政治資金規正法と治安維持法 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

自ら刑事事件の当事者となった方々の書く文章は、深い。


私は、弁護士として、こういった方々の生の声に真摯に耳を傾けなければならないと思っている。

それでは、彼らが訴えることをそのまま受け入れるか。

やはり法律の実務家としては、一つ一つ吟味した上でなければ、指摘されていることが正しいのかどうか言えない。


大抵は、一部は正しいが、根本的なところに誤解がある、ということになる。


堀江氏や佐藤優氏、鈴木宗男氏、さらには植草氏など、刑事事件の被告になった方々が検察捜査の実情などについて書かれると、経験のない一般の方々は、これを否定する材料がないから、端から受入れを拒絶するか、無条件で受け入れるしかなくなってしまうだろう。

そこが、法律の専門家と一般の方々との違いだ。


佐藤優氏は、国策捜査という言葉を普及させた方だ。

こんな博識な人は知らない。


だからといって、政治資金規正法と治安維持法を並べて論じているのは、いただけない。

この人も一種の国家権力陰謀論の傾向が強い。

戦前の司法と現在の司法との違いを無視している。


政治資金規正法は、議員立法である。

国会議員が自らを律するために、自ら制定したものである。

国会議員の立法能力が十分でないため、しばしば構成要件が曖昧だったり、規制がしり抜けになっている、という欠陥が指摘されるが、国会が自ら発議し、制定したものである。

治安維持法のように、反国家勢力や反体制勢力を取り締まるために政府の提案によって制定されたものではない。


立法に検察当局の意思が入っていない、ということをまず押さえておく必要がある。

さらに、政治資金規正法の違反が厳しく処断されるようになった経緯も確認しておく必要があるだろう。


何といっても、政治の浄化を望む国民の声である。

政党助成金が交付されるようになり、政党や政治家の政治活動の公共性が一段と強調されるようになった、という背景がある。


あれだけの筆力のある佐藤氏の論述は、影響力が大きい。

佐藤優氏の信奉者はこれからもますます増える一方だろうが、しかし、刑事司法に対する佐藤氏の論述はそのまま鵜呑みにするべきではない、と私は思っている。


しかし、それにしても刑事被告人になった方々がこんなに論壇で活躍できる国は珍しいのではないか。

その論述内容はともかくとして、こんなにも言論の自由を保障しているわが国は、いい国だと思う。

私は、この国を守りたい。