種類株式の登記
最近,株式の相続による分散(少数株式)の対策,事業承継,従業員に株式を与えて精力の注入,などのために種類株式の発行の相談がポツポツとある。
ところで,会社法108条には,種類株式が規定されている。
しかし,会社108条による種類株式発行の定めの定款変更をしても,既存株式(発行している株式)が当然に種類株式になるのではなく,あくまでも発行枠ができるだけである。
つまり,現に種類株式を発行するには新株を発行しなければならない。
中小企業の場合,新株を発行すると増資になり,資本金の額が増え,税務上の問題も出るという観点から既存株式(発行している株式)の一部を種類株式に転換したいという要望が多い。
この場合の登記手続きの方法にはちょいと問題があり,参考文献や書籍には登記申請の書式例は掲載されていない。
そもそも,会社法の立法担当者は会社法108条で将来の種類株式発行枠のみしか想定していなかったようであり,会社法には既存株式(発行している株式)の一部を種類株式に転換する方法の条文は規定がない。
さて,どうする。
どうやって,既存株式(発行している株式)の一部を種類株式に転換するのか。またどうやって登記するのか。
登記先例があった。
昭和50年4月30日民四2249号の先例だ。
旧商法地代の先例であるが,会社法の下でも生きている先例だ。
上記先例の事案は,定款で普通株式のみを発行してい株式会社発行済みの株式を優先株式に変更するには,
①定款変更決議をした株主総会議事録
②会社と優先株式に変更する株式の株主との合意書
③変更しない(普通株式にとどまる)他の株式の株主の全員の同意書
以上を添付すれば,現に発行済み株式を他の種類の株式に変更することができる。
問題は登記申請書に書く,【登記の事由】と【登記すべき事項】である。
これについては事前に法務局に確認済みである。
【登記の事由】
発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の設定
発行済株式の総数並びに種類及び数の変更
【登記すべき事項】
「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」
普通株式 ○○株
A種類株式 ○○株
A種類株式は,重要財産・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「原因年月日」平成22年○○月○○日変更
「発行済株式の総数並びに種類及び数」
「発行済株式の総数」○○株
「各種類の株式の数」
普通株式○○株
A種類株式○株
「原因年月日」平成22年○○月○○日設定
以上の登記ができると,極めて商業登記の実務は広がる。
種類株式の普及を大いに期待します。
さて,明日は午前中から不動産登記決済です。