少年犯罪には先進国中一番厳しい日本
今日は調べものがあって国会図書館に行っていた。おもしろいデータを手に入れたのでご紹介しようと思う。龍谷大学、浜井浩一教授の論文にある調査である(※)。
日本の「犯罪増加」の根拠は認知件数をもとにしているから間違うのだ。つまり認知件数はどういう犯罪を受理するかという警察の方針によって変わるからである。
浜井教授は国際的な犯罪被害調査をもとに論を展開する。調査は略して「ICVS」という。標準化された統計手法に基づいた、現在もっとも信頼性が高い調査である。
2000年に行なわれた調査において、日本の被害率は「住居侵入、未遂」においては先進12か国中下から二番め。脅迫のみを省く暴力犯罪では一番低い。唯一の例外が自転車盗で各国中トップという結果である。
さらに、「被害が重大なもの」として受け取られたかどうかの調査では日本は上位。
そして、「この罪にはどんな罰が適当か」という「量刑意識」については日本はアメリカに続く上から二位の厳罰傾向。
「21歳の男性がカラーテレビを1台盗った住居侵入窃盗罪。犯行は2回目」という設定で、適切は刑はなにか?というアンケートを各国で比較している。拘禁刑を選ぶかどうかが大きいのだが、アメリカは懲役2年7月、日本は1年8月という順で多くの人が拘禁刑を選んでいる。フランスが最下位なのであるが、社会奉仕刑を選ぶ回答が圧倒的に多い。
さらに少年犯罪が注目である。
参加先進国中、少年犯罪には厳罰をもって処すべしという態度は、堂々の1位という結果である。
ようするに、犯罪にあう確率は少ないのに、大げさで、とくに少年が罪を犯したら、「許さ~ん!」と過剰反応してしまう国となっているのである。
浜井教授の分析についてはとても興味深いのが、そちらは本稿をあたっていただきたい。
しかし少年になぜそこまで厳しいのかというと、やはり90年代後半からの「少年犯罪」大ブームが大きいだろう。こちらの考察分析については、わたしが編集として関わらせていただいた芹沢一也さんの「ホラーハウス社会」に詳しいのでぜひそちらを見ていただきたい。
ちなみに日本になぜ、自転車盗が多いか、これにもカラクリがあるのだ。自転車盗は「犯罪認知」そく捕捉できるので警察にとっては検挙率をあげるということができる。点数かせぎ犯罪である。
そして、これは主に若者への職務質問で遂行されるのだ。
少年は「活用(乱用?)しがい」のある存在なのである。
日本の「治安悪化」の世論は2000年を境に急激に増え、どんどん増幅しているのだが、これは認知件数が増えて検挙率が低下したことを「犯罪白書」が言明したからだ。読むと、いっけん暴力犯罪が多発して、どうも日本は大変なことになったらしいと、とらえられがちである。
しかし、よく考えて欲しい、宇宙人に襲われたわけでもないのに、ある年から急激に日本人が凶暴凶悪になるなんてことはありえない。
参考文献
※犯罪被害調査の意義と国際犯罪被害調査
(ICVS)に現れた我が国の犯罪被害の特徴 浜井浩一
-我が国の「安全神話」は本当に崩壊したのか?-