ドキュメント映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』を観た。(公式サイト)
冒頭、工業化、都市化、ダム建設などによって、水の枯渇問題が提起される。本来、自然のなかで循環してきた水が、人的影響、とりわけ資本主義による工業化によって、循環のサイクルが断ち切られている状況が分かりやすく提示される。
枯渇する水資源を民営化等の手法によって囲い込む多国籍企業の問題点が指摘されるところから、ぐいぐいと引き込まれていった。
2007年1月にアフリカ・ケニアの首都ナイロビで開催された世界社会フォーラム2007のワークショップで、水の民営化問題を提起するモード・バーロウが登場する。インタビューに答えてこう訴える。
「世界銀行は第二次大戦後、途上国援助のために設立されました。先進国の出資金で途上国を支援するはずでしたが、世界銀行は逆に三大水道企業と手を組みました。債務負担軽減と引換えに、途上国に水道民営化を迫ったのです」
「国連のミレニアム開発目標には水の汚染や地下水利用の抑制は含まれていません。利益の源泉となるから手を触れないのです」
債務救済のかわりに公共サービスの民営化を強制するIMF・世銀の政策によって、多国籍企業ベクテル社による水道事業の民営化に対して、地域の労働組合・農民、商店主などが反対運動を起こし、軍との衝突を乗り越え、最終的にベクテル社を追い出した。ボリビア・コチャバンバのたたかいも登場する。この闘争を指導した労働者オスカー・オリベラはこう語る。
「なぜ水が高騰するのか私たちは納得できませんでした。なぜ多国籍企業や民間投資家が水を所有するのか。お金がなければ水が手に入りません。闘う以外に方法はありませんでした。」
貧しいものから水へのアクセスを奪うとして、電子キー型水道メーターの導入とたたかう南アフリカの反民営化フォーラムのバージニア・セシェティや「水戦争」の問題点をシャープに語るヴァンダナ・シバなども登場する。
この映画は、民営化に巣くう多国籍企業の悪行と民営化を推進する機関としてのIMFや世銀、そして企業の投資行動を促進するWTOを告発する優れたドキュメンタリーになっている。
IMFや世銀の餌食となっている「南」の諸国だけでなく、アメリカやカナダなど、「先進国」といわれる国々の中でも水道事業の民営化による被害が拡大し、それに対する地域住民のたたかいが取り組まれていることも紹介している。
登場するオルタグローバリゼーション運動のオピニオンリーダー達は、IMFや世銀などが奉仕する多国籍企業の横暴がまかり通る現在のシステムを変革することが水問題の根本的解決であることを訴える。
「水問題は、国や性別、肌の色や富に関係なく、生命体すべてにとって関係する問題である」というようなセリフが何度か登場する。確かに水それ自体は、その人の属性に関係なく、どの生命体にとっても必要であり関係することだろう。
しかし南アの反民営化フォーラムのバージニア・セシェティが、映像の中で紹介していたように、金持ちは水を買うことができるが貧乏人はそこから排除される。また水が商品になることで、過程の中で稼ぎのある人間が水へのアクセスの権利を支配し、それは往々にして男であることが多く、それによって女性たちはさらに男性の支配下におかれることになる、という指摘は重要だろう。
公共サービスの商品化の諸影響は、資本主義と家父長制の支配するこの社会において、富の有無や性別が大いに関係する。
作品の後半では、水の自然循環を復活させるさまざまな取り組みや、民営化された水道事業の再公有化なども紹介している。水は公共財であり、それを多国籍企業が私有化するのはけしからん、という考えも紹介されている。
劇場公開されている作品でWSFが登場したことにちょっと感動して、書いてみたが、この作品のよさはそれだけにとどまらない。下手な紹介よりも実際に映画館で見てもらうのが一番だ。一人でも多くの人に見てもらいたい作品だ。
日刊ベリタに、水をめぐる現在の動向と監督インタビューが掲載されている。こちらも必読だ。
◎水が狙われている!映画『ブルーゴールド』サム・ボッゾ監督へのインタビュー(日刊ベリタ)
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「システムを変えろ」。これがこの作品に登場するオピニオン・リーダーたちの主張だ。「システム」とは、1台の製造につき35万リットルの水を使う自動車製造に依拠する経済システムであり、1バレルの製造に320~1100リットルの水を使う石油に依存する経済システムであり、1枚につき32リットルの水を使うマイクロチップが収められているコンピュータシステムに依拠する経済システムのことだ。それは大量生産、大量消費に依拠するしか生き延びることができない資本主義システムのことだ。
しかし映画館で販売されていたこの映画のパンフレットに収められている解説には、いかに水資源を確保するのか、ということで「海水淡水化」や「下水の再利用」などしか紹介さていなかった。「海水淡水化」は映画でも厳しく批判されている技術であり、「下水の再利用」は現在の水の大量消費や民営化などの問題を回避している。映画の出来とはアンバランスな内容になっている。
債務救済のかわりに公共サービスの民営化を強制するIMF・世銀の政策によって、多国籍企業ベクテル社による水道事業の民営化に対して、地域の労働組合・農民、商店主などが反対運動を起こし、軍との衝突を乗り越え、最終的にベクテル社を追い出した。ボリビア・コチャバンバのたたかいも登場する。この闘争を指導した労働者オスカー・オリベラはこう語る。
「なぜ水が高騰するのか私たちは納得できませんでした。なぜ多国籍企業や民間投資家が水を所有するのか。お金がなければ水が手に入りません。闘う以外に方法はありませんでした。」
貧しいものから水へのアクセスを奪うとして、電子キー型水道メーターの導入とたたかう南アフリカの反民営化フォーラムのバージニア・セシェティや「水戦争」の問題点をシャープに語るヴァンダナ・シバなども登場する。
この映画は、民営化に巣くう多国籍企業の悪行と民営化を推進する機関としてのIMFや世銀、そして企業の投資行動を促進するWTOを告発する優れたドキュメンタリーになっている。
IMFや世銀の餌食となっている「南」の諸国だけでなく、アメリカやカナダなど、「先進国」といわれる国々の中でも水道事業の民営化による被害が拡大し、それに対する地域住民のたたかいが取り組まれていることも紹介している。
登場するオルタグローバリゼーション運動のオピニオンリーダー達は、IMFや世銀などが奉仕する多国籍企業の横暴がまかり通る現在のシステムを変革することが水問題の根本的解決であることを訴える。
「水問題は、国や性別、肌の色や富に関係なく、生命体すべてにとって関係する問題である」というようなセリフが何度か登場する。確かに水それ自体は、その人の属性に関係なく、どの生命体にとっても必要であり関係することだろう。
しかし南アの反民営化フォーラムのバージニア・セシェティが、映像の中で紹介していたように、金持ちは水を買うことができるが貧乏人はそこから排除される。また水が商品になることで、過程の中で稼ぎのある人間が水へのアクセスの権利を支配し、それは往々にして男であることが多く、それによって女性たちはさらに男性の支配下におかれることになる、という指摘は重要だろう。
公共サービスの商品化の諸影響は、資本主義と家父長制の支配するこの社会において、富の有無や性別が大いに関係する。
作品の後半では、水の自然循環を復活させるさまざまな取り組みや、民営化された水道事業の再公有化なども紹介している。水は公共財であり、それを多国籍企業が私有化するのはけしからん、という考えも紹介されている。
劇場公開されている作品でWSFが登場したことにちょっと感動して、書いてみたが、この作品のよさはそれだけにとどまらない。下手な紹介よりも実際に映画館で見てもらうのが一番だ。一人でも多くの人に見てもらいたい作品だ。
日刊ベリタに、水をめぐる現在の動向と監督インタビューが掲載されている。こちらも必読だ。
◎水が狙われている!映画『ブルーゴールド』サム・ボッゾ監督へのインタビュー(日刊ベリタ)
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「システムを変えろ」。これがこの作品に登場するオピニオン・リーダーたちの主張だ。「システム」とは、1台の製造につき35万リットルの水を使う自動車製造に依拠する経済システムであり、1バレルの製造に320~1100リットルの水を使う石油に依存する経済システムであり、1枚につき32リットルの水を使うマイクロチップが収められているコンピュータシステムに依拠する経済システムのことだ。それは大量生産、大量消費に依拠するしか生き延びることができない資本主義システムのことだ。
しかし映画館で販売されていたこの映画のパンフレットに収められている解説には、いかに水資源を確保するのか、ということで「海水淡水化」や「下水の再利用」などしか紹介さていなかった。「海水淡水化」は映画でも厳しく批判されている技術であり、「下水の再利用」は現在の水の大量消費や民営化などの問題を回避している。映画の出来とはアンバランスな内容になっている。