※8月27日付の調査会NEWS 827号に書いたものです。
家族会・救う会の衆院選候補者アンケートで回答した候補者の三分の二が全面的経済制裁に賛成でした。救出運動が始まった12年前には想像もできない数字ですが、家族会・救う会の皆さんの努力が実ってきているのだと思います。
その一方で、経済制裁に反対する声も最近度々聞かれるようになりました。例えば前の家族会事務局長であった蓮池透さんは、ある集会で「制裁が効いているのかと言えば、中国から北朝鮮に物資やエネルギーがどんどん入っている状況です。経済制裁は北朝鮮をかたくなにするだけで、何の効果もないと思います」と言っています。蓮池さんの経済制裁反対の発言はこのときだけではないので、本人の確信に基づいたものなのでしょう。
蓮池さんの言っていることの中で、今の日本政府が広報活動などしかやっておらず、取り返すための具体的なことが不十分だという内容もあったと思います。それは私も同感です。また、経済制裁「だけ」で良いとは思いません。
しかし、問題は根本的な姿勢です。相手は普通の国ではなく、建国以来続いた対南(韓国)赤化統一という基本方針のもと、休戦でしかない朝鮮戦争の延長線上で拉致を行っている国です。そこから被害者をすべて取り返すためには闘う姿勢が欠かせません。
経済制裁は国家として、その意思を表すとともに、直接の効果以外に北朝鮮の工作活動の抑止など様々な効果があります。組織が先細りするばかりの朝鮮総聯が僅かな力を振り絞ってやるのが「経済制裁反対」の行動であるのは、逆に言えばそれが効果がある証拠だということです。
また、付け加えて言えば蓮池さんや、多くの制裁反対派(?)は北朝鮮の人権問題についてはほとんど語ろうとしません。
帰国した弟の薫さんは北朝鮮で公開処刑など、様々な人権侵害の場を見ているはずです。実際に中に入ったかどうかは別として政治犯収容所のことも良く知っているでしょう。だからこそ、そういう問題について話せないのでしょうが、少なくともそういう国だからこそ拉致事件も起こしたのだということは無視するべきではないと思います。
過去の問題とからめるのは単なる詭弁です。今の北朝鮮が最低限の人権が保障されている国であればともかく、今も自国民に対しても世界に希な人権蹂躙を行い、多くの国民を餓死させて恥じない金正日体制が過去の問題を持ち出すのは単に日本から何かを得るための手段でしかないことは誰にでも分かるはずです。
経済制裁の効果がない、金正日の側にも一理ある、北朝鮮の体制を倒そうなどと言うべきでないという皆さんは(とりわけ蓮池さんは)、政治犯収容所の体験者、脱北者から一度しっかりと北朝鮮の人権状況を聞いてみたらどうでしょうか。その上で彼らに(そして収容所の中で殺された人々、公開処刑された人々に)向かって同じことを言えるのであれば、それはそれで結構だと思いますが。