「自分がほんとに好きなアプリ」をつくったら250万ダウンロードの大ヒット。「こんなフリーキックはイヤだ」の作者ハップがありのままの姿見せるまで。

2015年02月25日 |
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独創的なゲームアプリなどで累計750万ダウンロードの「ハップ」さんにお話を伺いました。不思議な世界観のアプリはどのようにして生まれているのか?

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※株式会社ハップ 石本さん(イメージ画像)

ハップができるまで。

石本さんは、アプリ開発をはじめる前は、何をされていたんでしょうか?

石本:
もともとウェブ系の会社でWEBデザイナーとして働いていました。Flashを使ったウェブサイトの構築がメインです。

それからフリーで独立して、その2年後に法人化してハップをつくりました。いまも社員はいなくて、自分一人なんですけどね。

デザイナーとして会社から独立するのは、不安はなかったですか?

石本:
それはあまりなかったです。元々いた会社も、10人くらいの小さい会社だったので、自分で打ち合わせして、見積もりして、デザインして、コーディングして、納品していたんですよ。

隙あらば営業もしてましたし笑。元々、独立を目指して仕事をしていたので、なんでも進んでやっていましたね。

どうして、アプリをつくりはじめたんですか?

石本:
最初は受託メインでFlashの仕事をしていたのですが、iPhoneの普及でFlashのニーズが減り、暇な時間がだんだん増えてきて。笑

それで、どうしようかなあと思ってたときに、「Flashでアプリがつくれる」というのを知って、空き時間に簡単なアプリをつくりだしたのがはじまりです。まさにピンチはチャンスでした。

ちなみに、今でもアプリはFlashでつくっています。

最初につくったのはどんなアプリですか?

石本:
最初のアプリは、ただサイコロを振るだけのアプリです。

当時、あんまり良いサイコロアプリがなかったんですよ。1個しか振れなかったり、サイコロがただの静止画だったり。

なので、シンプルに練習のつもりでつくったんですけど、それなりにダウンロードされました。いま累計で約40万ダウンロード(iOS32:Android7)されています。

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そうなると「アプリって簡単じゃん」と思いましたか?

石本:
正直、最初は「あれ、こんなんでも結構いけるんだ」という印象でしたね。

でも、ダメなアプリも全然ありましたよ。例えば「ツクロス」という「自分でクロスワードパズルがつくれる」というアプリをつくったことがあって。

裏側のデータベースも自作したのですが、全然ダウンロードされなかった。時間をかけてつくったアプリが、必ずしもヒットするわけではなかったですね。

「ツクロス」はおもしろそうなアイディアですが、ダメだったんですね。

石本:
そうですね、「クロスワードをつくる」って実は難しくて。例えば『「あ」から始まって「お」で終わる4文字』ってすぐ出てこないじゃないですか。

ということで、ほとんどの人はクロスワードの問題をつくれず、アプリも全然広まりませんでした。

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※試してみたが、たしかに途中で飽きてしまった。最後にバランスを調整していくのが大変。

2014年からテイストが変わりました、どうしてこの辺からふざけだしたんですか?

石本:
最初は恥ずかしくて、ふざけられなかったんですよ。

どういうことかというと、2013年まで受託も並行していたので、クライアント様に「あれ、ハップさん・・・変なアプリつくってどうしたの?」って思われるのが恥ずかしかった。笑

つまり、それまでのアプリは「本当につくりたいアプリ」じゃなかったってことです。

じゃあ、途中で目覚めたのではなく、「いまのアプリが真の姿」ってことですね。

石本:
そうですね。「こんなフリーキックはイヤだ」からは、ほんとに好きなものをつくろうと思いました。この頃から意識はすごい変わりましたね。

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アプリはいつもどんな感じでつくっているんですか?

石本:
「深夜のノリ」でつくっていますね。文字通り深夜にアイデアを考えることが多いです。

つくってる時は、最初ノリノリなんですよ。「このアイデア絶対面白いから、アプリ出すまでは絶対死なない!」って、いつもより交通事故に気をつけながら家に帰ったりとかして。笑

でも、そのノリは後半には「うわ、これ絶対つまんないわ」に変わっています。ネガティブな人間なんで。

もうアプリを公開する直前は、半泣きに近いです。「どうしよう、できちゃった、クオリティ低いし出すの嫌だな、でも食うためにはしょうがないよね」と自分に言い聞かせて公開ボタンを押しています。

「こんなフリーキックはイヤだ」について

一番のヒット作「こんなフリーキックはイヤだ」のダウンロード数はどうですか?

石本:
ダウンロード数は250万ダウンロードで、AndroidとiOSは半々くらいです。250万ダウンロードのうち、半分は日本のユーザーですが、もう半分は海外ユーザーですね。

開発期間としては、大体の設定を決めてから、2週間ほどで最初のバージョンをつくりました。

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「海外で100万ダウンロード以上されている」ということですよね。どのへんの国のユーザーが多いですか?

石本:
アジアは韓国や台湾など、欧米はイタリアだけピンポイントで伸びました。

イタリアで火がついた原因は謎ですが、AppStoreのランキングが伸びて、4日間くらい上位にいて、16万ダウンロードくらいされました。

ローカライズはしていたんでしょうか?

石本:
はい、アプリ名と説明文の翻訳くらいですけどね。

元々「世界で遊ばれるアプリにしよう」というのは意識していて、絵と動きだけで伝わる説明がいらないゲームにしていました。

なので「人類の進化」とか、そういう世界共通のネタに絞って、日本人にしか通じないネタは封印しました。

そういう意味で、影響を受けたのは「空気読み」というアプリです。世界観もそうですが、絵だけで「何をしたらいいか?」がわかるのが良いなと思って。

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海外版のアプリ名はどうやって決めたんですか?

石本:
アプリ名は「クレイジーフリーキック」「クレイジーピッチャー」など、とりあえずクレイジーつけとけばいいかなと。笑

でもそのおかげで、韓国や台湾では「おい、クレイジーシリーズまたきたぜ」とか、言われていたり。

日本ユーザーと海外ユーザーの違いは感じますか?

石本:
欧米の人はリアクションが大きいです。「お前のアプリ面白いぜ、HAHAHA!」みたいなメールが、ユーザーから多く届きますよ。

あと欧米で「グラフィックはだめだけど、面白いね」って感想もありました。ゆるい絵なので、もっと3Dとかでリアルにしたら、欧米ウケは良かったんだと思います。

日本でダウンロードが大きく伸びたのは、どういうタイミングでしたか?

石本:
実は「こんなフリーキックはイヤだ」が伸びたのは、「東京デッドボール」が着火点だったんです。

「東京デッドボール」のリリース時に、AppBankさん、ゲームキャストさんなど、WEBメディアで一気に取り上げられて、それにつられて「こっちも面白いじゃん」と注目されました。

もうひとつは、このアプリはゲーム実況で紹介されることが多くて、マックスむらいさんなどの有名人が、You Tubeで実況動画を上げてくれた時に、すごく伸びていますね。(※Youtubeに100本ほど動画が上がっている)

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※「こんなフリーキックはイヤだ」のランキング推移。(データ参照:AppAnnie)

「こんなフリーキックはイヤだ」のマネタイズについて

「フリーキック」は広告モデルかと思いますが、マネタイズはどうですか?

石本:
ダウンロード数の割には、ぜんぜんですね。というのも、最初は広告マネタイズにあまり興味が無くて、半年くらいは1ダウンロードあたり1-2円しか稼げていなかったんです。

いまではすこし頑張って、といってもインタースティシャル広告(全画面広告)を入れたくらいですけど、1ダウンロード4~5円くらいの収益性まで改善しました。

最初は、インタースティシャル広告を入れるのが怖かったんですよ。ゲームの進行が広告で途切れる感じがして、ユーザーに嫌われるかなと。

海外と日本で、広告収益に差が出ますか?

石本:
出ますね、海外の収益性はもう日本の半分以下です。例えば、イタリアで16万ダウンロードされても、収入的にはぜんぜん大したことにならないです。

そもそも、ハップのアプリは収益性が高くなくて、「東京デッドボール」とか「トースト少女」とかもそうですが、せいぜい1ダウンロード2~5円くらいなんですよね。

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※ハップのアプリは累計750万ダウンロード。東京デッドボール(100万ダウンロード)、「トースト少女」、「くるくる選手権」(40万ダウンロード)などなど。

なるほど、「もっと、収益性高くていいのかな」という気もしますけどね。

石本:
世界観を壊されたくないので、できればバナー広告をあまり入れたくないんですよね。本当はインタースティシャル広告だけでもいいかなと思ってます。

あと、今は目先のお金はあまり気にしてないですね。まずはユーザーに楽しんでもらうのが第一です。

それで、ブランド価値というと大げさですが、「ハップ」を気に入ってくれる人が増えて、結果的に総ダウンロード数が上がれば良いかなと思います。

独自路線のアプリは、競争にまきこまれにくい。

2年前と比べて「アプリ業界、すごい変わった」と思うことってありますか。

石本:
Androidの市場が伸びてきているのは感じます。ダウンロード数や収益が上がりやすくなってきている。

逆にiOSは競争が厳しくなったみたいですが、僕のアプリは影響が少ない方かもしれません。

世界観が独特なので、コアなファンがついているのかもしれませんね。それを感じる瞬間ってありますか?

石本:
そうですね、Twitterで「このアプリ面白い」ではなく「ハップのアプリ面白い」と言ってくれたり、実況のコメントで「あ、ここのアプリ知ってる」と言ってくれたり。

ハップのアプリでは、意図的にキャラ素材などを使い回していて、それで「この敵あれにも出てきたやつじゃん」「またおまえか」みたいに、絵を覚えてくれてるのだと思います。

「ファンを増やしていく」という意味で、他に工夫していることはありますか?

石本:
工夫と言えるかわからないですが、僕のアプリって悲しいことに、Twitterとかで「クソアプリ」とか「つまんねえよ」って、たまに言われているんですね、まあ事実なんですけど。笑

そういうツイートをエゴサーチして、何も言わずにファボるようにしています。

すると、その後「もちろんいい意味で!」とか「最後までやってみたら、面白かったわ」とか、弁護ツイートしてくれたりして。笑

だから、Twitterでディスられたら、無言でファボるのオススメです。それがきっかけでフォローしてくれる人もいますしね。

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※一応説明、ファボるとは「Twitterでお気に入りに登録する」こと、相手に通知がいく

今ひとりでつくられていますが、チームでアプリをつくるのは難しそうですか。

石本:
今の自分の作り方ですと難しいですね。やはり1人の利点があって。企画書も要らないし、思いついたらすぐモックもつくっちゃえて、気楽です。

絵も外注しようしたことがあるのですが、ポーズのニュアンスを伝えるのが難しかったり、絵がうますぎても面白さが伝わらなかったり、結局自分で絵を練習して描いているという経緯もあります。

あとつくりながら、どんどん仕様を変えられるのも、一人ならではですね。途中で変更するとプログラマーは困るでしょうし、僕も無理なこと言えない性格なので。

でも今後は体制変えて、いろいろ挑戦してみたい気持ちもありますね。

取材協力:ハップ

こんなフリーキックはイヤだ
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編集後記

ありのままが一番でしたという話。あと、「こんなフリーキックはイヤだ」がYoutuber・ゲーム実況で紹介されやすい、というのはなるほど。

激ムズ系のゲームもそうだけど「ツッコミを入れやすい」「リアクションが取りやすい」「単調でなくバリエーションがある(トラップやステージ)」という特徴があると、紹介されやすいのだろうな。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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