手紙の返事
※本日6月18日付の調査会NEWS788号に書いたものです。
昨日夕刻、山梨県警から電話がありました。
一瞬ドキリとしたものの「まあ、まさか電話で『逮捕する』と言われることはないだろう」と思い、お話を聞いてみると「元県警警備1課長のところにお手紙を出されたそうですが、本人はすでにこの職を離れており答える立場にありません。県警として責任をもってやっています」とのことでした。
これだけでは意味が分からないと思いますが、「手紙」というのは山本美保さんに関わる「DNAデータ偽造疑惑事件」に関して、5年前の3月5日、「DNA鑑定の結果山形の身元不明遺体が山本美保さんである」と発表した当時の県警警備1課長である丸山潤・現警察庁外事情報部外事課課長補佐に私が出した手紙(下につけてあります)のことです。
5月に出した質問状に対する山梨県警の回答(6月4日付)では全く回答になっておらず、回答をいただく際に行ったやりとりでも疑問は増えるばかりだったので、私は丸山氏に手紙を書き、直接会って説明をしてもらいたいとの手紙を書きました。しかし、まさかその返事が山梨県警から届くとは思いませんでした。警察庁宛に送った手紙の情報を山梨県警が独自に入手してこちらに連絡するはずはなく、指示に基づくものであることは明らかです。
常識的に考えれば、本人が直接返事をするか、そうでもなければ黙殺するかでしょう(善し悪しは別として、お役所なのだから、そういう判断があっても不思議ではないと思います)。山梨県警を使って言わせるというのは、子供のけんかを親に言いつけるような(立場上は逆ですが)話で、何か情けなくなりました。もともと公開するつもりはなかった手紙ですが、こういう返事のしかただったので敢えて公開することにした次第です。
いずれにしても、この事件を主導した人々は、問題を山梨県警の問題にして自分たちに火が及ぶのを防ごうとしているようです。県警も盾にされてしまっているようで同情を禁じ得ませんが、本件の問題はもはや山梨の問題ではなく東京の問題、国の問題です。県警のできることは先日の回答でおそらくほとんどすべてだと思います。今後は中心をこちらに移してやっていきたいと考えています。
なお、宣伝になりますが、来週後半に拙著『日本が拉致問題を解決できない本当の理由』(草思社刊)が出版されます。「飯倉公館事件」とあわせこの「DNAデータ偽造疑惑事件」についても書いていますのでご関心のある方はご一読いただけると幸いです。
(丸山課長補佐に送った手紙)
拝啓
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
はじめてお手紙をお送りさせていただきます。ご多忙な中失礼の段お許し下さい。
私は特定失踪者問題調査会という民間団体の代表を務めているものです。ご存じかも知れませんが、当会は拉致の疑いがありながら日本政府が拉致認定していない失踪者について調査し、拉致の疑いが高い場合は救出を目指すための活動を行っております。
さて、今回は特定失踪者山本美保さんの件についてお聞きしたくご連絡申し上げました。丸山様が山梨県警警備一課長在任当時の平成十六年三月五日に行われた発表は山本美保さんのご家族のみならず、私たち支援者にとっても大変ショッキングなものでしたが、そのときの記者会見での丸山課長の受け答えも、後に私たちが提出した質問へのお答えも納得いくものではありませんでした。
その後五年にわたり私たちは調査を続けて参りましたが、どうしても疑問を解くことができませんでした。そこで去る五月二十二日にも県警に質問状をお届けし、美保さん失踪二十五年目にあたる六月四日に県警本部にて回答をいただいたきました。私たちとすればこれで疑問が解けることを期待したのですが、現在の担当者も当時は関係した職におられない方ばかりで、残された書類をもとに回答されているため、残念ながら逆に疑問は深まるばかりでありました。
もちろん、捜査中の事案として、明らかにできないことが多いのも分かりますが、DNAだけが一致して、他のデータがことごとく別人であることを示しているというのはやはりきわめて不自然なことと思わざるを得ません。足利事件などでDNA鑑定の問題に関心が集まっていることでもあり、より踏み込んだ情報開示が必要と考えます。丸山様におかれましても職務上にとどまらず、論文等で拉致問題への高い関心をお持ちと拝察し、ご協力賜りたくお願い申し上げる次第です。大変ご多忙とは存じますが、可能な限り日程は合わせますので関係者とお会いになる場をお作りいただけませんでしょうか。私の連絡先等は同封名刺の通りです。是非ともご理解、ご協力賜りますようお願いする次第です。
末筆ながらご健康とご活躍をお祈り申し上げます。
敬具
平成二十一年六月九日
荒木和博
丸山潤様
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