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ユニバーサルミュージック、高音質CD「SHM-CD」を他社へも開放
-年内に邦楽へも導入。「業界標準を目指す」


SHM-CDラインナップの一部
7月2日開催


 ユニバーサルミュージック株式会社は2日、音楽CDや楽曲配信などの今後の展開をマスコミ向けに紹介する説明会を開催。展開している高音質CD「SHM-CD」シリーズを年内を目処に邦楽にも導入していくほか、商標と専用ロゴの使用を開放し、他のメーカーからのリリースも許可する方針を明らかにした。


■ SHM-CDとは

 SHM-CD(Super High Material CD)は、CDの素材に通常よりも透明性が高い、液晶パネルなどに使われるポリカーボネート樹脂を使用したCDのこと。ユニバーサルと日本ビクターが共同で開発した。同樹脂には高流動性、高転写性という特徴があり、ビクター独自の成形工法を用いて、改良を加えたオリジナル高精度金型や専用生産ラインを用いてCDに応用。CDのピットをより正確かつ精密に形成できるという。

 それだけでなく、読み取り時にレーザー光の複屈折率が少ないという光学特性を持っており、結果としてジッタの少ない、良好な信号特性が得られるという。素材が異なるだけで、フォーマットとしては通常の音楽CDと同じ。そのため、専用のプレーヤーなどを使わずに高品位な再生音が得られるのが最大の特徴となっている。


SHM-CDのロゴ SHM-CDの特徴

 音質の傾向としては、音場の奥行きが深くなり、低音の量感も増加。ユニバーサルでは「CD特有のギスギス感が少ない、まろやかでアナログライクなサウンドが楽しめる。解像度やバランスも向上し、透明感のある音質になる」と表現している。

 現在までに、クラシックやジャズは2007年11月21日から、コルトレーンやビル・エヴァンス、カラヤンなどの作品で、現在までに150タイトルを発売。洋楽でもローリング・ストーンズやポリスなどを2008年1月23日から、180タイトルリリース。合計で330タイトル以上の発売。内訳としては、2008年に入ってからの5月28日と6月25日に合計217タイトルをリリースするなど、急激にラインナップを拡充している。


■ 他社からのSHM-CDリリースも

 SHM-CD 1枚だけでは、通常のCDとの音質の差はわかりにくい。そこでユニバーサルでは、5月28日に“聴き比べ用”として、「これがSHM-CDだ! ロックで聴き比べる体験サンプラー」(UICY-90818/1,000円)を発売。「テレビスポット広告も何も打っていないのに、オリコンデイリーチャートで発売初日19位を記録し、リリースした我々もビックリするほど反響があった」(セールスマーケティング&デジタル セールス本部の深尾尚宏本部長)という。第2弾の発売も計画されている。

これがSHM-CDだ! ロックで聴き比べる体験サンプラー 試聴機が用意された売り場もある

セールスマーケティング&デジタル セールス本部の深尾尚宏本部長

 既発売のラインナップを見てもわかる通り、過去の名曲をSHM-CD版として再発売し、主にエルダーマーケットに向けた商品としてリリースしてきた。しかし、洋楽のロックやポップスを中心に、世代に関わらず反響が大きいことや、高級なオーディオでなくても違いが体験できることなどから、「音楽配信の影に隠れがちなパッケージメディア市場に、新たな需要を喚起するもの」と、戦略的位置付けを変更。キャンペーンなども織り交ぜ、積極的にジャンルやタイトルの拡充を推進していくという。

 まず、9月には洋楽90タイトル、クラシックやジャズも60タイトルを投入。さらに、年内を目処に邦楽にも採用。「当初は洋楽などと同じように、過去の名曲の再リリースという形になるが、将来的には新作にも広げ、エルダーマーケットから若い層へとSHM-CDを浸透させていきたい」(深尾氏)とする。

高音質なCDとして、業界標準化を目指す

 さらに、他社からもSHM-CDがリリースできるような環境を整えていく。SHM-CDに関する諸権利はユニバーサルと日本ビクターが保有しているが、一定の条件下で商標と専用ロゴの使用を他社にも開放。生産にはビクターの工場を使用する必要があるが、ライセンス料などは求めず、他社へも採用を呼びかける。

 既に、日本ビクターの関連子会社であるテイチクエンタテインメントが、4月2日に発売された秋川雅史のアルバム「千の風になって~一期一会~」でSHM-CDを採用。「既に、他の数社からもリリースが決まっている。パッケージ市場全体を盛り上げるためにも、業界の標準化を目指していきたい」(深尾氏)という。

□関連記事
【3月25日】テイチク、秋川雅史の新アルバムに高音質CD「SHM-CD」採用
-液晶パネルの素材を使用。ビクターとユニバーサルが開発
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080325/victor.htm


■ 音楽配信とパッケージの共生を

小池一彦取締役社長兼COO

 2008年上半期の実績として、ユニバーサルは音楽市場シェア17.2%を獲得し、トップに立っている。青山テルマやGReeeeN、童子-Tなどがシングルヒットを記録したのが原動力であり、「最近露出の多い鼠先輩など、様々なものが上手く回って好調な上半期になった」(小池一彦取締役社長兼COO)という。

 パッケージ販売も好調だったが、着うたフルなどの配信はさらに上を行っており、青山テルマが1月23日にCDリリースした「そばにいるね」は、着うたフルで音楽史上初となる200万ダウンロードを達成。同楽曲は2007年12月から「着うた」で先行配信され、こちらは既に340万ダウンロードを記録。合計で750万ダウンロードを突破。GReeeeNの新曲も31日間で100万ダウンロードを記録している。

 小池社長は「世界的には“パッケージ販売が落ち、音楽配信も思ったより伸びず、レコード産業の未来は暗い”と語られている。しかし、日本においてはパッケージは微減しているが、デジタルの配信がそれを払拭するような伸びを見せているという世界的に見て珍しい状況になっている」という。それでも楽曲配信の売り上げ比率は音楽市場全体の15%程度だが、先進国で15%を超えているのは日本とアメリカだけだという。

 また、先行配信されることが多い音楽配信は、単純な売り上げだけでなく、後に控えるパッケージ(CD)販売から見た、テストマーケティングのツールとして活用できるという側面がある。例えば、着うたの反応が良い作品であれば、事前の予定を変更し、その楽曲のCD発売に向けて広告宣伝費や人員を多めに割くといった施策が取れるといった具合だ。

 さらにユニバーサルでは昨年、着うたでヒットした楽曲を、コンピレーションCDに落とし込んだ「アイのうた」をリリース。邦楽のコンピレーションとしてナンバーワンの売り上げを記録。7月2日には第2弾の「恋のうた」(UICZ-1300/2,300円)をリリースするなど、マーケティングだけに留まらない配信とパッケージの連携を推進している。

 小池社長はこうした展開を「配信とパッケージの共存」と表現。「絶対に共存は可能だと信じている」とし、さらなる発展に向けた組織作りとして、パッケージと配信という両方を流通を統括して取り扱うセールスマーケティング&デジタル部署を設立したことを報告。同時に、「流通が多様化しても、原動力となるのはシングルヒット。つまり良い音楽を生み出すこと。当たり前のことだが、この根本を絶対に忘れないよう、今後も曲、詞にこだわり、良い作品を提供していきたい」と意気込みを語った。

2008年上半期の実績 デジタル配信とパッケージ。共生の一例

□ユニバーサルミュージックのホームページ
http://www.universal-music.co.jp/
□SHM-CDの公式ページ
http://shm-cd.co-site.jp/

(2008年7月2日)

[AV Watch編集部/[email protected]]


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