泣いて笑って、笑って泣いて...。最後まで楽しめる作品に仕上がっていました。
昭和40年。「もはや戦後ではない」という言葉が実感を持って語られるようになった頃の日本。それまで石炭に頼っていたエネルギー源が石油に置き換えられていき、炭鉱が次々と閉鎖されていきます。かつては「黒いダイヤ」とも呼ばれて重宝された石炭。そして、多くの労働者を抱えていた炭鉱。炭鉱が閉鎖されれば、多くの失業者が出て、一つの町が寂れていくことになります。
日本の中でも大規模な鉱山であった常磐炭鉱が閉鎖されようとした時、起死回生の策として打ち出されたのが、「常磐ハワイアンセンター」。何故に福島にハワイ?と思いますが、当時、「夢の」と枕詞が付けられたハワイ旅行。寂れていく炭鉱の町の人にとり、そこにハワイを作ると言うのは、まさに、夢だったのかもしれません。
炭鉱労働に誇りを持ち、炭鉱に想いを残す人、新しい可能性に夢を見出す人...。様々な想いが交錯する中、炭鉱の娘たちは踊ったことはもちろん見たこともなかったフラダンスに挑戦し、舞台に立ちます。
構成も上手いのでしょう、時々笑わせられながらも見事に泣かされ続けました。これから観に行く方、ハンカチ必携、アイメイクに要注意です。
[以下、ネタバレあり]
東京から呼ばれてきたダンス教師、平山まどかの荒れた様子。まどかを追ってくる借金の取立て。何故、借金を抱え込むことになったか、何故、福島に来ることになったのか、その辺りの事情は、はっきりとは描かれていません。常磐ハワイアンセンターオープンの日、まどかを訪ねてきた借金取りをフラガールのリーダーである谷川紀美子の兄、洋二朗が追い返します。もちろん、相当にあごぎな借金取りなのでしょうけれど、だからって、借用書を奪い取って追い返す...それでいいのかという感じもしました。
まぁ、ベタな展開ではあります。けれど、フラガールたちのひたむきさ、立場は変わってもそれぞれの炭鉱の町やそこに住む家族や隣人たちに対する熱い想い、ハワイアンミュージック、そして、何と言ってもフラ!そこに、他にはない本作の魅力が感じられました。
いろいろな理由があって寂れていく町はあちこちにあります。そこを再生させる力の源は、何と言ってもそこに住む人々の中にあるということかもしれません。
紀美子の親友で紀美子をフラガールに誘った早苗の父親は、夕張の炭鉱に職を得て、夕張に引っ越して行き、そのために、早苗はフラガールを辞めることになります。今の夕張の状況を考えると複雑なものがあります。「常磐ハワイアンセンター」を生みだし、町を再生させた常磐炭鉱と大きなハコモノを造り過ぎて破産した夕張と...。
常磐ハワイアンセンターも当初は大人気だったのが、一時は、かなり来場者数が低迷したようです。けれど、1990年に「スパリゾートハワイアンズ」と名称を変え、施設を時代のニーズに合わせて充実させて活況を取り戻しているとのこと。頑張っているようです。
地域の人たちに支えられた事業の強さ、人々の地域への想いの強さを感じさせられました。
公式サイト
http://www.hula-girl.jp/index2.html