとなっている。
有機ELテレビやクオリアも
2000年以降の製品も初代BRAVIAや有機ELテレビ「XEL-1」(2007年)、ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」(2011年)、踊る音楽プレーヤー「Rolly」など紹介。
レコーダは、初代BDレコーダ「BDZ-S77」(2003年)を始め、スゴ録、コクーン、PSXなどを展示している。
また、「感動価値の創造」を掲げ、2003年に発売したソニー社内の高級ブランド「QUALIA(クオリア)」についても紹介。SACDオーディオシステム「Q007」や、トリニトロンカラーモニター「Q015」などを展示している。
ガチャガチャに注目! 外壁のルーバーを思い出に
展示の最後は、4階のコラボグッズなど。かつて制作された「ベータマックス Tシャツ」などが飾られている。これらは残念ながら非売品だが、注目したいのは“ガチャガチャ”(カプセルトイ)だ。
ガチャガチャは1回500円で、初代ウォークマン「TPS-L2」などの歴代商品やソニービルを模したストラップをゲットできる。毎月5種類が切り替わり、展示期間中に21種類を用意。ガチャガチャ目当ての人は、ソニービルを何度も訪れることになりそうだ。
年間350~400万人が訪れるソニービルの最後の展示となる「It's a Sony展」。ガチャガチャの景品も「相当数準備している」とのことだ。なお、It's a Sony展の期間は'17年3月31日までだが、2月17日からは、未来のソニーパークに向けた展示となる。
また、ソニービルの外壁に取り付けられているルーバーをカットして、来場者に販売する。エッフェル塔をイメージした特殊形状で、ソニービルの外観上の特徴ともいえる。ソニービルへの愛着や歴史を残すための施策として行なわれ、販売方法や価格は未定だが、売上はセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンとソニーが設立した「子供のための災害時緊急復興ファンド」に寄付される。
2018年には開かれたソニーパークへ
It's a Sony展の上のフロアには、2018年以降のソニーパークのイメージ模型を設置し、今後の展開を開設している。
全銀座 街づくり委員会委員長の岡本圭祐氏は、「50年前にソニービルが出来たときには銀座の流れが変わった。そして、いまも内外から多くの人を呼び寄せている。今回、単に建て替えではなく、パークプロジェクトとして、街に開かれたスペースが提供され、新しい建物にも開かれたスペースを展開する。銀座の街にとってはありがたいこと。ソニーの技術とインテリジェンスで新たなカルチャー、わくわくドキドキを発信してほしい。Only at Ginzaがあふれる体験を期待している」と語った。