●アメリカ第一主義(ただしアメリカ国民ではなく、自分たちだけの)で孤立主義のトランプが次期大統領に決まってしまった。トランプはアメリカの法の支配と民主主義を破壊してロシアのような独裁国家に変えていく。世界平和秩序も破壊していく。だから日本も国家存亡の危機に直面している
(1)日本国民はこのことをほとんど認識できていません。これを主張する人があまりにも少数であるから当然のことです。本当の意味でのエリートと言われる人たちには、社会に訴えていく責任があります。自分一人であっても社会に向けて発信していく責任があります。日本は国家存亡の危機に直面しているのです。政府、政治家、知識人、ジャーナリスト、元自衛官高官には、それをする法的・社会的責任があります。影響力を持つ人たちが社会に訴えていくならば、国民の意識も急速に変わっていきます。しかしこのような主張はほとんどなされていません。政府やエリートの法的・社会的責任の放棄です。私はこの間ブログで発信してきましたが、リブログしてくださる人は本当にわずかです。社会的地位があり影響力を有する人たちこそがやらなくてはならない戦いなのです。
(2)トランプは今、閣僚やそれに準じる政府高官の指名を行っています。トランプに心酔する者たちを指名しています。トランプは大統領になる準備を全くしていなかった1期目から学んで(1期目の政府高官たちはアメリカの価値観と国益に敵対する政策を実行しようとするトランプに抵抗したのです)、2期目は忠臣で固めます。トランプは国防長官にFOXニュース司会者の44歳のピート・ へグセルを指名しました。軍司令官になったこともない人物です。彼はトランプが海外駐留米軍の削減を訴えてきたことを高く評価した人物です。軍司令官の経験すらない者に、巨大な軍を持つアメリカの国防長官の任務が全うできるわけがありません。
つまり、この国防長官人事で明確に見えてくることは、トランプのアメリカは第2次世界大戦後のアメリカの世界戦略を大転換して、孤立主義に回帰してゆくということです。戦後のアメリカは、NATO・日米同盟・米韓同盟等々の同盟国に米軍を前方展開して、ソ連=ロシア、中国、北朝鮮、イラン等と対峙し、侵略を抑止して平和を守ってきました。抑止戦略とは、もしも全体主義国家(侵略主義国家)によって抑止が破られた時には、集団的自衛権に基づいてアメリカ本国の軍隊も動員して防衛戦を戦い、勝利して平和を回復するというものです。アメリカ軍は平時であってもいつでも戦闘に移行できる軍隊です。米軍の最高司令官たる大統領を支えるのが、国防長官と統合参謀本部議長です。両者には最適任者がつくのです。つまりヘグセルの指名にはそういう国防長官の役割は求められていないということです。
トランプはアメリカの世界戦略を大転換していき、対外軍事介入を止めていくのです。同盟関係を解体してアメリカ第一主義の立場で孤立主義へ大転換していきます。トランプはウクライナも守りません。軍事支援もすぐやめてウクライナに停戦を押し付けで行きます。ヨーロッパも守りません。日本も台湾も韓国もフィリピンも守りません。トランプは1期目の時からそのように言っていました
2018年8月、米議会(共和と民主)は「国防権限法」を成立させました。すなわち、米議会は「国家安全保障戦略」(2017年12月)と「国家防衛戦略」(2018年1月)に基づいて、トランプに中国とロシアをアメリカの想定敵国として、米国の軍事力の強化を義務付けたのです。しかしトランプはこの3つを完全に否定したのです。トランプは2018年9月の国連総会演説で次のように述べたからです。「ここ西半球で外国の拡張主義勢力による侵略から独立を守ることが我々の決意だ」。これは中国やロシアや北朝鮮やイランなどの拡張主義勢力が、東半球で、つまりインド太平洋、欧州、中東、アフリカで他国への侵略を行ってもアメリカはそれに軍事介入しない。同盟国や友好国への侵略であっても、東半球での侵略には軍事介入しない、と表明したものです。トランプは同じ国連演説の中で、「私の友人である習近平国家主席に対して大いなる尊敬と信頼の気持ちを持っている」と言ったのでした。私は当時すぐブログで批判しました。
(3)トランプはまず忠臣のヘグセル国防長官を使って、トランプの孤立主義(在外米軍を本国に戻す。対外軍事介入をやめる)に反対すると思われる国防総省と制服組の統合参謀本部及び陸海空海兵隊宇宙軍の高官を更迭させて、トランプに忠誠を誓う人物を後任につけています。この悪の軍改革の断行には、トランプに服従する司法省も権力を行使して協力します。人事を合法だと協力する。トランプはこの”軍改革”をやってから、アメリカ第一主義の上の孤立主義を推進していきます。
トランプは「司法省を使って政敵に報復していく。政敵を排除していく」と公言してきました。トランプは自身を心酔する人物を司法長官に指名して、彼を使ってトランプに反対する司法省の高官や検事を失職させていくのです。悪の司法省改革です。そしてこの司法省を使って、トランプ政権に反対する政治家、官僚、マスメディア、知識人、活動家たちを排除していきます。トランプ党は上下両院を支配しましたから、反動的な法律を作っていきます。司法省はこの悪の法律を使って政敵を弾圧し排除していくのです。トランプは政治任用の約4000人の政府高官以外にも、「約5万人の連邦政府職員の雇用保証をなくしていく」と公言してきました。つまり自分の命令に反対する政府職員の首をいつでも切れるようにして、中立である官僚機構を完全に支配することを目指します。トランプは 官僚機構の高級官僚だけでなく中堅官僚をも「闇の政府」の一部だと主張してきたのです。
トランプは最初は、「政敵への報復」を主張していた下院議員強硬派のゲーツを司法長官に指名しました。だがゲーツは未成年女性に対する人身売買容疑で捜査対象になったことなども発覚して、指名辞退に追い込まれたのです(11月21日のこと)。トランプはその後任に、1期目の時に弾劾訴追された自分の弁護団の一人であったパム・ボンディ(女性)を指名しました。彼女も、トランプを起訴した検事やFBI捜査官を「ディープステート」(「闇の政府」)の一員と呼び、「彼らを捜査し起訴する」と公言する人物です。
トランプは国家情報長官にトゥルシー・ギャバード(女性43歳)を指名しました。彼女はプーチンやシリアの独裁支配者のアサド大統領を「アメリカの敵ではない」と擁護する人物です。またはるか昔の日本の太平洋における侵略を国民に思い出させて、日本が進める軍備強化は良い考えなのか?と発言する人物です。トランプが指名した他の者たちも、トランプに忠誠を尽くす者たちです。
(4)新議会の開会は来年1月3日です。開会すると上院の委員会で、政府高官の指名承認公聴会が開始されます。そして1月20日のトランプの大統領就任後、トランプは人事案の正式指名を上院に通知します。上院本会議で過半数の賛成で承認されるのですが、とてもひどい指名なので共和党議員の中からも反対するものが出てきます。上院の勢力は共和53人に民主47人なので、共和党の4人が反対すれば不承認になります。トランプは承認が難航すれば、上院を休会にさせて行う「休会任命」の大統領令を発令すると言っています。これはアメリカの民主制度の規範破りです。民主主義制度の多くの規範も法の一種です。だから法の否定です。
米国憲法は報道の自由・国民の言論の自由を保障しています。しかしトランプは法の支配、規範の支配を否定し破壊していく独裁志向者です。トランプたちは名誉毀損法を改悪することで、トランプ政権の政策に対する正当な批判報道を行うマスメディアの報道の自由を圧殺していきます。記者は逮捕されます。一般市民の言論の自由も圧殺していきます。これは憲法違反の法律です。日本人の知識人のほとんどは、「トランプの任期は4年だ。無茶をやれば次の選挙で民主党に負けることになる。あるいはトランプを批判する昔からの共和党の有力者が現れるかもしれない」みたいに考えています。完全に謝った認識です。トランプたちは法の支配と民主主義を破壊して、制度を変えてしまうのです。トランプたちは、選挙は行うが政権交代は決して起こらない、トランプ党が大統領職と上下両院と最高裁を支配し続ける事実上の独裁国家にアメリカを作り替えてしまうのです。ロシアのような国家にです。だからアメリカ国民は法の支配と民主主義の規範があるアメリカを守り抜くために、必死になってトランプたちと戦っていかなくてはなりません。
(5)トランプ政権の外交はすでに述べたように、「自分たちだけ良ければよい」のアメリカ第一主義の孤立主義です。これまでの同盟関係を否定して前方展開していた米軍をアメリカに撤収させていきます。そして東半球で起こる侵略には軍事介入しません。戦間期のアメリカがそうであったように、完全に誤った孤立主義へトランプは回帰していきます。戦間期のアメリカの孤立主義が、新国際秩序建設を目指す国家社会主義イデオロギーで武装した日本・ドイツ・イタリアの左翼全体主義国家の侵略戦争を促して、第二次世界大戦になったように、トランプ政権の孤立主義は、新国際秩序建設を目指す中国、ロシア、北朝鮮、イランの全体主義国家の侵略戦争を促進するものになるのは明白です。トランプは独裁侵略者の習近平、プーチン、金正恩を「尊敬する友人だ」と公言する人物ですから、なおさらそうなります。
トランプ政権の孤立主義はアメリカとアメリカ国民の利益に反するものになって行きます。アメリカの安全保障の危機になっていくものです。もしも中国、ロシア、北朝鮮、イラン(三国は核武装しています)が東半球(英国の地政学者マッキンダーが言う世界島)を侵略支配することになれば、西半球は包囲されてしまいます。経済的軍事的にです。アメリカとアメリカ国民も経済的軍事的に包囲されていきます。アメリカの危機です。しかしトランプはそのようには思わないのです。トランプはアメリカ国民が苦しくなっても自分たちだけがいい思いをすれば良いからです。独裁者の心情とはそういうものです。
ルーズベルト大統領はナチス・ドイツに英国が侵略されて敗北することになり、大西洋の英国海軍が消滅してドイツの海軍になってしまえば、米国は包囲されてアメリカの安全保障は危機に陥ると正しく認識しました。そしてアメリカの孤立主義を一つ一つ打破して参戦して、枢軸国を打倒して行きました(しかし連合国がドイツに勝利することが見えてきた時に、ルーズベルトはソ連と対決していくべきだったのに全くできず、スターリンが東ヨーロッパを占領することをみすみす許してしまったことは厳しく批判されなければなりません。1945年4月12日からのトルーマン大統領もです。また1956年に米国務省が公式に「無効」声明を出した、ルーズベルトが大統領としてではなく個人としてやったスターリンとの1945年2月11日の「ヤルタ密約」もカイロ宣言に違反するものであり、強く非難されなくてはなりません)。
(6)日本政府も日本の知識人たちも、トランプの「自分たちだけ良ければよい」の立場の「孤立主義」が何をもたらすのか全くちゃんと認識できていません。日本の保守派の実に多くの人たちがトランプを強く支持してきたのです。トランプが繰り返す「民主党は社会主義者=共産主義者であり、内なる敵だ!外部の敵よりも恐ろしい第一の敵だ!」の言説は、完全なデマゴギーであり、人々を洗脳するレトリックなのに、日本の保守派の多くもトランプに騙されて信じ込んできました。トランプがやろうとしていることは、中国やロシアや北朝鮮やイランの政治工作員がアメリカにおいて実行していくことと、全く同じものです。日本は国家存亡の危機に直面することになっていますが、このことを認識できていません。
●マッカーサー元帥とGHQは、天皇制度廃止と日本の非軍事化を新日本国憲法に規定しようとする極東委員会(11カ国)から、日本の天皇制度と日本の自衛権(そのための軍隊保持と軍事力の行使=憲法9条)を護っていった
(1)日本は1節に述べたことを理解して、直ちに閣議決定によって国防軍を保持しなくてはなりません。憲法9条は自衛権行使のための国防軍の保持を認めていますし、そのための軍事力の行使を認めています。GHQの憲法9条草案の英文を読めば明白です。諸外国は自衛隊を軍隊だと思っています。日本政府も国際社会に対しては自衛隊を軍隊だと説明してきたからです。日本の国連加盟とはそういうことです。だから自衛隊の高官は海外では「将軍」「大佐」「大尉」等々と軍隊の共通語で呼ばれます。しかし日本では軍隊ではないとされて、「将官」「一佐」「一尉」等々と呼称されています。政府は自衛隊は軍隊ではないとして、米軍や英軍などが行うような当たり前すぎる軍事政策、軍事戦略、軍事作戦、軍事攻撃を認めず、そのための装備も認めず、「専守防衛」と言われる戦い方を強いてきました。
政府は憲法9条に違反し続けてきたのです。現在は憲法9条の違憲状態です。これは政府の政治的犯罪!です。だから正義を実行する内閣が、「現行の憲法9条解釈は憲法9条に違反しており、憲法98条1項によって無効である!日本は自衛のための軍隊を持てる!自衛隊は軍隊である!」と決定しさえすれば日本は1日で国防軍を保持できます。石破内閣はこれを断行しなければなりません。法の支配です。だから内閣の義務です。国民も政府にこれを要求しなくてはなりません。とりわけ元自衛官高官であった人たちや知識人たちにはそれをする法的・社会的責任があります。日本の安全と存立を守り抜くためですから当然すぎることです。
(2)私たちは以下に述べていくことを認識する必要があります。アメリカ政府の「国務省・陸軍省・海軍省調整委員会」(SWNCC)とマッカーサー元帥(連合国軍最高司令官)とGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、「日本の憲法を改正して、天皇制度は象徴天皇制にして守っていき、天皇の権威を借りて日本保障占領統治を行って、軍国主義を粉砕して、民主主義の平和愛好国日本に改革していく」という基本方針を持っていました。当然にも天皇を戦犯にはしないし、天皇を東京裁判に呼んで証言させることもしない方針です。
しかし、1945年12月27日に終わった米英三国外相会議において、日本の占領政策について米国だけでなく連合国も発言権を持ちたいという各国の意向を受けて、「極東委員会」(FEC)の設置が決められて、日本の憲法改正のような重要問題は極東委員会が決定するとなったのです。極東委員会は1946年2月26日にワシントンで発足することも決まりました。FECが発足してしまえば、マッカーサーもGHQもFECの下に置かれて、その決定に従うことになります。FECは11カ国で構成され、ソ連、支那、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンのように天皇制の廃止を主張し、天皇を戦犯として裁くと言っている国もいます。また日本の非軍事化(一切の軍隊の保持の禁止)も求めて来ます。
(3)そうなっては困ります。アメリカ政府の「国務省・陸軍省・海軍省調整委員会」(SWNCC)は1946年1月7日に、「憲法改正についての一般訓令」(SWNCC228号)をマッカーサーに送りました。1月11日に届いた。マッカーサーは極東委員会(FEC)が発足する前に日本国憲法改正案を作ってしまいたいと考えて、民政局にGHQが持つ憲法改正権限の法的検討を命じました。1月25日頃です。2月1日に「極東委員会の決定がない限りは、マッカーサーに憲法改正の権限がある」との回答がありました(『Voice』2001年6月号、岡崎久彦「占領の時代、第5章。幣原の苦悩」253頁)。
マッカーサーは1946年2月3日からGHQの民政局で、日本国憲法改正草案づくりを開始したのです。マッカーサーが「マッカーサー三原則」を民生局に示したのが2月3日です。7日間で作れと命じました。2月4日~10日で作られ、マッカーサーが11日と12日で検討して、2月13日にケーディス大佐などが日本の外務省に手渡しました。マッカーサー三原則の2原則目は、「日本は自衛のための軍隊も持たない」となっていました。きっとSWNCC228号にそのように書かれてあったのでしょう。しかし憲法改正草案作成の責任者の民生局次長のケーディス大佐が(1)項に書いたように、自衛権行使の軍隊保持は認める。その時の軍事力行使を認めると、正しく修正しました。マッカーサーもすぐに賛成したのです。受け取った日本側は憲法9条の日本語訳を誤りました。すなわち9条2項を「全ての軍隊を保持しない」としました。しかしケーディスはこの誤訳を指摘して直させることはしていません。後述する理由があるからです。連合国は戦争中、「戦後のドイツ・日本・イタリアは非軍事化する」と公言してましたから、日本政府が9条2項をそのように読んだとしても仕方がなかったとも言えます。GHQもそれを願っていた。
(4)マッカーサーとGHQと日本政府は、極秘裏に憲法改正作業を進めていき、3月6日に日本政府は「憲法改正草案要綱」を発表しました。極東委員会はびっくりしました。日本政府とマッカーサー・GHQは、あくまでも日本政府が自主的に作成したものだという立場をとりました。マッカーサー・GHQが押し付けたものだとすれば、極東委員会が反発して、天皇制度を維持している日本政府のこの要綱を破棄させることにもなります。またもしも憲法9条が「自衛のためであれば軍隊を持てる」となっていれば、「日本はそのうち侵略戦争を始めていく」として、極東委員会はこの「要綱」を認めなかったのです。だから天皇制もなくなりました。
1946年6月20日に帝国議会が開会し、憲法改正議論・審議が始まりました。吉田首相が憲法9条の趣旨説明をしましたが、9条2項を「日本は一切の軍備を持ちません。自衛のためのものであっても持ちません」と説明しています。8月1日に芦田均が憲法9条2項の冒頭に、「前項の目的を達するため」の語句を挿入する「芦田修正」を行いました。これはケーディス大佐の指示によって行ったものですが、芦田はこの修正によって意味がどう変わるのか何も議会において発言していません。ケーディスからその理由も伝えられて、口止めされていたのです。憲法は1946年11月3日に公布になったのですが、国民は「日本は憲法9条によって一切の軍隊を放棄したのだ」と考えていました。
極東委員会は、日本国憲法の施行(1947年5月3日)から1年以上2年以内に、もう一度見直し、極東委員会の主張が組み入れられていなければ、改正を要求するという決定をしていました。だからマッカーサーも憲法9条の本当の意味について公で発言することはしていません。マッカーサー元帥が憲法9条の本当の意味を初めて日本国民に語ったのは、1950年元旦の「日本国民に告げる声明」でです。元帥は「憲法9条は相手から仕掛けられた攻撃に対する自己防衛の侵しがたい権利=自衛権を否定したものとは絶対に解釈できない」と述べたのでした。その時には日本は軍事力で反撃することができるということです。同年7月には元帥は再び、「憲法9条は自衛のための軍隊の保持を禁止するものではない」と念を押しています。1951年1月に来日したアメリカの全権特使のダレスは、吉田首相に対して憲法9条に基づいて、主権が回復されたら(1952年4月28日に回復する)1954年3月までに32万5000人から35万人の陸軍を作ってもらいたいと要請しています(2023年8月10日アップや2024年10月10日アップの拙文参照)。
(5)「反米保守」を自称する人たち(「民族派」です)は、アメリカGHQが日本に一切の軍隊を保持できないようにするために憲法9条を押し付けたのだと言い続けていますが、全くの事実誤認です。アメリカとマッカーサーGHQが、そのようにしようとしていた極東委員会から、日本の天皇制度と日本の自衛権行使のための軍隊保持と軍事力の行使権(自衛権=憲法9条)を守ったのです。自衛権は国際法です。
憲法9条を否定してきたのは、日本の政府(1952年11月の吉田茂内閣以降)と反米左翼(社会主義者)と反米民族派です。親米保守の人たちも政府に従って、「反日の憲法9条解釈」を続けてきたのです。これは日本人自身の問題なのです。事実に反する誤った思想が大勢になっている時、日本国の安全保障は危機に瀕することになります。だから私たちは正しい認識を持たなくてはなりません。
(6)アメリカ・トルーマン政権は、最初は「4人の警察官(米英支ソ)」の考え方をルーズベルト政権から継承したのですが、ソ連がヤルタ会談での合意を実行せず、ソ連が占領した東ヨーロッパで複数政党による自由選挙を否定して共産党の一党独裁を行っていったことや、ソ連のバルカン諸国への侵略支配、英国が支援するギリシャへのソ連が主導するゲリラ戦争、支那では1945年11月に国共の内戦開始という国際情勢から、急速に考え方を転換していくことになりました。マッカーサー元帥とケーディス大佐が、GHQの憲法9条案を「自衛権行使のための軍隊保持(2項)と自衛のための軍事力の行使(1項)」と定めたのも、日本の軍国主義を解体して民主主義の平和愛好国家に改革して、主権回復後には日本を東アジアにおけるアメリカの第1の同盟国にしていくためでした。英国のチャーチル前首相がアメリカのミズーリ州フルトンで、「バルト海のシュテッティンからアドリア海のトリエステまで『鉄のカーテン』が引かれた!」と演説して、ソ連の侵略拡張主義に警鐘を鳴らしたのは1946年3月3日でした。アメリカは西側の自由民主主義諸国を率いて、ソ連・中国・北朝鮮など拡張主義陣営を封じ込め対決していくことになったのです。NATOの創設は1949年4月のことです。アメリカ外交・安全保障戦略の大転換です。
(7)民族派や保守派の一部から、占領時代にGHQが日本の憲法を改正することは、1907年の「ハーグ陸戦法規」(正式名は「陸戦の規則慣例に関する条約」)の第43条に違反しており無効だ、との主張がなされてきました。第43条は「国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は、占領者は、絶対的の支障なき限り、占領地の現行法規を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保するため施し得べき一切の手段を尽くすべし」です。
しかしながら日本は1945年7月26日付の「ポツダム宣言」を受諾したのです。前期したアメリカ政府の「SWNCC228号」は、ポツダム宣言の内容から帝国憲法の改正が含まれるのは当然であり、日本は宣言を受諾したことによって、連合国側の憲法改正要求には正当性がある、と述べています。マッカーサーとGHQはポツダム宣言第4項、第6項、第10項の後半に基づいて、大日本帝国憲法が日本の軍国主義の温床になったと考えて、改正していったのです。その通りでしょう。
(8)昭和天皇は「今回、憲法が成立し、民主的新日本建設の基礎が確立せられたことは、喜びに絶えないところであります。この憲法成立に際し、貴将軍において一方ならぬご指導を与えられたことに感謝いたします」と、1946年10月16日のマッカーサー元帥との3回目の会見で元帥に対して述べられています(『昭和天皇独白録。寺崎英成・御用掛日記』250 頁。文芸春秋1991年3月10日発行)。なお、天皇は憲法9条については率直に懸念を述べられています。もしも立ち会い者がいなければ、マッカーサーは本当の憲法9条の意味をお伝えしたことでしょう。
元帥は天皇のご巡幸について、「日本を完全に破壊せんとするロシアや、豪州は、ご巡幸に反対しておりますが、米国も英国も陛下が民衆の中に入られるのを歓迎いたしております。司令部に関する限り、陛下は何事もなしうる自由を持っておられるのであります。何事であれ、私にご用命願います」(251頁)と言っています。
(9)わが日本は国家存亡の危機に直面しています。時間はもうありません。一人一人が必死になって戦っていかなくてはならないと思います。
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(2024年11月30日 脱)