リスパダールコンスタとリスパダール | kyupinの日記 気が向けば更新

リスパダールコンスタとリスパダール

今回の記事は「リスパダールとジェネリック、雑感」の続き。これらは、元々1つのエントリであったが、長すぎるので2つに分けてアップしている。

リスパダールコンスタはリスパダールの持続性抗精神病薬として、平成21年6月に発売され、現在、1万名の人に処方されているらしい。(全国推計)

リスパダールコンスタは前評判は良かったが、何しろ高価なことと、1ヶ月に2回筋注しないといけないため、患者さんに薦めにくいと言った内容のエントリもアップしている。

当初、そのようなこともあり、導入に消極的だったが、既にリスパダールコンスタを定期的に筋注されている患者さんが紹介されたこともあり、採用し現在はうちの病院でも処方している。

リスパダールコンスタは平成17年5月から18年8月まで治験が行なわれている。発売が平成21年6月なので、いかにも時間がかかっている。当時のMRさんの話では、突然、プロラクチン値が上がって来るなどがあり、いかにコンプライアンスが悪いかが判明すると言ったことも聞いていた。(リスパダールはプロラクチン上昇を来たしやすい)

リスパダールコンスタは高価だが、宣伝もあったのだろうが、一般精神病院の採用はけっこう早かったようである。

ある日、外の病院で自分の担当患者さんにリスパダールコンスタを筋注される事件があり、その時の印象が良かったことも採用した1つの理由である。また、リスパダールコンスタは1本ずつ購入できることも便利と思った。

リスパダールコンスタは透明の液と粉薬を直前に混ぜて筋注するようになっている。それまでは冷蔵庫に保存しているため、直前の数時間、常温に戻して使う。特殊な製法が採られており、ネオペリドール(ハロマンス)のように筋注部位の硬結を来たさず、ほとんど痛くない。まだ冷たい状態で筋注した場合、常温より少し痛いものの効果には差がないといわれている。

リスパダールコンスタはすぐには効果が出ないため、当初1ヶ月はそのままリスパダールを経口で使う。3回目(つまり約1ヵ月後)から、リスパダールを減量していく。リスパダールコンスタは効果がよく出るため?か、元々6㎎くらい服用していても25㎎月2回で良いこともある話は聞いていた。(25㎎月2回では2㎎/日、相当である。過去ログ参照)

リスパダールコンスタを使った感想だが、リスパダールよりずっと非定型抗精神病薬らしさがある。

僕の患者さんでは、リスパダールコンスタを筋注後、1週間以内に何らかの体調の変化を感じ取る人がむしろ多い(もちろん何も感じない人もいるが)。

その内容だが、「少し明るくなった」「気分が以前よりすっきりしている」と言ったプラスの印象が多い。特に有益と思われるものは、リスパダールを服用していてもすっきりせず、慢性的な不全感や副作用とも精神症状とも判別がつかない微妙な所見を改善することである。

リスパダールコンスタはリスパダールより薬物として軽い印象なのである。

逆に筋注して数日以内に不機嫌、易怒的となり悪化しているように見える人がいる。これは本当に悪いのかどうかはその時点では判別ができない。まだ薬理的にはほとんど効果が出ていない時期だからである。このような場合、とりあえずセレネース液くらいを併用して様子を見る。このような人では結果的に良いケースもある。(こういう経過で良くなる人は、まるで好転反応のように見える)

リスパダールコンスタがリスパダールに比べてより非定型っぽいところは、副作用が少ないことと、表情を明るくし、抑うつ気分や陰性症状への効果が高いように見えることである。

だから、リスパダールコンスタとリスパダールはまるで別の薬のような印象すらある。

ある時、リスパダールが禁忌の人にリスパダールコンスタを筋注されるという事件が起こった。その人はリスパダールで精神症状が悪化するために禁忌にしていただけで、中毒疹が出るとか重篤なものではなく、プライベートな禁忌である。だから他の医師にはわかりにくかったようである。

その結果だが、その患者さんは筋注後に全く病状悪化が見られなかった。本人によれば、過去に何度もリスパダールで悪化していたという。

これは大変な事件である。この経験から、従来のリスパダールにより病状が悪化してしまう人にもリスパダールコンスタの可能性を見出すに至った(とはいえ、相当な決断が必要)。現在、そういうタイプの人でリスパダールコンスタを筋注し、以前より順調な人がいる。

たぶん、リスパダールコンスタはリスパダールより忍容性が高い。

逆に、それまでリスパダールの錠剤などを使っていて、リスパダールコンスタに変更し悪化する人もいる。これは気分が上がるため、プチ躁転のような状況になり、次第に妄想が爆発する。こういう人は従来のリスパダール錠や液剤の方が抑えが利くだけ有用性が高い。(というか、リスパダールコンスタは無理だし)

このような人は、ひょっとしたらリスパダールコンスタを増量すればまとまるのかもしれないが、わざわざ高価な薬を増やしてまで使う価値は乏しいと考えている。

なぜなら、リスパダールコンスタを使い始めると、外来患者さんでさえすぐにレセプトが10万円(1ヶ月)を越えてしまうからである。(25㎎アンプルでも月2回で23000円の倍かかる。また1日から開始すると通院間隔から月3回筋注になるため)。病院全体で高価な診療報酬の人が増えるのは非常にまずい。(現在、自立支援法により外来での支払いは上限があり、リスパダールコンスタを処方されていても法外な金額にはならない)

リスパダールコンスタを使ってみる価値のある人は、2~4㎎くらい服用していて、なんだかアク抜けせず、グズグズとスッキリしないような人たちである。こういう人は様変わりして実感が改善する人がいる。また、リスパダールを減量できない人も、リスパダールコンスタを橋渡しにして減量できる可能性がある。

このような臨床経験から、リスパダールコンスタはリスパダールほど血中プロラクチンが上昇しないのではないか?と言う印象を持つに至った。

実は、リスパダールコンスタはリスパダールから変更後、血中プロラクチンを下げるという調査結果があるらしい。

参考
リスパダールコンスタが高すぎること
高プロラクチン血症
器質性荒廃