1年、そして「情報」
【調査会NEWS996】(22.12.29)
■1年、そして「情報」
荒木和博
昨日、調査会事務所は仕事納めでした(今日も曽田常務理事は仕事をしていますが)。
最後に鍵を閉めて出るとき、「去年も同じだったなあ」と思いました。また1年過ぎてしまったという罪責の念と無力感、考えるとこの何年も、年末になると同じことを感じてきたように思います。
昨年、民主党政権になったときに拉致担当大臣になった中井洽衆議院議員は「情報」の重視を強調し、確かに予算と人員は増やしました。それは前政権のときと比べて進歩だったと思いますし、私たちも期待しました。
しかし具体的な成果となれば黄ジャンヨプ元労働党書記と金賢姫元工作員の招聘という、パフォーマンス程度でした。あの種のイベントはやるのに大変な労力がかかりますから、当事者はそれがあたかも凄いことをしていると錯覚してしまいがちです。
中井大臣は退任間近に何人かの拉致認定を模索したという話があります。真偽の程は確認できませんが、確かにやめる直前の記者会見で「幾人かの方の、ほぼ間違いない生存状況も確認されつつある」と発言しているのですから、それがその時期まで地道に情報収集をやってきた結果としてそうなったのか、あるいは大臣ポストに残ろうとして前から持っていた情報を出そうとしていたのかは別として、直前まで行っているケースが何件かあるのは事実でしょう。
しかし問題は認定をしたところで被害者の救出には直結しないということです。その点は未帰還の認定被害者のことを考えれば分かるでしょう。要は詐欺師兼暴力団を相手にしているのですから、どんなに真面目に情報を集めてもその情報の価値で相手が動くわけではなく、逆に多少アバウトな情報でも(極論すれば嘘であっても)強制力が伴えば北朝鮮は動きます。
「ちょっとでも間違ったら北朝鮮の反撃を食らう」などという言い逃れはやめて、「どうやったら救出できるか、そのためにどういう情報を集め、流していくか」に方針を変える必要があるでしょう。認定にしても、現在の支援法による認定をやめて、名目は別であっても怪しいと思われる失踪はすべて認定者として一気に何十人か発表してしまうのも一つの方法でしょう。
もちろん、発想の転換、新たな取り組みが迫られているのは私たちも例外ではありません。来年仕事納めの日に同じ思いで事務所の鍵をかけなくても済むようにしなければなりませんから。
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