Evernoteが無料ユーザーに厳しい変更、同期可能な端末を2台に制限 有料プランも大幅値上げ

この変更は、実質的なサービス有料化と受け止めるユーザーが少なくないかもしれません。

Evernoteは6月29日、価格プランを改定すると発表しました。改定のポイントは2点。無料ユーザー(ベーシックプラン)がノートを同期できる端末を最大2つに制限することと、有料プラン(プラスプラン、プレミアムプラン)を大幅に値上げすることです。価格改定は2016年8月15日以降の更新日から適用されます。

無料のベーシックプランで同期できる端末を2台に制限

これまで無料のベーシックプランでは、有料プランと同じく、ノートを同期できる端末数に制限はありませんでした。スマートフォンとタブレット、自宅のPC、会社のPCなど複数の端末で自分のEvernoteにアクセスできたのです。今後、この仕組みが変わり、無料ユーザーは2台までしかノートを同期できなくなります。

たしかに、クラウドに保存されたデータにアクセスできる端末数を制限するウェブサービスは珍しくありません。しかし、Evernoteは、"外部脳"であり"第二の脳"として評価されてきた経緯があります。無料ユーザーは今後、その恩恵を受けられなくなり、利便性が大きく損なわれます。なぜなら、時と場所を選ばずにアクセスできない"脳"は、記憶装置としても思考装置としても機能を十全に果たせないからです。

(追記 2016/6/29 9:08)Evernote Web(ブラウザ版)は端末としてカウントされません。

有料プランを大幅値上げ

有料プランであるプラスプランとプレミアムプランが値上げされます。値上げ幅を月額でみれば、プラスプランは50%、プレミアムプランは約33%となり、大幅な価格上昇と受け止めるユーザーが多いでしょう。

  • プラスプラン…旧:月額240円または年額2000円→新:月額360円または年額3100円
  • プレミアムプラン…旧:月額450円または年額4000円→新:月額600円または年額5200円

Evernoteの料金プラン

Evernoteの"ムチとムチ"は成功するのか

Evernoteはブログ記事で次のように説明し、既存ユーザーに理解を求めています。

私たちの目標は、長期的に Evernote を改良し続けることです。ユーザのみなさんの要望に応える新機能も随時実装しながら、主要製品をよりパワフルに、直感的に使えるようにすることに引き続き投資してまいります。一方で、それを実行するためにはたくさんの労力と時間、そしてお金が必要になります。そこで、Evernote に大きな価値を見出してくださる方には、私たちが必要な投資を行えるよう、ぜひ力を貸していただきたいと考えております。ひいては、Evernote 製品の利用体験をさらに進化させていきたいのです。
Evernote の価格プランの改定について - Evernote日本語版ブログ

クリス・オニールCEOがユーザーに真摯に訴えかけており、プレミアムプランを利用している筆者としては好感を持って受け止められる内容です。というのも、要は「(きつめの制限を課すことで)無料ユーザーには有料ユーザーになってほしい」「サービスを改善、継続していくための資金が足りないから、Evernoteを使い続けてくれるユーザーに相応の負担をお願いしたい」というだけのことを率直に本音で語ってくれているからです。

前述のとおり、クラウドサービスであるEvernoteを使っていく上で、同期可能な端末数を2台に制限するのはユーザー体験を大きく低下させることにつながります。その反射として、無制限の同期はEvernoteを気に入った無料ユーザーにとって有料プラン切り替えへの強力なインセンティブになるわけです。

自社サービスを愛用してきたユーザーがこの営利企業としての判断に対してどのように行動するか、Evernoteとしても十分に織り込み済みのはず。無料ユーザーに厳し目の対応を取りつつ、有料プランの価格を値上げするという、"アメとムチ"ならぬ"ムチとムチ"の施策がEvernoteの未来に必要であるなら、ユーザーはそれを受け入れるほかありません。

Evernoteではここ1,2年、CEOの交代や多角化したサービスの選択と集中、プラン内容の変更と撤回などが相次いでいました。