海上での拉致
【調査会NEWS1384】(25.8.3)
5月に産経新聞が報じてから大きな関心を呼んでいる海上での拉致ですが、それに端を発した圭運丸事件(昭和42年11月7日、紙谷慶五郎さん、圭剛さん、礼人さん、速水さんが北海道雄武沖で失踪)の調査で拉致の全体像にもかかわる様々なことが浮き彫りになっています。
産経の報道は最近脱北した元朝鮮人民軍幹部の証言によるものでした。
「対日漁民作戦」と名付けられた日本の漁船を狙った拉致が1962〜85年まで繰り返し実行され、漁船を襲って乗組員のうち1人を拉致、残りを殺害したという内容で、拉致被害者は証言者の分かる範囲で30人を越すとのこと。これが事実なら殺害された人は100人以上になる可能性もあります。
しかし、調べていく過程で圭運丸事件は「対日漁民作戦」と別のケースである可能性が高くなっています。「対日漁民作戦」は海上でランダムに日本漁船を狙ったものであり、地上との連携は考えられていなかったそうですが、圭運丸事件は事前に対象を選定していたと推定され、偽装工作と思われるようなことも行われています。手口からして明らかに別種のものです(これら圭運丸事件の問題について、本日3日夕方のTBS系「報道特集」で放送されるとのこと)。
圭運丸事件は昭和63年(1988)の宮崎における林田幸男さん・水居明さんの共擁丸事件、同年の鳥取における矢倉富康さんの一世丸事件と同様陸上で目を付けられた人の拉致が海上で行われたケースだと推測されます。
現在調査会では海上での拉致について事件の見直しを行っており、遅くとも来年には1万キロ現地調査の対象にもなると思います。海上保安庁も積極的に捜査を行う方針のようで、ぜひ結果を国民の前に明らかにしてもらうよう期待しています。
それにしても「対日漁民作戦」の情報が事実であればこれだけで調査会リストに(そしておそらくは警察のリストにも)ない多数の被害者がいることになります。しかも最初から殺害された人がいたということで、いったいどこまで広がるのかと頭を抱えたくなります。
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