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2011.11.28

中国市場から撤退する弊社から、中国でアプリを売りたい皆さんへ

 弊社・イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社は、投資先と合弁で行っていた大連の開発拠点事務所を閉鎖し、社員および他拠点ごと合弁先に全株譲渡し、中国での開発から撤退しました。残るラインは、国内で吸収するか、ベトナム・ダナンかハノイかに事業協力先とご一緒し新設する会社に移行させようか悩んでおります。どうしたら合理的なんでしょうねえ…。

 いま、ソーシャルゲームを含むデジタルコンテンツの開発などで中国に進出する会社が増えていて、成功例も徐々に出てきているのですが、提携や合弁会社を設置した当初は凄く良好だった関係も、なぜかビジネスがうまくいったり、特定の中国人の才能やセンスに依存したモノづくりになった瞬間に、どうしても関係がギクシャクしてしまうことが多いように感じます。

 中国でのアプリ販売は確かに伸びておりまして、信頼できる良い提携先が見つけられるのであれば、中国独資か合弁会社を設立するかに関わらず、全面的に投げ捨てる感じでお付き合いしていく他ありません。また、中国人コーダーやデザイナーをラインに組み込んで、安価にデジタルコンテンツを制作したいということであれば、当初であれば中国人だけのチームでも充分な品質で制作が可能になってきました。

 オンラインゲームの世界では、日本で国産のオンゲを作る必要がほぼなくなりつつあります。工期の短い、クオリティ重視で日本人にまずしっかり売りたいコンテンツの設計、制作をする場合は、日本国内でラインを組むのが合理的だと思いますが、MMOライクなブラウザゲームを制作するようなケースでは、もはや中国の会社を抜きにコストダウンを図ることは無理な状況になってます。

 また、携帯電話向けデジタルコンテンツにおいても、制作も販売も、そこそこの規模で充分な利益を挙げようと思ったら中国のラインにどうしても頼らなければならなくなりました。一言で言うなら、長打を狙わないで手堅くアプリを売っていくのであれば、中国市場の中だけで回ってしまうぐらい、充分な販売ボリュームと制作能力を持つようになりました。

 一方で、2つの弊害があります。技術やノウハウの流出と、制作費の高騰です。前者は、ぶっちゃけうまくいけばいくほど、日本人が外されるようになります。理由は、日本人高いから。ある程度、中国人のラインで回るようになっちゃうと、中国人のプロマネが日本人を外す工程を出してくるんですよね。例外なく。もちろん、理由は明確で、「私の管理しているプロジェクトで利益を出そうとすると日本人の人件費は賄えません」ということで、そういわれると「そうか」となってしまう。

 で、そのプロマネはゲーム開発の2サイクル、3サイクルも経験して、独り立ちできるかなといったところで辞めてしまう。これはもう見事に辞めていきます。もう、人材の流出と、それに伴う技術やノウハウの流出は宿命と思っていいと思いますが、この点は後述。

 辞めてしまうのを指くわえて見ているだけ、というわけにもいきませんので、防衛策としてもっとも手っ取り早いのは日本に連れて来てしまうか、給料を上げ昇進させるかといったところですが、どうであれ、制作コストの上昇に繋がります。3年前は4万円の月給でニコニコ働いて徹夜も厭わなかった中国人が、いまでは3倍の12万、それでも15万だ20万だと引抜がかかるので、もうこれは致し方ありません。

 結果として、日本の地方都市で頑張っている制作会社と連携したほうが、クオリティは安定するわノウハウは保てるわ量産効果はきっちり出るわで、国内向け海外向け問わず制作は日本に集約したほうが安いし品質が高いんじゃないのという議論になりつつあります。もちろん、弊社でも対応をどうしようか悩むところではありますが。

 したがって、中国市場で重要な部分のR&Dやコンポーネントの制作は行わず、汎用的でコモディティ化されている部分、例えばUnity振り回すとか量産が必要なモデリングの部分だけ作らせるとか、そういう限定された量産工程だけ中国企業にお任せするという形にならざるを得ないのかなと。もしくは、某社の下請けのように、某社が社内で作ってるクソのようなフレームワークを使えと強制された場合に、ある種の死に兵的に中国企業へ委託するという形ぐらいまででしょうか。

 また、独り立ちしてしまう中国人幹部対策として、移籍されるぐらいなら独立させて、その会社に出資させてもらって仕事を回す、という荒技が役に立ちます。もう、ノウハウ流出は、してしまったものは仕方がないので。結果として、中で抱えて人件費が高騰するのを抑えられ、むしろ安くなったりとか、ただ、自社で頑張って企画してた内容が丸ごと流用されてガワだけ変わって別の会社からリリースされるとか日常茶飯事になりまして、もうどうしようもないよなあと思うところで。

 日本人側の反省としては、やっぱりダイナミズムが乏しいというか、決断が遅いので、どうしても商談がまとまらず、大口の話はどんどんアメリカやドイツの会社に取られてしまうという現実があります。というか、ホテルのロビーでカバンに現金持ち込んで版権交渉してくる中国人とかマジヤバイ。比較的判断の速い私でさえ慎重に見え、日本人の中ではドライに思われる私が中国人から見ると人情味のある日本人に見えてしまうというこの現実。

 とはいえども、ゲーム業界に限らず中国はひとつの産業に関わる人が多すぎて、商売のグロスが大きくてもシェア先が幾つもぶら下がる形になりますので、何のコネもなく参入しても食い物にされて終わります。日本の出版社とかだと、appleに30%取られてけしからんとか、Amazonが55%取るとは何事だと言ってますが、中国だとコンテンツ提供側がローカライズ含めて取れるレートが20%台とかザラです。モノを売るのに、80%取られる。でも回収を面倒見てくれて、次々とモノを捌いてもらうには我慢しつつ、信頼関係を築いてもっと良いレートの版権開発をしていく、という立て付けに。

 最後に、東南アジア向け市場への販売対策。これ、結構曲者。まあ、iTunes storeとかで売る分にはappleが面倒見てくれるので問題なし。ただ、オンゲやAndroid向けは超カオス。どうしたらいいんでしょうね。助けてJETROって訳にもいかないし、仕方がないので強くなった円を抱えてリアル人間魚雷でやっていくしかないのでしょうか。それでも、日本人代をどう捻出するかが頭の痛いところではあるのだけど。

 目下の悩みは、もう下請けで潜水艦のようにやっているだけでは、仕事がスケールしないし、個別対応の嵐になって、疲弊してしまうのが眼に見えている、というところです。人件費12分の1の人たちと真正面からの競争などできない。今抱えている業務のどこに利益の源泉があり、どこに一番カネのかかる、信用の置ける日本人を配置し、どこを失ってもいいと考え、ダメージコントロールを図っていくか、というところでしょうか。このバブルが続いている間に、何らかの着地をして、一定の地位を確保しておきたいと考える日々です。


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Comments

>人情味のある日本人

www

一年か二年、海外投資は撤退して、自分の時間にまわして、イクメン(育児する男らしいw)したら、どうだ?

で、その後、イタリアだ。投資先は。彼等が借金返すために必死になったら、歴史に残るゲームとかつくるんじゃないか?

まぁ、家にいる時間が増えたら、純粋に日本株を上手に買って、それなりの利回りをだしておくのがいいような気がする。とにかく、海外に、あちこち手をひろげていると、飛行機ばかりのってることになりそうだし、交渉上手にまかせることができる部下が増えているならいいけど、大将が先陣をきるのは当然として、後続の部隊をまかせることができずに、ずっと大将が走り回っても、アレキサンダー大王ならともかく。

あと、子供が小さい間は、とても貴重な時間だから、大切にした方がいいと思うぞ。下手に、今の時期の国際的荒波を乗り越えて、大きな利益なんかつかんだら、その金を維持するために、さらに家庭を犠牲にしないとならんでしょ。

ま、その前に、デブを治さないと、身体が壊れるって、仕事が順調すぎるとん

山本さんは見切る判断が早すぎる
まだ利益も出てただろうに

稲船さんのところがindexと組んでGREEからゲーム出すっていうから、てっきりやまもとさんの仕掛けかと思ってたけど、いつの間にかやまもとさん自身が離脱していたでござる

逃げ足の速さが異常

携帯アプリに進出して、アメリカ様と仲良くしてみてはどうでしょうか カナダにも進出できるし、続いてブラジル そしてアフガニスタンで和平交渉が進むでしょうに
るーるーるるるるるー 北海道はでっかいどう
国内進出ならでっかいどうがイトーヨーカドー
いつかきっとわんだらんど うっるるるる わんだらんど
るっるっるっるるーるるーミルキーは子供向きー
泣いたらどうぞお与えになってみて下さい
もーしわけございませーん

隊長も逃げ出すとはマジ修羅の国

某社が社内で作ってるクソのようなフレームワークというのが気になる

頭としっぽはくれてやれとは投資における格言の一つでございますが、エンドユーザーの我々にもこういった話をご披露してくださると大変うれしく思います。
ゲームもハードもやっぱり国産(笑)

技術流出を止められないってのは多分「企業経営」として駄目なんじゃねーか?
積み上げてる物が何一つない状態っていうか。
 
そもそもが間違いじゃないの?って思う。

中国に先に展開してた企業の事例で知られてた事で古くから展開してる大手なんかは
任せる部分を限定しノウハウ防衛をしつつリスク管理に現地の事情や法に詳しい部隊を持ち、
長年のツテで中国上層部との人間関係を培って防備固めてる訳です。

基本的に中国の戦術は合弁強要と不利な契約かつ重要ポストに中国人を入れさせてノウハウ吸収と同時に
軌道にのってきたら会社ごと丸ごと貰っていくというもので現場から日本人を追い出す提案というのは
現場を中国側で完全に掌握する為だったり移籍する為の分かり易い成果として数字を短期で出す為
だったりする訳で。

そこで全部作る事を考えたり全面的に任せてしまったり日本人の関与排除で相手の言い分に
耳を貸した時点で母屋を乗っ取られるか出て行かれるのは目に見えてる訳です。

そしてそこまでが一連のパッケージとして何も知らない経営者をノウハウと
設立資金提供者として中国に連れてくるビジネスとして日本で声かけを行っている訳で・・・

短期的には成功を収めるんだけど長期で見るとリスクが大きすぎる上に人が出て行ったり
無茶な賃上げくらったりで結局高コストになったり追い出されたり全く別の国に同じものを作る破目に・・・
最初から中国で物を売る為の会社ならいいんですけど中国で作れば安くつくと思って行くと偉い目にあう訳です。

ヒットアンドアウェイが基本なんですな。

中国でなくてフィリピンとかベトナムとかブラジルとかに眼を向けるべきなんでしょうが、人間の教育資質がちがうからむずかしいのかな。。

最初から日本人を使えばいいのに、目先の利益に囚われて中国人に技術与えて教育して、結果的に日本人と同じ賃金を払ってるなら、それってただの売国企業か超良心的な中国系企業じゃん。

誤解してる奴が多いみたいだが、中国事業はI&P儲かってるはずだぞ。単に現地法人を譲渡しただけで。

隊長はやられたふりのポジショントークが多いから気をつけろ。

よくわからんけど、経営者個人の資質におおきく頼ってるところは結局経営者が健常である限りある程度波があっても大丈夫なんじゃあないのかなぁ
まあ、その企業の規模にもよるだろうけど
逆もまた然り

国家防衛は幻想ですよ 中国を敵対視する意図があるのは危険かと思われます チャイナニズムは10年前から始まっていました 波に乗れば人材のお宝船となって日本に来てくれるのではないでしょうか 天然資源とともに 共同開発~

一番いえるのはあちらは契約社会ではないという事です。
人材育成したら別の会社へいかれて人が育たず予定も丸つぶれなんてのも日常茶飯事。
誘致されて事業所を作ったら予定がかわったのでこの土地から出て行けとか人が変われば朝令暮改です。
重要な機密を明かせとかより重要な技術をもってこいとかの脅しにも耐えなければなりません。
我々が敵視しているのではなくてあちらは出し抜く事こそ偉い社会だというのを理解しなきゃ
いけないという事です。出し抜きあい化かしあいが出来て被害を受けてもそれを最小限に
限定出来るし撤退までも視野に入れられるという見積もりが出来る人じゃないとお勧めはしません。
まあそこまで考えるとまずコストが見合いませんが。
中国の市場を積極的に狙っていく等ならともかく、ローコストローリスクな所ではないのです。

新聞はおかしい。。。中国やインド市場は減速しているとかきたてるけど、それでも成長率は5、6%をうわまわっている。
日米欧に投資するより全然いいじゃん。。。。不思議。。。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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