本書は漫画家、中川学氏の『くも漫。』(リイド社)
における「前夜譚」です。
元職場である中学校を失踪して15年後、当時の
道のりを再度『巡礼』し、自らの内面を見つめ、
「過去」との訣別を図る「心の旅」です。
本書は漫画家、中川学氏の『くも漫。』(リイド社)に
おける「プレ・ストーリー」な位置付けの実録コミック
エッセイです。
かつて数学教師として勤務していた中学校を失踪して
15年。網走(北海道)から尾道(広島県)を再度『巡礼』し、
自らの内面を見つめつつ「過去」との訣別を図る
「心の旅」を綴っております。
自分自身もまた、「デラシネ気質」というかなんというか…。
「放浪癖」のようなものがあり、時々
「あぁ。いっそのことすべてを打っちゃってどっかふらりと
行ってしまおうか…。」
と思うことが多々あるわけですが、本書を読んで
初めて勤めた会社で自分より後に入った人間が
ある日ふと出社しなくなり、連絡がつかずそのまま
フェイドアウトして行った人間のことや、自分の仕事の
出来の悪さを指摘されて逆切れして職場放棄をした
人間のことを目の当たりにしてからは本書を読んで
いて複雑なものを読後に覚えてしまいました。
ただ…。本書を読む限りでは中川氏には明らかな
オーバーワークを要求されており、「9.11」をきっかけに
して中川氏はすべてを放擲して失踪してしまうわけ
ですが、自分がもし中川氏の立場でも、壊れるか
逃げるかのどちらかだったことでしょう…。
中川氏はかつての教え子の実家であるラーメン店や
札幌のホテルでデリヘル嬢を読んだこと。
さらには自分のお気に入りの映画の一つである
大林宣彦監督の『尾道三部作』の撮影現場を
『聖地巡礼』しながら自分の「過去」を見つめなおして
いくわけですが…。
個人的なハイライトでは中川氏が止まっていた
ホテルの自室のドアノブにタオルをひっかけて自裁
しようとしたところも描かれ、
「ずいぶん勇気あるなー。」
と思いつつ、唯一の味方である弟さんとの邂逅や、
所持金が尽きそうになったこともあり、中川氏は
実家へと戻るわけですが、そこからいろいろあり…。
重すぎる話を軽快なタッチで描くことができるのは
中川氏の持つ稀有な「才能」であったりするので、
これからもそういう部分を伸ばしていっていただけると
幸いに思います。
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