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2007年6月29日

緒方元長官逮捕

何か今ひとつ誰が加害者で誰が被害者なのか、分かりにくい事件である。

 ただ、本当に朝鮮総聯から土地建物をだまし取ったのなら、「さすが元公安調査庁長官」とも言えないことはないが…。

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2007年6月28日

慰安婦決議

 このニュースを聞いて、「もう絶対に引き下がってはいけない」と思った。

 1980年代、韓国で教科書騒ぎが起きたとき、私たち朝鮮屋の多くは「韓国も今急速に高度成長をしているし、アジア大会やオリンピックも開くのだから、余裕が出来れば反日も収まるだろう」と思った。しかし、韓国の反日は(本当に運動として動いている人間は僅かなのだが)ますます先鋭化した。

 日中国交正常化の頃、中国の人一般の対日感情は悪くなかった。もちろん対ソ防衛を意識した中国共産党の意向もあったろうが、当時は日支事変の経験者がまだ多かった時代である。もし日本が本当にひどいことをしたなら、当時の方が反日感情が強くてしかるべきだろう。しかし、それよりも、特に江沢民が国家主席・党総書記になってからの教育宣伝の影響で反日感情は増幅されている。

 今回の決議は、確かに政府の言うように単なる決議であり、拘束力がある訳ではない。しかし、放置しておけばそれを利用しようとする輩が世界中から出てくることを覚悟しなければならない。北朝鮮などはおそらく、これをもって「拉致などよりはるかに大きな問題だ」と、世界中にアピールしようとするだろう。米国政府も、対北宥和政策を続けようとするなら、日本が拉致問題でがんばっていることが邪魔になるはずだから(すでにそうなっているが)、この問題を持ち出してブレーキをかけようとするだろう。少しでも日本側が事実関係を明らかにしようとすれば「それでは米国民の世論の支持が得られない」と。

 しかし、ここで頭を低くして風が収まるのを待っていれば、そのツケは次の世代に回っていくのである。
 そして私たちの先輩は、全く覚えのない大虐殺だ、性奴隷だと、悪人にされ、逆に原爆や無差別爆撃で死んでいった人たちはまったく顧みることもされなくなるだろう。いや、やがて「日本はあんなにひどいことをしたのだから原爆を落とされたり、無差別爆撃されて当然だ」といわれるに違いない(今でも中国などではそう言っているようだが)。

 この問題は先人と、次の世代の名誉をかけた戦いである。今生きている私たちの世代はそのつなぎの役割をしているに過ぎない。自分たちが大過なく過ごすために、今声を挙げることのできない人々のために、絶対に後退してはならない。

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調査会記者会見生中継

特定失踪者問題調査会の記者会見を明日6月29日(金)14:00からインターネットで生中継します。これは(株)NetLive(砂川昌順代表取締役)のご協力で実現するもので、今後も可能な限り続けていくつもりです。ぜひご覧下さい。
NetLiveのホームページはhttp://www.netlive.ne.jp/です。

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2007年6月26日

ホームページ?

以下は調査会NEWS 525号(19.6.25)に書いたものです。

 首相官邸で拉致問題を解説するホームページができるとのこと。

 結構なことだとは思いますが、報道によればこのために1億1000万円の広報予算を使うとか。もちろん全額を使うのではないでしょうが(少なくともそう信じたい)、それにしても脳天気な話だと思わずにはいられません。ひがみではありませんが、出張旅費も制限せざるをえない私たちからすれば、悠長な話です。ちなみに私は自分のブログ(当たり前ですが)と、大森勝久さん(北海道庁爆破事件の犯人にされ、死刑判決を受けて現在再審請求中)のホームページを運営しています。対策本部の中にあれだけ人がいるのですから、誰かホームページくらいできる人はいないんでしょうか。その人が仕事の合間にやれば、後はプロバイダの費用と翻訳料など入れてもせいぜい数十万あればできると思うのですが。

 この9日からは政府の対北放送「ふるさとの風」が始まりますが、先日の西村眞悟議員の質問主意書にも内容についてはおおざっぱな回答しかしていません。対策本部からの説明の際、私は特定失踪者の名前の読み上げもしないということは納得できない旨言ってありますが、さて結果はどうなるのでしょう。このことについては入札なども含めていま一つ分からない部分があるので、確認をして29日の記者会見(NetLiveでインターネット生中継予定 http://www.netlive.ne.jp/)でも明らかになったことは発表しようと思っています。そもそも、当初予定では参院選の始まったばかり、1週間伸びても参院選公示直前にこれを始めるというのは、どんなもんでしょう。

 最近あちこちでお話しをしながら、小泉政権のときは「どうせ総理はやる気がないのだから、私たちががんばらなければならない」と思っていたのが、安倍政権になって「安倍さんに任せておけば大丈夫だ」となってしまい、全体の運動量が低下したように思えてなりません。現実がどうなっているのか、しっかり見直すべきだと思っています。

 なお、7月1日発行の「諸君!」に連載している「月報北朝鮮問題」にもそれらの話を少し書きました。関心のある方はご一読いただけると幸いです。

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2007年6月25日

川人博弁護士講演会

 調査会の常務理事をやっていただいている川人博弁護士に講演をしていただくことになりました。調査会の事務所ですので狭いのですが、下記の通りです。あと数人は入れますので関心のある方はぜひご参加下さい。参加できない方もインターネットで生中継を見られます(ただし前半の講演部分のみ)のでご覧下さい。

 姜尚中という人については、この川人先生との論争とは別に、大変面白いエピソードがあります。機会を見てこのブログで紹介したいと思っています。

■戦略情報研究所講演会

戦略情報研究所では下記の通り講演会を予開催します。参加出来ない方もインターネットでのライブ中継を行いますのでぜひご覧下さい。

1、日程 7月4日(水)18:30〜20:30

2、場所 特定失踪者問題調査会事務所(文京区後楽2-3-8 第6松屋ビル3F)
    飯田橋駅東口徒歩3分
http://www.mapfan.com/index.cgi?MAP=E139.44.53.3N35.42.3.3&ZM=9

3、講師 川人博弁護士(北朝鮮の拉致と人権問題に取り組む法律家の会幹事・特定失踪者問題調査会常務理事)

4、テーマ「金正日と日本の知識人」

 前のニュースでもお知らせしましたように、同名の著書が講談社新書から発売されています。ご出席の方は可能であれば目を通しておいていただけると幸いです。なお、当日会場でも若干部数を販売します。

5、参加費 2000円(戦略情報研究所会員の方はお送りしている講演会参加券をご利用になれます)。

6 備考
(1)会場が狭い(最大限30人程度)ため、参加希望の方はできるだけ事前に電話・FAX・メール等でご連絡下さい。直接来ていただいても結構ですが、満員の場合はご参加をお断りする可能性があります。

(2)前回講演会同様、(株)NetLiveのご協力で冒頭約1時間の講演部分をインターネット生中継を行います。出席出来ない方はNetLiveのホームページでご覧下さい(http://www.netlive.ne.jp/)

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2007年6月21日

憲法の正しい解釈

前にもこのブログで書いた大森勝久さんとの直接の手紙のやりとりができるようになった。
 これは6月からの法律改正に伴うもので、従来家族とだけの「交通権」が認められていたのが、3人まで家族以外の人を選べるようになったためで、今までは奥さんを通して連絡をしていたのだが、たとえ文通だけとはいっても、直接やりとりができることがこんなにありがたいものだとは知らなかった。
 大森さんは北海道庁爆破事件(昭和51年)の犯人として逮捕され、死刑判決を受けた。一貫して犯行は否認しているが、思想的には1990年代半ばに転向し、今は保守の立場に立っている。本人によれば「もし警察に捕まっていなければ、自分も爆破事件をやったかもしれない。だから警察が私を捕まえたことは正しかった」とのこと。裁判当初は道庁爆破事件も支持していたので、警察も検察も彼を犯人にすることには良心の呵責を感じなかったのだろう。
 しかし、私が見る限りでは、やはりこれは冤罪としか思えない。そもそも、極めて僅かで不確かな状況証拠をもって、何で死刑判決が下せるのか、異常としか思えない。私は死刑廃止論者ではないが、何しろ死刑というのは執行してしまえば取り返しがつかない刑罰なのだから、こんないい加減なやりかたで刑が確定されてはかなわないと思う。冤罪についてはこのところ鹿児島や富山で次々と明らかになっているが、いわゆる「冤罪」ではないものの、特定失踪者山本美保さんの事件についての警察のやり方や西村真悟衆議院議員の逮捕など、私自身が国家権力の横暴を体感しているだけに、大森さんの事件についても冤罪であることは間違いないと思っている。ちなみに大森さんは先日再審請求が札幌地裁で却下され、現在札幌高裁に再審請求を行っているところである。

 私は口だけであまり力にはならないが、ささやかな支援の代わりに、頭の体操を兼ねて大森さんの論文を掲載するホームページを運営している(大森勝久評論集)。今朝アップロードした論文「地政学が要求する日米核同盟」の最後に次のような一節がある。
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<10>
 9条の改正は、これを実施すれば現在よりも悪化するのは明白です。3分の2以上で発議ですから、民主党の意見を入れて、自衛権に制約がつけられるのは必 至です。自衛隊を軍と規定して、それに制約を付けたのでは救いようがなくなります(現在は自衛隊は軍ではない。実力組織ということで、最小限の武力行使と いう制約になっています)。
 閣議で「従来の9条2項の解釈は誤っていた。日本は自衛のための軍を保有できる。自衛隊は軍隊である」と是正決定し、裁判所が支持すればよいのです。 1946年の時点で連合国がそのように認めています。自衛権・軍に制約をつけるのは反国家行為です。違法・違憲行為です。国家と法に対する反逆罪です。
 上のようにすれば、日本軍は法的に米軍と同等です。安倍政権は直ちに国民を説得し、閣議決定でこれをやるべきです。もう時間の猶予はありません。反対す る勢力は中共・ロシアの手先(客観的に)の左翼であり、侵略勢力なのですから、そんなものに規制されたのでは目も当てられません。
 「解釈改憲」といいますが、反国家的に誤っていた従来の解釈、違法な解釈を正しいものに戻すのですから、うしろめたいことは何一つなく、そればかりか是 正しないことが誤りです。法の支配に反する。
 この正当な方法があるのに、「9条改正」を言うのは、日本を正常の国家にしたいと思っていないのが本心なので。
 改正すれば核武装はダメだとか、専守防衛に徹し海外派兵は認めないとか制約されてしまいます。
 軍はシビリアンコントロールすればよく、国際法と国際慣行に基づいて運用されるものです。であり、制約をつけるのは反国家・違法違憲行為です。
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 ご意見のある方もおられるだろうが、こういうやり方の方がスムーズかつ効果的かも知れない。少なくとも「憲法を変えなければ何もできない」という思考停止だけは止めた方がいいと思う。

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2007年6月15日

答弁書

以下、調査会NEWS 521号(19.6.15付)に書いたものです。

■「答弁を差し控えたい」を連発ーー驚愕の政府答弁書

                                 荒木和博

 去る6月5日に西村真悟拉致議連幹事長から提出されていた質問主意書に対する答弁書が、本日15日西村議員に届けられました。

 一読して感じたのは「良くまあ、これほどひどい答弁書を作ったものだ」という思いでした。西村幹事長の質問主意書と答弁書を項目毎に対比したものを下に付けましたが、この質問は家族はもちろん、拉致問題の解決を願う国民全てが知りたいことだと思います。それに対して、まともな答弁は何一つありません。

 この中で、特に警察が関わっている部分は「答弁を差し控えたい」の連発です。捜査に支障があるからという理由だそうです。しかし、この間赤木が帰国して以来のヨーロッパ拉致に関する情報はほとんど警察からのリークです。この報道を見て事態が進展していると思っておられる方もいるでしょうが、落ち着いてから振り返ってみれば分かります。被害者の救出には何のプラスにもなっていないはずです。「こんなに拉致問題に一所懸命とりくんでいます」という、国民向けのデモンストレーション以外のなにものでもありません。

 少なくとも、警察に、そして政府に自分の都合のいいことだけはリークして良いが、都合が悪ければリークしてはならないなどという選択権はないはずです。あらためて個別に論じてみたいと思いますが、とりあえず、西村議員の質問と、答弁を読み比べて見てください。

 なお、この質問主意書は提出前から某機関がそれを入手しようと動いていました。こちらが問題にすると、現場の人間のフライングとして誤魔化していますが、状況証拠から考えても、それが機関のトップクラスの判断によるものであることはほぼ間違いありません。「情報収集」といっても拉致被害者の情報収集より、私たちの活動の情報収集の方が熱心なようです。

 西村議員はこの答弁書について、「平成9年のめぐみさんの拉致に関する質問主意書への答弁の方が遙かに前向きだった」と言っています。当時の橋本総理はそれなりに悩んでこの答弁書を出すことを決断したのだと思います。今回と比べてそれを実感するとともに、「あるいは拉致問題が安倍政権の命取りになるのではないか」という思いすら頭をよぎりました。

 この答弁書の内容は警察の部分に限らず、全てについて不誠実この上ないものであり、到底納得できるものではありません。今後西村幹事長とも対応を詰めていきたいと思います。

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(西村質問)
 北朝鮮による日本人拉致問題の本質は、単に箇々の被害者に対する犯罪及び人権侵害にとどまらず我が日本の国家主権の侵害であるので、拉致被害者全員が解放されて祖国日本に帰り原状回復されるまでは、この犯罪と国家主権の侵害も日々止まることなく進行し続けている。従って、この現在も進行中の国家的な重大事態に関しての対策は、緊急を要すると考える。

 従って、次の事項について質問する。

一(時効)、北朝鮮による日本人拉致事件における国外移送目的略取及び誘拐罪(刑法二百二十六条)の時効の起算点はいつか。

(政府答弁書)ーーーーーーーーーーーーーー
一について
 公訴時効については、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号 第二百五十三条の規定により、犯罪行為が終わった時から進行することとされているところであり、御指摘の事件についても同様であるが、その詳細については、個別具体的な事件における捜査機関の活動内容にかかわる事柄であるので、答弁を差し控えたい。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
二(逮捕状)、捜査機関は今まで、外国に居る複数の者を拉致実行犯人として逮捕状を取得しているが現在も日本に在住している者に対する逮捕状は取得していない、つまり、外国にいて逮捕不能の被疑者に対する逮捕状はあるが、不可解なことに、国内にいて逮捕可能な被疑者に対する逮捕状はないのである。

 そこで、例えば共に拉致被害者と認定されている(1)有本恵子を拉致したと自ら認めた者、(2)原敕晁の勤務していた家宅捜索を受けた中華料理店の店主、(3)田中実の勤務していた中華料理店の店主とその仲間及び(4)久米裕拉致の実行犯らは、我が国内にいて「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある」と思料されるのであるが、捜査機関は何故これらの者に対する逮捕をはじめとする強制捜査を行わないのか、回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
二について
 お尋ねについては、個別具体的な事件における捜査機関の活動内容にかかわる事柄であるので、答弁を差し控えたい。

(質問)ーーーーーーーーーーーーーー
三(実況見分)、関係者を立ち合せての犯罪現場及び犯人の逃走経路などの実況見分は、真相究明の為の極めて重要な捜査つまり情報収集であるところ、帰国して五年近くも経過している拉致被害者五名が、今までにそれぞれ拉致された現場において立会ったうえで捜査機関が実況見分を実施したとは聞いていない。

 捜査機関は、このような現場における被害者立会いの実況見分を実施しているのか否か、仮に現在まで実況見分を実施していないとすれば、その実施していない理由を回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
三について
 帰国した拉致被害者の五名の方々からは、これまでも様々な御協力をいただいているところであるが、お尋ねについては、個別具体的な事件における捜査機関の活動内容にかかわる事柄であり、また、個人のプライバシーの保護の観点から、その具体的な内容については、答弁を差し控えたい。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
四(松本京子の拉致被害者認定の経緯)、政府は、金子善次郎衆議院議員の松本京子拉致疑惑を質した質問主意書に対して、平成十二年十二月五日付けで答弁書を提出して、松本京子に関して、「所要の調査を実施したが、北朝鮮に拉致されたと疑わせる状況等はなかったものと承知している」と回答したのであるが、平成十八年十一月に、一転して同女を北朝鮮による拉致被害者と認定している。そこで、次の事項について回答されたい。

1、松本京子に関して、平成十二年以降に新たな状況が判明したから新たに拉致認定にいたったのか、それとも、平成十二年十二月時点で愚かにも判断を誤っていたからその当時拉致認定できなかったのか、回答されたい。

 さらに、新たな情況の判明によって認定したとするならば、その情況とは何か。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
四の1について
 御指摘の者については、平成十二年十一月一日以降も、警察において捜査活動を実施した結果、その失踪状況及び失踪後の所在等の解明に資する供述証拠等を入手するに至ったことから、平成十八年十一月十七日、警察において拉致被害者として判断され、同月二十日、北朝鮮当局によつて拉致された被害者等の支援に関する法律(平成十四年法律第百四十三号。以下「拉致被害者支援法」という。)第二条の規定により、拉致被害者と認定されたものであるが、その経緯等については、個別具体的な事件における捜査機関の活動内容にかかわる事柄であるので、答弁を差し控えたい。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
2、新たな状況の判明か政府の判断の誤りか、いずれにしても、政府が過去に「拉致されたと疑わせる状況等はなかったと承知」していた失踪者松本京子に関して拉致被害者であるとの判断に至ったのであるから、他に同女と同様のケースがあることは当然予想されるところであるので、政府は同女の拉致認定以後、類似の失踪者ケースについて再調査しているのか否か回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
四の2について
 御指摘の事案にかかわらず、北朝鮮による拉致の可能性が否定できないなどとして警察等に対する告訴・告発、届出や相談が行われている事案については、警察及び関係省庁において、鋭意、捜査・調査に取り組んでいるところである。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
3、政府は拉致の認定に当たって、「もし認定した失踪者が拉致で無かった場合、北朝鮮から反撃を受ける」として認定に極めて慎重であるが、同女の場合拉致から認定まで二十九年余の歳月が経過し、前記の金子議員の質問主意書提出からでも認定までに六年余が経過しているのであって、もちろん本人の帰国は果たされていない。

 また、曽我ひとみの場合には、北朝鮮がその存在を明らかにするまでの二十四年間、政府は全く拉致とは認識していなかったのである。

 そこで、これら長期間にわたって拉致と認識されなかった事態を踏まえ、政府には「拉致と明らかにできなかった責任」があると思われるが、政府はどのようにその責任を負うのか回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
四の3について
 政府としては、認定被害者(拉致被害者支援法第二条の規定により認定された者をいう。以下同じ) 以外にも北朝鮮による拉致の可能性が否定できない者が存在しているとの認識を有しており、すべての拉致被害者の即時帰国を実現することを基本方針として、引き続き、拉致の可能性が否定できない事案の真相究明に努めるとともに、外交や広報における取組を進めていく考えである。

五(渡辺秀子親子殺害拉致事件について)、渡辺秀子親子が殺害され拉致された事件について、ユニバース・トレイディング社の関係者が、三十人ほどの日本人と在日朝鮮人を拉致した旨証言したとの報道があったが、政府は、この報道に関する事実関係についてどこまで捜査して実態を把握しているのか、明らかにされたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
五について
 御指摘の報道については承知しているが、お尋ねについては、個別具体的な事件における捜査機関の活動内容にかかわる事柄であるので、答弁を差し控えたい。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
六(政府の情報収集の意思と体制)、拉致事件の全容の解明と拉致被害者総数の把握のためには情報の収集が死活的に重要であるが、第二及び第三の質問にある国内に居る拉致実行犯と疑うに足りる者達への強制捜査や犯行現場の実況見分も極めて重要な情報収集であるのに未だ実施されず、さらに、政府の作成するパンフレットやテレビコマーシャル等においても、政府が情報を求めていることを広く訴えるどころか、情報提供の為の連絡の窓口すら示されていないので、政府の情報収集の意欲を疑わざるをえず、次の質問をする。

1、警察等の捜査機関や公安調査庁の調査以外に、政府の対策本部としてどの様な情報収集体制をとり情報を収集しているのか。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
六の1について
 政府としては、平成十八年九月、内閣に内閣総理大臣を本部長とする拉致問題対策本部を設置するとともに、同本部の事務局に情報室を設置し、拉致問題に関する情報の収集及び分析を行ってきているところである。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
2、政府の対策本部においては、右の各機関に集積された情報、さらに、自衛隊や在日米軍に集積された情報を統合し分析する機能を果たしているのか。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
六の2について拉致問題対策本部においては、事務局を中心に関係省庁が緊密に連携を図りつつ、関連情報の収集及び分析を行ってきているところである。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
3、情報は、対価を支払うか交換するかもしくは盗む、の三つのうちの何れかの手段によって収集できるのであるが、政府は情報提供者に対する対価の支払いや司法取引等を実施して情報を集める用意があるのか。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
六の3について
 政府は、各種の方法により情報の収集を行っているが、その内容等についてお答えすることは、情報の収集を困難にするおそれがあること等から、差し控えたい。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
4、特に、警察庁においては、平成十九年四月一日から、広く国民から重要凶悪犯罪等の被疑者検挙に資する情報の提供を受けるため、捜査特別奨励金による懸賞広告制度を導入しているが、拉致事件について特別報奨金の対象とする用意はあるのか。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
六の4について
 捜査特別報奨金制度は、未解決の重要凶悪犯罪について、その情報提供の促進を図り、事件の検挙等に資するものであることから、御指摘の事件についても、その対象とすべきかどうか、同様の観点から検討されるべきものであると考える。

5、政府は、情報収集のための新たな国家機構の整備及び新法の制定等の措置を考えているか。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
六の5について
 政府としては、引き続き、情報収集体制を含む情報収集機能の充実強化に努めることとしている。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
6、さらに渡辺秀子親子殺害拉致事件に関して情報の開示を要請したところであるが、政府には、拉致問題の需要性と真相の解明の観点から、「捜査上の秘密」によって非公開とすることなく、進んで明らかになった事実関係を広く開示し国民の関心を喚起して新しい多くの情報の提供を求めるという姿勢が必要と考えるが、拉致問題に関する事実関係の積極的な開示について、政府は如何に考えるか回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
六の6について
 北朝鮮による拉致容疑事案の捜査に関する情報については、警察において、捜査活動に与える影響等を考慮した上、可能な範囲で公表しているところであるが、政府としては、拉致の真相究明に関し、拉致容疑事案の捜査・調査や関係国政府等との意見交換を通じて収集した情報については、情報源との関係や個人のプライバシーの保護等の観点から、その具体的な内容の公表については慎重に対処することとしている。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
七(政府の表明書について)、去る四月二十六日、古川了子の拉致認定訴訟で和解が成立したが、和解に当たって、内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長及び内閣官房拉致被害者等支援担当室長河内隆の同日付け表明書(以下、表明書という)が発表されているので、以下質問する。

1、表明書において表明された見解については、対策本部長である内閣総理大臣及び担当大臣である内閣官房長官も同様の考えであると理解してよいのか確認したい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
七の1について
 北朝鮮による拉致の可能性が否定できない事案の真相究明を含む拉致問題の解決は、現内閣の最重要課題の一つであり、御指摘の表明書は、内閣総理大臣及び内閣官房長官の指示を踏まえ、作成したものである。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
2、表明書第一項に、「本件訴訟での証拠調べをも踏まえて・・・被害者と認定することとする」とあるが、これは、本件訴訟の証人の一人であった安明進の証拠調べも踏まえると理解してよいのか確認したい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
七の2について
 御指摘の表明書における「証拠調べ」には、御指摘の訴訟における証人の一人であった安明進氏の証言も含まれるが、同氏の証言のみをもって直ちに拉致被害者と認定するものではない。

 なお、古川了子氏については、御指摘の訴訟における証拠調べも踏まえ、関係省庁等において全力を挙げて、その安否の確認に最大限努力しているところである、

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
3、表明書第二項に、「拉致被害者支援法に定める被害者と認定された人以外にも、北朝鮮当局による拉致の可能性を排除できない人が存在しているとの認識に基づき、引き続き拉致容疑事案の真相究明に努め・・・解決に向けて全力で取り組んで行くものとする」とあるが、これは、現在の拉致認定者以外に、警察が所有する拉致の可能性のある失踪者のリスト、特定失踪者問題調査会の所有する失踪者のリスト及び家族から届け出のあった失踪者のリストの中に拉致の被害者が存在するという認識を表明したものなのか。

 さらに、家族や知人がいない人達が拉致されれば、彼等が拉致されたことを知る人がいないので右の各リストに掲載されること自体困難であるが、政府は、このような未だ何処のリストにも現れてこない拉致被害者が存在している可能性を排除できないと認識しているのか。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
七の3について
 家族から警察への失踪者の届出や特定失綜者問題調査会が所有する失踪者のリストヘの掲載の有無にかかわらず、政府としては、認定被害者以外にも北朝鮮による拉致の可能性が否定できない者が存在しているとの認識を有しており、関係省庁等が緊密に連携を図りつつ、全力で北朝鮮による拉致の可能性が否定できない事案の真相究明に努めているところである。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
4、政府は、右の通り表明書第二項において、今まで被害者と認定された人以外にも拉致の可能性を排除できない人が存在していると認識して解決に向け全力で取り組んでいくこととすると表明しているのであるが、では、今までの被害者救出のための対応は十分であったと認識しているのか回答されたい。

 さらに、情報収集を含む取り組みの体制について改善すべき点があると考えているならば、その点について回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
七の4について
 政府としては、従来より、すべての拉致被害者の即時帰国を始めとした拉致問題の解決に全力で取り組んできているが、特に、平成十八年九月以降は、拉致間題対策本部を中心として、政府が一体となって拉致問題の解決に向けた総合的な対策を推進しているところであり、引き続き、すぺての拉致被害者の即時帰国を実現すべく、全力で取り組んでいくこととしている。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
5、政府は、北朝鮮向け短波ラジオ放送による広報を準備していると聞くが、その概要を示されたい。

 また、表明書の趣旨からすれば、この放送の中で、拉致の可能性を排除できない人については、政府認定者と分離するにしても、その氏名や年齢及び失踪時期などの読み上げを行うのは当然と思われるが、その用意はあるのか回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
七の5について
 御指摘の広報については、現在、早期の放送開始に向け準備を行っているところであるが、その概要は、日本語及び韓国語のラジオ放送により、北朝鮮で生存する拉致被害者に向けて、拉致問題に関する政府の取組、国内外の情勢、拉致被害者の家族による励まし等を伝え、また、北朝鮮の人々に対し拉致問題に関連する動向を含む国内外の情勢等を伝えるというものである。

 また、当該広報においては、安否不明の認定被害者を中心に取り上げることを予定しているが、他方、政府としては、認定被害者以外にも北朝鮮による拉致の可能性が否定できない者が存在しているとの認識の下、すべての拉致被害者の即時帰国を実現すべく全力で取り組んでおり、こうした取組等についても当該広報の中で適切に取り上げていくことを検討している。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
八(自衛隊の運用について)、政府の現在までの拉致問題への対処は、個々の犯罪捜査とその真相究明の為の対処であり、これらは畢竟、単なる個人的法益に関する捜査であって北朝鮮による我が国家主権の侵犯という拉致問題の重要な本質に即した対処とはなりがたいのである。このことは、北朝鮮当局の指令に基づいて拉致を実行して現在北朝鮮に居る拉致実行犯人に対していくら逮捕状を取って北朝鮮当局に引渡しを請求しても無駄なことをみても明らかであり、これが、犯罪の捜査という次元を超えて国家主権の回復という観点からの対処の発想が必要な所以である。そこで、次の質問に回答されたい。

1、政府は、北朝鮮による日本人拉致は、北朝鮮による我が国の国家主権の侵犯であると認識しているのか否か、回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
八の1について
 政府としては、我が国の領域内で北朝鮮によって日本国民が拉致されたことは、我が国に対する主権の侵害であると認識している。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
2、北朝鮮による日本人拉致が我が国の国家主権の侵犯ならば、被害者の解放を北朝鮮当局に求めることは、犯人に被害者解放を求めることに他ならず、これは結局、被害者が解放されるか否かは北朝鮮当局の意向次第ということになる。

 そこで、我が国は被害者解放の為に制裁を始めとして何らかの強制力を行使しなければならないと思料されるが、政府はこの強制力行使は必要と考えているのか不用と考えているのか、その見解を回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
八の2について
 政府としては、北朝鮮が拉致問題に関して何ら誠意ある対応を示していないことも踏まえ、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法(平成十六年法律第百二十五号)及び外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)に基づく措置等を北朝鮮に対し実施してきているが、今後とも、対話と圧力という一貫した考え方の下、拉致問題の早期解決に向けて粘り強く取り組んでいくこととしている。

(質問)ーーーーーーーーーーーーー
3、政府は平成十八年三月八日の参議院予算委員会における山根隆治議員の質問および同五月十日の衆議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会における稲田朋美議員の質問に対し、北朝鮮の体制崩壊等の緊急事態にあたって、邦人保護の観点から外務大臣の要請があれば、自衛隊の派遣が可能であると答弁しているが、自衛隊でこの任務に対応する部隊は先般編成を完結した中央即応集団(CRF)であると理解してよいか。または他にそのような部隊があるのか。

 さらに、その訓練装備等の充実度など、その準備はどのように行われているか。

4、かつてアルバニアの治安崩壊という事態に際して、銃撃戦のうえ邦人を救出してくれたのはドイツ軍部隊であったが、政府は、中央即応集団等の部隊を、このような他国の治安崩壊等の事態に際して自力で国民を救出するための部隊として運用させる所存か、回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
八の3及び4について
 御指摘の平成十八年三月八日及び同年五月十日の答弁は、自衛隊は、現行の自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十四条の三第一項(当該答弁時の同法第百条の八第一項)の規定に基づき、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があった場合において、当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めるときは、同条第二項に規定する航空機又は船舶により当該邦人の輸送を行うことができる旨述べたものであるが、邦人輸送に際し使用される同項に規定する航空機又は船舶に関し、いかなる事態においてどの部隊に所属するものを使用するかについては、個別具体の事例に則して判断すべきものであると考える。

5、また、そもそも北朝鮮の体制が崩壊するしないにかかわらず、北朝鮮にいる拉致被害者を一刻も速く救出することは国家としての重大な責務であるが、救出について他国の協力も得られず、また、このまま放置すればこの重大な国家の責務を放棄することとなる事態において、政府の自衛隊運用の決断による拉致被害者救出作戦実施は、政府の想定内なのか、それとも、全くの想定外なのか、回答されたい。

 そこで、政府が拉致被害者救出に自衛隊の運用が必要な事態があると想定しているとして、それを実施するために何か障害があると考えているのか、障害があると考えているならば、それは何か、回答されたい。

 さらに、政府が、自衛隊運用による拉致被害者救出に障害があると考えているとして、その障害を除去する措置を実施する考えがあるのかないのか、回答されたい。

(答弁)ーーーーーーーーーーーーー
八の5について
 お尋ねについては、政府としては、今後とも、対話と圧力という一貫した考え方の下、拉致問題の早期解決に向けて粘り強く取り組んでいくものである。

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下北交通

Photo_1
これは単なる趣味の話ですが、昔の国鉄大畑線、後にバス会社が譲り受けて下北交通となったローカル線の写真です。ちゃんと記録していないのですが20年くらい前の正月に撮りにいったもの。正津川駅の近くだったと思います。
 無人駅で1時間位列車を待ちながら、ウイスキーのポケット瓶のキャップに雪を詰め、それにウイスキーをついで独り呑む。あたりは全く音のない世界というのが、最高級の贅沢でした。

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2007年6月13日

 お役所は過ちを犯さない

 お役所は過ちを犯さないーー

 これがお役所の原則である。かつて特定失踪者の問題である官僚と議論をしていたとき、真鍋貞樹・調査会専務理事が「もうこういうトラブルはないようにしましょうよ」と言ったら、相手が怒りをあらわにしたことがあった。「トラブルはお前に責任がある」というのではない。「トラブルは存在しないのに存在したかのように言っている」ということである(もちろん、直接こんな言葉を発したのではない。あくまでそういうニュアンスとしてこちらが受け止めたのだが)。

 この人はそれほど悪い人ではなく(悪ければもっとうまく立ち回っているはずだ)、正直だったからこのような反応になったのだろうが「官僚機構は過ちを犯さない」というのが、日本全体、官僚機構の原則であることは間違いない。減点主義の社会だから、トラブルが起きたということ自体がその人にとってのマイナスになる、したがって、トラブルは存在しないことにしようとする習性がつねにお役所にはつきまとう。

 「そう言われても、社会保険庁の問題とか、様々な過ちが明らかになっているではないか」と言われるだろうが、原則と現実は別物であり、この原則(幻想?)は今も変わってはいない。何度も言っているが、かつてわが国は「無敵の帝国海軍が負けるはずがない。だからミッドウェーの敗北はなかったことにしよう」という、後に国家全体を破滅の危機にさらす過ちを犯している。このときの「なかったことにしよう」というのは一部の独裁者がやったことではなく、海軍兵学校に入って将校になり、さらに試験をかいくぐって海軍大学校と進んだエリート、国民の期待を一身に担う、当時日本で最も優秀な人たちが犯した過ちである。そして陸軍でも、ごく一部は分かっていたらしいが、あれだけ仲が悪かったのに、こういうときは全くと言っていいほどチェックアンドバランスがはたらかなかった。

 敗戦と占領のために日本人の手によって大東亜戦争の意味を再検討することができなかったせいで、このことはその後長く問題にされなかった。しかし、おかげで膨大な犠牲をはらった大東亜戦争からの教訓はまだその大部分が埋もれたままである。

 さて、そんな中で社会保険庁の問題が出てきた。公安調査庁の元長官が代表取締役をつとめる会社が総連本部の土地建物を購入していたとのニュースも流れた。警察の不祥事や自衛隊の情報漏洩、どのニュースにも呆れるばかりだが、これらは個別の役所の問題ではなく、どの役所でも起きていることなのだろう。そして、それを隠してきたのが「お役所は過ちを犯さない」という原則なのである。なお、本来は軍人は公務員ではないが、今の日本ではそういうことになっているし、実際お役所である。

 人間は過ちを犯す。それは民間だろうが、役所だろうが変わらない。そして、だからこそ民主制度というのは効果があるのである。チェックアンドバランスの機能が存在することによってその被害を最小限に留めることができ、また修正することができるのだ。

 私も含めて日本人は、国民一般ですら「お役所は過ちを犯さない」という幻想を持っている。その点は政府を批判する人でも同様で、左右を問わず共通していると言っていい。国家に対する甘えと言えるかもしれない。アメリカ合衆国や中華人民共和国のように、何らかの目的をもって建国したのと異なり、日本は「気づいたらそこにあった」とも言える国である。したがって、主体的に国家に関与しようという意識が薄くなるのではないか。

 国家権力と国民との間には「建設的緊張関係」が必要である。絶対的否定でもなく、絶対的肯定でもあってはいけない。是々非々で、「お役所も民間も、もちろん自分も過ちを犯す」という前提で、お互いがチェック機能を果たすことが必要である。

 さて、拉致問題について、まだ「過ち」はほとんど表に出ていない。おそらく社会保険庁の問題など比べものにならないような過ちが隠されているのだろう。その過ちをチェックするのは国民の仕事である。その点は安倍政権でも小泉政権でも、あるいは次の政権でも同じである。

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2007年6月 7日

日本共産党

※アンダーラインの部分が抜けていました。19年6月23日に直しました。

自衛隊の文書を入手したとかで、共産党が鬼の首を取ったように宣伝している。朝日新聞も社説で書いているようだが、一体このどこが悪いのか、全く理解できない。
 日本共産党はその名前が示すように「日本を共産主義国家にするための政党」である。今の綱領にも色々オブラートに包んであるが、「社会主義・共産主義の社会をめざして」という項目が最後に設けられているのである。この綱領では例えば「1 現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」と言いながら、その一方で「党は、一人の個人が世襲で『国民統合』の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ。天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである」とされている。
 つまり、共産党が言う「護憲」とはあくまで戦術的なものであって、当たり前の話だが、最終的にめざすのは今の憲法とも、あるいは今憲法を改正しようとしている人たちの大部分がめざしている憲法とも異なる(つまり、大部分の日本国民が全く望んでいない)共産主義社会であるということだ。少なくとも共産党について、自衛隊に限らず国家の機関がそれを監視するのは当然ではないか。
 自衛隊は軍隊であり、自衛隊法にはその目的について「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする」と規定されている。共産党に限らず様々な団体の動向を調査し、現状を把握しておくのは義務であって、それをしないことの方が責任重大である。参議院選挙前だし、共産党は今回のことを利用して自民党を攻撃して自衛隊の動きを止めようとするだろう。これはある意味冷戦の延長である。したがって自衛隊は闘わなければならない。どのみち自民党をあてにすることはできないのだから、自らの存在意義を問われているとの認識を明確に持つべきである。
 9.17の前、朝鮮労働党に秋波を送っていた共産党は拉致問題について根拠がないという趣旨のことを言って北朝鮮の歓心を買おうとしていた。今では自分たちが最初に拉致問題を取り上げたと言っているが、その質問(昭和63年の参議院予算委員会での橋本敦議員の質問)をまとめた兵本達吉・当時秘書は党から除名してしまっている。拉致問題で熱心に活動してきた人たちの中に共産党を除名されたり、離党した人が少なくないのは決して偶然ではない。
 ともあれ、折角共産党がこのようなことを持ち出してくれたのだから、心ある人はしっかりと闘っていくべきである。国家を守るとはどういうことか、国民を守るというのはどういうことか。これまでの共産圏国家で国がどうなり、国民がどうなったのかを考えれば結論は明らかである。共産党は共産党で、この際参議院選挙ではオブラートに包まずに、「日本を共産主義の国にしましょう」と堂々と主張したらいいのではないか。それで過半数の支持を得て政権が取れるようなら、私も納得するが。

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2007年6月 4日

魏京生氏

中国の著名な人権活動家である魏京生氏が成田で入国を拒否されているという。しかも手続き上は特に問題はないようだ。入国拒否の指示をしている人間は誰なのか。少なくとも年金関連法案などであれだけ「怒り」をあらわにしている民主党の皆さんは、その怒りの一部をこういうところに振り向けるべきだ。

 それにしても温家宝首相には国会であれだけ図々しい演説をさせておいて、起立拍手までする一方で、魏京生氏は入国拒否というのでは、日本の人権感覚が疑われる。あまりにも恥ずかしいではないか。

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2007年6月 1日

韓国の救出運動について

以下は韓国向けに書いた原稿です。韓国の拉致被害者救出運動は朝鮮戦争休戦後に拉致された人たちの家族会が2団体あり、若干のトラブルが起きています。それについて韓国の人向けに書いたものです。原文韓国語で書いたので文法的におかしいところもあるかと思いますが、韓国語をお分かりのかたはこういう見方もあるということでご一読下さい。
(本稿を掲載後、「ネイティブチェックをしてもらって文章を直した方がいいのではないか、そうしないと韓国語が下手だと思われますよ」とアドバイスをいただきました。開き直りみたいですが、私の韓国語ははっきり言って下手です。かつて別の大学で韓国語を教えていたときには学生から「先生、それは違うんじゃないですか」と指摘を受けたこともある程です。その実力であるにもかかわらず、韓国語を書くときは日本語で書いて訳すのではなく直接韓国語で書きますので、かなり悲惨なものだとは思いますが、まあこんな程度だと理解していただくのも意味があるかもしれません)

한국에서 납북자 가족분들이 구출운동을 시작하셨던 것은 1999년였다.

그해 5월 동경에서 열린 제1회 "국민대집회"에 최우영씨(전 납북자 가족 협의회 해장)와 어머니 김태주씨, 그리고 전에 법무차관, 국회의원을 역임하신 이영욱 변호사가 참석하시며, 그후 한국에서도 납북자구출운도이 시작된 것이다. 그러니까 필자는 한국의 구출 운동을 8년 동안시작했을 때부터(물론 그 전에도 있었을지 모르지만 적어도 본격화한 후) 함게 해 왔다. 그동안 관계 단체들 사이에 여러가지 문제가 생긴데 대해, 솔직히 가슴앞으게 느끼고 있었다. 이것은 필자만이 아니라 한국의 납북자 구출운동에 대해 이해하는 일본인에 공통된 감정일 것이다.

하자만 한국의 납북자 가족 단체간의 문제에 대해 다른 나라에서 시시비비를 가리는 것은 권한 밖의 일이다. 모두가 단결해 운동을 계속한다면 그 이상 기쁜 일은 없지만, 지금 상황에서는 쉽지 않는 것도 사실이다.

그러니까 여기에서는 일본의 구출 운동에 대해 쓴다. 약간이라도 참고가 되면 다행이다.

몇몇의 한국분들은 일본인에 대해 ‘단결심이 있다’고 좋은 평가를 해주시기도 하는데, 일본은 세계에서 가장 당파싸움이 심한 나라이기도 한다.

하나만 예를 들면, 과거 일본의 육군과 해군은 사이가 좋지 않았다. 해군이 있는데도 항공모함이나 잠수함을 육군이 만들어 버린 나라는 아마 일본 밖에 없을 것이다. 그것도 미국을 비롯한 세계 강대국을 상대로 전쟁을 하고 있었을 때의 일이다. 그 만큼 육해군 간에는 신뢰 관계가 없었던 것이다. 당시 그 상황을 야유한 말에 "해군과 육군, 전력으로 싸우며, 여력으로 米英(미국과 영국)에 대한다"는 말까지 있었던 정도이다. 그런식 이야기는 현대에도 너무 많는데 이런 우리가 어떻게 '단결심이 있다'고 할 수 있을까.

이런 것은 납치 피해자 구출 운동도 예외는 아니다. 일본의 경우 납북자 가족 단체는 하나뿐이다. 하지만 그 가족 안에서도 이미 귀국한 5명의 가족과 나머지 가족 사이에는 약간의 의식 차이가 있다. 물론 귀국자 가족들도 운동에는 참가하고 모든 납치 피해자 구출을 위해 노력하고 있지만 귀국자 가족들은 본인이나 자식들의 일본사회에서의 정착에 대한 관심이 가장 크다. 이렇다 보니 당연 서로의 의견 차이도 생기게 마련이다.

그리고 가족회 이외의 단체는 우리 조사회를 포함해서 모두 피해자 가족이 아닌 일반인들로 구성되어 있다. 그 단체도 많이 있으니까 의견이 하나가 될 수는 없다.

일본의 납치문제 관련 단체는 다음 단체들이 있다.
1.북조선에 의한 납치 피해자 가족 연락회(가족회, 회장 요코타 시게루)
2.북조선에 의해 납치된 일본인을 구출하기 위한 전국협의회(구출회, 회장 사토 가쯔미)
3.북조선에 의해 납치된 일본인을 조급히 구출하기 위해 행동하는 의원연맹(의원연맹, 회장 히라누마 다케오)
4.북조선에 납치된 일본인을 탈환하는 자방의원 모임(지방의원 모임, 회장 쯔치야 다카유키)
5.북조선의 납치와 인권문제를 다루는 법률가 모임(법률가 모임,공동대표 기무라 신수케/후지노 요시아키)
6.특정실종자문제 조사회(조사회, 필자가 대표를 맡고 있음)
이외 전국협의회에 참가하지 않는 지방마다의 운동 단체('오사카 Blue Libbon 모임’ 등) 들이 있다. 현의회(한국의 도의회에 해당)에는 의회 마다 구출을 위한 의원연맹이 있는 곳도 많고 그 의원연맹의 전국조직도 있다. 이렇게 많이 조직이 있는 것은 좋은 일이긴 하지만 그 대신 견해도 방침도 여러가지다.

운동에 참가하는 사람 중에는 사상적으로도 각자 각색이다. 그 단체들을 총괄하는 조직도 없다. 이러한 많은 단체들이 '구출' 이라는 하나의 목표로 활동하다 보니 서로의 의견차이나 활동 방법에 있어서의 차이가 흔히 생긴다.

예컨대 구출회나 가족회는 아베 정권을 전면적으로 지지하며, 협력하는 자세이다. 하지만 필자가 활동하고 있는 특정실종자문제 조사회 등은 현 일본 정부의 북한에 대한 대응이 너무 미온적이라고 생각하며, 보다 강력한 조치를 취해야 한다고 주장하고 있다. (한국에서 일부 사람들이 구출회를 ‘극우’라고 비판하는데 그럼 우리는 어떻게 될 것인지. 어쩌면 한바퀴 돌고 ‘극좌’가 될지도 모른다.)

한국도 일본도 민주주의 국가니까 여러 가지 의견이 존재한다. 그리고 의견 차이는 사회 발전의 원동력이다. 같은 민족인데도 남한과 북한이 이렇게 큰 차이가 난 이유의 하나는 여기에 있다.

자유럽게 정부를 비판할 수 있고 자기 의견을 밝힐수 있는 남한과, 수령님, 지도자동지가 한 말이라면 꼼작도 못하는 북한에서는 정치 뿐만 아니라 경제도, 문화도 큰 차이가 나는 것은 당연하다. 북한에는 창의성이 발휘될 여지가 거의 없기 때문이다.

하지만 민주 사회는 의견 차이에 다른 갈동도 피할 순 없다. 당연히 납북자 단체들간의 의견도 차이가 생길 수밖에 없다. 그러나 우리가 잊어 버려서는 안되는 일은 북한에서 수십년동안 가족들과 떨어져 고통속에 살아가고 있을 납북자들이다. 일본인든 한국인든, 그리고 다른 나라 사람든, 납북자들은 하루빨리 가족의 품으로 돌아오기를 간절히 바라고 있을 것이다.

그럼 납북자 구출이라는 목적지가지 가는데 KTX로 가든 자가용차로 가든 걸어서 가든 상관은 없을 것이다. 같이 갈 수 있는 때는 같이 가고, 같이 못가는 경우에는 적어도 남을 방해만 하지 않으면 좋을 것이다. 어떤 방법으로 가는 게 좋았던가는 목적을 달성한 후 반성하면 될 것이다. 물론 목적지로 가는 도중 방법을 바꿀 수 도 있다.

그리고 또 한마디 부언하면 납북자 구출이라는 목적지까지 가기 때문엔 북한이 민주화되야 하며 그렇게 되면 문제는 납북자 문제만 아니라 국군 포로도 정치범 수용소도 탈북자도 모드 해결된다는 것이다. .

오해를 받을지도 모르지만, 하나가 될 필요는 없다. 한국 분들은 뭔가 "단결 강박증"에 걸리고 있는 것 같다. 다양성이 있는 것이 절대로 전체주의 국가가 따라갈수 없는 우리의 장점이다. 하나가 될 수 없다는데 너무 고민하면 어히려 다른 문제가 생길 수도 있다.

다양성이 있는 것을 전체로 하며, 목적지를 서로가 같이 하며, 가능한 협력만 하면 우리가 질 리가 없다.
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이 원고를 게제한 후 독자분 한테 "한국 측에 전달하기 전에 한국 사람에게 체크를 요청하시는 게 좋을 겁니다. 그리고 블로그의 문장도 고치십시오. 선생님이 한국어 잘 못한다는 소문이 퍼질지 걱정됩니다" 라는 조언을 받았습니다. 아주 맞는 말씀인데, 이번에는 제 한국말 실력이 이 정도밖에 못된다는 것을 과시(?)시키기 위해서도 그냥 게제했습니다. 의미를 이해하지 못하시는 점이 있는지 모르겠습니다만 한국분들께서는 약간 노력을 하시며 읽어 주시면 감사하겠습니다.

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