« 2009年5月 | トップページ | 2009年7月 »

2009年6月18日

手紙の返事

※本日6月18日付の調査会NEWS788号に書いたものです。

 昨日夕刻、山梨県警から電話がありました。

 一瞬ドキリとしたものの「まあ、まさか電話で『逮捕する』と言われることはないだろう」と思い、お話を聞いてみると「元県警警備1課長のところにお手紙を出されたそうですが、本人はすでにこの職を離れており答える立場にありません。県警として責任をもってやっています」とのことでした。

 これだけでは意味が分からないと思いますが、「手紙」というのは山本美保さんに関わる「DNAデータ偽造疑惑事件」に関して、5年前の3月5日、「DNA鑑定の結果山形の身元不明遺体が山本美保さんである」と発表した当時の県警警備1課長である丸山潤・現警察庁外事情報部外事課課長補佐に私が出した手紙(下につけてあります)のことです。

 5月に出した質問状に対する山梨県警の回答(6月4日付)では全く回答になっておらず、回答をいただく際に行ったやりとりでも疑問は増えるばかりだったので、私は丸山氏に手紙を書き、直接会って説明をしてもらいたいとの手紙を書きました。しかし、まさかその返事が山梨県警から届くとは思いませんでした。警察庁宛に送った手紙の情報を山梨県警が独自に入手してこちらに連絡するはずはなく、指示に基づくものであることは明らかです。

 常識的に考えれば、本人が直接返事をするか、そうでもなければ黙殺するかでしょう(善し悪しは別として、お役所なのだから、そういう判断があっても不思議ではないと思います)。山梨県警を使って言わせるというのは、子供のけんかを親に言いつけるような(立場上は逆ですが)話で、何か情けなくなりました。もともと公開するつもりはなかった手紙ですが、こういう返事のしかただったので敢えて公開することにした次第です。

 いずれにしても、この事件を主導した人々は、問題を山梨県警の問題にして自分たちに火が及ぶのを防ごうとしているようです。県警も盾にされてしまっているようで同情を禁じ得ませんが、本件の問題はもはや山梨の問題ではなく東京の問題、国の問題です。県警のできることは先日の回答でおそらくほとんどすべてだと思います。今後は中心をこちらに移してやっていきたいと考えています。

 なお、宣伝になりますが、来週後半に拙著『日本が拉致問題を解決できない本当の理由』(草思社刊)が出版されます。「飯倉公館事件」とあわせこの「DNAデータ偽造疑惑事件」についても書いていますのでご関心のある方はご一読いただけると幸いです。

(丸山課長補佐に送った手紙)

拝啓
 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

 はじめてお手紙をお送りさせていただきます。ご多忙な中失礼の段お許し下さい。

 私は特定失踪者問題調査会という民間団体の代表を務めているものです。ご存じかも知れませんが、当会は拉致の疑いがありながら日本政府が拉致認定していない失踪者について調査し、拉致の疑いが高い場合は救出を目指すための活動を行っております。

 さて、今回は特定失踪者山本美保さんの件についてお聞きしたくご連絡申し上げました。丸山様が山梨県警警備一課長在任当時の平成十六年三月五日に行われた発表は山本美保さんのご家族のみならず、私たち支援者にとっても大変ショッキングなものでしたが、そのときの記者会見での丸山課長の受け答えも、後に私たちが提出した質問へのお答えも納得いくものではありませんでした。

 その後五年にわたり私たちは調査を続けて参りましたが、どうしても疑問を解くことができませんでした。そこで去る五月二十二日にも県警に質問状をお届けし、美保さん失踪二十五年目にあたる六月四日に県警本部にて回答をいただいたきました。私たちとすればこれで疑問が解けることを期待したのですが、現在の担当者も当時は関係した職におられない方ばかりで、残された書類をもとに回答されているため、残念ながら逆に疑問は深まるばかりでありました。

 もちろん、捜査中の事案として、明らかにできないことが多いのも分かりますが、DNAだけが一致して、他のデータがことごとく別人であることを示しているというのはやはりきわめて不自然なことと思わざるを得ません。足利事件などでDNA鑑定の問題に関心が集まっていることでもあり、より踏み込んだ情報開示が必要と考えます。丸山様におかれましても職務上にとどまらず、論文等で拉致問題への高い関心をお持ちと拝察し、ご協力賜りたくお願い申し上げる次第です。大変ご多忙とは存じますが、可能な限り日程は合わせますので関係者とお会いになる場をお作りいただけませんでしょうか。私の連絡先等は同封名刺の通りです。是非ともご理解、ご協力賜りますようお願いする次第です。

 末筆ながらご健康とご活躍をお祈り申し上げます。

敬具
    平成二十一年六月九日
                        荒木和博
丸山潤様

|

2009年6月16日

新著

Riyu
 書店に並ぶのは今月24日頃からになりますが、新著『日本が拉致問題を解決できない本当の理由(わけ)』が草思社から刊行されます。この前の記事にある山本美保さんの事件、第一次小泉訪朝時の「飯倉公館事件」などもふくめて、拉致問題の解決できない理由と、どうするべきか、について、自らの反省も込めて書きました。ご関心のある方はぜひご一読いただきご批判賜れれば幸いです。

|

2009年6月 5日

読売新聞の連載

山本美保さんの件について、読売新聞山梨版で「失踪25年」という連載が始まっています。下記のアドレスでネットで見ることができます。全体の流れが良く分かりますのでご参考にしていただければ幸いです。


http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamanashi/feature/kofu1243953285704_02/news/20090602-OYT8T01118.htm

|

DNAデータ偽造疑惑事件 山梨県警の回答

本日5日付の「調査会NEWS」785号に書いたものです。

 昨日午前10時より、山梨県警本部で山本美保さんの件に関する質問への回答を受け取りました。以下に「回答を受けて」、「県警回答文」「前号のニュース(一部文字化けしたとの連絡がありました)」の順に掲載しますが、例えば下着のサイズの矛盾に答えずに突然Gパンが男物になっていたり、本人のDNA試料を探さずいきなり双子の妹である森本美砂さんの血液を採っているにもかかわらず「高い識別力を持った鑑定」のためにお母さんの血液は使わなかったと言っているなど、説明自体が矛盾だらけでした。

 特にご家族に対して説明したという「4」の部分は圧巻(?)で、全く家族が聞いていない話を丁寧に描写し、「こんなことは聞いたことがない」というと「書類に書いてある(つまり、その書類が本当かどうかは確認していない)」の一点張りでした。「類似した身元不明遺体があるのでDNA鑑定する」と言われたとしたら、20年近く(当時)探してきた家族がその言葉を聞き漏らす、あるいは聞いたけれど忘れてしまう、ということは常識で考えてもあり得ないと思うのですが。まあ、回答した方も当時はその職にいなかったわけですし、半ばヤケクソだったのかも知れません。

 いずれにしても山梨県警はただ使われただけ、一種の被害者とも言えますので、今後は当時何があったのか、どうやってDNAデータが偽造されたのかについて、小泉政権の官邸中枢の動きも含めて調べていく必要があると思います。もちろん、当時県警発表に携わった丸山潤課長(当時・警察庁から派遣)らにも事情は聞いてみたいと思いますが。

 なお、個別の矛盾点については後日あらためて発表します。昨日の足利事件菅家さんの釈放もありDNAの問題に関心が集まっています。ブログ等やっておられる方はインターネット上などで少しでも多くの人の目に触れるようご協力をお願いします。
--------------------------------------------------------
平成21年6月4日

山梨県警からの回答を受けて

山本美保の家族
特定失踪者問題調査会
山本美保さんの家族を支援する会

 今回の回答は前回のものと基本的に変わるものではなく、私たちの疑念は晴れるどころか一層深まったと言わざるを得ない。

 具体的には県警に残されている記録にもとづくものであって、私たちの認識している事実とは異なる点があまりにも多い。

 したがって、これ以上県警を中心にして対応を求めることは無理があり又、本件において県警は副次的役割を果たしたにすぎないと考えられることから焦点を当時の小泉政権中枢へ移すことが適当と考えられるので、その方向で今後の対応を進める。

<今回の回答文の矛盾>

1、美保さんの下着のサイズについての確認を今に至るも行なっておらず、下着等の提出も求められていない。美保さんのGパンサイズは県警も確認しているが、それと回答ではサイズが異なる。

2、本来、座高であるべき「頭頂部より臀部下端」という鑑定結果を遺体の全長であるとしている。

3、遺体の死後経過時間は最大で17日、柏崎でのバックの発見後なら、わずか13日なのに「大約3週間から3カ月くらい」の中に入るとしている。

4、回答の(5)・(6)は事実であるが、(1)~(4)の家族に対しての説明はなされていない。「県警の記録には残っている」との事だが、客観的に考えてそれを家族が記憶していない事はありえない。

5、この回答では、鑑定書を公開できない理由とはなりえない。

6、「高い識別力を持った鑑定」と言いながら、美保さん本人の試料を使おうとしなかった事は説明ができない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー
(県警回答文)
梨備一発第12号
平成21年6月4日

山本文子 森本美砂 森本直行 殿

山梨県警察本部警備部警備第一課長

ご質問に対する回答について

 平成21年5月22日付で提出されました「平成16年3月5日の山梨県警からの発表に対する質問について」に対しまして、別添のとおりご回答申し上げます。

【質問1について】

 山形県の海岸で発見された御遺体について、血液型、性別、推定年齢、推定身長、死後経過時間(推定)等に関する事項及びその骨髄のDNA型鑑定の結果を踏まえて総合的に判断して山本美保さんの御遺体であると判断しました。

 ご指摘のブラジャーのサイズに関しては、昭和60年4月及び平成14年10月にご家族から提出された「家出人捜索願」には、いずれもサイズに関する事項は記載されておりません。県警察としましては、御遺体に装着されていたブラジャーのサイズと山本美保さんの胸囲等との比較をすべく、山本美保さんの身体測定結果等の捜査を行いましたが、現在のところ確認はできておらず、身体特徴を含め捜査を継続しております。また、御遺体に装着されていたGパンに関しては、そのデザイン特徴やエンブレム等を元に捜査した結果、フランスのメーカーのコピー商品で、当時、一般的な価格で県内にも流通していた製品とみられること及び当該Gパンのサイズは男性用の28インチであったことが判明しています。男性用の28インチとは、男性のウェストサイズで71cmに相当するところ、男性と女性とでは、臀部の体形の相違等があるため、このサイズは、一般的には、ウェストサイズが61~65cm程度の女性に適合するサイズであると承知しています。

 山形の御遺体がサイズ64のガードルを着用していたことも、これに符合しており、失踪当時のウェストサイズが64㎝である山本美保さんが着用することは十分可能であったものと判断しております。

【質問2について】

 山形県で発見された身元不明死体についての解剖による鑑定結果は、「頭頂部から臀部下端まで25cm」とされておりますが、本件御遺体は、下半身が欠如し、頭頂部位から臀部下端までのものであり、鑑定書にはこの他に御遺体の全長を示す記載もないことから、「95cm」とは、座高ではなく、御遺体の全長と理解しております。また、山本美保さんの家出人捜索願によりますと、失踪時の身長は「160cm」となっており、今回、高校三年時の身長として「159.5cmであった」とのご指摘をいただいておりますが、御遺体の推定身長は、解剖による鑑定結果として「大約160~170cmと推定される」とされていることから、両者に矛盾はないものと考えております。

[質問3について】

 白骨化、屍蝋化、歯根膜の腐敗状況などは、遺体の置かれていた状態によって変わります。

 当時の解剖記録においては、頭部・顔面の白骨化、一部屍蝋化等の様々な所見に加え.当時の気温、屍体の置かれていた状況などを総合的に検討された上で、「本屍の解剖開始までの死後経過時間は大約三週間~三ヶ月位と推定される」とされております。

 本解剖を行った解剖医は、当時、既にこの種の解剖に豊富な知識と経験を有しているところ、その判断は、信頼すべきものであると考えております。

【質問4について】

 警察では、DNA型鑑定について、森本美砂さんに対して、次のとおり、説明を行っています。

(1) H15.4.26(土)、山本光男方で、山本文子、森本美砂、山下滋夫の各氏に対し、関係者からの事情聴取の状況等の捜査状況、昭和59年に山形県で発見された身元不明死体と山本美保さんに類似点が認められること及びDNA型鑑定が可能であることを説明し、血液の採取について説明したところ美砂さんから承諾をいただきました。

(2)H15.5.7(水)、甲府市内の山梨県立中央病院において、森本美砂さんから鑑定承諾書等の提出を受けるとともに、血液を提出していただいております。

(3)H15.722(火)、厚生年金会館一階喫茶室で、森本美砂さんに、科学警察研究所での鑑定結果を伝えた上で、更に詳細な鑑定を行う必要性を説明し、名古屋大学で鑑定を行う予定であることをお伝えし、その場合には、再度の血液提出をお願いする場合もあるとお伝えしました。

(4)H15.11.7(金)、平成14年の捜索願受理後1年が経過したことから、県警察本部公安委員会室で、森本美砂さんに、この間の捜査結果等を説明し、7月22日に説明した名古屋大学での鑑定が行われていることを説明した上、鑑定が行われている御遺体や着衣等の写真を見ていただきました。

(5)H16.3.5(金)、「ニュー機山」において、森本美砂ご夫妻に対し、名古屋大学でのDNA型鑑定の結果について、鑑定書を提示した上で、説明いたしました。

(6)同日、山本文子方で、山本文子、森本美砂さんに対し、同じく名古屋大学での鑑定結果についてご説明しております。

 以上のとおり、それぞれの時点で必要なご説明は尽くしており、今回ご指摘のような「立ち話」で鑑定結果をお伝えしたという事実は一切ありません。

【質問5について】

 鑑定書については、事案の特殊性にかんがみ、平成16年4月7日(水)に家族及び訴訟代理人の弁護士に閲覧していただいております。これは、犯罪捜査規範の規定に基づき「被害者等に対する通知」として対応したものです。

 県警察は、山形の御遺体について山本美保さんのものであると判断しておりますが、死に至った経緯等につきましては明らかになっておらず、拉致の可能性も含めて捜査を継続しているところであります。

 現に捜査中の事案である本件の鑑定書及びそのコピーをお渡しすることは差し控えさせていただきます。

【質問6について】

 鑑定においては、現存の資料で明瞭な結果を出すことが重要であり、この結果、資料が残らないこと,はありますが、このことにより実施された鑑定結果の信頼性が損なわれることはないと考えます。

 また、妹美砂さんの血液を採取したのは、山本美保さんと森本美砂さんが一卵性双生児であり、親を対照資料にする場合よりも高い識別力をもった鑑定ができることからご協力いただいたものです。

|

« 2009年5月 | トップページ | 2009年7月 »