【調査会NEWS1494】(26.3.12)
平成14年(2002)4月4日と言えば小泉訪朝の半年前、有本恵子さんが拉致認定されてひと月足らずのことです。このとき英文で東京から発信されたロイター電は当時日本政府が認定していた有本さんを含む11人に加えて30人近い日本人が拉致されていると伝えています。
情報源は警察庁の幹部と思われますが、おそらくリストまで見せてリークしたのでしょう。しかしこの情報は外信だった上にまだ未認定拉致被害者の問題まで関心が至っていないときでもあり、日本国内でそれほど大きな話題にはなりませんでした。
この後拉致認定されたのは曽我ひとみさん・ミヨシさんと松木薫さん、石岡亨さん、田中実さん、そして松本京子さんの6人です。日本国籍でないため「警察断定」でとどまっている高敬美・剛姉弟をいれても8人しかなりません。したがって9・17小泉訪朝の前の時点で少なくともあと20人程の拉致被害者を政府は知っていたということになります。
最近でも陰で「確実な拉致被害者はあと10人位」とか言っている政府関係者がいるそうですが、このことを知っていて(知らないはずはありませんし、10人でも大変なことであるはずですが)言っているのだとすれば、それは拉致を隠蔽しようとするものであり、また日本政府の不作為を隠蔽しようとするものだと言わざるを得ません。
古屋大臣の号令で立ち上げられた警察庁の「特別指導班」は県警を指導するだけでなく、こういう政府関係者も指導してもらいたいものです。また、少なくともこの30人近くのリストは今からでも公開されるべきだと考える次第です。
それと、この記事を見ていてふと気付いたことがありました。それはまた後日書きたいと思います。
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インタビュー 北朝鮮は40人近くの日本人を拉致した可能性がある
※訳注:文中に使われている「東京」「平壌」は主に日本政府と北朝鮮当局を指す。また「メディア」はロイターのことと思われる。
2002年4月4日15時27分
東京、4月4日(ロイター)
日本の情報当局は、孤立している共産国家に拉致されたとされる11人の日本人のリストに30人近く新たに付け加える可能性があると述べた。
北朝鮮は後に「ありもしないことを騒ぎ立てている」とメディアと日本政府を強く非難した。
アジアの2国間の間でもっとも微妙な問題である日本人拉致の噂の論争は、国交正常化の壁となっている。
日本の情報当局高官は、さらに30人近い日本国民が北朝鮮に拉致されていると思うとロイター通信に語った。新たな数字は失踪者に対する多くの調査から導き出されたことも付け足した。
東京は少なくとも11人の日本人は1970年代と80年代に工作員に対する日本語教育の為に北朝鮮の工作員によって拉致されたと言っている。
北朝鮮は拉致を繰り返し否定している。
情報機関関係者は匿名を条件に「北朝鮮によって拉致されたと確信している11人のリストに付けくわえる可能性は高い」と語った。
「悪の枢軸」とブッシュに烙印を押された北朝鮮による拉致疑惑が当初信じられていた以上に深刻かもしれないと明らかになったことは、日本や韓国のようなアメリカの重要な同盟国との長く開かれていない会談を再開する準備の兆候のようにみえる。
拉致被害者リストに人を付け加えるほど、国交正常化前に解決すべき2国間のハードルは高くなるだろうと情報筋は語る。
<スパイゲーム>
情報筋は、最近非公式に北朝鮮が「11人のら拉致被害者リストのうち一人がその共産国家で生きているが2人の男性(氏名は確認できない)が死んでいる」とそれとなく伝えてきたと言っている。
情報筋は、北が生存していることを示唆した人物は東京が1983年に英国で北朝鮮の人間によって拉致されたと確信している当時23歳の有本恵子さんの可能性があると語った。
有本さんが誘拐されたという疑いは、1970年に北朝鮮への飛行機をハイジャックした日本赤軍の左翼のメンバーの前妻の証言によって先月裏付けされた。
情報筋は、スペインで消息が分からなくなった後、1980年6月に平壌へ拉致されたのではないかと日本が考える40代男性2人をリストに加える可能性があると語った。
その他のほとんどの拉致は日本で起こったと情報筋は語る。多くの失踪者は、二つの国を隔てる日本海の人里離れた海岸沿いから姿を消した。
日本はスパイとしての訓練するまたは工作員に日本語や日本の習慣を教える為に拉致したことを非難している。
「日本人を拉致する主要目的は北がもっとも意識する韓国にスパイ活動をする為である。日本人に成りすますことで、彼らは韓国に自由に出入りできる」と情報筋は話している。
<金正日−重要な容疑者>
朝鮮中央通信は日本の反動メディアと極右勢力とが問題を大きくしていると非難した。
情報筋からのコメントが公表された後、「(平壌の)真摯な立場を冷遇する妨害的ふるまいであり、人道的立場から適当な時期に相互の関心事項を話し合うための日本との交渉を中止するためのふるまい以外に考えられない」と伝えた。
北朝鮮赤十字は、先月日本の担当者との間で「いわゆる行方不明者」の調査を再開する準備ができていたと話した。
当局は過去の朝鮮半島での植民地宗主国日本について、「世界でもっとも多くの拉致をした記録を持つ戦争犯罪国家である」と言っている。
朝鮮中央通信は「日本が過去の犯罪に謝罪し補償しなければ何も解決しない」と言っている。
拉致問題について論じ合うことは、隠遁しているリーダー金正日の関与が推測されるため北にとって敏感であり複雑な問題であると情報源は語った。
「われわれは金正日が拉致の重要な役割を果たしていることを知っている。1970年代半ば、彼が北朝鮮の政治をほとんど掌握したころから拉致事件が起こっている」と情報源は語った。
<小泉の立場は明確>
小泉純一郎首相は最近拉致事件の解決なくして国交正常化はないと語った。
「拉致事件に関して、日本側は譲歩の余地はない。そしてそれを解決する為の求めに北朝鮮は応じないだろう」と情報当局は語る。
11人の生存リストの中のうち一人、1978年に工作員の養成の為に北に拉致された
と伝えられている日本人女性の一人は確実ではないがまだ生きている」と情報提供者は語った。
日本政府によって別名李恩恵として確認された女性は1990年代中ごろに北に殺されたという報道がある。
情報源はその女性が1987年に大韓航空爆破について韓国当局に証言した北朝鮮女性、金賢姫を教育した女性だと確信していると語った。
金は東京でホステスをしていたその日本人女性が、船で北朝鮮に送り込まれたのち、平壌の特殊工作員養成機関で働いていたと語った。
情報源は「その女性に関しては矛盾した報告もある。我々はその報告が真実かどうか知る方法はない」と語った。
<交渉は進展に失敗した>
日本は1991年に北朝鮮と国交正常化について話し始めた。しかし北朝鮮は日本人女性の拉致を言い出したとたんに部屋から出て行った。
この宿敵同士は2000年に国交正常化交渉を再び始めた。しかし、また何も進展させることができなかった。
先週北朝鮮はシンガポールで週末に行われる予定だった日本と北朝鮮の厚生相会談の予定を急に取りやめた。
北朝鮮が会談を中止したのは準備ができていいためだと語った。しかし、日本の担当者は平壌が話題の中心に拉致問題が置かれることを恐れているように見えると語った。
東京と平壌の関係は北が1998年8月に本州上空を飛び越して3段式のミサイルを発射したとき最悪の状態になった。
12月、海上保安庁は経済排他水域200マイル以内に侵入し、停戦命令を無視した北朝鮮の工作船と思われる船を攻撃した。そして約15人の乗員全員と共に工作船は沈んだ。
(以上)