正日峰の虹
《戦略情報研究所メールニュース Vol.130 平成23年1月22日》
■正日峰の虹
荒木和博(戦略情報研究所代表)
下の文は朝鮮労働党機関紙「労働新聞」1月2日付に掲載された「記事」である。
「正日峰」というのは中朝国境にある白頭山(中国名長白山)山系の峰の一つ。金正日はこの近くで誕生したことになっている。正日峰をバックにした金正日「生家」の絵や写真は北朝鮮ではよく使われる。
もちろん、ご存じのように金正日の生まれたのはソ連のハバロフスク近郊である。「生家」は父親金日成が抗日闘争の英雄であるという神話作りの一環で後になって作られたものだが、北朝鮮の人間は(特に学生や軍人など)度々この「聖地参拝」をさせられている。
それにしても、こういう文章を「記事」として載せるのは北朝鮮ならではである。当然ながら写真はない。その気になればいくらでも作れるだろうが。金正日が視察に行ったところで夜虹が出たとか二重の虹が出たといった記事はこれまでも何度か掲載されたことがあるが、ここしばらくはなりを潜めていた(あるいは私が見落としただけかも知れないが)。
宗教団体の機関紙ならともかく、朝鮮労働党の機関紙にこのような記事が載るのはある意味北朝鮮が擬似宗教国家としての色彩を持っているからだろう。かつてソ連のジョークで「昔のおとぎ話は『昔々、あるところに』で始まった。今のおとぎ話は『やがて、いつかは』で始まる」というのがあった。北朝鮮も現世での平安を得ることは放棄し、来世で「白い米と肉のスープを食べ、絹の着物を着て瓦屋根の家で暮らす」ことにしたのかも知れない。
もう一つ、ここに出てくる「主体100年」とは金日成の誕生した1912年を元年とした「主体年号」のことである。日本だと大正と同じになる(つまり今年は大正100年)。
このようにして自画自賛していくなかで人民は飢えて死んでいく。記事にある「マイナス17度で正月としては暖かく」というのは本当だろうが、その気候の中で凍えている子供達がいるという事実は認識しておかなければならないだろう。
冷戦終結の時点で体制を変えられたはずの北朝鮮は、朝鮮半島での変化を望まない中国、米国、あるいは金大中・盧武鉉政権の韓国によって支えられ体制崩壊を免れてきた。ある程度は日本の援助もその役割を果たしているだろう。周辺国が支え、国内では餓死者、凍死者、あるいは政治犯収容所での虐待や公開処刑による死亡者が続出するというこの20年間はやがて歴史の中でどう位置づけられるのだろうか。
作家の関川夏央さんが北朝鮮について書いた本に『退屈な迷宮』というのがある。副題は「北朝鮮とは何だったのか」である。今、私たちは「北朝鮮とは何だったのか」という、近未来からの視点に立って何を為すべきか考える必要があるだろう。
(労働新聞2011年1月2日付2面記事 荒木訳)
元旦の朝に繰り広げられた正日峰の虹
神聖な革命の峰正日峰に希望に満ちた元旦の朝神秘な自然現象が繰り広げられた。
白頭山天池総合探検隊が観測したところによれば1日、白頭山の日の出のときから壮観を呈した。秒速30メートルの強風で激しく吹雪いていたのが7時頃、空全体を覆っていた黒雲があっという間に消え去り燦々と太陽が昇った。
続いて7時15分頃正日峰東側の空には太陽を中心として左右に二つの大きな虹がかかり恍惚境を現出した。このとき正日峰の気温はマイナス17度で正月としては暖かく、窓が氷結してできる霜の花が虹と調和して一幅の絵のように美しかった。
神秘を演出した虹は15分程かかっていた。白頭山天池総合探検隊員は主体100年の元旦の朝、強盛大国の大門を開き万福を教授する金日成民族の未来を祝福するかのように先軍朝鮮第一の峰に繰り広げられた絶景を見ながら喜びを禁じ得なかった。
■戦略情報研究所講演会のお知らせ
次回戦略情報研究所講演会は以下の通り開催します。奮ってご参加下さい。
1、日程:平成23年2月25日(金)18:30〜20:30
2、場所 UIゼンセン会館(東京都千代田区九段南4-8-16 Tel03-3288-3549)
※JR・地下鉄市ケ谷駅下車3分(JR出口から靖国通りを靖国神社に向けて進み、三菱東京UFJ銀行の手前の道を右に入って直ぐ 日本棋院斜向い)
3、講師:三浦小太郎・北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表
4、テーマ:「人権と安全保障」
人権を守るためにも国家が治安の整備、安全保障は重要であり、また国家が単なる「暴力装置」に堕さないためにも人権という理念は大切である。脱北者問題、拉致問題、北朝鮮人権運動をこの視点から考える。
5、参加費 2000円(戦略情報研究所会員は無料)。
6 参加申し込み 事前のお申し込みは不用です。そのまま会場においで下さい。
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