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2012年8月10日

竹島

 8月8日付戦略情報研究所メールニュース Vol.140で書いたものですが、その二日後に李明博大統領の竹島上陸。何とも複雑です。やはり日本が強くならないとだめだと思います。

■韓国の反日と日本の嫌韓

 荒木和博(戦略情報研究所代表)

 先日、維新政党・新風の鈴木信行代表がソウルの日本大使館前に設置されている慰安婦像に「竹島は日本の領土」と書いた木製の碑を縛り付けた。この模様は直ちにネットで配信されたが、韓国では「テロ」だとして大騒ぎになり、鈴木代表は入国禁止措置となった(騒ぎになったときにはすでに出国した後だったので、韓国で拘束されることはなかったが、一つ間違えば何をされていたか分からないだろう)。

 このニュースを耳にして、何とも複雑な思いにとらわれた。かつて日本の非左翼は北朝鮮と対峙している韓国には親近感を持ち、協力してきた。ところが、最近になって鈴木氏に限らず、その層における韓国への反発ー嫌韓ーはこれまでになく強まっており、これはその象徴とも言えるものだからである。

 大使館の向かい側に慰安婦の像を置くなどという非礼は、相手が交戦国でもしないだろう。しかし韓国政府はもちろん保守派の中からも疑問を抱く声は発せられない。言っている人もいるのかも知れないが、少なくとも日本に聞こえてはこない。それを指摘すると、多くの場合「いや、あれは左翼・親北の連中がやっていること」という声が返ってくるだけである。

 冷戦期の1970年代、日本でマルクス・レーニン主義幻想全盛で、左翼がまだ共産主義を理想社会として公言していたころ、朴正煕政権の韓国は国際社会から冷遇されてきた。日本では総聯が強かったこともあり、「韓国は軍事独裁の暗い国、北朝鮮は社会主義の発展する国」というイメージが固定化していた。マスコミでもそういう視点以外の報道はごく僅かだった。

 ベトナム共産化の余勢を駆って金日成は南侵の意図を見せており、米国は「人権外交」の美名のもとに在韓米軍撤退も視野に入れるという悪条件の中、韓国は人権をある程度後回しにしても経済と安保を最優先せざるを得なかった。

 当時韓国に行った日本人には、冷戦の最前線にあって国防の人的物的負担をしながら北朝鮮に対峙する韓国に感銘を受け、「何とか少しでも協力したい」と思った人が少なくない(日本の中では少数派だったが)。韓国も当時反日的な発言はあったが、慰安婦の像を大使館の前に立てるなど想像もできなかった。さらに言えば慰安婦のこと自体が問題になっていなかった。それがどうしてこんなに変わってしまったのか。その理由には次のようなものがあると思われる。

1、全斗煥政権以後のテクニカルな反日

 粛軍クーデターを発端に権力を掌握し、1980年に正式に大統領になった全斗煥は、朴正煕のようなビジョンを持った人物ではなかった。本人自身は親日的な人物だったが、側近の許文道・文化広報部長官らのアドバイスで、政権の支持を強めるため反日をアピールした。これに日本側が冷静に(実際はなあなあで)応じたため、「学習効果」が生じ、以後の政権もリーダーシップが低下すると反日を持ち出すようになった。

2、謝れば済むと思った日本政府とそれを煽った日本のマスコミ

 韓国側から何を言われても、跳ね返してしまえばそれまでなのだが、日本的発想で「ここで譲歩すれば相手もそれ以上言わないだろう」という誤解が河野談話などを生んだ。結果的には韓国側は「総理や大臣が謝ったのだから」と要求をエスカレートさせた。謝れば謝るほど日韓関係を悪化させることになった。


3、世代交代

 現在韓国の中心的世代は日本統治はおろか朝鮮戦争の経験もない。下手をすると日本人以上に平和ボケしている。
 日本統治時代を知っていた世代は、表面的には反日的な発言をしても現実を知っていたし、なにがしかの懐かしさも感じていた。また、北朝鮮の脅威があるから実利上も日本をないがしろにできなかった。しかし、それを知らない若い世代はマスコミなどで反日的なニュースや「実録」ドラマ(世論操作にはこれがかなり効果を挙げる)を、冷静に考えればどんなに不合理でもそのまま事実として受け入れてしまう。

4、北朝鮮からのプロパガンダ

 今日のような左翼的反日は1980年代後半からその勢いを増している。盧武鉉時代に「親日派」の子孫を断罪するという、およそ時代錯誤な法律を作ったりしたのはその象徴で、このころから日本の保守派の嫌韓・韓国離れも進んでいる。日韓の離反は北朝鮮にとって非常に大きな利益となる。韓国では左翼が「民族派」、保守が「国際派」のため、民族(韓民族ないし朝鮮民族)と国家(自由民主主義国家大韓民国)が両立せず、民族を看板にすれば自然に左シフトするのである。

 さて、このような現状をどうやったら改善できるだろうか。
 最も重要なのは日本の姿勢である。韓国が言ってくることに正面から反論すること、理不尽な要求には耳を貸さないことだ。そして、理不尽な要求や批判にはペナルティーを与える覚悟が必要である。

 また、台湾をはじめとする親日的な国家との関係を強化し、それを韓国にも知らしめる必要がある。「別に嫌うなら嫌うで良いですよ」というのは結構効果があるはずだ。

 朝鮮半島は長く列強の狭間にあって、周辺のどの大国に付くかということで生き残ってきた。それは今の韓国も、北朝鮮も同様である。弱いと思えば離れ、強いと思えば擦り寄る。それが生き残る道であったことは、島国という恵まれた場所にあるわが国では想像できないことでもある。ちなみに国保守系の長老であるL氏はかつて私に「朝鮮半島で一番質の良い人間は外国から攻めてきたとき、戦って死んでいった。その次の目端の利くのは外国に逃げた。今残っているのはカスばかりですよ」と言ったことがある。

 韓国の反日を押さえ込むのに効果があるのは何より日本が強くなることだ。そうなれば声を上げにくい親日的な人たちも「日本についた方が得だから」とは言えるようになる。

 反日報道が非常に多い今でも年間200万人以上の韓国人が日本に来るのである。それは別に国家の意思などというものではなく、仕事上の関係や観光がほとんどだ。また、何か韓国の中で問題が起きたときに「日本ではこんなことはあり得ない」という日本を賞賛する報道も少なくない。決して根深い反日ということではないのは日本からも年間300万人以上が韓国を訪れることからも明らかだろう。

 要は日本が強くなれば大使館前の慰安婦像も撤去されるだろうし、危険を冒して竹島の碑を建てに行く必要もなくなると思うのである。

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