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イギリスの音楽産業について考えるブログ
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2010/03/28 15:40
Does Music Matters really matter?
Fans advised that Music Matters - BBC News (24/3/2010)
Music matters to new anti-piracy campaign - The Guardian (24/3/2010)
Campaign launched to eradicate music piracy - Telegraph (25/3/2010)

イギリスで、音楽教育を目的としたキャンペーン「Music Matters」がローンチされました。元CMO Management(Blur, Gorillaz)で現ユニバーサルのNiamh Byrne氏が発起人となりスタートしたこのキャンペーンには、既に多数のミュージシャン、小売店、レーベル、マネージメントがサポートを表明しています。コピペですが、ローンチの時点でオフィシャルサイトに発表されていたアニメーションに参加したアーティストはBlind Willie Johnson, The Jam, John Martyn, Nick Cave, Sigur Ros, Kate Bush, the Fron Choir。ローンチ・パーティにはRay DaviesやBernard Butlerも来てたんだとか。小売店に関してはHMV, Tesco, Rough Trade(彼らはレーベルでもあるけど、多分小売としての参加だと思います)に加え、Spotify, We 7, 7Digital等の主要オンライン・ミュージック・サービスが名前を連ねています。後、オフィシャルサイトには出てこないですが、CMO Managementとユニバーサルはもちろん、Sonyコロンビアもこの雰囲気だとサポートに回っている気配なので、メジャーレーベル始めとしたサポートがありそうです。

キャンペーンは(1)ミュージシャンをテーマにしたドキュメンタリー風アニメーション・ビデオを用い、音楽の素晴らしさ、重要性などを(学校などで)教育する(2)"Music Matters"マークを導入し、合法で音楽が楽しめる場所はどこなのか分かりやすいようにする の2本柱。(2)に関しては個人的には方向性としては間違ってないのかなと思います。そのマークの効果がどれほどあるのかは正直疑問ですが・・・。

Behind the music: Does Music Matters really matter? - The Guardian Blog by Helienne Lindvall (26/3/2010)
It's the logo that really matters - CMU Daily (25/3/2010)

で、予想通り批判が飛んでくる・・・っていうのがイギリスの良いところですね。今回はなんだか良いのが見つからなかったんですけど(本当はMusic Allyが何か書いてくれることを期待してたんですが・・・)、CMUのこの部分が的を得ていると思うので引用します:

Half of them focus more on 'why music mattered' to the creators being documented than why their music mattered to others, and even those that do explain why music matters to the wider world - to bring together communities in times of strife, to promote love and peace etc - don't then go onto explain why this means you should pay to access music rather than taking it for free.
((オフィシャルサイトにアップされているアニメーション作品の)半分は、「何故音楽が人々にとって重要なのか」というよりも「何故音楽がそのクリエーターにとって重要なのか」にフォーカスしている。しかも、例えばlove&peaceを広めるために、この争いの時代には、音楽が世界中のコミュニティを1つにするための重要な意味を持っているといったようなことすら説明していない。だから、これらアニメーションは、音楽はタダで手に入れるのではなく、音楽にアクセスするためにお金を払うべきである理由を説明するとこまでは至っていないのだ。)


とてもイギリス的な批判ですが、実際そうだと思います。私もいくつかビデオを見て、どれも出来は素晴らしいのだけど、後に何も残らないというか、「良いアニメ作品だったなぁ~」とか「あのミュージシャンにはそんなことがあったのか~」というところで終わってしまうというか。ただ、ここで色々情報詰め込んだりミュージシャンを哀れに見せて「お金を払わないと、ミュージシャンが大変なんだ!」と一方的にプッシュするのはもちろん逆効果。今回のキャンペーナー達は“教育”という面を敢えて前面に出さないことで、若い子達のシニシズムを回避し、興味をひこうとしている様にも見えるのだけど、少しインパクトに欠けるというか、そうゆう意味ではクリエイティブとは言えなかったのかもしれません。このバランスは、正直取るのが難しいと思う。

音楽に関する何かを“教育する”という認識は凄くトリッキーだと思う。これは、私が大学院時代、フェスティバルでのマナー“教育”をする上でとても苦労したことでもあるのだけど、何がどうであろうと、「ちょっとアンチやオルタナでいるのが音楽ファンのあるべき姿」的認識というのが音楽に関わる人の中には必ずある。そして、イギリス。そのアンチ精神も相まって、何をやっても皮肉られて終わるというのが、この手のキャンペーンの常。今回も、バックに主要音楽関連企業がついてるっていうだけで批判する輩もいるシニシズムの国なので、本当に手の打ちようがないというか・・・。やはり、長い目で努力していくしかないのだとは思うけど、それだったら、もっとみんなが手に取りたくなるような素晴らしい音楽を見つけ、それを世に出し、後押しできるようなシーン作りに邁進するとか、そうゆう話にしかならないっていう。過去はどうか分かりませんが、近年英音楽業界が行ってきたキャンペーンは、結局いつもそんな感じで不発に終わっているような気がします。

どこかで、キャンペーナー側が、このキャンペーンと、以前成功を収めた飲酒運転防止キャンペーンを比べている話が載っていましたが、それともまた少し違うんですよね・・・。私も、やっぱり上記のフェス関連で動いてる時に、飲酒運転防止キャンペーンの話を色んな人からされて調べたんですけど、少し状況が違すぎるということがあり・・・。

まずはどんなモノか見てみよう!ということで、最後にオフィシャルサイトにアップされてるアニメーション作品から、個人的趣味でシガロスのものをあげておきます。皆さん、どう感じられるでしょうか?

Music Matters - Sigur Ros (22-3-10) from Music Matters on Vimeo.

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anno69(@yano)

  • Author:anno69(@yano)
  • イギリスの音楽産業、特にデジタル・ミュージックと音楽産業における環境問題対策に関するブログ。スコットランド大学院留学記も。
    管理人は、スコットランドのグラスゴー大学大学院ポピュラー音楽学コースを修了し、帰国。音楽好きの普通の会社員をしています。お問い合わせは cielo0818_ls [at] hotmail.com までお気軽にどうぞ。
    A blog dedicated to topics of the UK music market in particular digital music, copyright and environmentalism in pop music.

    ●Twitter:http://twitter.com/anno69
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